「ガソリンが高くなっているのはわかった。でも、それ以外にも何が上がるの?」——そう気になっている方は多いのではないでしょうか。
2026年春、中東情勢の緊迫化によってホルムズ海峡が事実上の封鎖状態となり、日本のナフサ調達に深刻な支障が生じています。
ガソリンや灯油の値上がりはすでに家計に直撃していますが、実はそれ以上に広い範囲で「静かな値上がり」が進む可能性があります。
ナフサは石油化学製品のほぼすべての出発原料です。
ナフサ不足が長引けば、プラスチック容器・包装材・衣料品・建材・タイヤ・医療用品・農業資材まで、暮らしのあらゆる場面に波及していきます。
この記事では、ナフサ不足の影響が懸念される製品・サービスを分野別に網羅的にまとめました。
「自分の生活に何が関係するのか」を確認するためと、今後の値上げ前の参考資料としてご活用ください。
ナフサ不足がなぜここまで広く影響するのか
ナフサとは、原油を精製する過程で取り出される石油製品の一種です。
ガソリンや灯油と同じ原油由来ですが、使われ方がまったく異なります。
ナフサは石油化学工場に送られ、高温で熱分解(クラッキング)されると、エチレン・プロピレン・ブタジエン・ベンゼンなどの基礎化学品が生成されます。
これらがさらに加工されて、プラスチック・合成繊維・合成ゴム・界面活性剤(洗剤の主成分)・塗料・接着剤など、現代の工業製品の大部分を構成する素材になるのです。
石油製品全体の需要に占めるナフサの割合は、ガソリン(31.4%)に次いで24.9%と非常に大きく(石油化学工業協会)、日本は輸入ナフサの約74%を中東産に依存してきた構造があります(2024年データ)。
しかしナフサには国家備蓄制度がなく、民間在庫は約20日分しかなかったため、今回の中東情勢の緊迫化は直撃となりました。
2026年3月、三菱ケミカルグループ・出光興産・三井化学・旭化成などが相次いでエチレン設備の減産を発表。
国内6か所の半数以上に相当する拠点での減産が始まっており、その影響は1〜3か月のタイムラグを経て家計へ波及してくると見られています。
値上がりの時間軸:4つの波
ナフサ不足の影響は一度に来るのではなく、「時間差の波」として段階的に広がります。
おおまかに以下の4フェーズで整理できます。
| フェーズ | 時期の目安 | 主な影響品目 |
|---|---|---|
| 第1波 | 即時〜1か月 | ガソリン・LPG・電気代・航空運賃 |
| 第2波 | 1〜2か月後 | 食品包装材・洗剤・シャンプー・紙おむつ・タイヤ |
| 第3波 | 2〜4か月後 | 衣料品・ペットボトル飲料・家電部品・自動車部品 |
| 第4波 | 3〜6か月後 | 建材・医療資材・農業資材・食料品(肥料経由) |
以下、分野ごとに詳しく解説します。
【第1分野】エネルギー・燃料
ナフサと直結するエネルギー分野は、値上がりが最も早く、かつ家計への影響が最も直接的です。
ガソリン・軽油
ナフサと同様に原油を精製して得られるガソリン・軽油は、中東情勢の緊迫化を受けて既に価格が急上昇しています。2026年3月には東京都内で180〜190円台に達した給油所も多く、補助金なしの実勢価格は200円台に到達しました。政府は補助金を緊急再開し170円程度への抑制を目指していますが、補助金に依存する構造には限界もあります。
LPG(プロパンガス)
LPGはナフサと同じ原油精製工程の関連製品であり、CP価格(サウジアラムコが毎月設定する国際指標価格)が原油価格と連動します。家庭用プロパンガスは都市ガスより調達コストの転嫁速度が速く、今後の料金改定に注意が必要です。
都市ガス(LNG)
都市ガスの原料であるLNG(液化天然ガス)は、一部が中東由来であることに加え、製造・輸送コストにナフサ関連製品(配管部材・シール材など)が使われています。原油高が長引くほど、ガス料金への間接的な影響も出やすくなります。
電気料金
火力発電の燃料費上昇が電気料金を押し上げます。2026年4月以降、政府の電気・ガス補助金が段階的に縮小・終了する見込みで、家計負担はさらに増す方向にあります。
航空運賃・物流コスト
ジェット燃料は原油から精製され、価格が上昇します。物流業界では燃料代の高騰が荷物の運賃に転嫁されるため、通販利用の送料や運送費全般にも波及する可能性があります。
【第2分野】食品・飲料
食品そのものはナフサを原料としませんが、「入れ物・運搬・加工」の各場面でナフサ由来素材が不可欠なため、間接的なコスト上昇が避けられません。
ペットボトル飲料
ペットボトルはPET樹脂(ポリエチレンテレフタレート)製で、ナフサを出発原料とする石油化学製品です。ペットボトルの価格が上がれば、水・お茶・炭酸飲料・スポーツドリンクなどあらゆるペットボトル飲料のコストが増加します。夏以降の値上げが特に懸念されています。
コンビニ弁当・スーパーの総菜
弁当トレーや惣菜・刺身のトレーはポリプロピレン(PP)製が主流で、ナフサ由来です。食品メーカー・小売が容器コストを吸収しきれなければ、商品価格に転嫁されます。
食品用ラップ・アルミホイル
ポリエチレンやポリ塩化ビニリデンを原料とする食品用ラップは、代表的なナフサ由来製品です。家庭での使用頻度が高い日用品であるため、値上がりが家計に直接影響します。
保存容器・タッパー類
ポリエチレン・ポリプロピレン製の保存容器も同様に、原料コストの上昇が価格に転嫁されやすい製品です。
食品包装フィルム全般
パンの袋・スナック菓子の袋・レトルト食品のパウチなど、食品に用いられるフィルム包装の多くがナフサ由来の素材でできています。包装コストが上がれば、食品そのものの価格にも反映されます。
農作物・食料品(肥料コスト経由)
化学肥料(尿素・硫安など)の製造にはナフサ・天然ガス由来の原料が不可欠です。ナフサ不足と原油高が重なることで肥料価格が上昇し、農家のコスト増を通じて野菜・米・果物など食料品の価格を押し上げる「二次高騰」が懸念されます。このルートでの影響は3〜6か月後と比較的遅く現れる見通しです。
【第3分野】洗剤・洗浄剤・衛生用品
「植物由来」「天然成分」というイメージがある洗剤ですが、大多数の合成洗剤はナフサを出発原料とする石油化学製品が主成分です。
洗濯洗剤・柔軟剤
合成洗剤の主成分である界面活性剤(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩など)はナフサ由来のベンゼンをもとに製造されます。さらに洗剤を入れるプラスチックボトルもナフサ由来のため、容器コストと中身のコストが同時に上がる「二重の値上げ圧力」がかかります。
食器用洗剤・住居用洗剤
台所洗剤・浴室洗剤・トイレ洗剤なども同様の構造で、界面活性剤コストとボトルコストが連動して上昇します。
シャンプー・リンス・ボディソープ
シャンプーやリンスの主成分も石油化学由来の界面活性剤がベースであり、さらにシャンプーボトル自体がポリプロピレン製です。洗い流さないタイプのトリートメントや整髪料も同様です。
ハンドソープ・消毒液容器
液体ハンドソープの容器もプラスチック製で、容器コストの上昇が製品価格に影響します。詰め替え用パウチもプラスチックフィルム製のため、同様のコスト上昇が生じます。
ゴミ袋・レジ袋
ポリエチレン製のゴミ袋やレジ袋は、ナフサが直接的な原料となる典型的な製品です。自治体が指定するゴミ袋も価格改定の対象になる可能性があります。
【第4分野】育児・衛生関連用品
育児世帯を直撃しやすいカテゴリです。消耗が激しく、価格上昇の影響を継続的に受けやすい製品が多くあります。
紙おむつ
紙おむつの構造には、不織布(表面シート)・吸水性ポリマー(SAP)・テープ部のポリプロピレン・外装フィルムなど、複数のナフサ由来素材が使われています。三菱ケミカルは紙おむつ原料の値上げをすでに発表しており、最終製品への転嫁が見込まれます。
生理用品・産褥パッド
生理用ナプキン・タンポン・産褥パッドも不織布・吸水材・包装フィルムがナフサ由来です。毎月継続的に購入するため、値上がりの家計インパクトは侮れません。
ウェットティッシュ・おしりふき
不織布シートとその包装のどちらもナフサ由来素材が使われています。乳幼児のいる家庭での消費量は特に多く、値上がりが長期にわたって影響します。
哺乳瓶・調乳グッズ
哺乳瓶本体や乳首部分、消毒ケースなどにもプラスチック素材が多用されています。育児用品全般のコスト上昇が続く可能性があります。
【第5分野】医療・介護用品
病院や医療機関が使用する消耗品の多くがナフサ由来のプラスチック製であるため、医療コスト全体への影響が懸念されます。最終的には診療報酬改定への圧力につながるリスクもあります。
注射器(シリンジ)
注射筒(本体)とプランジャー(押し棒)はいずれもポリプロピレン製です。使い捨てが前提の医療消耗品であるため、需要量は膨大で供給不安の影響も大きい品目です。
点滴バッグ
点滴バッグは軟質ポリ塩化ビニル(PVC)製が主流で、ナフサ由来の素材です。病院での使用量が多く、供給が滞ると医療現場に直接影響します。
採血管・医療用チューブ・カテーテル
採血管(血液を採取するガラスまたはプラスチック管)・点滴チューブ・カテーテルなどもナフサ由来のプラスチック素材が使われています。
医療用手袋(ラテックス・ニトリル)
医療・介護現場で使われる使い捨て手袋のうち、ニトリルグローブはナフサ由来の合成ゴムが原料です。コロナ禍以降に需要が急増した品目で、価格上昇の影響を受けやすい状況が続いています。
薬品容器・医薬品パッケージ
薬を入れるPTPシート(錠剤のプレス包装)や薬瓶など医薬品の容器・包材にもナフサ由来素材が多用されています。薬そのものの成分に直接影響するわけではありませんが、製造コスト全体の上昇要因となります。
介護用おむつ・介護シーツ
介護用おむつや防水シーツも、紙おむつと同様の構造でナフサ由来素材を多用しています。介護費用全体のコスト増につながる可能性があります。
【第6分野】衣料品・ファッション
「衣類は綿や麻では?」と思われがちですが、現代の衣料品の大半は石油由来の合成繊維を多用しています。
ポリエステル衣料全般
ポリエステルはナフサ由来のエチレングリコールとテレフタル酸から合成される合成繊維です。スポーツウェア・ユニフォーム・裏地・インナーウェアなど幅広く使われており、アパレル業界全体のコスト上昇につながります。エアリズムやヒートテックなど機能性インナーも同様の影響を受けやすい素材構成です。
ナイロン製品
ナイロン(ポリアミド)はナフサ由来のベンゼンやブタジエンを原料とする合成繊維です。ストッキング・水着・バッグ・アウトドアウェアなどに広く使われています。
アクリル製品
アクリル繊維はナフサ由来のアクリロニトリルを原料とします。ニット・セーター・毛布などウール代替品として使われることが多い素材です。
合成皮革・人工皮革
バッグ・靴・ソファなどに使われる合成皮革(PUレザー・PVCレザー)もナフサ由来のプラスチック素材です。アパレルだけでなく家具・インテリア分野にも影響が及びます。
撥水・防水加工製品
レインコート・傘・登山用品の防水加工にはポリウレタンや各種フッ素系化合物が使われており、これらもナフサを出発原料とする石油化学製品です。
【第7分野】住宅・建材
住宅1棟に使われる石油由来建材の量は相当なものです。建材メーカーの値上げが相次いでおり、新築・リフォーム双方に影響します。
断熱材(発泡スチロール・フォーム系)
発泡ポリスチレン(いわゆるスチロール系断熱材)や押出発泡ポリスチレン(XPS)はナフサ由来のスチレンが原料です。カネカ製の「カネライトフォーム」は2026年4月1日出荷分から40%の値上げを発表しています。断熱材はZEH対応工事や省エネリフォームでも必須資材であるため、住宅コスト全体に跳ね返ります。
塩化ビニル樹脂(PVC)・塩ビ管
水道配管・排水管・電気配線の保護管など住宅の「見えないところ」に大量に使われる塩ビ管は、ナフサ由来の塩化ビニル樹脂が原料です。信越化学工業は2026年4月1日納入分から30円/kg以上の値上げを発表しています。
外壁材・サイディング
外壁材の一部にはプラスチック系素材が使われており、製造コストの上昇が価格に影響します。
塗料・コーキング材
外壁塗料・屋根塗料はナフサ由来の合成樹脂(アクリル樹脂・ウレタン樹脂など)が主成分です。国内メーカー・商社から値上げ・荷制限の通知が相次いでいます。コーキング(目地埋め)材もシリコーン・ポリウレタン系が主流で同様の影響を受けます。
シンナー・溶剤
塗装工事に使うシンナーや洗浄用溶剤も石油系溶剤が主体です。職人の材料費上昇は工事費の値上がりとして施主に転嫁されます。
フローリング・床材
クッションフロアや塩ビ系床材(フロアタイル)はポリ塩化ビニルが主原料であり、価格上昇が見込まれます。
壁紙(ビニルクロス)
国内の壁紙シェアの大半を占めるビニルクロスは、ポリ塩化ビニルを使った製品です。新築・リフォーム問わず内装コストに影響します。
防水シート・養生シート
屋根や基礎の防水シート、建設現場の養生シートもポリエチレン・ポリプロピレン製が主流で、建設現場の資材コストを押し上げます。
接着剤・シーリング材
建築用接着剤・シーリング材の多くはナフサ由来の合成樹脂や溶剤を含んでいます。
【第8分野】自動車・タイヤ
自動車は1台あたり数十〜100kg以上のプラスチック・ゴム部品で構成されています。ナフサ不足の影響は自動車産業全体に波及します。
タイヤ
タイヤに使われる「合成ゴム」と「カーボンブラック」はいずれも原油・ナフサ価格に直連動する石油化学製品です。コンチネンタルタイヤが夏タイヤ(2026年3月1日〜)および冬タイヤ(同7月1日〜)の約5%値上げを先行発表しており、ブリヂストン・住友ゴム(ダンロップ)・横浜ゴム・東洋タイヤも追随値上げの見込みです。春の交換シーズンと重なり、店頭での品薄・混雑も報告されています。物流トラック・バス事業者へのコスト増も直結します。
バンパー・内装材・各種樹脂部品
ポリプロピレン・ポリエチレン・エンジニアリングプラスチックなどナフサ由来の素材は、バンパー・ダッシュボード・ドアトリム・シール類など自動車のあらゆる箇所に使われています。サプライヤー(デンソー・アイシンなど)がコスト転嫁を進め、最終的にトヨタ・ホンダ等の完成車価格に反映されるまでには数か月かかりますが、2026年後半の車両価格上昇圧力となる見通しです。
燃料ホース・ガスケット・ゴム部品
エンジン周りの各種ホース・ガスケット・シール材は合成ゴム製が多く、ナフサ価格の上昇が部品コストを直接押し上げます。
自動車用塗料
自動車の外装に使われる塗料もナフサ由来の合成樹脂が主成分です。修理費・板金塗装費にも影響する可能性があります。
【第9分野】家電・電子機器
家電・電子機器は外装から内部部品まで、石油化学素材を大量に使用しています。
家電外装パーツ(テレビ・冷蔵庫・洗濯機など)
テレビの筐体・冷蔵庫のドアパーツ・洗濯機の外装はポリプロピレン・ABS樹脂などナフサ由来プラスチックが使われています。大型家電ほど樹脂使用量が多く、製造コストへの影響が大きくなります。
プリンターカートリッジ・トナー
インクカートリッジのケースや内部構造はプラスチック製であり、製造コストへの影響があります。
配線・ケーブル
電線の被覆材にはポリ塩化ビニル(PVC)やポリエチレンが使われており、電気工事材料としても価格上昇の影響を受けます。
電子基板・絶縁材料
スマートフォン・パソコン・家電の電子基板にはエポキシ樹脂などナフサ由来の絶縁材料が使われています。半導体製造工程にも石油化学製品が多用されており、製造コスト全体に影響が波及します。
エアコン・給湯器・住宅設備機器
ガス給湯器・石油ストーブ・エアコンなどの住宅設備機器にも多数のプラスチック部品が使われています。部品コストの上昇が本体価格や修理費に転嫁される可能性があります。
【第10分野】農業・農業資材
農業生産を支える資材の多くもナフサ由来素材に依存しており、食料生産コストを押し上げる要因になります。
化学肥料
窒素肥料(尿素・硫安など)の製造原料には天然ガス・ナフサ由来のアンモニアが使われています。原油・ナフサ価格の上昇が肥料コストを押し上げ、農家の経営を圧迫します。肥料コストの上昇は最終的に農作物の価格に転嫁されることが多く、食料価格の二次高騰リスクとなります。
農業用フィルム・マルチフィルム
圃場を覆うマルチフィルムや温室・ビニールハウスのフィルムはポリエチレン・ポリ塩化ビニル製で、ナフサ価格と直結します。施設園芸を行う農家への影響が特に大きい資材です。
農薬容器・農業用資材容器
農薬・液体肥料の容器はプラスチック製が大半であり、容器コストの上昇が農業コスト増の一因となります。
農業用ホース・配管
灌漑用のホースや配管はポリ塩化ビニル・ポリエチレン製が主流です。ハウス栽培における水や液肥の供給に不可欠な資材であり、価格上昇が農業経営に影響します。
【第11分野】物流・輸送・包装
物流インフラに使われる包装資材もナフサ由来製品が中心です。E コマースの拡大で需要が増している分野でもあります。
段ボール・梱包フィルム
段ボール自体は紙製ですが、防水コーティングやラミネート処理にポリエチレンが使われているものも多く、間接的なコスト上昇が生じます。梱包用ストレッチフィルム・OPPテープは直接ナフサ由来の素材です。
樹脂パレット
物流センターで使われる樹脂製パレット(荷物の台座)はポリプロピレン・ポリエチレン製で、ナフサ直結の製品です。EC物流・小売物流への供給不足が2026年4〜5月に顕在化するリスクが指摘されています。
気泡緩衝材(プチプチ)・発泡スチロール梱包材
いずれもナフサ由来のポリエチレン・ポリスチレンが原料です。通販での梱包に大量使用されるため、EC事業者のコスト増要因となります。
宅配・物流の運賃
ガソリン・軽油の価格上昇はトラック物流の燃料費を直撃します。人件費上昇と重なって、送料の値上げや配達頻度の見直しにつながる可能性があります。
【第12分野】住宅設備・リフォーム
住宅のリフォームや設備交換に関わるコストも、複数の経路でナフサ不足の影響を受けます。
給湯器交換・設備機器費
給湯器本体のプラスチック部品や電子部品のコスト上昇が、機器価格に反映される可能性があります。品不足が起きている半導体も石油化学製品と深く関わっており、供給状況に注意が必要です。
浴槽・洗面台・キッチン天板
FRP(繊維強化プラスチック)製の浴槽や人工大理石のキッチン天板、アクリル系の洗面ボウルなどは、ナフサ由来の樹脂が主原料です。設備リフォームの見積もりが上昇する要因のひとつになります。
防虫・防カビ剤
住宅向けの防虫・防カビ剤の有効成分や容器はナフサ由来の化学品が多く、リフォーム資材の一環として価格上昇の影響を受けます。
【第13分野】教育・文具・文房具
一見ナフサと関係なさそうな文具・教育用品も、石油化学素材が広く使われています。
ボールペン・マーカー・修正液
ボールペン軸はポリプロピレン・ABS樹脂製が大半です。インク自体にも石油系溶剤が使われているものが多く、全体的な製造コスト上昇につながります。
ノート・教科書のカバー
ビニール素材のノートカバー・教科書カバーもポリ塩化ビニル製が多く、ナフサ価格の影響を受けます。
クレヨン・絵の具・接着剤
クレヨンにはパラフィン(石油由来)が、木工用・工作用接着剤にはポリ酢酸ビニルや合成ゴム系成分が含まれており、いずれも石油化学製品が原料の一部です。
【第14分野】サービス業・生活サービス
製品だけでなく、さまざまなサービスの料金にも影響が及びます。
クリーニング料金
衣類のクリーニングに使う溶剤(パークロロエチレン・石油系溶剤)は石油由来です。また洗剤・仕上げ剤のコスト増も加わるため、クリーニング料金が上昇する可能性があります。
美容院・サロンのシャンプー・カラー剤
シャンプー・リンス・カラー剤・パーマ液などの化粧品・薬剤は、ナフサ由来の化学品を多用しています。消耗品コストの上昇が施術料金に転嫁される可能性があります。
外食・飲食業
食材コストに加え、テイクアウト容器(プラスチックトレー・カップ・ストロー・フォーク)のコスト上昇が外食店の運営コストを圧迫します。弁当容器・使い捨て食器の値上がりが、外食・テイクアウト価格に影響する可能性があります。
宿泊施設のアメニティ
ホテル・旅館に置かれるシャンプー・ボディソープ・歯ブラシ・プラスチック容器などのアメニティコストが上昇し、宿泊料金への転嫁が生じる可能性があります。
医療・介護サービス
医療機関での注射器・点滴バッグ・手袋などの消耗品コスト上昇が、医療費全体のコスト増圧力となります。長期的には診療報酬改定への影響も否定できません。介護施設では介護用品のコスト上昇が施設運営費に影響します。
ナフサ不足の影響を受けにくい品目
ナフサ由来素材をほとんど使わない製品・サービスは、相対的に影響が小さいとされます。
| 影響が小さい品目 | 理由 |
|---|---|
| 木製家具(無垢材) | 原料が木材であり、石油化学素材の使用が少ない |
| 陶器・ガラス・磁器 | 原料は無機鉱物であり、ナフサとの直接的関係が薄い |
| 天然繊維(綿・麻・ウール・シルク) | 石油化学繊維との混紡が多い点に注意が必要 |
| 金属製品(ステンレス・アルミ・鉄) | 製錬・加工にエネルギーコストはかかるが、ナフサ由来素材を直接使わない |
| 生鮮食品(産地直送・無包装) | 包材を使わない形態であれば、間接的影響が小さい |
ただし、「包装材・物流・エネルギー」を通じた間接的な影響はすべての品目に多かれ少なかれ及ぶ点には注意が必要です。
よくある質問(Q&A)
Q. ナフサ不足はいつまで続くのですか? A. 中東情勢の先行きは見通しが難しく、「いつ終わる」と確定的に言える段階にはありません。政府は中東以外からのナフサ調達への切り替えを進めていますが、代替供給が本格化するまでには数か月単位の時間差が見込まれています。状況の推移を継続的に確認することが重要です。
Q. ガソリンには補助金があるのに、日用品にはないのですか? A. ガソリンには政府補助金が適用されていますが、ナフサ由来の日用品・工業品は対象外です。「ナフサを使う製品が多岐にわたりすぎて、補助金を一括適用するのは現実的ではない」(野村総合研究所・木内登英氏)という見解も出ています。
Q. 今すぐ大量購入して備えるべきですか? A. パニック購買(必要以上の大量買い占め)は、店頭欠品を誘発し、さらなる価格上昇につながります。家庭での適量備蓄(1〜2か月分程度)は合理的な準備ですが、過剰な買い占めは社会全体にとってマイナスになります。普段より少し多めに生活必需品を確保しておく程度が現実的な対応といえます。
Q. 「国産」の商品なら影響を受けないですか? A. 残念ながら「国産」だからといって無関係ではありません。日本のエチレン製造はナフサへの依存度が約95%と世界でも突出して高く、国内で製造された製品であっても、その原料であるナフサが中東からの輸入に依存していたためです。政府は国内での精製拡大と代替調達を進めていますが、即座に解決できる問題ではありません。
Q. 影響が一番大きいのはどの分野ですか? A. 影響の速さと広さを総合すると、「食品包装材・日用品・洗剤類」は消費量が多く生活直結のため、家計インパクトが大きい分野です。次いで「タイヤ・自動車部品」(すでに値上げ発表済み)、「建材・断熱材」(具体的な値上げ幅が発表されている)も注目分野です。
まとめ:今の暮らしで意識しておきたいこと

ナフサ不足の影響は「ガソリンが高い」という分かりやすい問題だけにとどまりません。
石油化学素材は現代の生活のあらゆる場面に使われており、エネルギー・食品・衣料・建材・医療・農業・物流・サービスと、ほぼすべての分野に時間差を伴いながら波及していきます。
重要なのは、その多くが「1〜3か月後」に家計として実感される遅行型の影響である、という点です。
現時点でガソリン以外の値上がりをあまり感じていなくても、2026年夏以降には幅広い品目での価格上昇が現実化する可能性があります。
家庭での対策として有効なのは、生活必需品の「適量備蓄(パニック購買ではなく計画的な在庫確保)」、詰め替え用品・大容量品へのシフト、リフィル対応製品の活用、省エネ行動によるエネルギー使用量の抑制などです。
ポイント ナフサ不足の影響は「段階的な波」として広がります。第1波(燃料・エネルギー)はすでに家計を直撃中。第2波(日用品・洗剤・タイヤ)、第3波(衣料・家電・ペットボトル飲料)、第4波(建材・農業・医療)と続きます。「今は大丈夫」でも、数か月後の変化に備えた家計管理が重要といえるでしょう。

