電気代のことを考えると、夏のあいだずっとエアコンを回し続けるのはためらわれるものです。
「扇風機だけで乗り切れるなら、そのほうが安いのでは」「エアコンを使うにしても、扇風機と併用すれば節約になるのでは」と考えたことのある方は多いのではないでしょうか。
結論から言うと、扇風機はエアコンの完全な代わりにはなりませんが、条件を絞れば置き換えられる場面もあり、併用すれば冷房の効率を上げる働きもします。
この記事では、扇風機で足りる室温・湿度の目安、置き換えが危険になる条件、そして併用したときの具体的な効果と置き方までを、公的機関の資料をもとに整理します。
読み終えるころには、ご自宅の状況で扇風機を「主役」にしてよいのか「補助」にとどめるべきかを、自分で判断できるようになるはずです。
扇風機で足りるのは室温28℃・湿度70%未満まで、それを超えたらエアコンが必要
はじめに結論をまとめます。
扇風機だけで過ごしてよいのは、室温がおおむね28℃以下・湿度70%未満に収まっていて、在室者が健康な成人だけの場合に限られます。
この条件から外れた瞬間に、扇風機は「涼しくする道具」から「気休めの道具」に変わります。
なぜ28℃と70%が線引きになるのかというと、環境省が熱中症予防の目安としてこの水準を示しているためです。
扇風機は室温そのものを下げる機能を持たないため、室温が28℃を超えた部屋でいくら風を当てても、28℃の空気が動いているだけの状態になります。
| 室温・湿度の状況 | 扇風機だけで足りるか | 推奨される対応 |
|---|---|---|
| 室温28℃未満・湿度60%前後 | 足りることが多い | 扇風機+窓開けで対応可 |
| 室温28〜30℃・湿度70%前後 | 条件付きで可 | 短時間なら可。長時間・就寝時はエアコン |
| 室温30℃以上 | 足りない | エアコンの冷房を使用する |
| 室温は28℃前後でも湿度80%超 | 足りない | エアコンの除湿または冷房を使用する |
| 気温36℃超(外気・室内とも) | 逆効果になりうる | 扇風機を人に当てず、冷房を優先する |
表のとおり、判断の軸は「気温」だけではありません。
湿度が高いと汗が蒸発しなくなり、扇風機の風が体を冷やす仕組みそのものが働かなくなります。
梅雨明け直後や雨上がりの蒸し暑い日に、風を当てているのに一向に涼しくならないと感じるのは、この現象が起きているためです。
なお、ここで言う28℃は「エアコンの設定温度」ではなく「室温」です。
設定温度を28℃にしても、日射の入る部屋や最上階では室温が30℃を超えることがあります。
温湿度計を1台置いて、体感ではなく数値で判断するのが確実です。
扇風機は室温を下げず「体感温度」を2〜3℃分だけ下げる仕組みの機器
置き換えの可否を考えるうえで、そもそも両者が別の仕事をしている機器だという点を押さえておく必要があります。
エアコンは、室内の熱を屋外へ汲み出す機器です。
ヒートポンプという仕組みで、室内機が吸い込んだ空気から熱を奪い、その熱を室外機から外へ捨てています。
だから室温そのものが下がりますし、同時に空気中の水分も結露させて排出するため、湿度も下がります。
一方の扇風機は、室内の空気をかき回しているだけの機器です。
熱をどこにも捨てていないため、室温は下がりません。
むしろモーターが発熱する分、締め切った部屋では長時間運転でわずかに室温が上がります。
それでも涼しく感じるのは、風が皮膚のまわりにたまった熱と湿気を吹き飛ばし、汗の蒸発を促すからです。
この効果は一般に体感温度で2〜3℃分と言われますが、あくまで「汗をかいていて、その汗が蒸発できる環境にある」ことが前提になります。
| 比較項目 | エアコン(冷房) | 扇風機 |
|---|---|---|
| 室温を下げる | 下げる | 下げない |
| 湿度を下げる | 下げる | 下げない |
| 効果の及ぶ範囲 | 部屋全体 | 風の当たる人の周囲だけ |
| 涼しさの仕組み | 空気そのものを冷やす | 汗の蒸発を促して体感を下げる |
| 汗をかいていないとき | 効果あり | 効果が大きく落ちる |
| 消費電力の規模 | おおむね数百W | おおむね20〜50W |
この表で最も重要なのは「湿度を下げる」の行です。
日本の夏の不快さは気温よりも湿度に起因する部分が大きく、除湿できるかどうかが両者の決定的な差になります。
扇風機をいくら強くしても部屋の湿度は1%も下がりません。
気温36℃を超えると扇風機は熱風を送り、かえって体を温めてしまう
扇風機には、涼しくなるどころか逆効果になる領域があります。
環境省の「熱中症環境保健マニュアル」は、空調設備の使い方を説明するなかで、気温が36℃より高い場合には扇風機が熱風を送ってしまい逆効果になることがあると明記しています。
体温はおよそ36〜37℃です。
周囲の空気がそれより高温になると、風を当てることは体温より熱い空気を体に吹き付ける行為になり、皮膚から熱を奪うどころか熱を運び込む側に回ります。
ドライヤーの温風を体に当てているのと、方向としては同じことが起きます。
加えて、高温下で強い風を長時間当て続けると、汗が過剰に蒸発して脱水が進みやすくなります。
「風が当たっているから大丈夫」という感覚が、脱水のサインを見えにくくしてしまう点も見落とされがちです。
同じマニュアルでは、エアコンを使う際の気流の工夫として、冷気が部屋の下層にたまらないように扇風機を組み合わせて対流させることが推奨されています。
つまり公的な位置づけとしても、扇風機はエアコンの代替ではなく、気流をつくる補助装置として扱われています。
熱中症の救急搬送は「住居」が最も多く約4割を占める
扇風機だけで乗り切ろうとする判断が、実際にどれくらいのリスクにつながるのか。
総務省消防庁が公表している熱中症の救急搬送データを見ると、発生場所別の内訳で住居が最も多くなっています。
令和5年(5月〜9月)の集計では、搬送人員91,467人のうち住居が36,541人で39.9%を占め、次いで道路が16.6%、屋外の公衆の場所が12.8%と続きました。
この「住居が最多で約4割」という傾向は特定の年に限った話ではなく、近年一貫して続いています。
また年齢区分別では高齢者が54.9%と過半数を占めました。
熱中症は炎天下の屋外で起きるものというイメージがありますが、実際には自宅の室内で最も多く発生しています。
その多くは、エアコンがあるのに使っていない、あるいは扇風機だけで過ごしていた状況で起きているとみられます。
| 特に危険度が上がる条件 | 理由 | 取るべき対応 |
|---|---|---|
| 65歳以上の在室者がいる | 暑さと喉の渇きを感じにくくなる | 本人の申告ではなく温湿度計で判断する |
| 未就学児がいる | 床に近く体温調節機能が未熟 | 床付近の温度を測って冷房を使う |
| 就寝中 | 異常に気づけず、発見が遅れる | 冷房を弱めに入れたまま就寝する |
| 最上階・西向きの部屋 | 天井や壁からの輻射熱で室温が下がりにくい | 日没後も室温が下がらない前提で冷房を使う |
| 熱帯夜の翌日 | 体に熱がたまったまま朝を迎える | 朝から冷房を使い、無理をしない |
高齢のご家族が「暑くない」と言っていても、それは体感の申告であって室温の測定値ではありません。
室温が30℃を超えているなら、本人の感覚にかかわらず冷房を入れる判断が必要です。
置き換えてよいかどうかは住宅・在室者・時間帯の5点で判断する
ここまでを踏まえて、ご自宅で扇風機を主役にしてよいかを具体的にチェックします。
次の5項目のうち、1つでも右側に該当するなら置き換えは見送るのが安全です。
| チェック項目 | 扇風機でも可(左) | エアコンが必要(右) |
|---|---|---|
| 室温 | 28℃以下を維持できる | 28℃を超える時間帯がある |
| 湿度 | 70%未満 | 70%以上、または洗濯物の室内干しが多い |
| 在室者 | 健康な成人のみ | 高齢者・乳幼児・持病のある方がいる |
| 時間帯 | 日中の在宅時のみ | 就寝時も含む |
| 住宅条件 | 風の通る間取り・中間階 | 最上階・西日が強い・窓が一方向のみ |
特に見落とされやすいのが「窓が一方向のみ」の条件です。
扇風機は空気を動かす機器であって、外の涼しい空気を室内に取り込む機器ではありません。
入口となる窓と出口となる窓の両方がなければ、同じ熱い空気を循環させ続けることになります。
ワンルームや、廊下側に窓のない部屋がこれに当たります。
逆に、置き換えが成立しやすいのは次のようなケースです。
夜間に外気温が25℃前後まで下がる地域で、対角線上に窓があり、日中は不在で夕方以降だけ在宅する、といった条件が重なる場合です。
こうした条件下では、窓を開けて扇風機で風の通り道をつくるだけで十分に快適に過ごせることがあります。
なお、エアコンをつけたくない理由が電気代ではなく「においが気になるから」という場合は、置き換えではなく清掃で解決できる可能性があります。
その点はエアコンのつけ始めが毎日臭いのはなぜ?原因と今すぐできる対処・防ぐ方法とはで詳しく解説しています。
併用して設定温度を1℃上げると、6畳用エアコンで年間約940円の節約
扇風機の本当の使いどころは、エアコンの置き換えではなく併用です。
資源エネルギー庁の省エネポータルサイトによれば、外気温31℃のときに2.2kW(主に6畳用)のエアコンの冷房設定温度を27℃から1℃上げた場合、1日9時間の使用で年間30.24kWhの省エネとなり、約940円の節約になると試算されています。
扇風機の役割は、この設定温度を1℃上げても不快にならない状態をつくることにあります。
体感温度を2〜3℃下げる効果があるので、設定温度を1℃上げた分は十分に打ち消せる計算になります。
扇風機自体の消費電力は数十Wにとどまるため、差し引きでは節約側に働きます。
ただし試算はあくまで一定条件下の目安であり、住宅の断熱性能・外気温・機種・使用時間によって結果は変わります。
設定温度の変更は体調を最優先に、無理のない範囲で行ってください。
冷房時は扇風機を上向きにして、エアコンの対角線上に置く
冷たい空気は下にたまります。
そのため冷房時は、扇風機を天井方向に向けて床付近の冷気を持ち上げ、部屋全体をかき混ぜる置き方が基本になります。
置き場所はエアコンの真下ではなく、部屋の対角にあたる位置です。
- 扇風機は部屋の隅、エアコンから最も遠い位置に置く
- 羽根を斜め上(天井方向)に向ける
- 首振りはオンにして、風を一点に集中させない
- 風量は弱〜中で足りることが多い(強にすると音だけが増える)
なお、エアコン側の風量は自動運転のままにしておくほうが効率的です。
自動運転が強風のままで戻らない場合の考え方はエアコン自動運転がずっと強風…電気代は上がる?原因・故障の見分け方・正しい対処まで徹底解説で整理しています。
就寝時は直風を避け、首振り+弱風+タイマーの3点セットにする
就寝中に扇風機の風を直接体に当て続けると、体温が下がりすぎて起床時のだるさや腹痛につながることがあります。
壁や天井に風を当てて空気を回す「間接的な当て方」に切り替えるだけで、この不調はかなり防げます。
- 風を体に直接当てず、壁や天井に反射させる
- 首振りを必ずオンにする
- 風量は「弱」または「静音」を選ぶ
- 冷房は消さず、設定温度を1〜2℃上げて朝まで運転する
就寝時にエアコンを消して扇風機だけにする使い方は避けてください。
夜間も室温が下がらない熱帯夜では、就寝中に熱中症が進行しても本人が気づけません。
扇風機とサーキュレーターは、当てる相手が人か空気かで使い分ける
併用を考えるとき、扇風機とサーキュレーターのどちらを買うべきか迷う方は多いはずです。
違いは風の質にあります。
| 扇風機 | サーキュレーター | |
|---|---|---|
| 風の性質 | 広くやわらかい風 | 直線的で遠くまで届く風 |
| 主な用途 | 人に当てて涼む | 空気を循環させる |
| 首振り範囲 | 左右中心 | 上下左右に対応する機種が多い |
| エアコン併用の相性 | 良い | 非常に良い |
| 単独使用での涼しさ | 得やすい | 得にくい(風が硬い) |
エアコンとの併用で室内の温度ムラを解消したいならサーキュレーター、風に当たって涼みたい時間が長いなら扇風機が向きます。
両方の用途を1台でまかないたい場合は、上下の角度調整ができる扇風機を選ぶと使い回しが利きます。
扇風機の電気代は1時間あたり約0.5円だが、その差額は置き換えの根拠にならない
電気代の差を確認しておきます。
パナソニックの解説によれば、扇風機の1時間あたりの電気代はおよそ0.5円程度とされています。
1kWhあたり31円という目安単価で計算した場合、消費電力別の電気代はおおむね次のようになります。
実際の単価は契約プランや燃料費調整額によって変わるため、あくまで概算です。
| 機器・条件 | 消費電力の目安 | 1時間 | 1日8時間 | 1か月(30日) |
|---|---|---|---|---|
| 扇風機(DCモーター・弱) | 約15W | 約0.5円 | 約3.7円 | 約112円 |
| 扇風機(ACモーター・強) | 約50W | 約1.6円 | 約12.4円 | 約372円 |
| サーキュレーター | 約20〜30W | 約0.6〜0.9円 | 約5〜7円 | 約150〜220円 |
| エアコン冷房(6畳用・運転中) | 数百W規模 | 十数円前後 | 百数十円前後 | 数千円規模 |
たしかに1か月では数千円の差になります。
しかしこの差額は、室温28℃以下という条件が満たされている場合にのみ意味を持つ数字です。
室温が32℃ある部屋で扇風機だけを回しても、涼しくならないまま電気代がかかるだけで、支出の意味がありません。
節約を目的にするなら、置き換えではなく併用のほうが確実に効きます。
エアコンを止めて我慢する方向ではなく、エアコンの効きを良くして設定温度を上げる方向のほうが、快適さと電気代の両方で有利になります。
10年以上使っている扇風機は買い替え時期、異音・異臭があれば即使用中止
扇風機を長く使い続けることには、電気代とは別のリスクがあります。
NITE(製品評価技術基盤機構)は、扇風機の事故として経年劣化による火災事例を繰り返し公表しています。
公表されている事例では、約47年間使用された扇風機でモーターの内部配線の絶縁性能が低下してショートし、周辺の樹脂部品に着火したケースや、約25年の長期使用でモーターの回転軸が固着し、過大な負荷で巻線が異常発熱して出火したケースが報告されています。
後者では、首を振らないことを使用者が認識していながら使い続けていた点も指摘されています。
次のような症状が出ている扇風機は、ただちに運転を止めて電源プラグを抜いてください。
分解修理は行わず、買い替えを検討するのが安全です。
- 焦げくさいにおい、または樹脂が溶けるようなにおいがする
- モーター部分が異常に熱い
- スイッチを入れても羽根が回らない、手で回すと回り出す
- 首振りをオンにしても首が振らない
- 運転中に「ブーン」以外の異音(キーキー、カタカタ)が出る
- 電源コードやプラグが熱い、変色している
スイッチが入ったまま羽根が止まっている状態は、特に危険です。
モーターに電流が流れ続けているのに回転していないため、巻線に熱がこもり続けます。
「動かないから壊れた」と思ってそのまま放置した結果、通電状態が続いて出火に至った事例もあります。
扇風機の設計上の寿命は明確に定められているわけではありませんが、内部のコンデンサーやモーターの絶縁材は年数とともに確実に劣化します。
購入から10年を超えたものは、不具合が出ていなくても買い替えを検討する時期と考えて差し支えありません。
エアコンのない部屋では、扇風機は「排熱」と「遮熱」とセットで使う
エアコンが設置されていない部屋では、扇風機の使い方そのものを変える必要があります。
人に風を当てる使い方だけでは、室温が下がらないためです。
有効なのは、扇風機を窓の内側に置いて外向きに回し、室内の熱い空気を屋外へ押し出す使い方です。
対角にある窓やドアを開けて空気の入口をつくれば、部屋全体の空気が入れ替わります。
特に、日中にこもった熱が残る夕方から夜にかけて効果が出やすい方法です。
- 外気温が室温より低い時間帯(早朝・夜間)に限って行う
- 扇風機は窓の内側で外向きに設置し、排気側にする
- 対角の窓またはドアを開けて給気の経路をつくる
- 日中は遮光カーテンやすだれで日射そのものを室内に入れない
室温を上げないための遮熱と、たまった熱を出すための排熱。
この2つが揃ってはじめて、扇風機の風が意味を持ちます。
エアコンに頼らない対策の全体像はエアコンのない部屋を涼しくする方法13選|夏の暑さを大幅に軽減できる対策とは?でまとめています。
ただし、これらの工夫を尽くしても室温が30℃を下回らない部屋であれば、対策の限界と考えるべきです。
窓用エアコンや、工事の要らない冷房機器の導入を検討したほうが、健康面でも結果的な費用面でも合理的な場合があります。
暖房シーズンは扇風機を天井へ向けると、足元の寒さが軽くなる
併用の考え方は夏だけのものではありません。
暖房時こそ、扇風機やサーキュレーターの効果が体感に表れやすい季節です。
暖かい空気は軽いため天井付近にたまり、床付近には冷たい空気が残ります。
同じ部屋のなかで、頭は暑いのに足元は寒いという状態が生まれるのはこのためです。
暖房の設定温度を上げても足元が暖まらないのは、送り込んだ熱がそもそも下りてこないからです。
- 扇風機またはサーキュレーターを天井方向へ向ける
- 風量は弱で足りる(強くすると気流が体に当たって寒く感じる)
- エアコンの風向きは下向きに設定する
- 人に直接風が当たらない位置に置く
資源エネルギー庁の試算では、暖房設定温度を21℃から20℃に下げた場合、2.2kWのエアコンで年間約1,650円の節約になるとされています。
冷房時の約940円より効果が大きいため、通年で見れば暖房期のほうが併用の恩恵は大きいことになります。
なお、寒冷地では外気温が下がるほどエアコン暖房の効率が落ちるため、扇風機の併用だけでは補いきれない場合があります。
地域条件による違いは寒冷地エアコンの電気代は高い?節約方法と賢い選び方を徹底解説で解説しています。
風は出ているのに涼しくないときは、湿度・風向・当てる場所のどれかがずれている
扇風機を使っていて「風は出ているのに涼しくない」と感じる場面には、いくつか決まったパターンがあります。
故障ではないことがほとんどで、原因を切り分ければ改善できる場合があります。
| 症状 | 考えられる原因 | 確認・対処 |
|---|---|---|
| 風が生ぬるく感じる | 室温が体温に近づいている | 温度計で室温を確認。30℃超なら冷房に切り替える |
| 風は当たるが汗が引かない | 湿度が高く汗が蒸発できていない | 除湿運転を併用する。室内干しを一時中止する |
| 部屋の一部だけ暑い | 空気が循環せず熱がよどんでいる | 扇風機を壁や天井に向けて対流をつくる |
| 最初は涼しいがすぐ暑くなる | 同じ空気を回しているだけ | 対角の窓を開けて外気と入れ替える |
| 風量を上げても変わらない | 風が家具や壁で遮られている | 床から60〜80cm上げ、直線的な通り道を確保する |
| 首振りにすると効かない | 風の当たる時間が短すぎる | 在室者が1人なら固定+間接当てに切り替える |
このうち最も多いのが、上から2番目の湿度によるものです。
汗が蒸発して気化熱を奪う仕組みが働かないと、扇風機の涼しさはほぼ失われます。
雨の日や、浴室・キッチンから湿気が流れてくる部屋で「風が効かない」と感じるのはこのためです。
また、扇風機を床に直置きしているケースも見直したいポイントです。
床付近は家具に遮られやすく、せっかくの風が上半身まで届きません。
台に載せて高さを稼ぐか、リビング扇のように高さ調整のできる機種を選ぶだけで体感は変わります。
併用前提なら、選ぶべきは風量調整の細かいDCモーター機
扇風機を「エアコンの補助」として使うなら、選び方の基準も単独使用とは変わります。
強い風を出す能力よりも、弱い風を安定して長時間出せる能力のほうが重要になるためです。
| 選ぶポイント | 併用向きの仕様 | 理由 |
|---|---|---|
| モーター | DCモーター | 消費電力が小さく、風量段階が細かい |
| 風量段階 | 5段階以上 | 就寝時に使える微風が選べる |
| 上下角度 | 上向き90度前後まで可動 | 冷気を天井方向へ持ち上げられる |
| 運転音 | 静音モード搭載 | 就寝時も回し続けられる |
| タイマー | 切/入の両方 | 起床前に運転を再開できる |
| リモコン | あり | エアコンと合わせて操作しやすい |
特に効いてくるのが風量段階の細かさです。
ACモーターの3段階タイプは「弱」でも就寝時にはやや強く、消してしまう方が少なくありません。
DCモーターの機種は最小風量が明確に弱いため、一晩つけたままにしても体が冷えにくくなります。
価格帯としては、ACモーターの据置型が数千円台から、DCモーターの機種はおおむね1万円前後からが目安です(※販売時期・仕様により変動します)。
毎晩使う機器であることを考えると、静音性と微風のためにDCモーター機を選ぶ判断は合理的といえます。
よくある質問
Q1. 扇風機を回しっぱなしにしても電気代はほとんど変わりませんか?
消費電力15WのDCモーター扇風機を24時間つけっぱなしにした場合、1kWh31円の目安単価で計算すると1日あたり約11円、1か月で約335円程度になります。ACモーターの50Wクラスであれば1か月約1,100円前後です。エアコンと比べれば小さい金額ですが、無視できるほどゼロではありません。ただし電気代よりも重要なのは安全面で、長時間の連続運転はモーターへの負荷を高めます。特に古い機種で連続運転を続けるのは避け、外出時や不在時はこまめに切るようにしてください。
Q2. 冷房と扇風機を併用すると、かえって電気代が上がりませんか?
扇風機の消費電力は数十W程度で、エアコンの数百W規模と比べると1割にも満たない水準です。併用によって設定温度を1℃上げられれば、資源エネルギー庁の試算では6畳用エアコンで年間約940円の節約効果が見込まれます。扇風機の運転コストがこれを上回る可能性は低いため、通常は併用のほうが有利になります。ただし設定温度を上げずに扇風機を足すだけでは、単純に上乗せの電気代がかかるだけになるので、必ず設定温度の見直しとセットで行ってください。
Q3. 除湿(ドライ)と扇風機の組み合わせでも涼しくなりますか?
有効な組み合わせです。日本の夏の不快さは湿度に由来する部分が大きく、湿度が下がると同じ室温でも体感は明らかに軽くなります。除湿運転で湿度を下げたうえで扇風機の風を当てれば、汗が蒸発しやすくなり、冷房ほど室温を下げなくても快適に過ごせることがあります。ただし除湿方式には弱冷房除湿と再熱除湿があり、後者は消費電力が大きくなる傾向があります。ご使用の機種がどちらの方式かは取扱説明書で確認してください。
Q4. サーキュレーターがあれば扇風機は不要ですか?
用途が違うため、一概に代替できるとは言えません。サーキュレーターの風は直線的で圧が強く、部屋の空気を循環させる目的には適していますが、人に直接長時間当てると硬く感じられ、快適さでは扇風機に劣ります。エアコンとの併用で温度ムラをなくす目的ならサーキュレーターで十分です。一方、風に当たって涼む時間が長い方や、就寝時に使いたい方は扇風機のほうが向いています。1台で兼用したい場合は、上下の角度調整幅が大きい扇風機を選ぶのが現実的です。
Q5. 高齢の親が「扇風機で十分」と言って冷房を使いたがりません。どう伝えればよいですか?
加齢とともに暑さを感じる感覚は鈍くなるため、本人の体感は判断材料になりません。まず部屋に温湿度計を置き、数値を見える形にすることをおすすめします。そのうえで「室温が28℃を超えたら冷房を入れる」という具体的な基準を共有すると、我慢か否かという議論ではなく、数値に従う行動に置き換えられます。熱中症の救急搬送は住居での発生が最も多く、高齢者が半数以上を占めているという事実も、説得の材料になります。冷房の設定温度を高めにして扇風機を併用する形にすれば、冷えすぎへの抵抗感も和らげられます。
まとめ
扇風機はエアコンの代わりにはなりませんが、正しく組み合わせれば冷房費を抑える有力な道具になります。
最後に判断の要点を整理します。
- 扇風機で足りるのは、室温28℃以下・湿度70%未満・在室者が健康な成人のみという条件が揃った場合に限られる
- 扇風機は室温も湿度も下げず、体感温度を2〜3℃分下げているだけである
- 気温36℃を超える環境では、扇風機の風は熱風となって逆効果になりうる
- 熱中症の救急搬送は住居での発生が最も多く、就寝時の「扇風機だけ」は特に危険
- 併用して設定温度を1℃上げれば、6畳用エアコンで年間約940円の節約が見込める
- 10年以上使った扇風機、異音・異臭・首振り不良のある扇風機は使用を中止する
迷ったときは、電気代ではなく室温と湿度の数値で決めてください。
温湿度計を1台置くだけで、我慢すべきか冷房を入れるべきかの判断がはっきりします。
今年の夏を安全に、そしてできるだけ経済的に乗り切るための材料にしていただければ幸いです。

