床暖房の種類を調べ始めると、温水式、電気式、ガス、灯油、ヒートポンプ、蓄熱式と、似た言葉が一気に出てきます。
ところが、これらは同じ物差しの上に並んでいません。
「どうやって暖めるか」という方式の話と、「何で熱をつくるか」という熱源の話が、ごちゃ混ぜになっているのです。
この記事では、方式と熱源の二段階に分けて床暖房の種類を比べ、暮らしに合う選び方まで順に見ていきましょう。
どの種類が合うかは、暖める範囲と使い方で大きく変わります。
最初に地図を持っておくだけで、業者の説明も見積書も、ずいぶん読みやすくなるはずです。
種類は「方式」と「熱源」の二段階で考える
床暖房の種類は、二段階で考えます。
一段目は方式。
床下に温水を流す「温水式」か、電気ヒーターを敷き込む「電気式」かを選びます。
二段目は熱源。
温水式を選んだときだけ、その温水をガス・灯油・ヒートポンプのどれでつくるかを決めます。
電気式には、この二段目がありません。
電気で発熱する、の一択だからです。
夜間に熱をためて昼に使う蓄熱式は、電気式の仲間と考えれば混乱しません。
順番を逆にすると、話がかみ合わなくなってしまいます。
「ガスと灯油ならどっちが得か」と悩む前に、そもそも温水式にするのかどうか。
そこが先といえるでしょう。
仕組みそのものを知りたい方は、床暖房の仕組みもあわせてご覧ください。
温水式と電気式、最初の分かれ目
| 比べる点 | 温水式 | 電気式 |
|---|---|---|
| 熱のつくり方 | 熱源機でつくった温水を循環させる | 床下のヒーターが直接発熱する |
| 屋外の機器 | 熱源機が必要 | 不要 |
| 得意な広さ | リビングなど広い範囲 | 書斎や寝室など狭〜中規模 |
| 初期費用の傾向 | 高め | 抑えやすい |
| 熱源の選択肢 | ガス・灯油・ヒートポンプ | 電気のみ |
表からは、ひとつの構図が見えてきます。
温水式は大がかりだが、広い面積に強い。
電気式は手軽だが、広くなるほど割高になりやすい。
温水式には熱源機と配管が必要で、そのぶん工事も費用も重くなりました。
かわりに得られたのが、リビングのような広い空間を長時間暖め続ける力です。
一方の電気式は、熱源機も配管もいりません。
小さな部屋への後付けには向いていますが、広い床に敷き詰めると、電気代が気になってくるでしょう。
広く長く暖めるなら温水式。
狭く手軽に暖めるなら電気式。
まずはこの大まかな線引きから入るのが、考えやすい順序です。
もっとも、断熱性能や地域の寒さによって、答えが入れ替わることも珍しくありません。
両者を細かく見比べたいなら、温水式と電気式の違いが参考になります。
温水式は熱源で性格が変わる
温水式の中身は、熱源によってずいぶん表情が違うもの。
同じ「温水式」と呼ばれていても、暮らしやすさを左右するのは、実は熱源のほうだったりするもの。
三つの熱源を、順に見ていきましょう。
| 熱源 | 温水のつくり方 | 強み | 気をつけたい点 |
|---|---|---|---|
| ガス | ガスを燃やして加熱する | 火力に余裕があり、広い面積向き | 機種が都市ガス用とLPガス用で分かれる |
| 灯油 | 灯油を燃やして加熱する | 配管がない地域でも使え、寒冷地向き | タンクへの給油が必要 |
| ヒートポンプ | 空気の熱を集めて温水にする | 燃焼せず、排気ガスが出ない | 外気温の影響、霜取り、室外機の置き場 |
ガス温水式
ガスを燃やして温水をつくる、いちばんなじみのある温水式。
給湯器と暖房の機能が一体になった熱源機も多く、機器をひとまとめにできるのは便利なところでしょう。
火力に余裕があるため、広いリビングでも暖まり方に不満が出にくい、というのが強みです。
気をつけたいのは二点。
都市ガスとLPガスで機種が分かれること、そしてガス代が契約先の料金で大きく変わることです。
LPガスを使っているご家庭は、暖房期のガス代がどう動くか、あらかじめ契約先に聞いておくと安心できます。
灯油式
灯油を燃やして温水をつくる方式。
ガスの配管が来ていない地域でも使えるうえ、寒さの厳しい土地では、昔から根強く選ばれてきました。
ただ、タンクへの給油だけは避けて通れません。
大型の屋外タンクにすれば回数は減る。
それでも、残量を気にかける暮らしになるのは確かです。
その手間を苦にならないと思えるか。
灯油式を選ぶかどうかは、案外そこで決まるものです。
ヒートポンプ式
空気中の熱をくみ上げ、電気の力で温水をつくる方式。
燃やさないので、屋外に排気ガスが出ることもなし。
とはいえ、外気温が下がると能力が落ちやすく、霜取り運転も入ってきます。
室外機の置き場所と運転音への配慮も、忘れてはいけない点でしょう。
寒冷地で検討するなら、その地域の気温でしっかり働く機種かどうか、必ず確かめてください。
温水式の中でどれにするか迷ったときは、床暖房の熱源の選び方が判断の助けになります。
電気式と蓄熱式
電気式
床下に敷いたヒーターが直接発熱し、床を暖める方式。
熱源機も配管もいらず、構成はとてもシンプル。
書斎、寝室、洗面所のように「ここだけ暖めたい」という場所には、相性のよい方式でしょう。
ヒーターには電熱線、PTC、カーボンなどの種類があり、発熱の仕方がそれぞれ違います。
弱点は、面積が増えるほど電気代が重くなりやすいところ。
リビング全体に敷くかどうかは、慎重に考えたほうがよいでしょう。
蓄熱式
電気料金が割安な夜間に熱をため、日中に少しずつ放出する方式。
運転する時間帯と、暖かさを使う時間帯をずらせるのが最大の特徴といえます。
反面、ためた熱を使い切ってしまうと、暖房力が足りなくなります。
夜間の電気料金が安いプランを契約できるか。
住まいの断熱性能は十分か。
この二つがそろってはじめて、蓄熱式は本来の力を発揮するのです。
種類ごとの早見表
ここまでの内容を、いったん表にまとめておきましょう。
| 種類 | 向く範囲 | 初期費用の傾向 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| ガス温水式 | 広い | 高め | ガスの契約、機種の適合 |
| 灯油式 | 広い | 高め | 給油の手間、タンク管理 |
| ヒートポンプ式 | 広い | 高め | 外気温、霜取り、室外機 |
| 電気式 | 狭〜中 | 抑えやすい | 面積が増えると電気代が重い |
| 蓄熱式 | 中 | やや高め | 暖房力の不足、夜間プラン |
あくまで傾向なので、実際の暖かさや費用は、機種や断熱性能、地域で変わるものです。
暮らし方から種類を決める
カタログの比較だけでは、決め手が見えにくいもの。
そんなときは、家族の過ごし方から逆算してみましょう。
在宅時間が長く、リビングで家族が長く過ごす家庭。
広い面積を安定して暖められる温水式が、第一候補です。
使える熱源と屋外の設置スペースが、そのまま熱源選びの決め手になります。
共働きで、帰宅後の数時間しか使わない家庭ではどうでしょう。
使う時間が短ければ、ランニングコストの差は小さくなるものです。
立ち上がりの速さやタイマーの使いやすさ、そして初期費用とのバランスで選ぶのが、現実的な考え方です。
暖めたいのが書斎や寝室だけなら、電気式が有力。
熱源機を置く場所のない住まいでも、導入のハードルは低めでしょう。
夜間の電気料金が安いプランを使える家なら、蓄熱式も視野に入ってきます。
ただし、断熱が弱い家では暖房力が足りなくなりがちなので、そこは先に確かめておきたいところです。
過ごし方と、検討しやすい種類を並べると、次のようになります。
| 暮らし方 | 検討しやすい種類 | 決め手になること |
|---|---|---|
| 在宅が長く、リビング中心 | 温水式 | 使える熱源、屋外のスペース |
| 帰宅後の数時間だけ使う | 温水式・電気式 | 立ち上がりの速さ、初期費用 |
| 書斎や寝室だけ暖めたい | 電気式 | 電気代、契約容量 |
| 夜間の電気料金が安い | 蓄熱式 | 断熱性能、暖房力 |
同じ家の中でも、部屋ごとに最適な種類は違います。
リビングは温水式、書斎は電気式という組み合わせも、決して珍しくありません。
一つの方式に家全体を合わせようとしなくていいのです。
費用は「初期」と「毎月」に分けて見る
種類を比べるときは、お金の話を二つに分けると、見通しがよくなります。
一つは、工事のときにかかる初期費用。
もう一つは、使い続けるあいだの毎月の光熱費。
温水式は熱源機と配管が必要なぶん、初期費用が大きくなりやすいのが実情です。
一方で、広い面積を暖めるときの毎月の効率は悪くありません。
電気式は初期費用を抑えやすいものの、面積が広いと毎月の電気代がかさんでしまいます。
つまり、どちらが得かは「どれだけの面積を、どれだけの時間使うか」で入れ替わるわけです。
金額の目安は機種や工事内容でばらつくため、同じ条件の見積もりで確かめるのが確実でしょう。
見積もりを頼む前に決めておくこと
種類の見当がついたら、いよいよ見積もりです。
その前に、次の五つを書き出しておくと、業者との話が驚くほどスムーズに進みます。
- 暖めたい部屋と、その広さ
- 使う時間帯と、使う期間
- 使える熱源(ガス・灯油・電気)と、屋外に置けるスペース
- 初期費用の予算と、毎月の光熱費で許せる範囲
- 優先したいこと(費用・暖かさ・工事の手軽さ・光熱費のどれか)
最後の「優先したいこと」は、一つに絞るのがコツ。
全部を満たす種類はまず存在しないので、何を一番にするかが決まっていないと、見積もりを前にして判断がぶれてしまいます。
毎月の電気代の見当をつけたいなら、床暖房の電気代を先に読んでおくと、予算が組みやすくなるはずです。
見積もりは、同じ条件で複数社から取って比べること。
条件のそろっていない見積もり同士では、比べようがないからです。
どの種類でも守りたい注意点
種類が違っても、共通して気をつけたいことはあります。
床暖房に対応した床材を選ぶのは大前提。
立ち上がりに時間がかかるため、タイマー運転で使う心づもりも要ります。
断熱が弱い家では、暖まりにくいうえに光熱費もかさみがちです。
工事の日数や家具の移動の手間、保証と点検の窓口も、契約前に聞いておきたいところでした。
床暖房の上に置く敷物や家具は、方式を問わず、必ず床暖房に対応した製品かを確認してください。
対応していないものを使うと、熱がこもって変形や変色を起こしたり、機器に負担がかかったりするおそれがあります。
よくある質問
Q1. 床暖房には、どんな種類がありますか?
大きくは、温水式と電気式の二つ。
温水式は熱源によってガス・灯油・ヒートポンプに分かれ、電気式の中には、熱をためて使う蓄熱式もあります。
方式と熱源の二段階で整理すれば、迷いにくくなるでしょう。
Q2. 温水式と電気式では、どちらがおすすめですか?
一概には決められません。
広い範囲を長く暖めたいなら温水式、狭い範囲を手軽に暖めたいなら電気式が、検討の出発点です。
暖めたい範囲、使う時間、屋外のスペース、予算を書き出してから、見積もりで比べてみてください。
Q3. ガス・灯油・ヒートポンプは、どう選べばよいですか?
決め手になるのは、使える燃料や設備、地域の寒さ、屋外のスペース、補給の手間の四つ。
ガスが使えれば広い面積を暖めやすく、使えない場合は灯油かヒートポンプが候補に挙がります。
同じ条件で見積もりを取り、初期費用と毎月の費用の両方を並べて見るのが確実です。
Q4. いま家にある床暖房の種類は、どうすれば分かりますか?
手がかりは、屋外に熱源機があるか、リモコンの表記、分電盤の専用ブレーカーなど。
型番や取扱説明書が残っていれば、それがいちばん確実でしょう。
床下や機器のカバーは開けず、外から見える範囲だけで確認してください。
分からないときは、メーカーや施工した業者、管理会社に聞くのが早道です。
Q5. 床暖房だけで、冬の暖房はまかなえますか?
住まいの断熱性能や地域の寒さ、使い方によって変わります。
床暖房は立ち上がりがゆるやかで、空気を素早く暖めるのは得意ではありません。
そのため、エアコンと併用している家庭も多く見られます。
空気はエアコン、足元は床暖房、という役割分担が一般的でした。
併用を前提に全体の光熱費を見積もっておくと、あとで慌てずに済むでしょう。
まとめ
床暖房の種類は、方式と熱源の二段階で考えると、すっきり整理できます。
広く長く暖めるなら温水式、狭く手軽に暖めるなら電気式。
温水式ならガス・灯油・ヒートポンプから熱源を選び、電気式には蓄熱式という手もあります。
迷ったら、暖めたい部屋と広さ、使える熱源を紙に書き出すところから。
それだけで、見積もりを見る目が変わってくるはずです。

