ヒートポンプ式床暖房は、空気中の熱を集めて温水をつくり、その温水で床を暖める温水式床暖房の一種です。
ガスや灯油を燃やさずに、電気で熱を運ぶ仕組みのため、燃焼を伴わない熱源として検討する人が増えています。
一方で、外気温の影響や、霜取り運転、設置スペースなど、ヒートポンプならではの考え方もあるため、仕組みを知ったうえで選ぶことが大切です。
この記事では、ヒートポンプ式床暖房が、空気の熱を利用して温水をつくり、床を暖める仕組みを、構成する機器やガス式との違い、向いている住まいとあわせて整理します。
ヒートポンプ式床暖房の仕組みを一言でいうと
ヒートポンプ式床暖房の仕組みは、ヒートポンプで空気中の熱を集めて温水をつくり、その温水を床下の温水パネルに循環させて床を暖めるというものです。
温水式床暖房の基本的な流れは共通で、違いは「温水をつくる熱源」がヒートポンプである点です。
温水が配管を通って床下を巡り、熱を放出した温水がヒートポンプに戻って、再び温められます。
温水式の構成や循環の流れは、温水式床暖房の仕組みを解説した記事で詳しく整理しています。
ヒートポンプとは
ヒートポンプは、熱を「つくる」のではなく、ある場所の熱を別の場所へ「汲み上げて運ぶ」技術です。
エアコンの暖房運転や、冷蔵庫、給湯用のヒートポンプなどにも使われています。
熱を運ぶ仕組み
ヒートポンプは、冷媒と呼ばれる物質が、状態を変えながら循環することで、熱を運びます。
大まかな流れは、次のとおりです。
| 順番 | 動き | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 蒸発 | 低温の冷媒が、外の空気から熱を受け取って気体になる |
| 2 | 圧縮 | 圧縮機で冷媒を圧縮すると、冷媒の温度が高くなる |
| 3 | 凝縮 | 高温の冷媒が、熱交換器で水に熱を渡す(温水ができる) |
| 4 | 膨張 | 冷媒が膨張弁で圧力を下げられ、低温に戻る |
この流れを繰り返すことで、空気中の熱を温水に移します。
圧縮機を動かすために電気を使いますが、熱そのものは空気中から集めるため、電気のエネルギーだけで熱をつくる方式とは考え方が異なります。
燃焼を伴わない
ヒートポンプ式では、ガスや灯油を燃やして熱をつくりません。
そのため、屋外に設置する機器から排気ガスは出ません。
ただし、屋外機は運転中に音が出たり、霜取り運転で排水が出たりすることがあるため、設置場所への配慮は必要です。
構成する機器と役割
ヒートポンプ式床暖房は、主に次の機器で構成されます。
| 機器 | 役割 |
|---|---|
| ヒートポンプ熱源機(屋外機) | 空気中の熱を集め、温水をつくる |
| 温水配管・循環ポンプ | 温水を床下へ運び、戻す |
| 温水パネル(温水マット) | 床下に敷かれ、温水の熱を床へ伝える |
| 貯湯タンクを持つ機種 | 温水をためておき、必要なときに使う |
| リモコン | 運転の入・切、温度設定、タイマーを行う |
機種によっては、床暖房専用の熱源機もあれば、給湯機能とあわせて使える機種もあります。
温水パネルや、配管の基本的な構成は、ガス温水式や灯油式と共通です。
ガス式との違い
ヒートポンプ式とガス式は、どちらも温水式床暖房ですが、温水のつくり方が異なります。
| 比べる点 | ヒートポンプ式 | ガス温水式 |
|---|---|---|
| 熱のつくり方 | 空気中の熱を集め、電気で運ぶ | ガスを燃焼させて熱をつくる |
| 燃焼・排気 | なし | あり(排気の設計が必要) |
| 必要なインフラ | 電気 | ガスの契約・配管 |
| 外気温の影響 | 受けやすい傾向がある | 受けにくい |
| 立ち上がり | 機種により、比較的ゆるやかな場合がある | 比較的早い方式として選ばれやすい |
| ランニングコスト | 電気料金と機器の効率で決まる | ガス料金と使用量で決まる |
どちらが優れているというより、ガスが使えるか、電気料金の契約はどうか、住まいの地域の気候などの条件で、向き不向きが変わります。
ガス式については、ガス温水式床暖房について解説した記事でも整理しています。
ヒートポンプ式床暖房のメリット
ヒートポンプ式には、次のようなメリットがあります。
- ガスや灯油を燃やさず、電気で温水をつくれる
- 屋外に排気ガスが出ない
- ガスの配管が引けない住まいでも、検討できる
- 灯油の補給やタンクの管理が不要
- 温水式のため、広い面積を暖めやすい
- 床の上で火を使わず、風も出ない
特に、ガスが使えない住まい、または燃焼機器を避けたい住まいで、選択肢に入りやすい方式です。
電気の契約や、他の機器との組み合わせ方によっては、光熱費の考え方も整理しやすくなります。
霜取り運転と外気温の考え方
ヒートポンプは、外の空気から熱を集めるため、屋外機の熱交換器が冷たくなります。
外気が低温で湿度が高いと、熱交換器の表面に霜がつくことがあります。
霜がつくと、空気の通りが悪くなり、熱を集める効率が下がるため、霜を溶かす「霜取り(除霜)運転」が自動で行われます。
この間は、温水をつくる運転が一時的に変わるため、床の暖かさに影響が出る場合があります。
霜取り運転は故障ではなく、ヒートポンプが性能を保つための通常の動作です。
ただし、頻度や影響の大きさは、機種や気象条件によって異なります。
寒い地域で使う場合は、霜取りの方式や、寒冷地向けの仕様の有無を、事前に確認しておくと安心です。
他の暖房との組み合わせ方
ヒートポンプ式床暖房は、立ち上がりがゆるやかな場合があるため、他の暖房との役割分担を考えると使いやすくなります。
たとえば、帰宅直後はエアコンで空気を暖め、床暖房が暖まってきたらエアコンを弱める、といった使い方です。
どの組み合わせが合うかは、住まいの断熱性能や、家族の過ごし方によって変わります。
知っておきたい注意点
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| 外気温の影響 | 外の空気が冷たいほど、熱を集める効率や能力が下がる傾向がある |
| 霜取り運転 | 外気が低温で湿度が高いと、屋外機に霜がつき、除霜のために運転が一時的に変わる |
| 設置スペース | 屋外機の置き場所と、周囲に必要な空間が要る |
| 運転音 | 屋外機の音が出るため、隣家や寝室への配慮が必要 |
| 初期費用 | 機器の費用や、工事の規模でかかりやすい |
| 電気の契約 | 電気料金のプランや、契約容量の確認が必要 |
寒い地域では、外気温が低くなる時期に、能力や運転の仕方が変わることがあります。
寒冷地向けの機種を用意しているメーカーもあるため、お住まいの地域の気候に合った機種かどうかを、カタログや業者に確認することが大切です。
床暖房の上に置く敷物や家具は、必ず床暖房に対応した製品かどうかを確認してください。
対応していないものを使うと、熱がこもって変形・変色したり、機器に負担がかかったりするおそれがあります。
ヒートポンプ式が向いている住まい
| 条件 | ヒートポンプ式の考え方 |
|---|---|
| ガスの配管がない | 電気で温水をつくれるため、候補になりやすい |
| 燃焼機器を使いたくない | 燃焼を伴わない熱源として検討できる |
| 屋外機を置く場所がある | 設置スペースと周囲の空間を確保できる |
| 電気の契約に余裕がある | 契約容量やプランを調整しやすい |
| 暖かい地域、または寒冷地向け機種を選べる | 外気温の影響を踏まえて機種を選べる |
一方で、屋外機の置き場がない場合や、外気が極端に低い地域で機種の選択肢が限られる場合は、別の方式も含めて比べる必要があります。
ランニングコストの考え方
ヒートポンプ式のランニングコストは、電気の使用量と、電気料金の単価で決まります。
使用量は、機器の効率、運転時間、設定温度、部屋の広さ、断熱性能によって変わります。
外気温が低いときは、同じ暖かさを得るために、より多くの電力が必要になる傾向があります。
具体的な金額は、機種の能力や、契約する電気料金のプランによって変わるため、見積もり時に自宅の条件で比べることが大切です。
節約の方向としては、次のような工夫が考えられます。
| 工夫 | ポイント |
|---|---|
| タイマーを活用する | 使う時間の少し前から運転して、無駄な運転を減らす |
| 断熱を見直す | 窓や床下の断熱を高めると、熱が逃げにくい |
| 電気料金プランを確認する | 時間帯によって単価が変わるプランを活用できる場合がある |
| 屋外機の周囲を確保する | 吸い込みや吹き出しの妨げを避ける |
熱源機の種類や選び方は、床暖房の熱源機について解説した記事でも整理しています。
導入までの流れ
| 順番 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 暖めたい部屋と広さ、使う時間を整理する |
| 2 | 屋外機を置けるスペースと、電気の契約容量を確認する |
| 3 | 現地調査を依頼し、床の構造や配管ルートを確認してもらう |
| 4 | 見積もりと、使用する機種の仕様を比べる |
| 5 | 工事の日程と、騒音・排水など近隣への配慮を確認する |
| 6 | 工事の完了後、取扱説明書をもとに操作と注意点を確認する |
寒冷地では、冬場の運転の仕方や、霜取り運転、凍結への備えについても、あわせて確認しておくと安心です。
よくある質問
Q1. ヒートポンプ式床暖房は、どうやって温水をつくるのですか?
冷媒が外の空気から熱を集め、圧縮機で圧縮して高温にし、その熱を水に渡して温水をつくります。
熱を空気中から汲み上げて運ぶため、電気のエネルギーだけで熱をつくる方式とは考え方が異なります。
つくられた温水は、配管を通って床下の温水パネルに送られます。
Q2. 寒い地域でも使えますか?
外気温が低くなると、能力や効率が下がる傾向がありますが、寒冷地向けに設計された機種もあります。
お住まいの地域の気候に合った機種かどうかは、カタログの仕様や、地域の事情に詳しい施工業者に確認してください。
冬場の運転の仕方や、霜取り運転の考え方も、事前に聞いておくと安心です。
Q3. 屋外機の音は気になりますか?
屋外機は運転中に音が出ます。
音の大きさは機種や運転状況で変わるため、設置場所は、隣家や寝室との位置関係を踏まえて決めることが大切です。
カタログに記載された運転音も、比較の参考になります。
Q4. ガス式とヒートポンプ式では、どちらがランニングコストが安いですか?
一概には言えません。
ガス式はガス料金と使用量、ヒートポンプ式は電気料金と機器の効率で決まります。
地域、契約内容、使う時間、断熱性能によって結果が変わるため、自宅の条件で見積もりを比べることをおすすめします。
Q5. ヒートポンプ式床暖房は、リフォームでも設置できますか?
多くの住まいで検討できますが、屋外機の設置場所、配管のルート、床の構造、電気の契約容量などの条件によって可否が変わります。
床の張り替えを伴う工事になるため、日数や家具の移動の手間も含めて、現地調査で確認してください。
まとめ
ヒートポンプ式床暖房は、空気中の熱を集めて温水をつくり、床下に循環させて床を暖める方式です。
最後に、この記事のポイントを整理します。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 仕組み | 冷媒が空気の熱を運び、温水をつくって床下に循環させる |
| 特徴 | 燃焼を伴わず、電気で温水をつくる |
| ガス式との違い | ガスの契約は不要。外気温や屋外機の設置条件に配慮が要る |
| メリット | ガスが使えない住まいでも検討できる。排気ガスが出ない |
| 注意点 | 外気温の影響、霜取り運転、運転音、設置スペース、初期費用 |
床暖房の種類全体の比較は、床暖房の種類を比較した記事で確認できます。
まずは、屋外機を置ける場所と、電気の契約内容を確認するところから始めてみてください。

