エアコンを「工事費込み」で買ったはずなのに、当日になって追加料金を提示されて驚いた——そんな経験をお持ちの方は少なくありません。
エアコンは本体を買っただけでは使えず、取り付け工事が終わってはじめて使える家電です。
そして工事費は、家の壁の材質・コンセントの状態・室外機の置き場所といった「その家の条件」で決まるため、事前の見積もりと実際の請求額がずれやすい費目でもあります。
この記事では、量販店やネット通販でいう「標準取り付け工事」に何が含まれ、何が含まれないのかを具体的に整理し、追加費用が発生する条件を「穴」「電源」「室外機」「配管」の4つの軸で解説します。
買い替え時の取り外し費用やリサイクル料金まで含めた、総額の考え方までまとめました。
標準工事費は3.6kW以下で16,500円前後、追加が重なると総額は倍近くになることもある
先に結論をお伝えします。
エアコン1台あたりの取り付け工事費は、標準的な条件で収まればおおむね1万5,000〜2万5,000円程度です。
大手量販店の公表例では、冷房能力3.6kW以下(6〜12畳向け)で16,500円、4.0kW(14畳向け)で20,900円、5.0kW以上(18畳〜)で23,100円、窓用エアコンで7,700円(いずれも税込)と案内されています。
ところが、この金額はあくまで「条件を満たした場合」の値段です。
配管穴が新たに必要、専用コンセントがない、室外機を平地に置けない——といった条件が重なると、追加工事だけで2万〜5万円ほど積み上がることがあります。
つまり、工事費を考えるときは「標準工事費がいくらか」ではなく、自分の家が標準工事の範囲に収まっているかどうかを先に確かめる必要があります。
なお、ここで挙げた金額は特定の販売店が公表している一例です。
販売店・工事会社・地域・時期によって料金体系は異なりますので、実際の費用はご自身が依頼する先の料金表と現地見積もりでご確認ください。
標準取り付け工事に含まれるのは、配管4m・貫通済みの穴・平地置きなど6項目
「標準取り付け工事」とは、新しいエアコンを取り付けるための基本工事のことです。
特別な加工や電気工事をしなくても設置できる家を前提に、作業範囲があらかじめ決められています。
標準工事の範囲は「すでに設置できる状態が整っている家」が前提
大手量販店で公表されている標準取り付け工事の内容は、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 配管パイプ | 長さ4m以内の設置 |
| 連絡電線 | 4m以内の設置(テープ巻き仕上げ) |
| 配管穴 | すでに貫通されている穴がある壁への設置 |
| アース | 既存のアース線への接続 |
| 冷媒処理 | 真空引き |
| 室外機 | 平地置き、またはベランダ置き(プラブロック含む) |
この6項目の範囲で取り付けができる場合は、追加料金なしで工事が行えます。
逆に言えば、「穴が空いている」「専用コンセントが使える」「室外機を地面かベランダに置ける」の3条件がそろっていない家では、ほぼ確実に追加費用が発生すると考えておくのが現実的です。
真空引きについて補足すると、これは配管内の空気と水分を真空ポンプで抜き取る作業で、冷房の効きや機器の寿命に直結します。
標準工事に含まれているのが一般的ですが、格安をうたう業者では省略されるケースもあると指摘されており、見積もり時に実施の有無を確認しておくと安心です。
「工事費込み」表示でも別料金になりやすいもの
販売ページに「標準工事費込み」と書かれていても、次の費目は別枠になっていることがほとんどです。
- 既存エアコンの取り外し費用
- 家電リサイクル料金・収集運搬料金
- 配管カバーの取り付け
- 室外機の特殊設置(壁面吊り・屋根置き・二段置きなど)
- 専用コンセントの新設・電圧の切り替え
- 新規の壁穴あけ
見積もりを比較するときは、本体価格と標準工事費だけを見比べても意味がありません。
上記を含めた総額でそろえて比べることが大切です。
追加費用が出る条件は「穴」「電源」「室外機」「配管」の4つに集約される
追加工事の項目は数十種類ありますが、原因をたどると次の4つに整理できます。
| 追加が出る原因 | 典型的なケース | 費用感の目安 |
|---|---|---|
| 穴 | 新築・初めての設置で配管穴がない/壁がコンクリート | 4,400〜16,500円程度 |
| 電源 | 専用コンセントがない/100Vと200Vが合わない | 1,650〜15,400円程度 |
| 室外機 | 平地・ベランダに置けず壁や屋根に載せる | 3,300〜28,600円程度 |
| 配管 | 4mを超える/室内機と室外機が別の階 | 1mあたり3,850円程度〜 |
この4項目のうち、自分の家がいくつ当てはまるかを事前に把握しておけば、見積もりの金額に驚くことは大きく減らせます。
以下、それぞれを具体的に見ていきます。
配管穴がない場合は壁の材質次第で4,400〜16,500円の穴あけ費用が加わる
すでにエアコンが付いていた部屋を買い替える場合、多くは既存の穴をそのまま使えます。
一方で、これまでエアコンがなかった部屋に新設する場合は、壁に直径65mm程度の貫通穴を開ける作業が必要です。
壁の材質で費用は3倍以上変わる
公表されている穴あけ工事の料金例は、材質によって次のように分かれます。
| 壁の材質 | 料金例(税込) |
|---|---|
| 木造・軽量鉄骨・ALC・窯業ボード | 4,400円〜 |
| タイル | 5,500円〜 |
| コンクリート(壁厚20cmまで) | 16,500円〜 |
| コンクリート(壁厚20cm超) | 別途見積もり |
木造住宅であれば数千円で済みますが、鉄筋コンクリート造のマンションでは1万6,500円以上と、金額が一気に跳ね上がります。
分譲マンションでは外壁への穴あけが管理規約で禁止されていることも珍しくないため、工事を申し込む前に管理組合への確認が必要です。
賃貸物件の場合も、原状回復の扱いをめぐって後々のトラブルになりやすいので、必ず貸主の許可を得てから進めてください。
2006年9月より前に着工した建物では、石綿の事前調査が必要になる
穴あけ工事で見落としがちなのが、アスベスト(石綿)の事前調査です。
建物の解体や改修にあたる工事では石綿の有無を事前に調べることが義務づけられており、令和5年(2023年)10月1日以降に着手する建築物の工事については、この事前調査を有資格者に行わせる必要があります。
直径数センチの配管穴を新設する作業もこの対象に含まれるため、量販店の料金表にも「石綿事前調査」という項目が並ぶようになりました。
実務上の線引きはシンプルで、既存の穴を再利用するなら調査は不要、新規に穴を開けるなら調査が必要という整理になります。
また、石綿の使用が禁止された時期より後に建てられたことが書面で確認できれば、調査対象から外れる扱いが一般的です。
そのため、建築確認通知書や検査済証など着工年月日がわかる書類を工事当日までに用意しておくと、調査費用や対策工事費を抑えられる可能性があります。
書類が見つからず着工日を証明できない場合は、石綿を含む建材が使われている前提で扱われ、対策工事費が上乗せされることになります。
専用コンセントがない場合は回路工事で15,400円前後、電圧切替なら1,650円程度
電源まわりは、追加費用の中でもとくに金額が読みにくい項目です。
エアコンには専用コンセントが必要という前提を押さえる
エアコンは家庭用電気機器のなかでも消費電力が大きく、他の家電と同じ回路を共有すると容量を超えてしまいます。
メーカーの案内でも、エアコンは消費電力が大きく他の家電製品と同時に使用した場合、ブレーカーが作動したり火災や感電のリスクがあるため、専用のコンセントが必要とされています。
専用コンセントが届かないからといって、延長コードやテーブルタップで代用するのは絶対に避けてください。
接触不良や絶縁不良によって発熱し、火災や感電の原因になります。
コンセントの位置が合わないときは、工事業者に位置の移動や増設を相談するのが正しい対処です。
電源工事の内容別・費用の目安
| 状況 | 必要な工事 | 料金例(税込) |
|---|---|---|
| 専用回路がない | 分電盤からの専用回路工事 | 15,400円〜 |
| 100Vの機種から200Vの機種へ買い替え | 分電盤側の電圧切替 | 1,650円〜 |
| プラグの形が合わない | コンセント交換 | 2,200円〜 |
| 分電盤に空き回路がない | 分岐ブレーカー増設 | 4,400円〜 |
| 配線を通す穴が必要 | 電気配線用の穴あけ | 3,300円〜 |
判断の目安として、壁の上部にコンセントがあり、その穴の形が縦2本線ではなく「L字」「横向き」「3つ穴」などになっていれば、エアコン専用コンセントである可能性が高いと考えられます。
また、契約が単相3線式でない住宅で200V機種を選ぶと、引き込み線・分電盤・電力量計まで含めた大がかりな工事が必要になり、費用は数万円から十数万円規模になることもあります。
14畳以上のクラスは200V機種が中心になるため、大きめの機種を検討している方は、購入前に分電盤の状態を確認しておくことをおすすめします。
なお、専用回路の増設やコンセントの交換は電気工事士の資格が必要な作業です。
DIYで行うことは法令上認められていませんので、必ず有資格者に依頼してください。
室外機を平地・ベランダ以外に置くと、7,700〜28,600円の据付費が上乗せされる
室外機の置き場所は、追加費用が最も大きくなりやすいポイントです。
標準工事に含まれるのは、地面に直接置く「平地置き」と「ベランダ置き」の2種類だけです。
| 設置方法 | 既存の穴を使う場合 | 新規に穴を開ける場合 |
|---|---|---|
| 平地置き・ベランダ置き | 標準工事の範囲内 | 穴あけ費用のみ加算 |
| 壁面吊り(3.6kW以下) | 7,700円〜 | 14,300円〜 |
| 壁面吊り(3.7kW以上) | 8,800円〜 | 17,600円〜 |
| 二段置き(3.6kW以下) | 3,300円〜(架台がある場合) | 20,900円〜 |
| 二段置き(3.7kW以上) | 4,400円〜(架台がある場合) | 23,100円〜 |
このほか、屋根置き・立ち下ろしといった特殊な設置も同様の価格帯になります。
また、ベランダの手すりを越えて搬入する場合や、エレベーターのない建物の2階以上へ運ぶ場合には、搬入費として3,300〜5,500円程度が別途かかります。
とくに注意したいのが、二段置き用の架台を新規に用意するケースです。
既存の架台を再利用できるかどうかで、費用は数千円から2万円台まで開きます。
古い架台は錆びが進んで強度が落ちていることがあり、現地確認の結果として「再利用不可」と判断されると、見積もり時より金額が上がります。
ベランダの奥行きが足りず室外機が置けないという相談も増えています。
機種によって室外機のサイズは大きく異なるため、置き場所に不安がある方は室外機が小さいエアコンはどれ?狭いベランダでも設置できるメーカーと機種をサイズ基準で解説もあわせてご覧ください。
配管が4m超・階をまたぐ場合は1mあたり3,850円前後の延長費が発生する
配管の長さも、標準範囲を超えると加算される項目です。
| 内容 | 料金例(税込) |
|---|---|
| 配管延長 2分3厘(1mあたり) | 3,850円〜 |
| 配管延長 2分4厘(1mあたり) | 4,400円〜 |
| 1階→2階の立ち下ろし(7m前後) | 5,500円〜 |
| 1階→3階の立ち下ろし(10m前後) | 7,700円〜 |
| 室内での配管延長加算 | 3,300円〜 |
2分3厘・2分4厘というのは配管の太さを表す規格で、エアコンの能力が大きくなるほど太い配管が使われ、単価も上がります。
延長費は配管ホースとドレンホースそれぞれに発生するため、「1mだけだから」と考えていると想定より高くつくことがあります。
見た目を整える配管カバーも、標準工事には含まれません。
室外用で6,050〜8,800円程度、室内用で8,800〜13,200円程度が目安とされています。
必須ではありませんが、紫外線による配管テープの劣化を抑える効果があるため、日当たりの強い南面・西面では長い目で見ると有効な投資といえます。
見落としやすい小物と処置も、積み上がると数千円単位になる
金額としては小さいものの、見積もり時に説明されずに当日追加される項目があります。
どれも「必ず必要」なものではありませんが、家の条件によっては付けたほうがよいものです。
| 項目 | 内容 | 料金例(税込) |
|---|---|---|
| エアカットバルブ | ドレンホースの逆流による「ポコポコ音」を防ぐ部品 | 3,300円〜 |
| 断熱ドレンホース | 室内機と穴が離れている場合に結露を防ぐ | 1mあたり1,980〜2,200円程度 |
| 防振ゴム | 室外機の振動と運転音を軽減する | 1,100円〜 |
| 配管穴のふさぎ | 使わなくなった穴を塞ぐ処置 | 2,200円〜 |
| 既存配管カバーの取り外し・脱着 | 古いカバーを外す、または一度外して付け直す | 1mあたり550〜2,200円程度 |
このうち、エアカットバルブは高気密住宅やマンションの高層階で効果が出やすい部品です。
換気扇を回したときに室内の気圧が下がり、ドレンホースから空気が逆流して「ポコポコ」という音が出る現象を抑えます。
戸建ての1階など、そもそも気圧差が生じにくい環境では必須ではありません。
断熱ドレンホースは、室内機の位置と配管穴が離れていて、室内側に配管を長く這わせる場合に必要になります。
通常のドレンホースを使うと、冷房時にホースの表面が結露して壁や床を濡らす原因になるためです。
「室内機を穴の真横に付けられない」という間取りでは、あらかじめ加算されるものと考えておくとよいでしょう。
既存カバーの再利用については、注意が必要です。
配管カバーは屋外で紫外線を浴び続けるため、10年ほど経つと樹脂が劣化し、外そうとすると割れてしまうことがあります。
とくに、カバーの継ぎ目にコーキングで防水処理がされている場合は、そのまま再利用できないケースが増えます。
買い替えでは、取り外し工事費とリサイクル料金が別途かかる
既存のエアコンがある部屋で買い替える場合、取り付けとは別に「外す費用」と「捨てる費用」が必要です。
| 費目 | 料金例(税込) |
|---|---|
| 取り外し(平地置き・ベランダ置き) | 4,400円程度 |
| 取り外し(壁面吊り・屋根置き・立ち下ろし) | 6,600円〜 |
| 取り外し(二段置き) | 7,700円〜 |
| 収集運搬料金(販売店に依頼する場合) | 販売店ごとに設定 |
リサイクル料金はメーカーによって550円から2,000円まで幅がある
家電リサイクル法の対象品目であるエアコンには、メーカーごとに定められたリサイクル料金がかかります。
「エアコンは一律◯円」と紹介されていることがありますが、実際には次のように差があります。
| メーカー区分の例 | リサイクル料金(税込) |
|---|---|
| ダイキン工業・パナソニック・東芝ライフスタイル・コロナ | 550円 |
| シャープ・三菱電機・日立グローバルライフソリューションズ・三菱重工冷熱・ハイセンスジャパン | 990円 |
| リンナイ・長府製作所・トヨトミ・アクア | 1,034円 |
| アイリスオーヤマ・ニトリ・山善・マクスゼン | 2,000円 |
料金は改定されることがあるため、処分前に上記の一覧で最新の金額を確認してください。
なお、リサイクル料金は室内機と室外機を合わせた1台分の料金で、片方だけを処分する場合でも金額は変わりません。
ここで注意したいのが、取り外しを自分で行おうとするケースです。
エアコン内部には冷媒ガスが封入されており、正しい手順(ポンプダウン)を踏まずに配管を外すと大気中に放出されてしまいます。
冷媒ガスの放出は環境負荷が大きく、作業中の凍傷や機器の損傷につながる危険もあります。
費用を惜しんで自力で外すのは避け、専門業者に依頼してください。
隠蔽配管と既設配管の再利用は、事前確認しないと当日中止になることがある
新築マンションや高気密住宅では、壁の中に配管を通す「隠蔽配管」が採用されていることがあります。
この場合、通常の露出配管とは工事の内容も費用も大きく変わります。
| 内容 | 料金例(税込) |
|---|---|
| 壁内のスペースに配管を通す | 6,600円〜 |
| 壁内の先行配管へ接続する | 6,600円〜 |
| 配管洗浄 | 33,000円〜 |
隠蔽配管の家では、配管を再利用できるかどうかが工事の可否を左右します。
古い機種で使われていた冷媒と新しい機種の冷媒が異なる場合、配管内に残った旧冷媒用の冷凍機油を洗浄しなければならず、その費用だけで3万円を超えることがあります。
洗浄しても再利用できないと判断されれば、壁を一部解体して配管をやり直すか、設置そのものを断念するという選択になります。
既設配管の再利用については、メーカー側も無条件に推奨しているわけではありません。
機種の組み合わせや配管の状態によって可否が変わるため、購入前に販売店へ「隠蔽配管である」と伝え、可能であれば事前の現地調査を依頼しておくのが確実です。
現地調査を省いて当日を迎えると、工事が中止になり出張費だけが発生する、という事態になりかねません。
依頼先によって、工事費の「決まり方」そのものが違う
同じ工事内容でも、どこに頼むかで料金の提示のされ方が変わります。
金額の高い・安いだけでなく、追加費用の出方や当日の対応力にも差が出ます。
| 依頼先 | 工事費の扱い | 向いているケース |
|---|---|---|
| 家電量販店 | 本体価格に標準工事費を含めた表示が中心。追加は料金表で明示 | 条件が標準的で、料金の透明性を重視したい |
| ネット通販(本体のみ) | 工事は別手配。工事業者を自分で探す必要がある | 本体を安く買い、工事先を自分で選びたい |
| エアコン工事専門業者 | 工事単体で見積もり。特殊な設置に強い | 隠蔽配管・二段置きなど条件が難しい |
| 引っ越し業者(移設) | 取り外し・運搬・取り付けを一括で見積もり | 転居に伴う移設をまとめて頼みたい |
判断のポイントは、自分の家が「標準的」か「特殊」かで依頼先を分けることです。
既存の穴と専用コンセントがあり、室外機をベランダに置けるような家であれば、量販店の標準工事で十分にカバーできます。
一方、隠蔽配管・屋根置き・壁面吊りといった条件がある家では、量販店経由でも結局は下請けの専門業者が施工することになり、事前の情報共有が伝わりにくいことがあります。
条件が難しい家ほど、現地調査ができる工事専門業者に直接相談したほうが、当日のやり直しや中止を避けやすくなります。
なお、ネット通販で本体だけを購入して工事を別手配する場合、本体の受け取りと保管を自分で行う必要がある点にも注意してください。
室内機と室外機を合わせると相応の大きさと重さがあり、工事日まで置いておく場所を確保できるかどうかが現実的な制約になります。
引っ越しに伴う移設は、新規の取り付けより高くつくことが多い
いま使っているエアコンを新居へ持っていく「移設」は、取り外しと取り付けの両方が必要になるため、費用の構造が変わります。
移設で押さえておきたいのは次の3点です。
- 取り外しと取り付けを合わせると、標準的な条件でも2万〜3万円程度になることが多い
- 配管や化粧テープは劣化しているため、新品交換になると別途費用が発生する
- 転居先の壁の材質・コンセント・室外機の置き場所が変わるため、追加工事の条件も一からやり直しになる
さらに、製造から10年前後が経過した機種では、移設費用が新品購入との差を埋めにくくなるという判断軸があります。
移設費に加えて配管の新品交換費がかかると、金額が本体の買い替えに近づくためです。
古い機種は省エネ性能も現行機に劣るため、電気代まで含めて比べると、移設せずに買い替えたほうが有利になるケースは少なくありません。
判断の目安としては、使用年数がおおむね7年以内で、機器に不調がなければ移設を検討する価値があります。
10年を超えていて、なおかつ移設先で追加工事が見込まれる場合は、処分と買い替えを軸に考えるほうが現実的です。
見積もりの段階で確認しておきたい5つのポイント
追加費用のトラブルは、そのほとんどが「聞いていなかった」ことに起因します。
申し込みの前に、次の5点を販売店や工事業者に確認しておくと、当日の想定外を大きく減らせます。
- 配管穴の有無と壁の材質:既存の穴を使えるか、使えない場合の材質は何か
- コンセントの形状と電圧:写真を撮っておき、購入予定の機種と合うかを確認してもらう
- 室外機の置き場所:平地・ベランダに置けるか、置けない場合の設置方法と金額
- 配管の必要長さ:室内機の位置から室外機までの距離をメジャーで測っておく
- 建物の着工年月日:新規穴あけがある場合、証明書類があるか
とくに写真は有効です。
設置予定の壁全体、コンセント周辺、室外機の置き場所、分電盤の4カ所を撮影して見積もり時に共有しておけば、業者側も条件を判断しやすくなります。
夏前や真夏は工事依頼が集中し、現地調査を挟む余裕がないまま当日を迎えるケースが増えます。
条件別の総額イメージを3パターンで整理する
最後に、これまでの費目を組み合わせた総額のイメージをまとめます。
本体価格を除いた「工事関連費用のみ」の目安です。
| ケース | 想定される内訳 | 工事費の目安 |
|---|---|---|
| 木造戸建て・買い替え・平地置き | 標準工事+取り外し+リサイクル | 2万〜2万5,000円程度 |
| マンション・新規設置・専用回路なし | 標準工事+コンクリート穴あけ+石綿調査+専用回路 | 5万〜6万円程度 |
| 戸建て2階・室外機を1階へ立ち下ろし | 標準工事+配管延長+配管カバー+壁面工事 | 4万〜5万円程度 |
同じ「エアコン1台の設置」でも、条件次第で工事費だけが2倍以上変わることがわかります。
本体価格の数千円差を比較するより、自分の家がどのケースに近いかを把握するほうが、総額への影響ははるかに大きいといえます。
よくある質問
Q1. 標準工事費込みと書かれていれば、追加料金は本当にかからないのですか?
標準工事の条件をすべて満たす家であれば、追加料金はかかりません。ただし条件とは「配管が4m以内」「貫通済みの配管穴がある」「室外機を平地かベランダに置ける」「エアコン専用コンセントが使える」といったもので、これらが1つでも欠けると追加工事になります。とくに新規設置の部屋や、築年数の経った住宅、鉄筋コンクリート造のマンションでは追加が発生しやすい傾向があります。申し込み前に設置場所の写真を送り、条件を満たしているか確認してもらうのが確実です。
Q2. 工事費を安く抑える方法はありますか?
現実的な方法は3つあります。1つ目は、現地調査を事前に受けて追加項目を確定させ、複数の見積もりを同じ条件で比べることです。2つ目は、繁忙期である6〜8月を避け、春や秋に依頼することです。3つ目は、既存の配管穴・架台・配管カバーを再利用できるかを確認してもらうことです。一方で、真空引きを省略するような極端に安い工事は機器の寿命を縮めるおそれがあるため、価格だけで選ぶのは避けたほうがよいでしょう。
Q3. エアコンの取り付けを自分でやってはいけないのですか?
配管の接続や真空引きには専用の工具と技術が必要で、施工不良があると冷媒漏れ・水漏れ・室内機の落下といったトラブルにつながります。さらに、専用回路の増設やコンセントの交換は電気工事士の資格がなければ行えない作業です。メーカーの取扱説明書でも、据え付けは販売店または専門業者に依頼するよう明記されています。安全面と保証の面から、取り付け・取り外しとも専門業者に依頼してください。
Q4. 見積もりより当日の請求額が高くなるのはなぜですか?
多くの場合、現地でしか判断できない条件が後から判明するためです。壁の内部に筋交いや配線があって穴あけ位置を変える必要が出た、既存の架台が劣化していて再利用できなかった、コンセントの電圧が想定と違った、といったケースが典型例です。これを防ぐには、申し込み時に設置場所の写真を共有し、可能であれば有料でも事前の現地調査を受けておくことが有効です。追加が発生する可能性のある項目とその金額を、書面で提示してもらうとより安心です。
Q5. 古いエアコンは自分で外して処分すれば安く済みますか?
費用だけを見れば安くなりますが、おすすめできません。エアコン内部の冷媒ガスをポンプダウンで回収せずに配管を外すと、ガスが大気中に放出されてしまいます。作業中の凍傷や、機器・配管の破損といったリスクもあります。また、処分にあたっては家電リサイクル法に基づく手続きが必要で、指定引取場所への持ち込みには家電リサイクル券の事前購入が求められます。手間とリスクを考えると、購入店や専門業者に取り外しと引き取りをまとめて依頼するほうが現実的です。
まとめ
エアコンの工事費は、標準工事費の金額そのものよりも「自分の家が標準の範囲に収まるか」で総額が決まります。
- 標準工事は、配管4m以内・貫通済みの穴・平地またはベランダ置き・既存アースへの接続・真空引きが前提
- 追加費用の原因は「穴」「電源」「室外機の置き場所」「配管の長さ」の4つに整理できる
- 新規の穴あけでは壁の材質と、着工年月日を証明する書類の有無が費用を左右する
- 専用コンセントがない場合の回路工事は1万5,000円前後が目安で、延長コードでの代用は絶対に避ける
- 買い替えでは取り外し費用とリサイクル料金が別途必要で、リサイクル料金はメーカーによって550〜2,000円と幅がある
まずは、設置予定の壁・コンセント・室外機置き場・分電盤の4カ所を写真に撮り、見積もり依頼時に共有するところから始めてみてください。
条件を先に伝えておくだけで、当日の想定外はかなり減らせます。

