冬になると必ず話題になるのが、石油ファンヒーターとエアコンのどちらが安く済むのかという疑問です。
灯油を買いに行く手間を考えるとエアコンが楽だけれど、電気代の請求を見ると不安になる。
逆に灯油価格が上がると、今度はエアコンのほうがよいのではと感じる。
この比較が難しいのは、片方がリットル単位、もう片方がキロワットアワー単位で、そのままでは単位がそろっていないからです。
この記事では、同じ熱量を出すのにいくらかかるかという基準に置き換えて、条件ごとの有利不利を整理します。
比較の物差しは「熱1kWhあたりいくらか」
暖房費を比べるときは、燃料の値段ではなく、部屋を暖める熱をどれだけ安く作れるかで考えます。
どちらの機器も、最終的に生み出しているのは熱です。
そこで、熱1kWhあたりの単価をそろえて比べます。
| 機器 | 熱1kWhあたりの単価の考え方 |
|---|---|
| 石油ファンヒーター | 灯油の単価(円/L)÷ 灯油1Lから得られる熱量(kWh) |
| エアコン | 電気の単価(円/kWh)÷ 暖房時のCOP |
エアコンで割り算が入るのは、エアコンが熱を作るのではなく、外の空気から熱を運んでくる機器だからです。
電気1kWhで3kWh分や4kWh分の熱を室内に移せるため、そのぶん単価が下がります。
この倍率がCOPで、暖房能力(kW)を消費電力(kW)で割れば求められます。
灯油1Lからどれくらいの熱が出るか
石油ファンヒーターの仕様表には、暖房出力(kW)と燃料消費量(L/h)が並記されています。
この2つを割り算すれば、灯油1Lあたりの熱量が計算できます。
たとえば暖房出力5.65kWのときの燃料消費量が0.549L/hと記載されていれば、5.65÷0.549で約10.3kWhとなります。
機種による差はありますが、灯油1Lでおおよそ10kWh前後の熱が得られると考えておくと計算しやすくなります。
これをもとに、灯油の単価別に熱1kWhあたりの金額を出すと次のようになります。
| 灯油の単価 | 熱1kWhあたり |
|---|---|
| 100円/L | 約10.0円 |
| 120円/L | 約12.0円 |
| 140円/L | 約14.0円 |
| 160円/L | 約16.0円 |
なお、石油ファンヒーターは電気も使いますが、燃焼中の消費電力は機種により4W〜60W程度です。
熱1kWhあたりに換算すると0.1円前後で、比較のうえでは誤差の範囲に収まります。
灯油の全国平均価格は資源エネルギー庁の石油製品価格調査で毎週公表されています。
エアコン側はCOPで大きく変わる
エアコンの熱1kWhあたりの単価は、電気料金をCOPで割って求めます。
電力料金目安単価を31円/kWhとした場合、次のようになります。
| 暖房時のCOP | 熱1kWhあたり |
|---|---|
| 2.0 | 約15.5円 |
| 3.0 | 約10.3円 |
| 4.0 | 約7.8円 |
| 5.0 | 約6.2円 |
この31円/kWhという単価は、メーカーが試算に用いている目安単価です。
コロナは自社の試算条件として、灯油価格121円/L(2026年1月5日の全国平均店頭価格・資源エネルギー庁発表)と電力料金目安単価31円/kWh(2026年5月改定)を示しています。
問題は、COPがカタログ値のまま保たれるわけではないという点です。
カタログのCOPは決められた条件での数値で、実際には外気温が下がるほど効率が落ちます。
さらに、霜取り運転の最中は暖房が止まるため、その時間も含めればシーズン全体の効率はカタログ値より低くなります。
条件によって結論が入れ替わる
ここまでの数字を並べると、両者はかなり近い位置にあることが分かります。
| 条件 | 傾向 |
|---|---|
| 温暖地・外気温が高め・新しめのエアコン | エアコンが有利になりやすい |
| 灯油価格が安い時期 | 石油ファンヒーターが有利になりやすい |
| 外気温が氷点下近くまで下がる | エアコンの効率が落ち、差が縮まる |
| 短時間だけ一気に暖めたい | 立ち上がりの速い石油ファンヒーターが有利 |
| 一日中つけっぱなしにする | エアコンが有利になりやすい |
| エアコンが古く、能力が落ちている | 石油ファンヒーターが有利になりやすい |
「どちらが安いか」に唯一の答えがないのは、これらの条件が家庭ごとに違うためです。
灯油価格は年によって、また地域によっても差があります。
電気の単価も契約プランによって変わり、時間帯別プランであれば使う時間帯でも結果が動きます。
寒冷地での使い方については、機種の選び方を含めて寒冷地エアコンの電気代は高い?節約方法と賢い選び方を徹底解説で詳しく整理しています。
費用以外で判断が分かれる点
金額が近い以上、実際の選択では使い勝手や条件も判断材料になります。
- 立ち上がりの速さは石油ファンヒーターが優位(エアコンは暖まるまで時間がかかる)
- 給油の手間と灯油の保管場所が必要かどうか
- 換気が必須かどうか(石油ファンヒーターは室内の空気で燃焼するため換気が欠かせない)
- 賃貸住宅で使用が制限されていないか
- 空気の乾燥の感じ方(エアコンは湿度が下がりやすい)
- 停電時に使えるかどうか
とくに換気は、費用と切り離して考えるべき項目です。
石油ファンヒーターを締め切った部屋で使い続けると、不完全燃焼による一酸化炭素中毒のおそれがあります。
使用中は定期的な換気が必要で、その分の熱の損失も現実には発生します。
自宅の条件で計算する手順
自分の家でどちらが安いかを知りたい場合は、次の順で確認します。
- 石油ファンヒーターの仕様表から暖房出力(kW)と燃料消費量(L/h)を調べる
- 暖房出力 ÷ 燃料消費量 で、灯油1Lあたりの熱量を出す
- 直近で買った灯油の単価を、その熱量で割る
- エアコンの仕様表から暖房能力(kW)と消費電力(kW)を調べ、割ってCOPを出す
- 電気の単価(検針票の金額 ÷ 使用量でも概算できる)をCOPで割る
- 3と5の金額を比べる
エアコンについては、カタログのCOPをそのまま使うと実際より良い結果が出ます。
寒い日の実態に近づけたい場合は、算出したCOPを2割ほど割り引いて考えると現実的な比較になります。
暖房費全体を下げる方法についてはストーブの灯油代が高い?燃費を良くするために知っておきたい基本と実践ポイントも参考になります。
機器そのものの買い替え時期を検討している場合は、石油ファンヒーターの寿命は何年?正しい買い替えタイミングはいつ?をご覧ください。
よくある質問
Q1. 結局どちらが安いのですか
条件によって入れ替わるため、どちらが常に安いとは言えません。
灯油が安い時期や外気温が低い地域では石油ファンヒーターが、温暖な地域で効率の高いエアコンを使う場合はエアコンが有利になりやすい傾向があります。
熱1kWhあたりで比べると、灯油120円/Lで約12円、COP4のエアコンで約7.8円という計算になりますが、実際の効率はカタログ値より下がります。
自宅の灯油単価と電気単価で計算してみるのが確実です。
Q2. 併用するとかえって高くつきませんか
使い方によります。
立ち上がりに石油ファンヒーターを使い、部屋が暖まってからエアコンに切り替える方法は、それぞれの得意な場面を使う形になります。
一方で、同じ部屋で両方を同時に強運転し続ければ、当然その分だけ費用はかさみます。
なお、エアコンの温風が石油ファンヒーターに直接当たる配置は避けてください。
Q3. エアコンのCOPはどこを見れば分かりますか
カタログや仕様表の暖房能力(kW)と消費電力(kW)を割り算すると求められます。
たとえば暖房能力2.2kW、消費電力0.44kWであればCOPは5.0です。
ただしこれは定められた条件での数値のため、外気温が低い日には下がります。
通年の効率を表すAPFという指標が記載されている場合は、そちらも参考になります。
Q4. 灯油価格はどこで確認できますか
資源エネルギー庁の石油製品価格調査で、全国平均と都道府県別の価格が毎週公表されています。
店頭価格と配達価格では差があり、購入する量によっても単価が変わります。
比較の計算に使うときは、平均値ではなく実際に自分が支払っている単価を使うほうが正確です。
価格は時期によって大きく動くため、シーズンごとに見直す価値があります。
Q5. 部屋の広さによって有利不利は変わりますか
変わります。
広い部屋を短時間で暖める場面では、出力の大きい石油ファンヒーターが力を発揮しやすくなります。
一方、断熱性の高い住宅で室温を一定に保つような使い方では、エアコンの効率のよさが生きます。
部屋の広さだけでなく、断熱性能と使い方の組み合わせで考えてください。
まとめ
石油ファンヒーターとエアコンの暖房費は、熱1kWhあたりの単価にそろえると比べられます。
灯油は1Lでおよそ10kWhの熱が得られるため、単価を10で割った金額が目安です。
エアコンは電気の単価をCOPで割った金額になります。
この計算で並べると、両者はかなり近い位置にあります。
灯油価格、電気の契約単価、外気温、機器の年数という4つの条件で、結論はしばしば入れ替わります。
だからこそ、平均的な数字で判断するより、自宅の仕様表と直近の単価で一度計算してみるほうが確実です。
そのうえで、立ち上がりの速さ、給油の手間、換気の必要性といった費用以外の条件を重ねれば、自分の暮らしに合う選択が見えてきます。

