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ガスのガバナとは?役割・仕組み・都市ガスとLPガスの違いまで専門的にわかりやすく解説

Yuta
記事監修者
現:ガス会社に勤める兼業WEBライター。所持資格はガス開栓作業に必要な高圧ガス販売主任者二種、ガス工事に必要な液化石油ガス設備士、灯油の取り扱いに必要な危険物乙四種、その他ガス関連資格多数と電気工事士などの資格も多数所持。

ガスは家庭や工場の設備を動かすために欠かせないエネルギーですが、安全に使うためには「適切な圧力」で供給することが絶対条件です。
ガスは遠くまで送る時は高い圧力、家庭や工場で使う時は低い圧力と、用途によって求められる圧力がまったく異なります。

この圧力を正確に整えるために使われる装置が ガバナ(整圧器) です。
都市ガス設備では必ず設置され、ガス供給網の中枢機器として非常に重要な役割を担っています。

この記事では、
「ガス ガバナとは何か?」
「どのような仕組みで圧力を整えているのか?」
「点検が必要な理由は?」
「LPガスとの違いは?」

といった疑問を、現場の実情に沿ってわかりやすくまとめます。


目次

ガスのガバナとは?

ガバナとは、ガスを安全に利用するために 高圧から中圧・低圧へ段階的に減圧し、一定の圧力を保つ機器です。
都市ガスの供給網で必ず使用され、ガス会社・工場・大規模施設などに設置されています。

ガスは圧力が高すぎても低すぎても正常に燃焼しません。
そのため「圧力を適正範囲に保ち続ける」ことが、ガス供給における最も基本的な安全対策となっています。


都市ガスはどのように家庭へ届くのか?

都市ガスの供給までの流れを表したイラスト

(※:西部ガス公式HPより引用)

都市ガス(天然ガス)は、以下の流れで運ばれます。

  1. 海外から輸入したLNGをLNG基地で気化
  2. 熱量調整・付臭後、高圧で送出
  3. ガバナステーションで高圧 → 中圧へ減圧
  4. 地区ガバナで中圧 → 低圧へ減圧
  5. 地中の導管を通して家庭・工場へ供給

この“減圧の階段”がなければ、家庭のガス機器は安全に動作できません。
ガバナは都市ガス供給網の中で 圧力を安全な値に保ち、安定供給を支える心臓部 といえる存在です。


ガバナの仕組み:電気を使わず圧力だけで自動制御する機構

代表的なガバナは 直動式 と呼ばれるタイプで、内部に次のような部品が組み込まれています。

  • ダイヤフラム(圧力検知の中心部)
  • スプリング
  • 上流と下流を仕切る弁
  • 調整機構・遮断機構

ガスを使うと下流の圧力が下がり、
→ 弁が開いてガスを供給。

ガスの使用が止まると圧力が戻り、
→ 弁が閉まって供給を抑える。

このように導管内の圧力変化のみで自動作動するため、停電時でも安定して動作します。
ガス供給において極めて信頼性の高い構造です。


ガバナ内部のダイヤフラムは確実に劣化する

ガバナ内部の要となる ダイヤフラム(ゴム膜) は、必ず経年劣化します。

  • ひび割れ
  • 硬化
  • 変形
  • 密閉性の低下

外観が綺麗でも、内部は劣化しているケースが非常に多く、
「見た目では判断できない」 ことがガバナの厄介な点です。

劣化を放置すると…

  • 供給圧力が安定しない
  • ガス警報器が頻繁に作動する
  • バーナーが不安定燃焼を起こす
  • ガス漏れにつながる
  • 工場ラインが停止する

などのトラブルを引き起こします。

そのため、
年1回の点検・6年ごとの分解点検・15年で交換
が重要になります。


都市ガスの安全対策とは?

地震による導管破損でガスが漏れれば、火災につながる危険があります。
そこで、都市ガス事業者は地区ガバナに次の設備を設置しています。

  • SIセンサ(地震計)
     → 一定以上の揺れで自動的にガスを遮断
  • 通信機器
     → 圧力・揺れのデータを本部へ送信
  • 遠隔遮断システム
     → 異常がある区域は本部から弁を閉止

現在では、ガス供給の再開(復旧)も遠隔で行えるシステムが整備されつつあり、大規模災害時の復旧スピードが向上しています。


LPガス(一般家庭・店舗)にはガバナを使わない?

LPガスは都市ガスとは供給方式がまったく異なり、一般家庭や小規模店舗ではガバナは使用しません。

LPガスでは、

  • LPガス容器(ボンベ)
  • 調整器(1次調整器・2次調整器)
  • ガスメーター(マイコンメーター)

という構成で圧力調整・安全監視が行われています。

特にマイコンメーターは、

  • 圧力異常
  • 過流量
  • 長時間使用
  • 振動(地震)
  • 流量の不自然な変動

などを常時監視し、異常時には自動遮断します。

そのため、
「急にガスが噴き出す」「異常な高圧が家庭内に流れ込む」
といったことは現実的に起こりません。

LPガスと都市ガスでは供給方式がまったく違うため、ガバナが使用される状況は限られているのが実際のところです。


よくある質問(FAQ)

Q1. ガバナはどの施設に設置されるものですか?家庭にもあるのでしょうか?

ガバナは都市ガスの供給設備として使用されるもので、主にガバナステーション・地区ガバナ・工場敷地内といった中規模〜大規模の供給ポイントに設置されます。


Q2. ダイヤフラムはどれくらいで劣化しますか?

設置環境にもよりますが、一般的には5〜10年で顕著な劣化が見られる場合があります。
15年以上無点検で使い続けるのは非常に危険です。


Q3. ガバナが故障するとどんな症状が出ますか?

  • 供給圧が安定しない
  • バーナーが点火しにくい
  • ガス警報器が頻繁に作動する
  • 異音・振動が出る
    などの症状が現れます。

Q4. LPガスの家庭にはガバナがないのですか?

はい。一般家庭・小規模店舗にはガバナは使用されず、調整器とマイコンメーターが圧力管理を行います。


Q5. 地震が起きた場合、ガバナはどう動作しますか?

都市ガスの地区ガバナはSIセンサで強い揺れを検知すると自動遮断します。
併せて本部からの遠隔操作で広域停止が可能です。


ガバナの仕組みと点検が“安心して使えるガス環境”を支えている

ガバナは、都市ガスを安全に利用するために不可欠な設備であり、圧力調整・安定供給・災害時の自動遮断など、ガス供給網の根幹を支える役割を果たしています。
普段は動作音もなく目につきませんが、地域一帯のガスを支える“無人の安全装置”として、24時間静かに働き続けています。

その一方で、内部には劣化が避けられないゴム製ダイヤフラムなどの部品が含まれており、見た目がきれいでも内部は確実に傷んでいきます。
ガバナの性能が落ちれば、圧力の不安定化やガス漏れなど重大トラブルの原因となるため、年1回の点検や6年ごとの整備などといった計画的なメンテナンスが、安全運用の最も重要なポイントとなります。

また、一般家庭や小規模店舗のLPガス供給では基本的にガバナは使用されず、調整器とマイコンメーターの組み合わせによって圧力調整と安全監視が行われます。
都市ガスとLPガスは同じ“ガス”であっても供給方式が大きく異なるため、設備構成や安全装置の仕組みも全く違う点を理解しておくことが大切です。

ガス設備は日常生活や事業活動の基盤ですが、仕組みを正しく理解し、適切なメンテナンスを行えば、長く安全に使い続けることができます。
ガバナが担う役割を知ることは、ガスを使うすべての人にとって、安心を支える大切な知識といえるでしょう。

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この記事を書いた人

「暮らしの設備ガイド」は、給湯器・ストーブ・換気設備など、
家庭の安心と快適を支える“住まいの設備”に関する専門メディアです。

現在もガス業界で設備施工・保守に携わるYuta(ガス関連資格保有者)が監修し、一般家庭向けのガス機器・暖房設備・給湯器交換の実務経験をもとに、現場の知識に基づいた、正確で実用的な情報を発信しています。

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