「契約はしたけれど、事情が変わってやっぱりやめたい」——リフォームの契約後、こうした状況に直面する方は少なくありません。
そんなとき気になるのが、キャンセル料をどこまで払わなければならないのか、という点です。契約書に「解約時は工事代金の〇%を違約金として頂きます」と書かれていると、その金額をそのまま払うしかないと思い込んでしまいがちですが、実はそう単純ではありません。
この記事では、リフォームを解約する場合のキャンセル料の考え方を、民法・消費者契約法の基本ルールをもとに整理して解説します。
契約後の解約は「注文者の自由」が原則
リフォーム工事の契約は、法律上「請負契約」に分類されます。
民法では、請負契約について、注文者(施主)はいつでも契約を解除できるとされています。
ただし、その代わりに、請負人(施工会社)が被った損害を賠償する必要があります。
つまり、「解約すること自体」は原則として自由にできますが、「無償で解約できるわけではない」という点がポイントです。
ここでいう「損害」とは、単純な違約金という意味ではなく、施工会社が実際に被った損害(すでに発注した資材費、それまでにかかった人件費等)を指すのが基本的な考え方です。
違約金条項がある場合の注意点
契約書に「解約時は工事代金の〇%を違約金として支払う」といった条項が定められていることがあります。
この違約金条項について、消費者契約法では、事業者に生じる平均的な損害額を超える部分は無効になるとされています。
つまり、契約書に「解約金は工事代金の30%」と書かれていたとしても、実際に施工会社が被った損害がそれより少ない場合、その差額分を支払う義務はない、という考え方です。
契約書に記載された違約金の金額をそのまま鵜呑みにせず、実際に発生した損害の内容を確認することが重要です。
ただし、「平均的な損害額」の算定は専門的な判断が必要になることも多いため、納得できない場合は、後述する相談窓口に相談することをおすすめします。
解約のタイミングによる違い
解約のタイミングによって、発生する損害の内容も変わってきます。
| タイミング | 発生しうる損害の例 |
|---|---|
| 契約直後(着工前) | 見積もり作成費用程度で、大きな損害が発生していないことが多い |
| 資材発注後・着工前 | 発注済みの資材費用、キャンセルできない発注分の費用 |
| 着工後 | すでに投入した人件費・材料費、原状回復にかかる費用 |
| 工事完了間近 | ほぼ全額に近い費用が発生している可能性がある |
解約のタイミングが早いほど、施工会社側の実損害は小さく、支払うべき金額も少なくなる傾向があります。
逆に、工事が進んでからの解約は、それだけ実損害も大きくなりやすいため、慎重な判断が必要です。
具体例で見る解約金の考え方
具体的なイメージをつかむため、簡単な例で考えてみましょう。
工事代金200万円のキッチンリフォームで、契約書に「解約時は工事代金の20%(40万円)を違約金として支払う」という条項があったとします。
契約から1週間後、まだ資材の発注も着工もしていない段階で解約を申し出た場合、施工会社側の実損害は、見積もり作成や事務手続きにかかった費用程度にとどまることが多く、実際にはこの実損害の範囲でしか支払い義務が生じないと考えられます。
つまり、契約書に「40万円」と書かれていても、実損害が数万円程度であれば、40万円全額を支払う義務はない、というのが基本的な考え方です。
一方、すでにオーダーメイドのキッチン本体を発注済みで、キャンセルできない状態であれば、その発注費用相当額は実損害として認められる可能性が高くなります。
このように、同じ「解約」でも、進行状況によって支払うべき金額の考え方は大きく変わってきます。
クーリング・オフとの違い
訪問販売等で契約した場合に利用できる「クーリング・オフ」は、ここまで説明してきた解約のルールとは別の制度です。
クーリング・オフの対象になる契約であれば、法律で定められた期間内は、無条件・無償で契約を解除できます。
一方、クーリング・オフの期間を過ぎた後の解約や、店舗での契約等クーリング・オフの対象外となる契約は、ここまで説明してきた民法・消費者契約法の枠組みで判断されることになります。
クーリング・オフの具体的な要件については、リフォームの点検商法に要注意|相談件数とクーリングオフで詳しく解説していますので、該当する可能性がある場合はあわせて確認してください。
契約書に記載しておくべき事項
解約時のトラブルを避けるため、契約書には、あらかじめ次のような事項を明記してもらうことが望ましいとされています。
- 解約時の損害算定の考え方(何にいくらかかるか、内訳が示されるか)
- 資材の発注タイミング(早期に発注される資材があるか)
- 解約の申し出方法(書面での通知が必要か等)
契約書全般の確認ポイントについては、リフォーム契約書のチェックポイント|口約束の「追加工事」で揉めないためにで詳しく解説していますので、契約前にあわせてご確認ください。
解約を申し出る際の進め方
実際に解約を申し出る場合は、次の手順で進めることをおすすめします。
- できるだけ早く、書面(メール等の記録が残る形)で意思表示する:口頭だけの申し出は、後から「言った」「言わない」のトラブルになりやすい
- 解約に伴う費用の内訳を提示してもらう:請求される金額の根拠を確認する
- 提示された金額に納得できない場合、専門窓口に相談する:住まいるダイヤルや消費生活センターに相談し、妥当性を確認する
- 合意した内容は書面で残す:解約に関する最終的な合意内容も、書面で残しておくことが望ましい
提示されたキャンセル料の金額に納得できない場合、その場ですぐに支払いに応じる必要はありません。
トラブルが起きた際の相談窓口については、リフォームでトラブルが起きたら?無料で相談できる「住まいるダイヤル」の使い方で詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
よくある質問
Q. リフォームの契約は、一度結んだら解約できませんか?
A. 解約すること自体は、民法上、原則として注文者の自由にできるとされています。ただし、施工会社に生じた損害を賠償する必要があります。
Q. 契約書に書かれた違約金は、必ずそのまま支払う必要がありますか?
A. 必ずしもそうとは限りません。消費者契約法では、事業者に生じる平均的な損害額を超える違約金条項は無効とされています。実際に発生した損害の内容を確認することが重要です。
Q. どのタイミングで解約すれば、キャンセル料が安く済みますか?
A. 一般的には、着工前・資材発注前など、早いタイミングでの解約ほど、施工会社側の実損害が小さく済む傾向があります。解約を検討している場合は、できるだけ早く意思表示することをおすすめします。
Q. クーリング・オフと通常の解約は何が違いますか?
A. クーリング・オフは、対象となる契約であれば、法律で定められた期間内に無条件・無償で解除できる制度です。その期間を過ぎた後の解約は、民法・消費者契約法の枠組みで判断されることになります。
Q. 提示されたキャンセル料に納得できない場合、どうすればいいですか?
A. その場ですぐに支払いに応じず、住まいるダイヤルや消費生活センターなどの専門窓口に相談し、金額の妥当性を確認することをおすすめします。
Q. オーダーメイドの設備を発注済みの場合、解約は難しいですか?
A. キャンセルできない発注済みの資材費用は、施工会社側の実損害として認められやすくなります。発注前の段階であれば、実損害はより小さく抑えられる傾向にあるため、解約を検討している場合はできるだけ早く申し出ることが重要です。
まとめ
リフォームの解約は、民法上、注文者の自由にできるのが原則ですが、施工会社に生じた実損害を賠償する必要があります。
契約書に記載された違約金の金額をそのまま受け入れる前に、その根拠となる実損害の内容を確認し、納得できない場合は専門窓口に相談することをおすすめします。
何より、解約に至らないよう、契約前に工事内容・費用・スケジュールを十分に検討しておくことが、最も確実な備えといえるでしょう。
とはいえ、生活状況の変化はどうしても起こり得るものです。もし解約という選択を迫られたときは、慌てて言われるままに支払うのではなく、落ち着いて実損害の内容を確認する姿勢を忘れないようにしてください。

