ストーブを使用していて、突然運転が止まり「過熱防止装置作動」のエラー番号が表示されると、多くの方が「壊れたのでは?」と感じます。
しかし、この表示は単純な故障通知ではなく、内部で異常な温度状態を検知した結果として停止した状態を示しています。
ここで重要なのは、
過熱している=必ずしも燃焼が暴走しているわけではないという点です。
実際の現場では、温度そのものよりも「温度を誤検知する状態」や「熱が逃げなくなる状態」が原因になっているケースが非常に多く見られます。
特に多いのが、
- 電子基板・制御基板の異常
- 本体内部に蓄積したホコリやタバコのヤニ
この2つのいずれかが発生したときに、過熱防止装置は作動しやすくなります。
過熱防止装置は「温度そのもの」ではなく「異常状態」を見ている
過熱防止装置という名称から、「本当に異常高温になったときだけ作動する」と思われがちですが、実際にはもう少し広い意味を持っています。
ストーブ内部には、
- 温度センサー
- サーミスタ
- 制御基板
といった部品が連動しており、これらの信号の整合性が崩れた場合でも、安全装置が働く仕組みになっています。
つまり、実際の温度がそこまで高くなくても、基板が“異常な温度状態”と判断すれば停止するということです。
この判断ミスを引き起こす代表的な原因が、内部の汚れと基板トラブルです。
内部にたまったホコリが過熱防止装置を作動させる理由

ストーブ内部には、使用年数とともに確実にホコリが蓄積します。
とくに見えない場所、基板周辺やセンサー付近にたまったホコリは、想像以上に厄介です。
ホコリが原因となる理由は主に以下の通りです。
- 放熱すべき熱が内部にこもる
- センサー周辺の温度が実際より高くなる
- 微弱な静電気やリーク電流が発生しやすくなる
これにより、基板は「異常な温度上昇が起きている」と誤認識し、過熱防止装置を作動させます。
見た目がきれいでも、
数年間内部清掃をしていないストーブでは、内部は別物のように汚れている
というケースは珍しくありません。
タバコのヤニは基板トラブルを引き起こしやすい

喫煙環境で使われているストーブの場合、ホコリ以上に厄介なのがタバコのヤニです。
ヤニは単なる汚れではなく、
- 粘着性が高い
- 湿気を含みやすい
- 電気を通しやすくなる
という性質を持っています。
このヤニが基板やセンサーに付着すると、
- 微弱な電流が誤って流れる
- センサー信号が乱れる
- 基板が異常状態と誤判断する
といった現象が起きやすくなります。
その結果、
燃焼自体は問題ないのに、過熱防止装置だけが頻繁に作動する
という状態に陥ります。
基板そのものが劣化・損傷しているケース
長年使用したストーブでは、基板自体の劣化も無視できません。
基板でよく見られるトラブルには、
- 半田クラック(振動や熱による割れ)
- コンデンサの劣化
- 回路の熱疲労
などがあります。
これらが起きると、温度センサーからの信号を正しく処理できなくなり、
実際の状態とは無関係に「異常過熱」と判断して停止することがあります。
この場合、外から見ても異常は分かりません。
掃除をしても改善せず、使用開始直後や一定時間後に必ず止まる、という症状が出やすくなります。
冷やして再使用してもいいケース・やめた方がいいケース
一度過熱防止装置が作動した場合、完全に冷却してから再起動すること自体は問題ありません。
ただし、その後の挙動が重要です。
再使用しても問題ない可能性が高いのは、
- 一度きりで、その後は安定して使える
- 内部清掃後に改善した
といったケースです。
一方で、以下の場合は注意が必要です。
- 毎回同じように停止する
- 使用時間が短くなってきている
- 再起動してもすぐ止まる
これらは、基板・センサー系のトラブルが進行しているサインと考えた方が安全です。
FAQ|ストーブの過熱防止装置作動に関するよくある質問
Q1. 過熱防止装置が作動したら、もう使えませんか?
いいえ。一度の作動だけであれば、必ずしも使用不可ではありません。
完全に冷却したうえで、内部の汚れが原因だった場合は、清掃で改善するケースも多くあります。
Q2. 掃除をすれば必ず直りますか?
必ずしも直るとは限りません。
ホコリやヤニが原因の場合は効果がありますが、基板自体が劣化している場合は改善しません。
Q3. タバコを吸っていると故障しやすくなりますか?
はい。喫煙環境では、ヤニが基板やセンサーに付着しやすく、誤作動や基板トラブルのリスクが高まります。
Q4. 使用年数はどれくらい影響しますか?
一般的に5〜10年以上使用している機器では、基板劣化や内部汚れが原因で過熱防止装置が作動する確率が高くなります。
Q5. 何度も作動する場合、そのまま使い続けても大丈夫ですか?
おすすめできません。
安全装置が繰り返し作動する状態は、内部に何らかの異常があるサインです。無理な使用は避け、点検や交換を検討してください。
まとめ:過熱防止装置が作動した時点で「内部では何かが起きている」
ストーブの過熱防止装置が作動するという現象は、単なる一時停止でも、偶然でもありません。
それはストーブ内部の制御系が「このまま運転を続けるのは危険だ」と判断した結果です。
今回整理した通り、原因の中心は基板の異常判断と内部に蓄積したホコリやタバコのヤニにあります。
実際に燃焼が暴走していなくても、センサーや基板が正しい情報を処理できなくなれば、過熱と同じ扱いになります。
とくに注意すべきなのは、
- 清掃しても再発する
- 使用年数が長い
- 喫煙環境で使われている
こうした条件が重なるケースです。
この状態で「たまたまだろう」と使い続けると、次は安全装置ではなく完全停止や基板故障という形で表面化する可能性が高くなります。
過熱防止装置は、壊れる前に必ず出る“警告”です。
一度きりで終わるか、繰り返すか。
その違いを見極めることで、修理で済むのか、交換を考える段階なのかがはっきりします。
止まった理由を軽視せず、「内部で何が起きているのか」という視点で判断することが、結果的に安全面でも、コスト面でも、もっとも損をしない選択につながります。

