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トリガー条項とは?ガソリン税の仕組みをわかりやすく解説|2026年最新

ガソリンノズルを車の給油口に差し込み、給油している様子
Yuta
記事監修者
現:ガス会社に勤める兼業WEBライター。所持資格はガス開栓作業に必要な高圧ガス販売主任者二種、ガス工事に必要な液化石油ガス設備士、灯油の取り扱いに必要な危険物乙四種、その他ガス関連資格多数と電気工事士などの資格も多数所持。

ガソリンスタンドの価格表示を見て、「なぜこんなに税金が高いのだろう」と感じたことはないでしょうか。
ガソリン1リットルには複数の税金が積み重なっており、その仕組みは意外と複雑です。
なかでも「トリガー条項」は、ガソリン価格の高騰を抑えるための安全弁として設けられながら、長年にわたって使われてこなかった制度です。

2025年12月末にはガソリンの暫定税率(旧暫定税率)がついに廃止され、日本の燃料課税制度は約51年ぶりの大転換を迎えました。
しかし2026年に入ると、中東情勢の緊迫化による原油価格高騰で、せっかくの値下げ効果が相殺されつつある状況です。

この記事では、ガソリン税の基本構造・トリガー条項の仕組みと凍結の経緯・暫定税率廃止の流れ・そして2026年3月時点の現状まで、一般の方にわかりやすく解説します。


目次

ガソリン1リットルにかかる税金の全体像

ガソリン税の内訳とトリガー条項発動による課税停止の仕組みを示した図

ガソリンを給油するたびに、私たちは知らず知らずのうちにさまざまな税金を支払っています。
まずは現在の税金の構造を整理しましょう。

ガソリン税(揮発油税+地方揮発油税)

ガソリンにかかる主な税金は「揮発油税」と「地方揮発油税」の2種類で、これらをまとめてガソリン税と呼びます。

2026年以降は本則税率28.7円/Lのみが適用されています。
かつては本則税率28.7円に加え、旧暫定税率として25.1円が上乗せされており、合計53.8円/Lのガソリン税が課されていました。
旧暫定税率分は2025年12月31日をもって廃止されました。

石油石炭税・地球温暖化対策税

ガソリン税のほかに、石油石炭税(2.04円/L)と地球温暖化対策税(0.76円/L)も課されており、合計で約2.8円/Lが上乗せされます。

消費税(二重課税の問題)

さらに、ガソリン本体価格にガソリン税・石油石炭税を加えた合計額に対して、消費税10%が課されます。
つまり、税金に対してさらに税金がかかるいわゆる「タックスオンタックス(二重課税)」の構造になっています。

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税の種類金額(目安)備考
揮発油税(本則)28.7円/L2026年〜の適用税率
地方揮発油税(本則)5.2円/L旧暫定税率廃止後の適用
石油石炭税・温暖化対策税約2.8円/L固定
消費税本体価格等の10%税金部分にも課税

旧暫定税率とは何だったのか

暫定税率が導入されたのは1974年のことです。
当時の田中角栄内閣が進めた道路整備計画のための財源として、「2年間の臨時措置」として既存のガソリン税に上乗せする形で導入されました。

しかし「暫定」という名とは裏腹に延長が繰り返され、約51年間にわたって継続されました。
2009年には道路整備のための「道路特定財源」から使い道が限定されない「一般財源」に移行し、名称も「当分の間税率」に変わりましたが、税額は変わりませんでした。


トリガー条項とは何か

ガソリン価格の内訳とトリガー条項の条件(160円超で税率軽減)を示した図

基本的な仕組み

トリガー条項とは、ガソリン価格が一定期間高騰を続けた場合に、ガソリン税の一部を課税停止する制度のことです。具体的には、レギュラーガソリンの全国平均価格が3か月連続で160円/Lを超えた場合に、ガソリン税のうち25.1円/Lの課税が停止される仕組みです。
軽油に課税される軽油引取税も同時に17.1円/Lの課税が停止されます。

発動後にガソリン価格が下がり、全国平均が3か月連続で130円/Lを下回った場合は課税が再開されます。

条件を満たすと「自動的に」発動されるため、引き金(トリガー)にたとえてトリガー条項と呼ばれています。

いつ誕生したのか

2009年の衆院選で「ガソリン税などの暫定税率廃止」を公約に掲げた旧民主党が政権交代を果たしたものの、完全廃止は財政的に困難でした。
その代替措置として、ガソリン価格が高騰したときだけ自動的に上乗せ分の課税をやめる仕組みとして、2010年度の税制改正でトリガー条項が創設されました。

トリガー条項が発動するとどうなるか

発動すると1リットルあたり25.1円の課税が停止されます。
消費税はガソリン税を含む価格に10%がかかるため、消費税の計算対象額も減少し、実質的には約27〜28円程度の値下がり効果があると考えられます。

条件内容
発動条件全国平均小売価格が3か月連続で160円/L超
発動効果ガソリン税から25.1円/L課税停止(軽油は17.1円/L)
解除条件全国平均小売価格が3か月連続で130円/L未満
対象ガソリン・軽油(灯油・重油は対象外)

なぜトリガー条項は凍結され続けたのか

災害で建物が倒壊し、瓦礫が広がる被災地の様子

東日本大震災が引き金に

トリガー条項は2010年に創設されましたが、翌2011年3月に東日本大震災が発生し、復興財源を確保するための特別措置法によって凍結されました。
以来、一度も発動されないまま今日に至っています。

震災直後は燃料の需給が全国的に逼迫していた時期でもありました。
もしこのタイミングでトリガー条項が発動されていれば、発動前に「値下がりを待って給油しない」という買い控えが起き、被災地への燃料供給がさらに滞るリスクがありました。
復興財源の確保という観点からも、凍結はやむを得ない判断でした。

凍結が続いた3つの理由

東日本大震災から10年以上が経過しても凍結が続いた背景には、主に以下の3つの問題があります。

① 年間1.5兆円規模の税収減

トリガー条項が発動されれば、国と地方の税収に年間1.5兆円ほどの穴が開いてしまうという課題があります。
減収分の代替財源をどう確保するか、議論がまとまらないことが凍結解除の最大のハードルでした。

② 買い控えや流通混乱のリスク

発動・解除のタイミングで大幅な価格変動が生じ、税率引き下げ前の買い控えや逆に税率引き上げ前の駆け込み購入などにより、ガソリンスタンドなど小売現場が混乱するおそれがありました。
過去の教訓として、2008年4月に暫定税率が一時的に失効した際には、全国のガソリンスタンドで長い行列が生じた事例があります。

③ 灯油・重油が対象外

トリガー条項はガソリンと軽油にしか適用されず、灯油や重油は対象外です。
寒冷地の家庭暖房に欠かせない灯油や、農業・漁業・産業用ボイラー向けの重油が値下がりの恩恵を受けられないのは、公平性の観点から大きな問題でした。


トリガー条項と補助金の違い

ガソリン価格の高騰対策として、政府がトリガー条項の凍結解除の代わりに採用してきたのが、石油元売り会社への補助金(燃料油価格激変緩和補助金)です。

両者の違いを整理すると、次のようになります。

比較項目トリガー条項補助金(激変緩和措置)
仕組み税率を自動引き下げ石油元売りへ補助金支給
対象燃料ガソリン・軽油のみガソリン・軽油・灯油・重油・航空燃料
価格への反映税率変更のためシンプル補助金を通じて間接的に抑制
財政への影響恒久的な減収(税収減)必要な期間だけ支出(柔軟に調整可)
混乱リスク発動・解除時に買い控えなど発生しやすい段階的調整で混乱を抑制しやすい
対応の柔軟性条件を満たせば自動発動政府判断で補助単価を随時調整可能

補助金方式は対象燃料が広く、段階的な調整がしやすいメリットがあります。
一方で、国の予算から直接出費が続くため財政負担が重く、長期化すると課題になります。


暫定税率廃止へ―2025〜2026年の大きな動き

暫定税率が廃止された場合のガソリン価格構成と税額の変化を示した図

歴史的な廃止が決定

2025年11月28日、ガソリン税の旧暫定税率を廃止するガソリン減税法が参院本会議で可決・成立しました。
ガソリン1リットルあたり25.1円分の旧暫定税率が2025年12月31日に廃止され、軽油にかかる17.1円分は2026年4月1日に廃止される運びとなりました。

2024年の衆院選で国民民主党が大きく議席を伸ばし、与党が少数与党となったことで政治的な環境が一変しました。
国民民主党が強く主張してきた暫定税率廃止が、ついに実現した形です。

廃止直前に補助金を段階的に拡充

暫定税率廃止のタイミングでガソリン価格が急激に変動しないよう、政府は廃止前に補助金を段階的に引き上げました。

ガソリンへの補助金は2025年11月13日に10円から15円に、11月27日に20円に、12月11日に旧暫定税率と同額の25.1円へと段階的に増額されました。
これにより、12月末の暫定税率廃止時点では「補助金がなくなり、かわりに税金が下がる」という形で、消費者が体感する価格を大きく動かさない工夫がされていました。

ポイント:廃止日=即値下がりではありません

暫定税率の廃止日(12月31日)当日に一気にガソリン価格が25.1円下がるわけではありません。補助金の段階的な拡充と税率廃止を組み合わせることで、価格変動を最小限に抑える移行措置がとられました。価格への反映にはガソリンスタンドの在庫の入れ替えも影響するため、数日〜1週間程度の遅れが生じることがあります。

トリガー条項はどうなったか

暫定税率廃止が決まる一方、トリガー条項の凍結解除については別の扱いとなりました。
国民民主党は凍結解除も同時に求めていましたが、政府は発動時の税収大幅減や買い控え・流通混乱のリスクを理由に否定的な姿勢を示しました。

結果的に、暫定税率そのものを廃止するという形で決着したため、トリガー条項はその役割を事実上終えました。
課税を停止する対象となる「上乗せ税率」そのものがなくなったからです。


2026年現在のガソリン価格状況

暫定税率廃止の効果が相殺された

2025年12月31日にガソリン暫定税率が正式に廃止されましたが、2026年に入り中東情勢の急変に伴う原油価格高騰により、暫定税率廃止による値下げ効果はほぼ相殺されている状況です。

2026年3月9日時点のレギュラーガソリン全国平均は161.8円/L(前週比+3.3円)で4週連続値上がりが続いており、一部スタンドでは196円に達するなど急騰が始まっています。

政府が緊急補助金を再開

政府は2026年3月19日出荷分から緊急激変緩和措置を再開し、全国平均の小売価格を170円程度に抑える方針を打ち出しました。
暫定税率廃止→補助金終了→原油高騰→再び補助金開始、という流れが繰り返されています。

ガソリン価格は税制だけでなく、原油の国際価格や為替レートに大きく左右されることを、改めて示す状況となっています。

軽油の暫定税率廃止は2026年4月に

ガソリンに続き、2026年4月1日からは軽油引取税の旧暫定税率(17.1円/L)も廃止される予定です。
軽油はトラックや重機、農機具などに広く使われており、廃止後は物流コストや農業コストの軽減にも波及効果が期待されています。


家計への影響をわかりやすく整理

暫定税率廃止によって、家庭のガソリン代はどのくらい変わるのでしょうか。

政府の試算によると、暫定税率の廃止は1世帯あたり年間で約12,000円の負担軽減に寄与するとされています。
毎月のガソリン代が約1,000円浮く計算ですが、実際の軽減額は各世帯の走行距離や燃費によって異なります。

月間走行距離(目安)月間節約額(目安)年間節約額(目安)
500km約828円約9,936円
800km約1,330円約15,960円
1,000km約1,660円約19,920円

※燃費15km/Lとして計算した概算です。実際の節約額は燃費・走行距離・ガソリン価格によって異なります。

また、ガソリン価格の低下は家計の直接的な負担軽減だけにとどまりません。
エネルギーコストの低下は物流費の抑制を通じて食品や日用品の価格安定にも寄与します。
政府の試算では、電気・ガス代支援とガソリン税の暫定税率廃止により、2026年2〜4月の消費者物価指数を、措置がない場合と比べて0.7ポイント程度押し下げる見込みとされています。


よくある質問(Q&A)

Q1. トリガー条項と暫定税率廃止は何が違うの?

トリガー条項は「ガソリン価格が高騰したときに限り、一時的に上乗せ税率の課税をやめる」仕組みです。ガソリン価格が130円を下回れば元の税率に戻ります。一方、暫定税率廃止は上乗せ税率そのものを法律で永続的になくすことで、価格の水準に関わらず税負担が軽くなります。暫定税率がなくなった現在、課税を停止するトリガー条項の対象税率も存在しないことになります。

Q2. 暫定税率廃止後もガソリン価格が高いのはなぜ?

2026年に入り、中東情勢の緊迫化を背景に原油の国際価格が急騰しています。暫定税率廃止による約25円の値下げ効果が、原油高・円安による値上がりで相殺されている状況です。ガソリン価格は税制だけでなく、国際原油相場や為替レートにも大きく左右されます。

Q3. 軽油の暫定税率はいつ廃止されるの?

ガソリンの暫定税率は2025年12月31日に廃止済みですが、軽油引取税の暫定税率(17.1円/L分)は2026年4月1日に廃止される予定です。トラック・バスなど物流に使われる軽油が値下がりすることで、輸送コストの軽減や物価の抑制効果が期待されています。

Q4. 灯油の価格には今回の改正は関係ある?

灯油にはガソリン税(揮発油税)は課されていないため、今回の暫定税率廃止の直接の対象外です。ただし、政府の補助金(激変緩和措置)は灯油も対象として5円/Lの定額支援が行われており、2026年3月に再開された緊急措置でも灯油・重油が含まれています。

Q5. 今後ガソリン価格はどうなる?

原油の国際価格・為替相場・中東情勢など、さまざまな不確定要素があるため、価格の見通しを断言することは困難です。政府の補助金が継続されている間は一定の抑制効果が期待できますが、補助単価の変更や終了のタイミングによっては価格が変動する可能性があります。資源エネルギー庁が毎週公表するガソリン価格調査を参考に、日頃から動向を確認しておくとよいでしょう。


まとめ

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項目内容
ガソリン税の基本揮発油税+地方揮発油税=53.8円/L(旧税率)。2026年以降は本則税率28.7円/L
旧暫定税率1974年導入、約51年間継続した25.1円/Lの上乗せ分。2025年12月31日廃止
トリガー条項全国平均が3か月連続160円超で25.1円/L課税停止。2011年から凍結。暫定税率廃止で事実上の役割終了
軽油の暫定税率17.1円/L。2026年4月1日廃止予定
2026年3月の状況原油高騰で暫定税率廃止の値下げ効果が相殺。政府が緊急補助金を再開

ガソリン税の仕組みは長年の制度改正が積み重なり、複雑な構造をしていました。
今回の暫定税率廃止は、約半世紀ぶりの本格的な税制改革です。
一方で、ガソリン価格は税制だけでなく、国際的なエネルギー情勢や為替レートにも左右されます。
家計への影響を把握しながら、引き続き動向を注視していきましょう。

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この記事を書いた人

「暮らしの設備ガイド」は、給湯器・ストーブ・換気設備など、
家庭の安心と快適を支える“住まいの設備”に関する専門メディアです。

現在もガス業界で設備施工・保守に携わるYuta(ガス関連資格保有者)が監修し、一般家庭向けのガス機器・暖房設備・給湯器交換の実務経験をもとに、現場の知識に基づいた、正確で実用的な情報を発信しています。

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