ガス漏れ検知器とは、ガスが漏れている可能性のある箇所に検知部を近づけることで、目に見えない微量の可燃性ガスを捉えるための機器です。
においだけでは判断しにくい軽微な漏れや、屋外・機器内部など発見が遅れやすいポイントでも、数値や警報音の変化として反応するため、漏れの有無や場所を客観的に確認する手段として使われます。
家庭に設置されるガス警報器とは役割が明確に異なり、ガス漏れ検知器は部屋全体の安全監視を目的としたものではありません。
配管の接続部、継手、バルブ、ガス栓、給湯器やコンロの周辺など、「ここが怪しい」という箇所を一点ずつ確認し、漏れ箇所を特定するための機器です。
ガス会社による保安点検や、設備業者が行う施工後・修理後の確認作業では、従来から行われてきた石けん水による発泡確認とあわせて、こうしたポータブル型の可燃性ガス検知器が使用される場面が多くあります。
音やランプの反応を見ながらチェックすることで、石けん水では分かりにくい微量な漏れや、作業性の悪い箇所でも確認しやすくなるのが特徴です。
具体的にどのように使用するのか?
プロの現場でどんな機種を使用しているのか解説していきましょう。

ガス漏れ検知器は「当てて反応を見る」機器

ガス漏れ検知器の基本的な使い方はシンプルです。
- ガスが漏れていそうな箇所に検知部を近づける
- 漏れがあれば警報音やランプで反応する
- 音やランプの変化で、漏れの強さや位置を把握する
重要なのは、部屋の中を歩き回って反応を待つ機器ではないという点です。
あくまで「この継手は大丈夫か?」「このガス栓周りが怪しいのでは?」という仮説を持ったうえで確認する道具になります。
LPガス用・都市ガス用がある理由
ガス漏れ検知器には、LPガス用(プロパンガス) と 都市ガス用(メタン) があります。
これは、ガスの成分が異なるためです。
- 都市ガス:主成分はメタン
- LPガス:主成分はプロパン・ブタン
そのため、検知器側も「どのガスを検知対象にするか」が仕様で決まっています。
両方に対応できるタイプも存在する
近年は、
LPガス・都市ガスの両方を1台で切り替えて検知できるタイプもあります。
保安点検や設備工事の現場では、
- 現場ごとにガス種が異なる
- 機器を複数持ち歩きたくない
といった理由から、切替式の検知器が選ばれるケースも少なくありません。
参考機種:新コスモス電機 可燃性ガス探知器「XP-702 III」

ガス漏れ検知器の代表的な機種として、新コスモス電機の可燃性ガス探知器「XP-702III」シリーズがあります。
ガス保安の現場では定番ともいえるモデルです。
特長
- ごく微量のガス漏れを検知できるポータブル型
- ガス濃度の変化に応じて、警報音が
ゆっくり → 速く → 連続音 と変化 - 音の変化で漏れ箇所を特定しやすい
- 仕様により 1台で2種類のガス検知が可能
- レザーケース装着時は防爆構造
ガスが強く漏れている箇所ほど、警報音が速く・連続的になるため、
「どこが一番怪しいか」を感覚的に把握しやすい設計です。
用途|どんな場面で使われる?
XP-702 IIIシリーズは、以下のような用途で使われます。
- ガス配管・継手・コック周りの漏れ確認
- ガス機器(給湯器・コンロ・暖房機器)周辺の点検
- メタン・イソブタンなど可燃性ガスの漏洩検知
- 冷媒(代替フロン)漏れの確認(対応仕様の場合)
一般家庭向けというより、点検・施工・保安用途に特化した機器です。
XP-702 IIIシリーズの仕様概要
対象ガス(型式別)
- XP-702 IIIS-A:2種類の可燃性ガス切替式
- XP-702 IIIS-B:1種類の可燃性ガス
- XP-702 IIIS-F:代替フロン+可燃性ガス切替式
主な性能
- 検知原理:熱線型半導体式
- ガス採取方式:自動吸引式
- 検知可能濃度
- メタン・イソブタン等:10ppm
- フロンガス:30ppm
- 応答時間:5秒以内(フロン除く)
使いやすさ・耐環境性
- 質量:約190g(電池・ケース含む)
- 使用温度範囲:−20℃〜+50℃
- 電源:単3アルカリ乾電池2本
- 連続使用時間:約12時間
ガス警報器との違いは明確に理解しておく
混同されやすいですが、
ガス漏れ検知器と家庭用ガス警報器は別物です。
- ガス警報器:
→ 空間全体のガス濃度上昇を検知し、事故を防ぐ - ガス漏れ検知器:
→ 漏れている「場所」を特定するための道具
家庭に常設するものではなく、点検・確認のための専門機器という位置づけになります。
FAQ
Q1. ガス漏れ検知器は、ガス警報器の代わりになりますか?
いいえ、代わりにはなりません。ガス漏れ検知器は、配管や継手など特定の箇所に当てて漏れの有無を確認するための機器です。一方、ガス警報器は空間全体のガス濃度上昇を監視し、事故を防ぐための常設機器であり、役割が異なります。
Q2. ガス漏れ検知器は、どこに当てれば反応しますか?
配管の接続部、継手、バルブ、ガス栓、給湯器やガスコンロ周辺など、ガスが漏れやすい箇所に近づけて使用します。部屋全体に向けて使うものではなく、漏れが疑われるポイントを一点ずつ確認するのが基本です。
Q3. LPガス用と都市ガス用の検知器は何が違いますか?
検知対象となるガスの成分が異なります。都市ガスは主にメタン、LPガスはプロパンやブタンが対象です。対応していないガス種では正しく反応しないため、使用環境に合った検知器を選ぶ必要があります。
Q4. LPガスと都市ガスの両方に対応できる検知器はありますか?
あります。ガス種を切り替えて使用できるタイプの検知器もあり、現場ごとにガス種が異なる保安点検や設備工事では、1台で対応できる機種が選ばれることもあります。
Q5. 家庭でガス漏れが心配な場合、検知器を使えば安心ですか?
検知器は漏れ箇所を確認するための道具であり、家庭の安全を常時守るものではありません。ガスのにおいを感じた場合や不安がある場合は、換気を行い、ガス会社や専門業者に連絡することが重要です。
まとめ:ガス漏れ検知器は「判断材料を増やす道具」

ガス漏れ検知器は、
「これが反応したから絶対に漏れている」
「反応しないから完全に安全」
と断定するための機器ではありません。
- におい
- 石けん水
- 使用状況
- 経年劣化
- 周囲環境
こうした情報と組み合わせて、判断材料を増やすための道具です。
LPガス・都市ガスの違いを理解し、用途に合った検知器を使うことで、ガス設備の安全確認はより確実なものになります。
今回紹介したXP-703Ⅲシリーズはガス臭いと思われる場所にあてるだけで反応してくれる優れものです。
実際にガス臭が疑わしい時はガス会社へ連絡か、設備工事業者などに連絡して対応してもらうことをおすすめします。

