SaaS業界に未経験から興味を持つ人が増えている

「SaaS(サース)ってよく聞くけど、何をしている会社なの?」「IT業界って専門知識がないと無理じゃない?」──こうした声を、最近よく耳にするようになりました。
実際、SaaS業界は今、未経験の人からも注目を集めている分野です。クラウドサービスの拡大やリモートワークの浸透を背景に、企業が求める役割も広がっており、「技術職だけの世界ではない」という実情があります。
とはいえ、「IT=プログラミング必須」というイメージが根強く、なかなか一歩を踏み出せない方も多いのが現実です。
そこでこの記事では、「まずはSaaS業界を知ってみたい」という未経験の方向けに、業界の仕組みや働き方、代表的な職種の特徴までをわかりやすく解説します。
転職や収入に関する話題は扱わず、あくまで“業界理解”に特化した内容ですので、気軽に読み進めてください。
SaaSとは?仕組みと特徴をやさしく解説
「SaaS」とは「Software as a Service」の略で、日本語では「サービスとしてのソフトウェア」と訳されます。
つまり、インストール不要でインターネット経由ですぐに使えるソフトウェアのことです。
SaaSの基本的な仕組み
これまでのソフトウェアは、CDやダウンロードでインストールし、買い切りで使う形式が主流でした。
対してSaaSは、クラウド上に常に最新の状態で用意されており、ユーザーは月額・年額で使用料を支払うだけでOK。更新作業も不要で、どこからでもアクセスできます。
よく使われるSaaSの例
- Google Workspace(GmailやGoogleドライブなど)
- Slack(ビジネスチャット)
- Notion(情報整理ツール)
- Salesforce(顧客管理システム)
こうしたツールは、すべて「クラウド上で完結」するSaaSです。IDとパスワードさえあれば、会社・自宅・出先など、どこからでもアクセスできるのが大きな特徴です。
SaaSが選ばれる理由
- 導入コストが安い(初期費用ゼロのケースも多数)
- アップデートが自動(常に最新バージョン)
- スケーラブル(ユーザー数や機能の拡張が簡単)
企業にとっても、個人にとっても「手軽に導入でき、すぐに効果が出る」点が大きな魅力です。
SaaS業界の仕事ってどんなもの?
SaaS企業には、大きく分けて以下の2つの領域の職種があります。
- プロダクトサイド(開発・設計など技術系)
- ビジネスサイド(営業・サポートなど非技術系)
特に未経験の方にとっては、ビジネスサイドの仕事が現実的な入口になりやすく、活躍の場も多く存在します。
プロダクトサイドの主な職種
職種名 | 主な業務 |
---|---|
エンジニア | SaaSサービスの開発・設計 |
インフラエンジニア | クラウド環境の構築・保守 |
UI/UXデザイナー | 操作画面の設計・使いやすさの向上 |
QAエンジニア | 不具合の検証・品質管理 |
専門知識が必要ですが、他業界から転職して活躍している人も多数います。
ビジネスサイドの主な職種
職種名 | 主な業務 |
---|---|
インサイドセールス | 顧客との初期接点をつくる |
フィールドセールス | 商談・契約に関わる営業活動 |
カスタマーサクセス | 既存顧客の支援・活用促進 |
テクニカルサポート | 操作説明やトラブル対応 |
マーケティング | 顧客獲得のための企画と発信 |
プロダクトマネージャー | ユーザーの声を製品に反映する |
「作る人」と「使う人」の橋渡しをするポジションも多く、コミュニケーション力や段取り力が活かせます。
未経験でもSaaS業界が注目される理由
SaaS業界が「未経験者にとっても入りやすい」と言われる背景には、他の業界とは異なる働き方や文化があります。ここでは、業界の“魅力的なポイント”を3つに分けてご紹介します。
1. 柔軟な働き方ができる企業が多い
SaaS企業の多くは、クラウドを活用した業務スタイルがベース。リモートワーク・フレックス制度・副業可といった制度が整っており、時間や場所に縛られない働き方が可能です。
特に、インサイドセールスやカスタマーサクセスなどの職種は、ネット環境さえあれば対応できるため、在宅勤務を基本とする企業も珍しくありません。
2. 業界そのものが伸びている
SaaS業界は急成長中。新しいサービスが次々に登場し、国内外の企業から注目されています。変化が多い分、常に新しい学びがあり、働きながら自分自身も成長できる環境です。
未経験からスタートしても、ツールに慣れ、ユーザー目線を持って仕事に取り組めば、キャリアの選択肢はどんどん広がっていきます。
3. 課題解決を“直接”実感できる仕事
SaaSの本質は「業務効率化」や「課題解決」にあります。たとえば、自分が提案したツールで顧客の作業時間が減ったり、サポート対応によって満足度が上がったり──その変化を身近に感じられる点は、大きなやりがいにつながります。
売ることより“役に立つこと”に価値を置く文化だからこそ、「人の役に立ちたい」という気持ちを活かしやすい業界です。
未経験でもなじみやすいSaaS業界の職種とは?
SaaS業界には、特別な資格や知識がなくてもチャレンジしやすい職種があります。ここでは、未経験者にもわかりやすく、取り組みやすい代表的なポジションを紹介します。
職種名 | 主な業務内容 | 向いている人の特徴 |
---|---|---|
インサイドセールス | 問い合わせ対応・商談機会の創出 | 話すことが好き、人の話を丁寧に聞ける人 |
カスタマーサクセス | 既存顧客のフォローと活用支援 | 相手目線で考えられる、人と関わるのが好きな人 |
テクニカルサポート | 操作案内・トラブル対応・FAQ作成など | 丁寧な説明が得意、マニュアルを読むのが苦でない人 |
オペレーション支援 | 顧客データ管理・請求書発行などの裏方業務 | コツコツ作業が得意、正確さを重視する人 |
どの職種も、「特別なスキル」より「人に寄り添う姿勢」や「丁寧な対応」が評価される仕事です。「誰かの役に立つのが好き」という人には、ぴったりのフィールドです。
SaaS業界で働く人の“1日の流れ”を見てみよう
具体的な働き方がイメージできるように、職種別の1日のスケジュール例を紹介します。実際の現場ではどのように動いているのか、リアルな雰囲気を感じてみてください。
■ インサイドセールスの1日(在宅勤務)
時間帯 | 業務内容 |
---|---|
9:00 | Slackで連絡確認、朝のチームMTG |
10:00 | 問い合わせ対応(メール・電話) |
11:00 | 見込み顧客リストの整理、アポ日程の調整 |
13:00 | オンライン商談(30分×2〜3件) |
15:00 | 商談内容の記録・社内共有 |
17:00 | 翌日の準備・資料作成・チーム内の報告共有 |
■ カスタマーサクセスの1日(出社勤務)
時間帯 | 業務内容 |
---|---|
9:30 | 顧客の利用状況データの確認 |
10:00 | 社内定例ミーティング |
11:30 | 更新提案の資料作成 |
13:00 | 顧客からの相談対応(活用方法の案内など) |
15:00 | 利用中の顧客とオンラインヒアリング |
17:00 | 解約リスク分析とアクションプラン検討 |
いずれの職種でも「マニュアル通り」ではなく、「状況に応じて考える力」や「臨機応変な対応」が求められます。SaaS業界では、そうした姿勢が大きな強みになります。
SaaS業界ならではの文化・雰囲気って?
SaaS業界には、IT業界特有のカルチャーがあります。社風や職場の雰囲気としては、以下のような特徴がよく見られます。
特徴 | 内容 |
---|---|
フラットな組織構造 | 年齢や肩書より、成果やアイデアが重視される文化 |
オープンな情報共有 | SlackやNotionを使い、誰でも情報にアクセスできる環境 |
数字・データ重視 | KPI(重要業績指標)で進捗を可視化し、日々改善する習慣 |
成長・変化へのポジティブさ | 新しい仕組みやツールを試す姿勢が歓迎される |
こうしたカルチャーは、「指示を待つより、まず自分で動いてみる」タイプの人にとって非常にフィットしやすい環境です。
もっとSaaSを知るためにできること
興味が出てきたら、実際に「触ってみる」ことが一番の近道です。専門書や記事を読むよりも、ツールを体験した方がずっと理解が深まります。
■ おすすめのSaaSを体験してみる
ツール名 | 特徴 |
---|---|
Notion | 無料で使える情報整理ツール。タスク管理やチーム共有にも◎ |
Chatwork | 中小企業でもよく使われる日本発のビジネスチャット |
Trello | 直感的に使えるタスク管理ボード。個人でも利用OK |
実際に使いながら、「どんな人が使っているのか」「どう役に立っているのか」を想像すると、よりリアルな視点が養われます。
■ 情報源としておすすめのメディア・書籍
種類 | 例 |
---|---|
メディア | FastGrow、ITmedia、SalesZineなど |
YouTube | SaaS企業社員の1日密着動画など |
書籍 | 『THE MODEL』『SaaS起業のすべて』など業界理解に役立つ本 |
読む・見るだけでなく、メモを取りながら“自分なりの視点”で整理してみると、理解が深まりやすくなります。
SaaS業界に向いている人の特徴とは?
もちろん「これができれば絶対向いている」という決まった条件はありませんが、SaaS業界ではある特性や価値観を持った人が活躍しやすい傾向があります。
以下に挙げるような特徴のいずれかに当てはまる方は、SaaS業界との相性が良いかもしれません。
■ 新しいアプリやツールを試すのが好き
「なんか面白そう!」と感じたらすぐにアプリをダウンロードして試してみる──そんな好奇心旺盛なタイプは、SaaS業界では大きな強みになります。
業務で使うツールも日々進化しており、「もっと便利なやり方があるかも」と試行錯誤できる人は、社内外から重宝されます。決まった使い方だけでなく、工夫して応用する力も求められるため、自然と活躍の場が広がっていく傾向があります。
■ 課題を整理して、解決の手順を考えるのが得意
「この業務、もっとスムーズにできないかな」「何がボトルネックになってるんだろう?」といった視点を持てる人は、SaaS業界に非常に向いています。
SaaSは「課題を解決するための仕組み」を提供する仕事です。目の前の問題を構造的に捉え、「どこから手をつけるべきか」を考える思考力がある人は、営業でもサポートでも強みになります。
■ 人と話すのが好きで、相手の話をよく聞ける
SaaS業界の多くの職種では「対話力」が重視されます。たとえばカスタマーサクセスやインサイドセールスなどでは、顧客との信頼関係が成果に直結するからです。
必要なのは、「うまく話す力」よりも「相手が何を求めているかを聞き出す力」。雑談や何気ない質問から相手の本音を引き出せる人、相手に寄り添って考えられる人は、大きな武器になります。
■ 数字やデータを見て改善を考えるのが楽しい
「前月より成果が上がった」「この施策の効果が数字で見えた」──そうした変化を楽しめる人は、SaaS業界でやりがいを感じやすいタイプです。
多くのSaaS企業では、KPIやユーザーデータが日常的に共有され、改善提案のベースになります。数字に苦手意識があっても、仮説を立てて「なぜこうなったのか?」を探るプロセスを楽しめる人は、分析業務や改善活動に自然と関わっていけます。
■ 自分から動いて、仕組みをよくしたいと感じる
SaaS業界では、手を挙げた人にチャンスが回ってくる風土が根づいています。「こうしたらもっとよくなるのでは?」と感じたら、自ら動いて改善提案できることが評価につながります。
指示を待つより「まずやってみよう」「とりあえず提案してみよう」と行動できる人は、周囲からも信頼されやすく、裁量のある仕事を任される機会も増えていきます。
✔ 当てはまらなくても大丈夫!
これらの特徴すべてにピッタリ合う必要はありません。「ちょっとだけ分かるかも」「そこはまだ自信ないけど、興味はある」──それくらいの気持ちで十分です。
実際、SaaS業界では「入ってから成長する人」「環境が変わって開花する人」も多く、最初からすべてを備えている必要はありません。まずは小さな興味を大切に、情報を集めたりツールを使ってみたりする中で、少しずつ自分に合う部分を見つけていくのが、もっとも自然な入り方です。
さいごに|まずは“知ること”から始めてみよう
SaaS業界は、IT業界の中でも特に開かれたフィールドです。
専門知識や経験がなくても、“自分の強み”を活かせる場面が多く、「未経験者だからこそ歓迎される」環境が整っています。
とくにビジネスサイドの職種では、営業・サポート・マーケティングなど、ITスキルよりも「人の話を聞く力」「相手の課題に寄り添う力」が求められるケースが多く、これまでの接客経験やコミュニケーション能力が大きな強みになります。
もちろん最初からすべてがわかっていなくても構いません。
この記事で紹介したように、SaaS業界には多くの職種・価値観・働き方があり、自分に合う部分を見つけるためには、まず“知ること”がとても大切です。
たとえば…
- 気になるツールを1つ触ってみる
- 「SaaS企業の1日」動画を見てみる
- Webメディアや記事をざっと眺めてみる
──こうした小さなアクションを通じて、「なんとなく興味がある」状態から、「自分にもできそうかも」という感覚に少しずつ変わっていくはずです。
SaaS業界を深く知ることは、単に“IT職を目指す”という話にとどまりません。
今後どんな職業に就くとしても、SaaS的な考え方(課題解決、仕組み化、データ活用)は、きっと武器になります。
「知らなかった世界をのぞいてみる」──
その一歩が、あなたのキャリアに新しい選択肢をもたらすきっかけになるかもしれません。
どうか焦らず、できることから、少しずつ。
“知ること”から始めるあなたを、SaaS業界は歓迎していると思います。