テレビから突然音が出なくなると、「壊れたのでは?」と不安になる人は少なくありません。
映像は映っているのに音だけが出ないと、つい修理や買い替えを考えてしまいがちです。
しかし実際には、テレビの無音トラブルは本体故障よりも、設定や接続、外部機器が原因になっているケースのほうが多く見られます。
最近のテレビは、サウンドバーやレコーダー、ゲーム機、YouTubeやNetflixなどのネット動画と組み合わせて使う前提で設計されています。
そのため、音声の出力先が自動で切り替わり、気づかないうちに「別の機器側に音が出ている」状態になることも珍しくありません。
これは異常ではなく、環境によっては誰にでも起こり得る現象です。
まずは故障と決めつけず、どこで音が止まっているのかを落ち着いて切り分けることが大切です。
順番に確認していけば、自分で解決できるケースかどうかが見えてきますので、一つ一つ解説していきましょう。
テレビから音が出ないときに確認したい基本チェック

テレビの音が出ない場合、いきなり設定の奥や故障を疑う前に、まずは「操作ミスや出力先の勘違い」で起きやすいポイントから確認するのが近道です。
実際、この段階で解決するケースはかなり多く、数分で元に戻ることも珍しくありません。
ミュート・音量が原因のケース
意外に多いのが、ミュート(消音)や音量設定が原因になっているパターンです。
リモコン操作中に誤って消音ボタンを押していたり、別の機器を操作したつもりで音量を下げてしまっていることがあります。
まずは次の点を順に確認してください。
- 画面やリモコン操作時に「🔇」などのミュート表示が出ていないか
- 音量が「0」や、ほとんど聞こえないレベルまで下がっていないか
- サウンドバーや外部スピーカー用のリモコンで音量を下げていないか
見た目では分かりにくいこともあるため、一度音量を30前後まで上げ直すと判断しやすくなります。これで音が出れば、故障ではありません。
音声出力先が切り替わっている
テレビ本体から音が出ない場合でも、実は音声が外部機器側に出力されているだけ、というケースがあります。
最近のテレビは、接続状況に応じて音の出力先を自動で切り替えることがあり、知らないうちにスピーカーが変更されていることがあります。
よくある出力先の例は以下です。
- サウンドバー
- ホームシアター
- Bluetoothスピーカー
この場合、テレビ自体は正常でも、本体スピーカーからは音が出ません。
設定メニューを開き、音声出力が「テレビスピーカー」になっているかを確認してみてください。
HDMI・外部機器が原因で音が出ないケース

HDMI ARC / eARC の誤作動
サウンドバーをHDMIで接続している場合、
ARC(音声リターン機能)の通信エラーで無音になることがあります。
対処として有効なのは以下です。
- テレビとサウンドバーの電源を一度オフ
- コンセントを抜いて30秒待つ
- 再度接続し直す
これだけで復旧するケースは少なくありません。
レコーダー・ゲーム機だけ音が出ない
「テレビ放送は音が出るが、レコーダーやゲームだけ無音」という場合は、
- HDMIケーブルの劣化
- 接続端子の不具合
- 機器側の音声設定
が原因のことが多いです。
別のHDMI端子に差し替えて確認すると、切り分けが早くなります。
テレビの設定が原因で音が出ない場合

音声形式の不一致
音声設定が「ビットストリーム」「サラウンド優先」などになっていると、
対応していない機器では音が出ないことがあります。
一度、
音声出力形式:PCM(標準)
に変更してみてください。
アプリ・放送局だけ音が出ない
YouTubeやNetflixだけ無音の場合、
- アプリ側の不具合
- 一時的な通信エラー
の可能性があります。
- テレビを再起動
- アプリを終了 → 再起動
で改善するケースが大半です。
故障が疑われるパターン

ここまで設定や接続、外部機器を一通り確認しても音が出ない場合は、テレビ本体側の不具合を疑う段階に入ります。
すべてのケースが即故障というわけではありませんが、次のような状態が重なっている場合は、本体不良の可能性が高くなります。
- 地上波、HDMI、アプリなどどの入力に切り替えても一切音が出ない
- テレビ本体のスピーカーだけでなく、イヤホン端子に接続しても音が出ない
- 電源の入れ直しや再起動、設定の初期化を行っても状況が変わらない
これらに当てはまる場合、音声信号自体が内部で正常に処理されていない可能性が考えられます。
具体的には、スピーカーを制御する基板や、映像・音声をまとめて処理するメイン基板など、内部部品の不具合が原因になるケースです。
この段階になると、設定や操作での改善は難しく、点検や修理の対象になります。
また、使用年数も判断材料のひとつです。購入から8〜10年程度経過しているテレビの場合、部品の供給状況や修理費用によっては、修理より買い替えのほうが現実的になることもあります。
特に基板交換が必要になると、修理費用が数万円単位になることも珍しくありません。
重要なのは、「まだ自分で確認できる余地があるのか」「ここから先は専門対応が必要か」を切り分けることです。
ここまでのチェックを終えても改善しない場合は、無理に使い続けたり自己判断で分解したりせず、修理相談や買い替えを含めて冷静に検討する段階と言えるでしょう。

メーカー別に見られやすい音声の傾向

テレビの音が出ない原因を探っていくと、「同じような症状なのに、なぜか起きやすい場面がメーカーごとに少し違う」と感じることがあります。
これは製品の良し悪しという話ではなく、各メーカーがどんな使い方を想定し、どこを便利にしようとしているかという設計の違いによるものです。
たとえば、外部スピーカーとの連動を重視しているのか、シンプルな操作性を優先しているのか、音声形式の自動切り替えをどこまで任せる設計なのか。
こうした考え方の違いが、結果として「音が出ない」と感じやすい場面の差につながることがあります。
ここでは、不具合や欠陥を指摘するのではなく、音声設定や接続まわりで戸惑いやすいポイントを整理するという視点で、メーカーごとの傾向を紹介します。
実際の動作は機種や環境によって異なるため、あくまで切り分けのヒントとして参考にしてください。
ソニー
ソニー製テレビは、HDMI連動(CEC)や外部音響機器との自動制御が比較的積極的に働く設計になっています。
そのため、サウンドバーやAVアンプを接続している場合、電源の入切や入力切替をきっかけに、音声の出力先が自動で外部機器側へ切り替わることがあります。
テレビ本体は正常に動作していても、
「音は出ているが、別の機器に送られている」
という状態になるため、設定画面で音声出力先がどこになっているかを一度確認すると切り分けがしやすくなります。
パナソニック
パナソニック製テレビでは、HDMI ARC(またはeARC)を使った接続時に、音声設定の影響を受けやすい傾向があります。
特にサウンドバーやホームシアターと組み合わせている場合、
・ARC機能が有効か
・テレビ側と機器側の設定が一致しているか
といった点が重要になります。
接続自体に問題がなくても、設定の組み合わせによっては音が出ない、または一時的に無音になることがあるため、ARC関連の設定を一度見直すことで改善するケースがあります。
LG
LG製テレビでは、音声出力形式の設定が影響することがあります。
音声形式が「自動」や「ビットストリーム」になっている場合、接続している機器がその形式に対応していないと、音が出ない、または特定の入力だけ無音になることがあります。
このような場合は、音声出力形式を
PCM(標準的な形式)
に変更することで、音が出るようになるケースがあります。
これは不具合ではなく、対応形式の違いによる挙動です。
メーカー別情報を見るときの注意点
ここで挙げた内容は、あくまで「起こりやすい傾向」を整理したものです。
同じメーカーでも、
・発売年
・シリーズ
・接続している機器
によって挙動は変わります。
そのため、メーカー名だけで故障や異常を判断するのではなく、
設定・接続・音声出力の状態を一つずつ確認する
という基本的な切り分けが重要になります。
よくある質問(FAQ)
Q1. テレビの音が急に出なくなりましたが、自然に直ることはありますか?
一時的な設定のズレや外部機器との連動が原因の場合、電源の入れ直しや接続のし直しで音が戻ることはあります。ただし、何度か試しても改善しない場合は、原因を切り分けて確認することが大切です。
Q2. 画面は映るのに音だけ出ないのは故障ですか?
必ずしも故障とは限りません。音声出力先が外部スピーカーに切り替わっていたり、音声設定が合っていないだけのケースも多く見られます。まずは設定や接続状況を確認してください。
Q3. HDMI機器を外したら音が出ました。これは異常ですか?
異常ではありません。HDMI接続しているレコーダーやサウンドバー側に音声が送られていた可能性があります。テレビスピーカーから音を出したい場合は、音声出力先の設定を見直すことで解決することがあります。
Q4. イヤホンでは音が聞こえるのに、テレビ本体からは出ません。
この場合、テレビ本体のスピーカー側に不具合がある可能性が考えられます。設定を確認しても改善しない場合は、修理や点検を検討する判断材料になります。
Q5. 修理と買い替え、どちらを選ぶべきですか?
使用年数が8〜10年程度の場合、修理費用が高くなりやすく、買い替えのほうが現実的になることもあります。一方、比較的新しい機種であれば修理対応が適している場合もあるため、状況を整理したうえで判断すると後悔しにくくなります。
まとめ:テレビの音が出ないときは「切り分け」がすべて

テレビの音が出ないトラブルは、見た目の症状だけを見ると深刻に感じやすいものですが、実際には原因の多くが「設定」「接続」「外部機器」といった比較的シンプルな部分にあります。
映像が映っている以上、いきなり本体が完全に故障しているケースは多くありません。
だからこそ、焦って修理や買い替えに進む前に、状況を整理することが重要になります。
確認の順番としては、
設定 → 接続 → 外部機器 → 本体
という流れを意識すると、原因を無駄なく切り分けることができます。
ミュートや音声出力先の設定を確認し、次にHDMIやケーブルの接続状態、さらにサウンドバーやレコーダーなど外部機器の影響を見ていく。
この順番を守るだけで、「どこまでが自分で確認できる範囲か」が自然と見えてきます。
一つずつ確認しても改善しない場合は、その時点で初めて本体側の不具合を疑えば十分です。
逆に言えば、ここまで整理できていれば、修理相談をする場合でも状況を正確に伝えられるため、無駄な点検や余計な費用を避けやすくなります。
「音が出ない=壊れた」と決めつけるのではなく、原因を切り分けながら判断すること。
それが、最短で解決に近づき、後悔のない選択につながる考え方といえるでしょう。

