ダイニチ製石油ファンヒーターを使用していて、これまで問題なく使えていたにもかかわらず、ある日突然リモコンや本体に「HHH」と表示され、電源がまったく入らなくなった――
そんな状況に戸惑った経験はありませんか。
スイッチを入れても反応せず、リセットを試しても改善しないため、「完全に壊れたのではないか」「もう買い替えしかないのか」と不安になる方も少なくありません。
この「HHH」という表示は、単なるエラーコードや一時的な不具合を示すものではありません。
ダイニチの石油ファンヒーターにおいてHHHは、燃焼状態や安全性に関わる異常が繰り返し検知された結果、安全装置が段階的に作動し、最終的に運転を完全に停止させた状態を示す、いわば“最終警告”にあたる表示です。
インターネットで調べると、「HHHの解除方法」「リセット手順」といった情報だけが強調されて紹介されていることも多く、つい「とりあえず解除すれば使えるのでは」と考えてしまいがちです。
しかし、原因を理解しないまま解除だけを行うことは、不完全燃焼や安全装置の誤作動を無視して使用を続けることにつながり、非常に危険です。
なぜHHHが表示されるのか、どのような経緯で電源が入らなくなるのかを知らずに対処すると、同じ症状を何度も繰り返したり、最悪の場合は修理では済まない状態に発展することもあります。
そのため、まず重要なのは「解除方法」を探すことではなく、HHHが表示されるまでに何が起きているのか、その仕組みを正しく理解することです。
ここからは、ダイニチ製石油ファンヒーターでHHHが表示される仕組みと、E13との関係、そして安易に解除すべきではない理由を順を追って整理していきます。
→ダイニチ工業株式会社:メーカー公式 修理のご依頼ページはこちら
エラー「HHH」は突然出るわけではない

メーカー公式説明によると、HHHは次の状態を示しています。
着火しない、または自動消火(E13・換気サイン点滅での消火)を繰り返した結果、
不完全燃焼防止装置または再点火防止機能が作動した状態
つまり HHHは単独で発生するエラーではありません。
多くの場合、次の流れをたどります。
- 燃焼状態を正常に検知できない
- E13(換気サイン点滅)で自動消火
- 換気しても改善せず再発
- これを 3回程度繰り返す
- 安全装置がロック → HHHが高速点滅
- 電源が入らなくなる
この段階で、機器側は
「これ以上の運転は危険」
と判断しています。
先に理解すべき「E13」との関係

HHHの前段階としてほぼ必ず関係するのが エラーE13 です。
エラーE13の意味
- 換気サインが点滅
- 不完全燃焼防止装置が作動
- 空気不足・燃焼異常を検知して自動消火
密閉空間での使用、換気不足が原因とされていますが、
実際には「換気しても直らないE13」 が多く存在します。
この場合、単なる換気不足ではありません。
HHHが出る本当の原因|実は「シリコン付着」

HHHに発展するケースで非常に多い原因が、燃焼部センサー(フレームロッド)へのシリコン付着です。
なぜシリコンが問題になるのか
- フレームロッドは炎の状態を電気的に検知する部品
- 表面にシリコン被膜が付くと、炎を正しく感知できない
- 結果として「燃焼異常」と誤判定
- → E13 → 繰り返し → HHH
シリコンの主な発生源
- 室内用スプレー(防水・防汚・潤滑)
- ヘアスプレー
- 消臭・芳香スプレー
使用中・使用直後の室内スプレーが最大の原因です。
ダイニチ ファンヒーター HHHの解除方法について
一部の機種では、次の手順でロック解除操作が可能とされています。
一般的に知られている解除操作

- 前面パネルを開ける
- メイン基板にある 白いスイッチ
- 温度調節の 「-(マイナス)」ボタン
- 上記2つを同時に5秒間長押し
これにより、HHH表示が解除される場合があります。
ただし、極めて重要な注意点
- これは 故障修理ではありません
- 原因が残ったまま再使用すると再発します
- 状態次第では再びE13 → HHHに戻ります
- メーカーはこの操作を推奨していません
自分でやってはいけないケース
また次のような場合は、解除操作を試すべきではありません。
- E13が頻発していた
- 換気しても改善しなかった
- 使用年数が長い
- 異臭・異音がある
- 燃焼状態が明らかに不安定
ネットやYouTubeでは「紙やすりでフレームロッドを磨く」といった情報も見かけますが、
- 分解範囲を誤る
- 部品を破損する
- 再組立ミスで重大事故につながる
といったリスクがあります。
完全に自己責任であり、推奨できる行為ではありません。
メーカーが「修理が必要」と明言している理由

メーカー公式では、HHHについて次のように案内されています。
- 不完全燃焼防止装置が作動
- 再点火防止機能が作動
- 修理が必要
これは、安全装置が正常に働いた結果として停止しているという判断だからです。
解除だけして使い続けることは、安全装置を無視して使うのと同義になります。
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HHHを防ぐためにできる予防策
今後同じエラーを起こさないために、次の点は必ず意識してください。
- ファンヒーター使用中・直後はスプレー類を使わない
- 換気は「サインが出てから」ではなく定期的に行う
- 繰り返しE13が出る時点で使用を中止する
- 無理なリセット運転をしない
FAQ(よくある質問)
Q1. ダイニチのファンヒーターで表示される「HHH」は故障ですか?
必ずしも「完全に壊れた」ことを示す表示ではありませんが、正常な使用状態ではありません。
HHHは、E13(換気サイン点滅)などの燃焼異常や自動消火を繰り返した結果、安全装置が最終的に作動して運転をロックした状態を示します。原因が解消されていない場合は修理や点検が必要です。
Q2. HHHは換気をすれば直りますか?
直りません。換気不足が原因の場合、段階としてはE13の時点で改善するケースがほとんどです。
HHHが表示されている場合は、すでに換気だけでは解決しない段階に入っている可能性が高いと考えられます。
Q3. ネットにある解除方法を試しても大丈夫ですか?
解除操作自体が可能な機種はありますが、メーカーが推奨している対処ではありません。
原因(フレームロッドの汚れや燃焼検知異常など)が残ったまま解除して使用すると、再発や安全上のリスクがあります。実施する場合は完全に自己責任となります。
Q4. HHHの原因として多いのは何ですか?
非常に多いのが、燃焼部のフレームロッドへのシリコン付着です。
室内で使用したスプレー類(防水・消臭・ヘアスプレーなど)が原因となり、燃焼状態を正しく検知できなくなることでE13→HHHへ進行するケースが多く見られます。
Q5. HHHが出たら買い替えしかありませんか?
必ずしも買い替えとは限りません。
使用年数や症状によっては、部品清掃や交換で修理対応できる場合もあります。ただし、年数が経過している機種や再発を繰り返している場合は、修理と買い替えを比較して判断するのが現実的です。
まとめ:HHHは「解除して使い続けるためのエラー」ではない

ダイニチの石油ファンヒーターに表示されるHHHは、突然発生する単独のエラーではありません。
多くの場合、
- 燃焼状態を正常に検知できない異常が起き
- E13(換気サイン点滅)による自動消火を繰り返し
- それでも改善しなかった結果として
- 安全装置が最終的に作動し、運転を完全にロックした状態
を示しています。
つまりHHHは、「今この瞬間に何かが少しおかしい」という軽い警告ではなく、これ以上の運転は危険であると本体が判断した結果として出る停止表示です。
確かに、機種によっては一時的にロックを解除する操作が存在します。
しかしそれは、故障や異常の原因が取り除かれたことを意味するものではありません。
解除操作ができることと、解除して再び使ってよいかどうかは、まったく別の問題です。
燃焼部のフレームロッドへのシリコン付着や、点火・燃焼検知系の不具合が残ったまま使用を再開すれば、再びE13が発生し、最終的には同じようにHHHで停止する可能性が高くなります。
それだけでなく、不完全燃焼を見逃した状態で使い続けることになり、危険性はむしろ高まります。
もしHHHが表示された場合は、
- 換気だけで改善する段階をすでに過ぎている可能性が高いこと
- 本体が安全装置によって使用を制限している状態であること
- 無理に使い続けるより、点検や修理を前提に判断すべき状況であること
この3点を冷静に受け止めることが重要です。
安全装置が作動したという事実そのものが、最も重いメッセージです。
「どうやって消すか」ではなく、「なぜここまで止められたのか」という視点で判断することが、結果的に機器を安全に使い続けるための近道となるのではないでしょうか。

