ガスストーブを使っていると、突然「E90」というエラーが表示されて運転が止まり、まったく動かなくなることがあります。
電源を入れた瞬間に出ることもあれば、点火途中、さらには暖房がしばらく続いたあとに出ることもあり、ユーザーからすると原因がつかみにくいエラーの一つです。
「排気が詰まっているのか」「外の風の影響なのか」「雪が入ったのか」といった不安を抱きやすい番号ですが、E90が意味している内容は非常に明確で、実はごく限られた原因でしか発生しません。
E90はガスストーブの主流メーカー、リンナイ、長府製作所(旧サンポット)共に“排気トップと本体の電気的な接続(導通)が成立していない”と判断されたときにだけ出るエラーです。
排気の流れや逆風、排気量の変化をチェックしているわけではなく、排気トップが物理的に外れていないか、本体と排気トップがリード線で“正しくつながっているか”を監視する安全回路の異常です。
つまり、燃焼の状態や外気の状況には関係ありません。
排気トップと本体の導通が少しでも途切れた瞬間にE90が表示され、ストーブは安全のために運転を止めます。
(参照:リンナイ公式HPより ガスFF暖房機|エラーコード90が表示)
(参照:長府製作所公式HPより サンポットブランド ガス暖房機 エラーコード)
そして実際に起きている原因は複雑ではなく、ほとんどが決まった4パターンに収まります。
この記事では、その4つの原因を「実際に起こる現象だけ」に絞って詳しく解説し、家庭で確認できること、プロに任せるべき状況、長く使うために押さえておくべきポイントまでを、順番に丁寧にまとめていきます。
E90が発生する原因は主に4つ

E90は一見すると原因の幅が広いように見えますが、実際の現場で発生する理由はほぼ4つに限定されます。
どれも「排気トップと本体の電気的な接続(導通)が途切れる」ことで発生する点が共通しているので確認していきましょう。
4つの原因とは、以下の通りです。
- 排気抜け防止リード線の外れ・接触不良
→ 最も多い原因で、E90の大半を占める。 - 排気トップに接続するビスによる導通不良
→ 外観では分かりにくいが、ビスの接触が悪くなると導通が不安定になる。 - 排気管の外れ・ズレ(物理的な接続不良)
→ 配管がしっかり差し込まれていないと、排気トップとの連続性が失われる。 - 本体内部の基盤・導通回路の劣化
→ 10年以上使っている機種で起こりやすく、外観上は異常が見えない。
この4つ以外でE90が出るケースは、ほぼありません。
現場の経験上、稀に断熱カバーが固着して悪さをしてこともありますが、ほぼこの4つといってもいいでしょう。
続いてそれぞれの原因を“実際の現場で起きている状態”に沿って、より深く解説していきます。
E90の原因①:排気抜け防止リード線の外れ・接触不良

E90の発生理由の中で、圧倒的に多いのがこの「排気抜け防止リード線」の外れ・接触不良です。
本体と排気トップを電気的につなぐための細い配線で、導通を常時監視する役割を持っています。
このリード線が正常に接続されていないと、排気トップが取り付いているかどうかの判定ができず、E90を出して燃焼を停止します。
● 実際に起こる状況
- 配線が硬化して、わずかな振動で導通が切れる
- 経年により導通が取れない
- 配線が折れかけており、触っていなくても断続的に接触が途切れる
リード線は細いので、硬化・折れなどがすぐに導通不良につながります。
外観が正常に見えても、内部の銅線が折れかけの状態になっていることも珍しくありません。
● よくある見た目の特徴
- 配線が不自然な角度で曲がっている
- 配線に触れるとパキッとした硬い感触がある(劣化の典型)
見た目だけでは判断が難しいこともありますが、「なんとなく位置が不安定」「配線が硬すぎる」という場合は、導通不良が起きやすい状態です。
● この原因で起こるE90の出方
- 電源を入れた瞬間にE90
- 点火しようとしたタイミングでE90
- 普通に燃えていたのに、突然E90で停止
- 毎日症状が違う、再現性がない
導通が一瞬でも切れればエラーになるため、症状の出方に統一性がありません。
● 対処
- 配線の折れや硬化が見られる場合はリード線の交換が必要
- 無理に伸ばしたり折り曲げたりすると断線するため注意
E90の7〜8割はこのリード線が原因と考えてよく、まず最初に確認すべきポイントです。
E90の原因②:排気トップに接続するビスによる導通不良

(リンナイ給排気トップ:FOT-084K)
排気トップについているビスは排気トップの金属部分と本体側のリード線との“電気的な接点”の役割を兼ねています。
つまり、ビスが金属として正常に接触していなければ、排気トップと本体の導通が成立せず、E90が発生します。
またビスの錆は想像以上に発生しやすいポイントです。
● 実際に起こる状態
- ビスに錆が広がっている
- 回そうとすると固く、動きが極端に悪い
- ビスが緩んでいる
一旦外してみて再接続するだけでも接地面が変わるので試してみるのもありでしょう。
● この原因で起こるE90の出方
- 朝一番の起動で頻繁にE90が出る
- 一度は暖房できても、しばらくするとE90
- 排気トップを軽く触るとエラーの出方が変わる
- 日により症状の出方が違う
ビスによる導通不良は“安定しない”ため、症状がランダムに見えることが多いのが特徴です。
● よくある見た目の特徴
- ビスだけ色が明らかに違う(赤・黒っぽい)
- ビスが古く光沢を失っている
- 明らかに回らない(固着気味)
外観で分かることもありますが、実際は埃などを被って導通が悪くなっているケースもよくあります。
● 対処
- ビスの交換(ステンレスビスでの交換が最適)
- 一度取り外し接触面の清掃で改善するケースもある
- 排気トップ自体が歪んだり変形している場合はトップごと交換
ビスは小さなパーツですが、導通の安定性を左右する重要部品です。
ここが悪さをしていると、E90が“何度つけ直しても再発する”典型的な原因になります。
E90の原因③:排気管の外れ・ズレ

排気管が本体側で“わずかに外れている”だけでも、排気トップと本体の連続した接続が成立しなくなり、E90が発生します。
排気管はしっかり差し込まれて見えても、実際には“ほんの数ミリだけ浮いている”だけで導通が途切れることがあり、この問題は外観で気づきにくいのが特徴です。
排気管の外れはリード線やビスと比べると頻度は少ないものの、実際の現場では確実に起こる原因の一つです。
● よくある状況
- 新築・交換工事時に差し込みが甘かった
- ストップリングの取り付けが甘く、年数とともに徐々にズレてきた
- ストーブを掃除のために少し手前に動かした瞬間にズレた
意図的に外すような動作をしていなくても、長年使っている家庭ほど“気づかないうちにズレる”ことがあります。
● 見た目の特徴
- 排気管と本体の接続部分にほんのわずかな隙間がある
- 配管に無理なテンションがかかっている
- 排気トップと排気管の角度が以前より少し変わっている
外観で“完全に外れている”と気づくケースは珍しく、力を加えて無理に取り付けたりすると後々E90の原因となりうることも想定されます。
● この原因で起こるE90の出方
- 起動後しばらく正常 → 途中で突然E90
- ストーブの向き・位置を変えた直後にE90
- 排気管に触っていないのに、掃除後からE90が頻発
導通は“常に金属接点”で監視されているため、ずれが大きくなくてもE90の原因になります。
● 対処
- 無理に押し込んだり、角度を調整するのは絶対にNG
- わずかな修正でも逆に状態が悪化して完全に外れることがある
- 必ずプロによる再接続・ストップリングの取り付けを行う
排気管は命に関わる空気経路のため、専門業者による修復が前提です。
原因④:本体内部の基盤・導通監視回路の劣化

排気抜け防止リード線・排気トップ固定ビス・排気管のいずれにも異常がない場合に残る原因が、本体内部の基盤や導通監視回路の劣化です。
ストーブは使用年数が進むと、内部基盤が徐々に劣化し、導通の判定が不安定になることがあります。
特に10年以上使用している機種では、この原因が現場で一定の割合で見られます。
基盤劣化によるE90は外観の変化がまったく見えないため、ユーザーが自己判断で見つけることは不可能です。
症状の不安定さが特徴で、他の原因と間違いやすいポイントでもあります。
● よくある状態
- 基盤のハンダが経年で弱り、接点が不安定になっている
- 内部の細い線が経年で硬くなり、わずかな振動で接触不良を起こす
- 排気トップ側が正常でも、本体側で導通が途切れてしまう
基盤が劣化していると、原因①〜③と違って「どこが悪いのか外から見えない」のが大きな特徴です。
● この原因で起こるE90の出方
- 起動のたびにE90が出る日もあれば、全く出ない日もある
- 朝だけE90、昼は正常、夜にまたE90というバラつき
- しばらく使用しているとE90が急に発生
- リード線・ビス・排気管を点検しても原因が見つからない
- 暖房運転中の停止と復帰を繰り返す
基盤の劣化は再現性が低く、症状が不規則になることが多いです。
● 見た目の特徴
外観からはほとんど判断できません。
むしろ「何も見た目に異常がないのにE90が続く」という場合が、基盤劣化の典型です。
● 対処
- 基盤の交換
- メーカー・機種によってはセンサー類の交換
- 部品供給が終了している場合は本体交換が現実的な対応
内部劣化によるE90は家庭で対処できる範囲ではなく、点検依頼が必須です。
この状態はストーブ本体が製造より年数が経過していることが非常に多いので、基本的に本体交換が推奨でしょう。
E90の確認は“見るだけ”にとどめる

E90は排気安全に直結しているため、誤った触り方をすると逆に状態を悪化させ、排気抜けや接続不良を引き起こす可能性があります。
家庭で触ってよい範囲はごく限定的で、“見て異常がわかる部分だけ”にとどめるのが基本です。
● 家庭でやっても良い確認
1. リード線が明らかに外れていないか“目視で確認”
導通線が完全に外れている・浮いているなど、見れば分かる異常なら確認可能。
ただし、無理やり取り付けたり曲げたりすると断線・ビス穴が再利用できなくなってしまうため、触れすぎは厳禁。
2. 排気管が“明らかに外れているかどうか”の目視
完全に外れている場合やストップリングが付いていない場合など。
ただし「少し差し込みが浅い」「少し隙間がある」程度は見分けがつきにくいため、自分で押し込むのはNG。
3. 排気トップ周りのビスが“極端に錆びていないか”を見るだけ
ビスの色が異常に黒い・赤錆が大きく広がっている等が見て取れる場合は、導通不良の可能性が高い。
● 家庭では絶対にやってはいけないこと
- 排気管を押し込む
- 排気トップの角度を変える・回す
- リード線を強く引っ張る・折り曲げる
- “たぶんここだろう”と自己判断で触る
どれも 導通不良を悪化させたり、排気管を逆に抜いてしまう原因になります。
● 家庭でできるのは、あくまでも
「見る」 → 「外れていそうなら触らず点検依頼」
この手順が最も安全で、結果的に早く確実に直せる方法です。
ガスストーブの点検を依頼すべきケース

E90は本体との導通異常なので、原因を特定せずに使い続けるべきではありません。
家庭でできる確認は非常に限られているため、以下のような状況に一つでも当てはまる場合は、専門業者への点検依頼が必要です。
● 1. 排気トップ周りのビスが明らかに錆びている
ビスが金属として接触していないと導通が途切れます。
外観上の錆が明確に確認できるなら、接触面もほぼ例外なく劣化しています。
この場合、ビス交換や接触面の調整が必要です。
● 2. 排気管が“少し触ると揺れる”
排気管はしっかり差し込まれていれば揺れません。
わずかな揺れはズレや外れの兆候で、導通が安定しない原因になります。
無理に押し込むと悪化する恐れがあるため、必ず専門業者へ点検を依頼しましょう。
● 3. E90が1日に何度も出る
導通が安定していない典型的な症状。
再現性が低く、原因が複合しているケースもあるため、早期点検が望ましいといえます。
● 4. 使用年数が10年以上でE90が頻発
内部基盤の劣化が疑われるパターンで、外観では異常が一切見えません。
基盤交換が必要な場合があり、部品供給が終了している機種だと本体交換となるケースもあります。
● 5. 初回チェックですべて“異常なし”でもE90が続く
外観上正常に見えても、内部の導通回路・細い配線の劣化は家庭で把握できません。
目で見える範囲に異常がないのにエラーが続く場合は、内部要因の可能性が高く、専門点検が必須です。
長く安全に使うために知っておきたいポイント
E90の多くは、本体やその周辺の接続部分に原因があります。
つまり、普段からちょっとした注意をしておくことで再発を防ぎやすくなります。
ここでは、日常的に意識しておくと効果の高いポイントを整理します。
● 1. ストーブ本体を動かすときは、排気管とリード線への負荷に注意
掃除・模様替えなどで本体を前後に動かすと、排気管やリード線に無意識のうちに負荷がかかります。
以下のような動作は避けるべきです。
- 本体を斜め方向に持ち上げる
- 排気管が引っ張られるような動かし方
- リード線が突っ張る状態で本体を移動
普段の扱いのクセが、のちの導通不良の原因になることもあります。
● 2. 排気管付近に物を置かない
掃除しているつもりでも、排気管の近くに物を立てかけたり、段ボールを押し付けたりすると、配管が少し押されてズレることがあります。
特に以下のようなシーンは注意が必要です。
- 年末の家具移動
- ストーブ横に掃除道具を立てかける
- 子どもが排気管付近で遊ぶ
ぶつかったり、無理な移動が負荷となり、最終的に“ほんの数ミリのズレ”がE90の引き金になります。
● 3. 使用年数が10年を超えたら、年1回の点検が安心
基盤・配線・ストーブ内部などは徐々に劣化していきます。
外観で異常がなくてもE90が出ることがあるため、10年以上使っている機種は定期点検が有効です。
基本的にE90は症状が出てから対処するエラーとなるので、敏感になる必要もありませんが、これらを日常的に意識するだけでも長く使えることがあるでしょう。
よくある質問
Q1. E90が出たら、すぐにストーブを止めたほうがいいですか?
A. はい。E90は「排気トップと本体の接続が成立していない」という安全上の異常を示すため、使用を続けるべきではありません。リセットして一時的に動いても、再び接続が途切れればすぐ停止します。家庭での応急処置は限られるため、状態次第では点検を依頼してください。
Q2. 電源を入れた瞬間にE90が出ます。もう壊れていますか?
A. 壊れているとは限りません。排気抜け防止リード線の差し込みが浅くなっている、コネクタが緩んでいる、あるいはビスの錆で導通が弱くなっているだけでもE90は即表示されます。まずはリード線の“差し込みが目視で浅くないか”を確認してください。それ以外はプロの点検が必要です。
Q3. 暖房中に突然E90が出ました。排気管が外れているのでしょうか?
A. 可能性はありますが、最も多いのは「リード線かビスの導通不良」です。排気管が大きく外れている場合は見た目で分かることが多いですが、リード線や固定ビスの導通不良は外観では判断できないことがあります。一度でも暖房中にE90が出た場合は、必ず点検を検討してください。
Q4. E90は自分で直せますか?
A. 触って良いのは「リード線が完全に外れていないか“見るだけ”」の範囲です。排気管を押し込む、排気トップを動かす、ビスを緩めるなどの行為は危険で、状態を悪化させる可能性があります。家庭で改善できない場合は早めの点検が必要です。
Q5. E90が頻発するとき、買い替えを検討すべき目安はありますか?
A. 使用年数が10年以上で、リード線・ビス・排気管に問題がないのにE90が繰り返し発生する場合は、内部基盤の劣化が疑われます。基盤交換で直ることもありますが、部品供給が終了している機種も多いため、点検結果によっては交換を検討するのが現実的です。
まとめ:E90は導通がとれていないエラー

E90は、ガスストーブの中でも原因が分かりにくいエラーの一つですが、その仕組みは非常に単純で、排気の流れや外の環境が原因ではありません。
「排気トップと本体の電気的な接続(導通)が成立していない」
この一点だけで発生するエラーです。
そして現場で実際に起きている原因は、次の4つに集約されます。
- 排気抜け防止リード線の外れ・接触不良
- 排気トップに接続するビスによる導通不良
- 排気管の外れ・ズレ
- 本体内部の基盤・導通回路の劣化
どれも“排気トップが本体と連続してつながっているかどうか”に関わる問題であり、その連続性が切れた瞬間にE90が表示されます。
燃焼前でも、点火途中でも、暖房運転中でも関係なく、導通が途切れればエラーです。
家庭でできる確認は「見るだけ」に限られ、根本的な調整・修復は専門業者の作業が必要です。
リード線やビス、排気管の状態は外観だけでは分からないことも多いため、E90が繰り返し出る場合は早めの点検が安全につながります。
とくに使用年数が10年以上の機種は内部劣化の可能性が高く、基盤交換や部品交換が必要になることもあります。
逆に、原因が明確な場合は比較的シンプルに解決できるエラーでもあります。
E90を正しく理解し、原因を把握して適切に対処すれば、ストーブを安全に安心して使い続けることができるでしょう。
(参照:リンナイ公式HPより ガスFF暖房機|エラーコード90が表示)
(参照:長府製作所公式HPより サンポットブランド ガス暖房機 エラーコード)

