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賃貸のエアコン掃除は誰の負担?入居中と退去時の考え方

賃貸のエアコン掃除は誰が負担するのか、入居中と退去時の考え方を紹介するイラスト
Yuta
記事監修者
現:ガス会社に勤める兼業WEBライター。所持資格はガス開栓作業に必要な高圧ガス販売主任者二種、ガス工事に必要な液化石油ガス設備士、灯油の取り扱いに必要な危険物乙四種、その他ガス関連資格多数と電気工事士などの資格も多数所持。

備え付けのエアコンから嫌なニオイがしてきたとき、「これは自分で掃除するものなのか、それとも管理会社に言えばいいのか」と迷っていませんか。

賃貸物件のエアコンは自分の持ち物ではないため、どこまで手を出してよいのか、費用は誰が払うのかがはっきりしないまま放置されがちです。
実は、この線引きには国土交通省が示した明確な考え方があり、日常のフィルター清掃と、分解を伴う内部洗浄とでは扱いがまったく異なります。

この記事では、入居中に入居者がやるべき掃除の範囲、退去時にエアコンクリーニング費用を請求されたときの判断基準、そして負担が入居者側に移ってしまう例外的なケースまでを、根拠とあわせて整理します。

目次

賃貸のエアコン掃除はフィルターが入居者、内部洗浄は貸主が原則

結論から述べます。
賃貸物件に備え付けられたエアコンの掃除は、フィルターや吹き出し口まわりの日常的な清掃は入居者、分解を伴う内部洗浄は貸主(大家・管理会社)の負担が原則です。
これは国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」に、エアコンの内部洗浄の考え方として明記されています。

ガイドラインでは、エアコンの吹き出し口やフィルターの清掃は入居者が通常の清掃として行うべきものとしつつ、内部洗浄については通常の生活で必ず行うとまでは言い切れず、入居者の管理の範囲を超えているため貸主負担とするのが妥当、と整理されています。
つまり、掃除機で吸ったり水洗いしたりできる範囲は入居者の役目、カバーを外して熱交換器や送風ファンを高圧洗浄するような作業は貸主側の役目、という分け方です。

📎 出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」第1章

ただしこの原則には例外があります。
喫煙によるヤニやニオイの付着など、通常の使用による汚れを超えると判断される場合は、貸主負担の対象から外れます。
また、契約書に有効な特約が付いている場合も扱いが変わります。
以降で、入居中と退去時に分けて具体的に見ていきます。

判断の土台になるのは民法621条の「通常損耗は借主負担ではない」という考え方

エアコンに限らず、賃貸の原状回復をめぐる負担区分は、民法621条が土台になっています。
この条文では、賃貸借が終了したときに入居者が原状回復義務を負うのは、入居後に生じた損傷のうち、通常の使用によって生じた損耗と経年変化を除いた部分である、と定められています。

📎 出典:e-Gov法令検索「民法」(第621条 賃借人の原状回復義務)

普通に住んでいれば当然に生じる汚れや劣化については、入居者が元に戻す義務を負わない、という考え方です。
エアコンを冷房で使えば内部に結露が生じ、時間の経過とともに汚れやカビが付着します。
これは「エアコンを使った以上、避けようがない変化」であり、通常損耗にあたると評価されるのが一般的です。

一方で、次のようなものは通常損耗とは扱われにくくなります。

  • 入居者の故意・過失によって生じた損傷(無理に分解して部品を折った、など)
  • 手入れを怠ったことで通常以上に悪化した汚れ
  • 喫煙・ペットなど、使い方によって生じた特有の汚れやニオイ

この「通常の使用の範囲かどうか」という一本の線が、エアコン掃除の負担区分でも判断の軸になります。

入居中のエアコン掃除は「工具を使わずに届く範囲」までが入居者の役目

入居中の手入れについては、どこまでが自分の役目かを具体的に把握しておくと迷いません。
判断の目安はシンプルで、工具を使わず、取扱説明書に載っている手順で手が届く範囲が入居者の担当範囲です。

入居者が行うべき日常の手入れ

箇所頻度の目安方法
エアフィルター使用シーズン中は2週間に1回程度掃除機でホコリを吸い、汚れがひどければ水洗いして完全に乾かす
前面パネル・本体表面月1回程度固く絞った布で拭く
吹き出し口・ルーバー月1回程度手が届く範囲を乾いた布や柔らかいブラシで拭く
ダストボックス(自動お掃除機能付き)お知らせサインが出たときたまったホコリを捨てる
室外機まわり季節の変わり目吹き出し口の前に物を置かない、落ち葉を取り除く

フィルター清掃の頻度について、ダイキンは見た目が汚れていなくてもシーズン中は2週間に一度の掃除を勧めており、掃除をしない場合は消費電力が増える点にも触れています。
また、水洗い後の乾燥が不十分なまま取り付けると雑菌が繁殖し、カビやニオイの原因になると注意を促しています。

📎 出典:ダイキン工業「エアコン掃除の困りごとと対処法」(空気の困りごとラボ)

つまりフィルター清掃は、負担区分の話である以前に、電気代とニオイの両方に直結する実利のある作業です。
賃貸だから手を抜く、という発想は損になりやすいと考えてよいでしょう。

手入れに使う道具は最小限で足りる

特別な洗剤や機材は必要ありません。
掃除機のブラシノズルと、フィルターの目に入り込んだホコリをかき出す柔らかいブラシがあれば、日常の手入れはほぼ完結します。
浴室で水洗いする場合は、裏側から水を当てるとホコリが押し出されて落ちやすくなります。

入居者がやってはいけないこと

一方で、次の作業は入居者が手を出すべきではありません。

  • 本体カバーやルーバーを工具で取り外す
  • 熱交換器(アルミフィン)や送風ファンに市販の洗浄スプレーを大量に噴射する
  • ドレンホースを切断する、延長するなど配管に手を加える
  • 業者に自己判断で内部洗浄を依頼し、後から費用を請求する

内部には電装部品があり、水分がかかると発火・感電につながるおそれがあります。
また、無断で分解して故障させた場合、その修理費用は入居者負担になり得ます。
洗浄スプレーの使い残しが内部に溜まり、かえってカビやニオイの原因になるケースも指摘されています。

エアコンのニオイが気になる段階での対処については、エアコンのつけ始めが毎日臭いのはなぜ?原因と今すぐできる対処・防ぐ方法とはで詳しく解説しています。

手入れを怠って悪化させた汚れは通常損耗と認められにくい

原則として内部の汚れは貸主負担ですが、これは入居者が通常の手入れをしていたことが前提です。
何年もフィルターを一度も掃除せず、ホコリが層になって送風ファンにまで回り込んでいる、といった状態は、通常の使用によって自然に生じた損耗とは評価されにくくなります。

判断が分かれやすいのは、次のような境目です。

状況評価されやすい扱い
定期的に手入れしていたが、内部にカビが生えた通常損耗(貸主負担)
数年間まったく清掃せず、汚れが著しく蓄積した善管注意義務違反として入居者負担を問われる可能性
冷房後に内部乾燥をせず、カビが広がった状況によるが、通常損耗と評価されることが多い
水漏れに気づきながら放置し、壁や床にシミができた入居者負担になりやすい

とくに最後の水漏れの放置は、被害がエアコン本体で収まらないため、争いになりやすい類型です。
ドレン系のトラブルは音の変化で気づけることがあり、エアコンのポコポコ音の原因と止め方とは?自分でできる対処法を解説で兆候の見分け方を紹介しています。

なお、「手入れを怠った」と主張する側には、その事実を示す責任があります。
入居者側としては、フィルターを掃除した日の写真を残しておくだけでも、後からの反論材料になります。

退去時に内部洗浄費用を請求されたら、まず特約の有無と書き方を確認する

退去の精算書に「エアコンクリーニング代」が計上されていた、というのはよくある相談です。
ここで確認すべき順番は決まっています。

手順1:ガイドラインの原則との差を把握する

前述のとおり、エアコンの内部洗浄はガイドライン上、貸主負担が妥当とされています。
したがって、何の取り決めもなく一律に請求されている場合は、原則から外れた請求ということになります。

手順2:契約書に特約があるか確認する

ただし、当事者が合意していれば、原則と異なる負担の取り決め(特約)を置くこと自体は可能です。
問題は、その特約が有効と認められるかどうかです。
裁判例やガイドラインの考え方を踏まえると、次の3点がそろっているかが目安になります。

  1. 特約をつける必要性があり、暴利的でないなど客観的・合理的な理由が存在すること
  2. 入居者が、通常の原状回復義務を超えた負担を負うことを認識していること
  3. 入居者が、その義務を負うことについて意思表示していること

「退去時はハウスクリーニング費用として一式◯◯円を負担する」といった記載しかなく、エアコンの内部洗浄が含まれるかどうかが読み取れない契約書は少なくありません。
その場合、エアコン洗浄費用が別枠で追加請求されることの根拠としては弱い、と考えられます。

手順3:金額と内訳の説明を求める

特約がある場合でも、金額が具体的に示されていたか、契約時に説明を受けたかは重要な要素です。
納得できない場合は、感情的に応じるのではなく、次の順で対応するのが現実的です。

  • 精算明細の内訳(作業内容・単価・対象台数)を書面で求める
  • 契約書の該当条項を示してもらう
  • 入居時・退去時の写真と照合する
  • 折り合わない場合は、消費生活センターなどの第三者に相談する

国民生活センターも、賃貸住宅の原状回復に関するトラブルについて注意を呼びかけており、契約前や退去時に国土交通省のガイドラインや賃貸住宅標準契約書に目を通しておくことを勧めています。
あわせて、入居時に貸主側と一緒に室内の状況を記録し、エアコンなど備え付け設備が正常に動くかを確認しておくよう案内しています。

📎 出典:国民生活センター「賃貸住宅の原状回復トラブルにご注意!」

「ハウスクリーニング特約」にエアコン洗浄が含まれるとは限らない

退去時の精算で最も相談が多いのが、ハウスクリーニング費用とエアコンクリーニング費用の関係です。
契約書に「退去時のハウスクリーニング費用は借主負担とする」とだけ書かれている場合、そこにエアコンの内部洗浄まで含まれているのかどうかは、文言からは読み取れません。

一般的なハウスクリーニングは、床・水まわり・窓・換気扇といった居室全体の清掃を指すことが多く、エアコンの分解洗浄はオプション扱いとされているのが実情です。
そのため、次のような構図になっていないかを確認してください。

  • ハウスクリーニング費用を定額で負担したうえで、エアコン洗浄費用が別枠で追加請求されている
  • 「一式」としか書かれておらず、作業内訳が示されていない
  • 契約書に金額の記載がなく、退去時に初めて金額を提示された

特約の有効性を左右するのは、契約時点で入居者が負担内容と金額を具体的に理解できる状態だったかという点です。
退去時に初めて示された金額は、この観点から見ると根拠が弱くなります。

逆に、契約書に「エアコン内部洗浄費用として1台あたり◯◯円を借主が負担する」と明記され、契約時に説明を受けて署名しているのであれば、その合意は尊重されやすくなります。
賃貸借契約は当事者の合意が基本であり、ガイドラインは合意がない場合の一般的な考え方を示したもの、という位置づけだからです。

費用の目安をどう調べるか

エアコンクリーニングの料金は、機種のタイプ(壁掛け型か天井埋込型か、自動お掃除機能の有無か)、台数、地域、繁忙期かどうかで大きく変わります。
そのため「相場は◯円」と一律に言い切れる性質のものではありません。
請求額が妥当かどうかを判断したいときは、同じ条件で複数の清掃事業者が公表している料金表を確認し、そこから外れていないかを見るのが現実的です。
著しく高い場合は、内訳の説明を求める材料になります。

自動お掃除機能付きでも「掃除不要」ではない

近年の賃貸物件では、フィルター自動お掃除機能付きのエアコンが設置されていることも増えました。
ここで誤解しやすいのが、自動お掃除機能はフィルターのホコリを取る機能であって、内部のカビやニオイを防ぐ機能ではないという点です。

自動お掃除機能付き機種で入居者が行うのは、主に次の作業です。

作業タイミング補足
ダストボックスのホコリ捨てお知らせサインが出たとき機種により自動排出タイプもある
フィルターの状態確認半年〜1年に1回程度取り切れない汚れが残ることがある
前面パネル・吹き出し口の拭き取り月1回程度手が届く範囲のみ

ダストボックスにホコリが満杯のまま放置されると、清掃機構が正常に動かず、結果的にフィルターが目詰まりします。
「自動だから何もしなくてよい」と思い込んだまま数年経過し、退去時に汚れを指摘される、というのは避けたいパターンです。
機種ごとの手順は取扱説明書に記載されているので、入居時に品番を控え、メーカーの公式サイトから説明書を確認しておくと確実です。

なお、自動お掃除機能付きは構造が複雑なぶん、内部洗浄の費用も高くなる傾向があります。
特約による負担が定められている物件では、この点も含めて金額の妥当性を見ておくとよいでしょう。

カビとニオイは日常の使い方で大きく変えられる

負担区分の話とは別に、そもそも内部を汚さない使い方を知っておくと、退去時のリスクそのものが下がります。
エアコン内部のカビは、湿気・ホコリ・温度という3条件がそろうと発生します。
このうち入居者がコントロールしやすいのは湿気とホコリです。

具体的には、次の習慣が効果的です。

  • 冷房・除湿の使用後に内部クリーン(内部乾燥)機能を作動させ、途中で止めない
  • 内部クリーン機能がない機種では、冷房停止後に送風運転を30分〜1時間ほど行う
  • シーズン中は2週間に一度フィルターを掃除する
  • 室内の換気を定期的に行い、ホコリの量そのものを減らす
  • 使用しない季節に、月1回程度10分ほど送風運転をして内部を乾かす

とくに内部クリーン機能を途中で止めてしまう方は多いのですが、乾燥しきる前に停止させると効果が半減します。
運転音や温風が気になる場合でも、最後まで動かしきるほうが結果的にニオイを抑えられます。

季節の変わり目に運転しはじめたときだけニオイが出るのか、毎回出るのかでも、内部の状態の見立ては変わります。
その切り分け方は先ほど紹介したニオイの記事にまとめています。

喫煙・ペット・水漏れ放置は負担が入居者側に移りやすい

ガイドラインは、通常の使用による汚損を超えるものについては貸主負担ではないとしています。
エアコンまわりで、その線を越えると判断されやすい代表例を整理します。

ケース負担の傾向理由
室内で喫煙し、ヤニやニオイが内部に付着入居者負担になりやすい通常の使用による汚損を超えると整理されている
ペットの毛が大量に内部へ入り込んだ入居者負担を問われる可能性通常の居住では生じない汚れ
何年も清掃せず著しく汚れた争いになりやすい善管注意義務の履行が問われる
通常使用の範囲でカビが発生貸主負担通常損耗・経年変化にあたる
経年による性能低下貸主負担設備の耐用年数の問題
自分で分解し破損させた入居者負担故意・過失による損傷

喫煙については、壁紙のヤニと同様にエアコン内部でも問題になります。
契約でペット飼育や喫煙が許可されている場合でも、それによって生じた特有の汚れの負担までが免除されるとは限らないため、契約書の記載を確認しておくことをおすすめします。

掃除では直らない不具合は、貸主に修繕を求めるのが筋

ここで混同しやすいのが、「汚れ」と「故障」の区別です。
備え付けのエアコンは貸主の所有物であり、貸主は貸した物を使用収益させる義務を負っています。
そのため、通常の使用の範囲で故障した場合の修理・交換は、原則として貸主が対応すべきものです。

次のような症状は、掃除の問題ではなく設備の不具合として管理会社へ連絡してください。

  • 運転しても冷えない・暖まらない状態が続く
  • 室内機から水がぽたぽた落ちる
  • 異音・異臭(焦げ臭い、樹脂が焼けるようなニオイ)がする
  • リモコン操作を受け付けない、エラー表示が消えない

焦げ臭いニオイや、コンセント・プラグの変色を伴う症状は、発火のおそれがあるため直ちに運転を止め、ブレーカーを切ってから連絡してください。

連絡時のポイントは、自分で業者を手配する前に必ず貸主・管理会社へ相談することです。
先に修理を発注してしまうと、費用の精算でもめる原因になります。
緊急性が高い場合の対応方法は契約書に定められていることが多いので、入居時に確認しておくと安心です。

冷房が効かない場合に、故障か手入れ不足かを切り分ける手順はダイキンのエアコンが冷えない原因|自分でできる確認と業者依頼の目安にまとめています。

設備の古さも判断材料になる

エアコンには耐用年数の考え方があり、設置から年数が経った機器は価値が減少しているものとして扱われます。
仮に入居者に一定の責任がある場合でも、新品同様に戻す費用の全額を負担するわけではなく、経過年数に応じて負担割合が下がる、という整理がガイドラインでも採られています。

考え方はこうです。
設備は使えば必ず価値が下がっていくため、10年近く使われた機器を入居者の費用で新品に交換させれば、貸主は本来の価値以上のものを手にすることになります。
それを避けるために、経過年数に応じて入居者の負担割合を減らし、年数が十分に経過した設備については残存価値相当まで下げる、という調整が行われます。

一方で、清掃費用そのものは経過年数の考慮になじまないとされている点にも注意が必要です。
清掃は設備の価値を新品に戻す作業ではなく、その時点の状態を回復する作業だからです。
つまり「古いエアコンだから洗浄費用も安くなるはず」という理屈は通りにくいということになります。
争点になりやすいのは金額そのものより、そもそも入居者が負担すべき作業なのかどうかです。
設備の年数の考え方はエアコンの耐用年数と減価償却の基本で解説しています。

入居中に内部洗浄をしてほしいときの伝え方

「内部洗浄は貸主負担が原則」と分かっていても、実際に依頼するとなると気が引ける、という声は少なくありません。
ここで大切なのは、権利を主張することではなく、設備に不具合が出ている事実を具体的に伝えることです。

伝え方の違いで、対応が変わることは実際にあります。

伝え方受け取られ方
「エアコンが汚いので掃除してください」主観的な要望と受け取られやすい
「冷房開始時に強いカビ臭がして、窓を開けないと部屋にいられません。フィルターは2週間ごとに清掃していますが改善しません」設備の不具合として検討されやすい

伝えるべき情報は次の4点です。

  • いつから、どのような症状が出ているか(ニオイ・効き・音・水漏れ)
  • 自分で行った対処(フィルター清掃の頻度、内部乾燥の使用有無)
  • 生活への支障の程度
  • 設置年(品番の製造年から推測できる場合は添える)

写真や短い動画を添えると、状況が伝わりやすくなります。
その場で回答が得られなくても、連絡した記録が残ること自体に意味があります。
後日「入居中に一度も申告がなかった」と言われる事態を防げるためです。

なお、貸主側が洗浄ではなく本体交換を選ぶ場合もあります。
設置から年数が経っている機器では、洗浄費用と修理リスクを考えて交換したほうが合理的なことがあるからです。
どちらになるかは貸主の判断ですが、入居者にとっては効きの改善と電気代の低下という形で結果が返ってきます。

賃貸のエアコン掃除でよくある誤解

最後に、相談の場面で繰り返し見られる誤解を整理しておきます。

「賃貸だからエアコン掃除は一切しなくてよい」
誤りです。
フィルターなど日常の清掃は入居者が行うべきものとされています。
放置すれば効きが落ちて電気代が増え、退去時に指摘される材料にもなります。

「入居時に付いていた汚れも自分が負担することになる」
入居前から存在した汚れについて、入居者が原状回復義務を負うことはありません。
ただし、それを示すには入居時の記録が必要です。
写真を残していない場合、区別がつかず不利になることがあります。

「エアコン洗浄スプレーを使えば内部まできれいになる」
市販のスプレーで届くのは熱交換器の表面までで、ニオイの主因になりやすい送風ファンには基本的に届きません。
洗浄液が内部に残留してホコリを吸着し、かえって状態を悪化させることもあります。
電装部品に薬剤がかかると、発煙・発火のおそれがあります。

「請求されたら払うしかない」
精算書の金額は、確定した債務ではなく貸主側の提示です。
内訳と根拠の説明を求めることは、正当な手続きです。
一方で、根拠のある請求まで拒む姿勢は解決を遠ざけます。
原則と例外を理解したうえで、事実に基づいて話すのが最短の道です。

トラブルを防ぐために入居時と退去時にやっておくこと

負担区分の争いは、記録の有無で結果が変わります。
手間はかかりませんので、次の点だけは押さえておいてください。

入居時

  • エアコンの前面パネルを開け、フィルターと内部の状態を写真に撮る
  • 冷房・暖房を実際に運転し、風量とニオイを確認する
  • 前の入居者の使用感(ヤニ・ニオイ)が残っていれば、その日のうちに管理会社へ連絡し記録を残す
  • 契約書の「原状回復」「特約」「設備の修繕」に関する条項を読んでおく

入居中

  • フィルター清掃をしたら、月に一度でも日付のわかる写真を残す
  • 冷房・除湿の使用後は内部乾燥(内部クリーン)機能を使う
  • 不具合は放置せず、その都度連絡して履歴を残す

退去時

  • 立会いの前にフィルターを清掃しておく
  • 立会い時に指摘された箇所を、その場で写真に撮る
  • 精算内容はその場で署名せず、内訳を持ち帰って確認する

とくに退去立会いでの即時署名は避けたいところです。
一度合意すると、後から覆すのは難しくなります。

なお、そもそも設置されていない部屋の暑さ対策に悩んでいる場合は、エアコンのない部屋を涼しくする方法13選|夏の暑さを大幅に軽減できる対策とは?も参考になります。

ケース別・負担区分の早見表

ここまでの内容を、状況別に一枚にまとめます。

状況原則の負担補足
入居中のフィルター清掃入居者日常の清掃の範囲
入居中の吹き出し口の拭き掃除入居者手の届く範囲のみ
退去時のエアコン内部洗浄貸主ガイドラインで貸主負担が妥当とされる
喫煙によるヤニ・ニオイの除去入居者通常の使用による汚損を超える
通常使用で生じた内部のカビ貸主通常損耗にあたる
経年による効きの低下・故障貸主設備の修繕の問題
入居者が分解して破損させた入居者故意・過失による損傷
有効な特約がある場合の洗浄費用契約による特約の有効性を要確認
入居者が希望して行う内部洗浄入居者事前に貸主の承諾を得る

迷ったときは「通常の生活で当然に生じる汚れかどうか」に立ち返ると、判断がぶれにくくなります。

よくある質問

Q1. 賃貸のエアコンを自分で業者に頼んで内部洗浄してもらってもよいですか?

事前に貸主または管理会社の承諾を得てから依頼してください。
エアコンは貸主の所有物であるため、無断で分解洗浄を行い、その過程で故障や部品の破損が生じた場合、修理費用を入居者が負担することになりかねません。
また、承諾を得ずに洗浄した費用を後から請求しても、支払いに応じてもらえる保証はありません。
ニオイや効きの悪さが気になる段階で相談すれば、貸主側の負担で洗浄や交換が行われるケースもあります。
まずは症状を具体的に伝え、対応方針を確認するのが確実です。

Q2. 契約書に「退去時にエアコンクリーニング費用を負担する」と書いてあります。必ず払う必要がありますか?

記載があるからといって、自動的にすべてが有効になるわけではありません。
一般に、特約が有効と認められるには、合理的な理由があること、入居者が通常の原状回復義務を超える負担を負うと認識していること、その義務を負う意思表示をしていることが求められると整理されています。
金額の記載がない、契約時に説明がなかった、といった事情がある場合は、根拠として弱くなる可能性があります。
納得できない場合は内訳の提示を求め、それでも折り合わないときは消費生活センターへ相談してください。

Q3. フィルター掃除をまったくしていませんでした。退去時に不利になりますか?

程度によります。
数か月分のホコリであれば通常の範囲として扱われることが多い一方、何年も清掃せず、送風ファンにまでホコリが厚く付着しているような状態では、善管注意義務を果たしていないと指摘される可能性があります。
退去が決まっているなら、立会いまでにフィルターだけでも清掃しておくとよいでしょう。
ただし、内部を無理に分解して洗おうとするのは逆効果です。
破損させれば、その分は明確に入居者負担になります。

Q4. 入居した時点でエアコンが臭かった場合はどうすればよいですか?

入居後できるだけ早く、管理会社へ連絡してください。
時間が経つほど、前の入居者に由来する汚れなのか、自分の使用によるものなのかの区別がつかなくなります。
連絡の際は、いつからどのようなニオイがするかを具体的に伝え、フィルターや吹き出し口の写真を添えると話が進みやすくなります。
入居直後の申告であれば、貸主側の負担で洗浄が行われるケースが一般的です。
やり取りはメールなど記録が残る形で行っておくと安心です。

Q5. 自分で持ち込んだエアコンの場合、掃除や処分は誰の負担ですか?

入居者が自分で購入・設置したエアコンは入居者の所有物なので、清掃・修理・処分はすべて入居者の負担になります。
退去時には、原則として取り外して撤去し、原状に戻す必要があります。
残置する場合は、貸主の承諾が必要です。
承諾を得ずに置いていくと、撤去費用を請求されることがあります。
設置時に壁へ穴を開けている場合の扱いも、取り付け前に確認しておいてください。

まとめ

賃貸のエアコン掃除は、日常のフィルター清掃が入居者、分解を伴う内部洗浄が貸主、という原則を押さえておけば大きく迷うことはありません。
その根拠は、通常損耗と経年変化を入居者の原状回復義務から除いた民法621条と、エアコンの内部洗浄を貸主負担と整理した国土交通省のガイドラインにあります。

一方で、喫煙による汚れや、長期間の手入れ不足で悪化させた汚れは例外です。
また、契約書の特約によって扱いが変わる場合もあるため、入居前に条項を確認しておくことが実質的な自衛になります。

今日からできることは3つです。
シーズン中は2週間に一度フィルターを掃除すること、冷房後に内部乾燥機能を使うこと、そして不具合に気づいたら自分で手を加える前に管理会社へ連絡することです。
この3つを続けておけば、退去時の精算で不利になる場面はほとんどなくなります。

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この記事を書いた人

「暮らしの設備ガイド」は、給湯器・ストーブ・換気設備など、
家庭の安心と快適を支える“住まいの設備”に関する専門メディアです。

現在もガス業界で設備施工・保守に携わるYuta(ガス関連資格保有者)が監修し、一般家庭向けのガス機器・暖房設備・給湯器交換の実務経験をもとに、現場の知識に基づいた、正確で実用的な情報を発信しています。

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