見積書・請求書業務の「ツール化」で、時間も信用も守れる時代に
「まだエクセルで請求書を作ってるんですか?」 そんな問いにドキッとしたら、今こそ見直しのタイミングかもしれません。
見積書や請求書の作成は、企業にとって単なる事務作業ではなく、「信用」を左右する重要な業務です。
しかし多くの中小企業や個人事業主では、今なおエクセルやワードで帳票を作成し、PDF化してメール送信…という昔ながらのフローが根強く残っています。
一方で、クラウド型の請求書ツールは、業務効率の改善だけでなく、送付忘れや金額ミスなどの“ヒューマンエラー”を大幅に減らすことができ、結果として「入金遅れ」や「税務上のトラブル」を未然に防げます。
この記事では、業務デジタル化の第一歩としておすすめできる「見積書・請求書作成ツール」を7つ厳選して紹介するとともに、導入時にありがちなミスや、実際の選定ポイントを網羅したチェックリストもあわせて公開します。
中小企業・個人事業主の皆さんが、無理なく・失敗せずに請求業務をデジタル化できるよう、実務視点で徹底的に解説していきます。
まだエクセル?見積書・請求書業務のアナログ課題とは

「エクセルで十分だと思っていたけど、後から思わぬトラブルになった」 これは、請求業務の“アナログ処理”が原因で生じた典型的なケースです。実際に中小企業や個人事業主の現場では、次のような課題が今も日常的に発生しています。
- 数式のコピペミスにより、請求金額が違っていた
- ファイル名の付け方がバラバラで、後から検索に苦労
- 月末締めのタイミングで過去の帳票を探すのに数時間
- 誰がいつどの帳票を作成・送付したかが社内で見えない
- 添付ファイルでの送信忘れ、間違った宛先への送付
これらの問題の根底には、「属人化」「手作業中心」「一元管理できていない」という3つの要因があります。
特に、見積書と請求書が別々の管理フォルダに保存されていたり、送付履歴が個人メールにしか残っていなかったりといった“情報の分断”は、社内共有を難しくし、業務のブラックボックス化を招きます。
また、2023年10月に本格施行されたインボイス制度や、電子帳簿保存法の対応が求められる中で、こうしたアナログな運用は“税務リスク”に直結するケースも増えています。
つまり、単なる「業務の面倒くささ」ではなく、「信頼損失」「法令対応ミス」「請求漏れによるキャッシュフロー悪化」といった経営上のリスクに直結しているという点に、多くの経営者が気付き始めています。
▷要点まとめ
- エクセル・手書き請求書には「転記ミス」「検索性の悪さ」「属人化」など多数のリスクがある
- アナログ管理のままでは、インボイスや電子帳簿保存法対応にも限界
- 見積・請求業務のミスは、信頼性やキャッシュフローにも影響する
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見積書・請求書作成ツールを選ぶときの5つのチェックポイント
市場にはさまざまな見積書・請求書作成ツールがありますが、「どれを選べばいいのかわからない」という声も少なくありません。ここでは、実務での使い勝手や導入後のトラブルを避けるために確認すべき5つのチェックポイントを紹介します。
1. 自社の規模や運用体制に合っているか
個人事業主が使うなら“1人で完結できるUI/UX”が重要。一方で、部署や拠点をまたぐ中小企業なら“権限設定”や“ステータス管理”など複数人での運用に対応しているかを確認しましょう。
2. クラウド対応とマルチデバイス運用
外出先からの確認やスマホ送信など、クラウド対応は今や必須。インストール型のソフトはアップデート対応や法改正時の追従に不安が残る場合も。
3. 他の業務ツールとの連携性
会計ソフト(freee・マネーフォワードなど)や、受発注管理ツール、勤怠・プロジェクト管理ツールとの連携が可能かどうかは、業務全体の効率に直結します。
4. 帳票デザインとカスタマイズの自由度
意外と見落とされがちですが、請求書や見積書の見た目は「会社の印象」を左右します。ロゴやレイアウト、備考欄の柔軟性も評価ポイントです。
5. インボイス制度・電子帳簿保存法への対応
今後の制度対応に不安がある企業は、“インボイス対応済み”“電帳法対応のタイムスタンプ機能”があるかを必ず確認しましょう。
▷選定ポイントまとめ(表)
チェック項目 | 解説 | 優先度 |
---|---|---|
自社規模・運用体制 | 個人利用か、複数人での運用か | ◎ |
クラウド対応 | 場所・端末に依存せず使えるか | ◎ |
他ツール連携 | 会計・労務・発注管理などとの連携 | ○ |
帳票デザイン | ブランド感・顧客印象への配慮 | ○ |
法制度対応 | インボイス・電帳法への準拠 | ◎ |
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・もう迷わない!会計ソフトと連携できる請求書ツールまとめ
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【2025年版】見積書・請求書作成ツールおすすめ7選
ここからは、実際に業務デジタル化ナビ編集部が選定した「おすすめの見積書・請求書作成ツール」を7つご紹介します。
中小企業・個人事業主の利用実態、制度対応、業務効率、コスト感などの観点から、それぞれの特徴とおすすめポイントをまとめました。
ツール①:Misoca(ミソカ)

弥生株式会社が提供する「Misoca」は、フリーランスや個人事業主にとって使いやすい請求書作成ツールの代表格。特別な操作知識がなくても、直感的なUIで簡単に帳票を作成できます。
特徴:
- 請求書、見積書、納品書の一括管理が可能
- 郵送代行にも対応しており、紙文化の取引先にも対応
- 弥生シリーズとの連携に強く、会計処理まで一気通貫
こんな方におすすめ:
- ITに不慣れな個人事業主
- 弥生ユーザー
- 郵送にも対応したい方
ツール②:MakeLeaps(メイクリープス)

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請求業務の“見える化”と“チーム対応”に強いMakeLeapsは、スタートアップや中小企業に人気。請求書の承認ワークフローやテンプレート共有など、社内で複数人が関与する業務に最適です。
特徴:
- チームでの利用を前提にしたUI設計
- 請求書、見積書、発注書などのテンプレート切替がスムーズ
- Salesforceやクラウドサインなど外部連携が豊富
こんな方におすすめ:
- 部署をまたいだ請求フローがある企業
- スタートアップで成長フェーズにある事業者
ツール③:freee会計

freeeの請求書機能は、会計ソフトと一体化されており、見積〜請求〜入金〜仕訳までをワンストップで管理できます。バックオフィス全体の効率化を考えるなら有力な選択肢です。
特徴:
- 会計業務と完全連動(自動仕訳)
- 請求書送信後の入金管理、債権管理にも対応
- 電子帳簿保存法・インボイス対応済み
こんな方におすすめ:
- すでにfreeeを使っている、またはこれから導入予定の事業者
- 会計業務も含めて一括で効率化したい企業
ツール④:マネーフォワード クラウド請求書

マネーフォワードのクラウド会計サービスと連動する「クラウド請求書」は、財務状況や入出金の可視化を重視する企業に最適。UIも見やすく、経理以外の人にも扱いやすいのが特徴です。
特徴:
- インボイス制度対応の請求書作成が簡単
- 部署別管理、承認フロー、操作履歴も確認可能
- 会計・勤怠・経費精算までグループで連携
こんな方におすすめ:
- 財務・労務も含めた業務の見える化を進めたい中小企業
- 経理だけでなく、営業や現場スタッフも帳票に関与する企業
ツール⑤:Bill One(ビルワン)

請求書の「受け取り」業務も効率化したい企業におすすめなのがBill One。Sansanが提供するサービスで、郵送・PDF問わずすべての請求書をデータ化して一元管理できます。
特徴:
- 請求書の紙・PDFをスキャン or メール送信するだけで自動データ化
- 入力・仕訳・保管までを自動連携
- ワークフロー承認や支払い依頼にも対応
こんな方におすすめ:
- 請求書を「発行する側」だけでなく「受け取る側」としても効率化したい企業
- 支払業務や仕訳処理に時間を取られているバックオフィス
ツール⑥:board(ボード)

プロジェクトベースで取引が発生する業種(IT・コンサル・制作系など)に強いのがboardです。見積〜請求〜入金確認までのフローを「案件単位」で管理できるのが最大の魅力です。
特徴:
- 案件ごとに関連書類をひとまとめに管理可能
- 作成した見積書からワンクリックで請求書に変換
- クライアント別・案件別の進捗や売上管理が可視化される
こんな方におすすめ:
- プロジェクト型の商談・受注業務が多いフリーランスや小規模企業
- 案件ベースでの収支管理や書類の一元化をしたい方
ツール⑦:Zoho Invoice(ゾーホーインボイス)

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グローバル展開しているZohoシリーズの中でも、Invoiceは多言語・多通貨に対応したインボイス作成に強みがあります。海外取引のある企業や、多国籍クライアントを持つフリーランスにぴったりです。
特徴:
- 英語はもちろん、中国語やスペイン語など複数言語に対応
- 各国の通貨に対応した請求書発行・送信が可能
- Zoho Booksなど他シリーズと連携すると業務一括管理が可能に
こんな方におすすめ:
- 海外顧客向けの請求書が必要な事業者
- インボイス制度と国際対応を両立したい企業
▷7ツール比較まとめ表
ツール名 | 特徴 | 対象ユーザー |
---|---|---|
Misoca | 弥生ユーザー向け、郵送代行対応 | 個人事業主・初心者 |
MakeLeaps | チーム運用に強い、外部連携多彩 | スタートアップ・中小企業 |
freee会計 | 会計連携が強力、会計も効率化 | 一括業務改善したい企業 |
マネーフォワード | 財務全体の見える化に強み | 部署横断型・中堅企業 |
Bill One | 受け取りの自動化と支払管理に特化 | 請求書を多く受け取る企業 |
board | 案件管理・進捗可視化が優秀 | プロジェクト型業種 |
Zoho Invoice | 多言語・多通貨対応 | 海外顧客あり・グローバル企業 |
導入後にありがちな“3つのミス”と対策チェックリスト
ツールを選んで導入しても、「うまく活用されていない」「余計に手間が増えた」と感じる企業は少なくありません。ここでは、実際によくある導入ミスを3つ紹介しながら、それぞれに対するチェックポイントを整理します。
ミス①:業務フローに落とし込めていない
ツールを導入しただけで満足し、現場の業務ルールや手順を見直さないままだと、結局「以前のやり方に戻る」ケースが多発します。
対策:
- 請求書作成のタイミング・担当者・チェック体制をあらかじめ設計する
- 見積〜請求〜入金確認までの一連フローをマニュアル化
- 担当者ごとのToDoや期日設定をツール内で行えるかも要確認
ミス②:請求漏れ・送付ミス・入金確認のズレ
「自動で楽になると思っていたのに、結局請求漏れしていた…」という声もあります。これはツールと人的な運用の連携不足が原因です。
対策:
- 毎月の請求スケジュールを明確化
- 未送付リストや入金確認リストの自動抽出機能があるツールを選定
- 請求書の送付後も入金までトラッキングできる機能を重視
ミス③:「会計・税務」との連携不足
請求書ツールと会計ソフトが別管理になっていると、再入力やミスが頻発します。とくにインボイス制度後は、帳簿・請求書・取引記録の整合性が求められます。
対策:
- 会計ソフトとAPI連携できるか確認(freee・マネフォ・弥生など)
- 電子帳簿保存法への対応(タイムスタンプ・改ざん防止)もチェック
- 会計事務所との連携や共有方法も運用前に相談
✅導入前チェックリスト(簡易版)
以下のチェックリストは、ツール導入前に必ず確認しておきたい7つの観点をまとめたものです。導入後に「想定外だった…」と後悔しないためにも、実際の運用シーンを思い浮かべながら確認してみましょう。
✅関連記事
・請求業務の属人化を防ぐ!テンプレート運用のすすめ
・会計ソフトと連携することで月末の処理が半分に?事例付き解説
紙・Excel管理とツール導入、どちらが本当にコストかかる?

「ツールは便利そうだけど、うちはまだ紙やExcelで十分だから…」 そう感じる方にこそ、一度“本当のコスト”を見直していただきたいのです。
一見無料に見えるExcelや紙の運用ですが、実際には以下のような**“隠れコスト”**が積み重なっています。
▷手作業ベース運用に潜むコスト要素
項目 | 内容 | 影響 |
---|---|---|
作業時間 | 転記・送付・保管などすべて手作業 | 月10時間以上の拘束も |
ヒューマンエラー | 金額ミス・重複送信・送付忘れ | 信頼損失・再発防止工数 |
社内確認 | 上長確認・共有・差し戻し | 工程遅延・非効率なフロー |
ファイル管理 | 各自バラバラの保存 | 検索・再利用不可・属人化 |
▷ツール導入で削減できる代表的なコスト
項目 | 自動化される内容 | 削減効果 |
帳票作成 | テンプレ入力+変換自動化 | 月3〜5時間削減 |
送付業務 | メール送信+郵送代行 | 宛先管理+履歴保存で安全 |
入金管理 | 入金確認・催促メール | 消込作業の時間を1/3に |
法令対応 | インボイス・電帳法対応済 | 税務調査対応がスムーズに |
✔ 時給換算で見えてくる「時間=コスト」の現実
仮に、月10時間の請求書作成業務があるとしましょう。 1時間=2,000円の人件費とすると、月2万円、年間で24万円。 これがツール導入で半分になるだけでも、年12万円のコスト削減です。
加えて、「請求漏れ防止」「書類検索の時短」「外部提出資料の信頼性向上」など、見えにくいが大きな“品質コスト”の削減にもつながります。
✅関連記事:
・帳票ミスで失注!? ありがちなトラブルと予防策を徹底解説
・クラウド請求書導入でどれだけ時短できた?実録・数字で見る効果
FAQ|見積書・請求書作成ツールに関するよくある質問
Q1. 無料プランと有料プランの違いは?
多くのツールでは、無料プランでも基本的な請求書作成は可能です。ただし、件数制限・郵送代行・会計ソフト連携・PDFの非表示広告などで機能制限がある場合が多く、本格的な業務利用には有料プランが現実的です。
Q2. インボイス制度に対応していないツールは使えない?
2023年以降、インボイス制度対応は必須の要件となっています。インボイス登録番号の記載機能や、適格請求書フォーマット対応があるかは必ず確認してください。未対応ツールは避けるべきです。
Q3. 自社の請求書フォーマットに近い形に編集できる?
多くのツールでは、ロゴ挿入・備考欄の編集・項目追加などが可能です。完全一致とは限りませんが、テンプレートのカスタマイズ性はツール選定の重要な基準です。
Q4. 請求書・見積書・納品書をまとめて作成できる?
はい、可能です。特にboardやMakeLeapsなどは、見積→請求→納品→入金までの流れを統一フォーマットで管理できるため、業務の一貫性が保たれます。
Q5. スタッフが操作に慣れるまでどれくらい時間がかかる?
クラウド型のツールは直感的なUI設計になっているものが多く、初回の操作研修で十分に習得可能です。慣れれば手作業より圧倒的に早く、かつミスが減ります。
まとめ|“信用”を守るための請求業務は、ツールで仕組み化しよう
見積書・請求書業務は、会社の信用を左右する「顔」であり、業務の中でも特にミスが許されない領域です。
紙やExcelでの運用も可能ではありますが、制度対応・業務スピード・属人化リスク・検索性などを考えたとき、早めにツール化することが中小企業にとっての安心材料になります。
本記事では、見積書・請求書ツールを導入するうえで重要なポイントを以下の観点から解説しました。
- アナログ運用のままでは起こりうるリスクと業務負担
- ツール選定で失敗しないためのチェックポイント
- 現場に合わせたおすすめのツール7選と比較表
- 導入後に多い“つまずき”と、それを回避するチェックリスト
- Excelや紙とのコスト差・時間対効果の現実的な比較
デジタル化は「特別な企業」だけのものではなく、むしろ限られたリソースの中で効率を最大化したい中小企業こそ、早めに取り入れる価値があるといえますね。