キッチンのコンロを買い替えたり、住まいを選んだりするとき、「まわりはIHとガス、どちらが多いんだろう?」と気になる方は多いのではないでしょうか。
オール電化のイメージからIHが一気に主流になった印象を持つ方もいれば、「やっぱりガスが多いはず」と考える方もいて、感覚は人によってかなり差があります。
結論からお伝えすると、日本の家庭ではガスコンロが依然として多数派で、IHコンロは全体の4分の1前後にとどまるというのが公的統計から見える実態です。
ただし、これは「戸建てか集合住宅か」「持ち家か賃貸か」「いつ建てられた住宅か」で大きく変わります。
この記事では、環境省や経済産業省などの一次データをもとに、IHコンロの普及率を整理していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
IHコンロの普及率は全体で約4分の1

家庭でどの調理機器が使われているかを全国規模で継続的に調べている代表的な統計が、環境省の「家庭部門のCO2排出実態統計調査(家庭CO2統計)」です。
この調査では、各世帯が使っているコンロを「ガスコンロ」「IHクッキングヒーター」「電気コンロ(IH以外)」などに分けて集計しています。
その結果を大づかみに言うと、ガスコンロを使う世帯がおおよそ7割前後、IHクッキングヒーターを使う世帯が2割強〜4分の1程度という構成が続いています。
「IHがガスを追い抜いて主流になった」という状況ではなく、あくまでガスが多数派、IHが着実に伸びてきた第2勢力、という位置づけです。
ここで注意したいのは、「IHクッキングヒーター」と「電気コンロ」は統計上は別物として扱われる点です。
IHは磁力線で鍋そのものを発熱させる仕組みで、昔ながらのニクロム線を赤く熱する電気コンロとは加熱方式が異なります。
「電気で加熱するコンロ全般」を合わせると割合はもう少し上がりますが、一般に「IHの普及率」という場合はIHクッキングヒーター単体を指すのが通例です。
戸建てと集合住宅、持ち家と賃貸で大きく差が出る

全体では4分の1前後のIHですが、住まいのタイプ別に見ると景色が変わります。
家庭CO2統計や関連調査からは、次のような傾向が繰り返し確認されています。
- 戸建て住宅ではIHの使用率が相対的に高く、集合住宅(マンション・アパート)では低い
- 持ち家・分譲では比較的IHが選ばれやすく、民営の賃貸住宅ではガスコンロが大多数を占める
- 新しく建てられた住宅ほど、電気で給湯・調理する設備の採用率が高い傾向がある
この差が生まれる理由は、設備工事のしやすさにあります。
ビルトインのIHクッキングヒーターは200Vの専用電源が必要で、戸建てや新築・リフォーム時にはオール電化とセットで導入しやすい一方、既存の賃貸集合住宅では電気容量や工事の制約からガスのまま使われるケースが多くなります。
つまり、「自分のまわりはIHが多い/ガスが多い」という体感は、住んでいる住宅のタイプに引っ張られている可能性が高いということです。
戸建て中心の地域とワンルーム賃貸が多い地域とでは、見えてくる普及率がまったく違って当然なのです。
出荷台数から見る、IHの伸びと最近の落ち着き

普及の勢いを別の角度から確認できるのが、経済産業省の「生産動態統計」や日本電機工業会(JEMA)の出荷統計です。
日本電機工業会によると、IHクッキングヒーターの累計国内出荷台数は2016年に1,100万台を突破し、その普及を記念して11月1日が「IHクッキングヒーターの日」と定められました。
その後も出荷は続き、本格的に普及し始めてから20年以上が経過した現在は、新規設置に加えて買い替え需要が中心の安定した市場になっています。
一方で、月ごとの出荷台数を見ると前年割れが続く月もあり、爆発的に伸びる局面は過ぎたと言えます。
これは「人気が落ちた」というより、すでに導入する層に一巡し、リフォームや故障時の買い替えが需要の柱になったためと考えられます。
新築住宅やオール電化の普及ペースと連動して、今後も緩やかに世帯普及率を押し上げていくとみられます。
ガスコンロは今も多数派、その理由

数字の上ではガスコンロが多数派であり続けていますが、これには実用面の理由があります。
| 比較の観点 | ガスコンロ | IHクッキングヒーター |
|---|---|---|
| 導入のしやすさ | 既存のガス配管で設置でき、賃貸でも一般的 | 200V専用電源が必要で工事を伴う場合が多い |
| 加熱方式 | 直火で鍋を炙る | 磁力線で鍋自体を発熱させる |
| 熱効率 | 炎の熱が周囲に逃げやすい | 熱効率は約90%と高い |
| 停電時 | 電池点火なら使える機種が多い | 使用できない |
| 対応する鍋 | 素材を選ばない | 鉄・ステンレスなど対応鍋が必要 |
賃貸住宅の多さ、初期費用の低さ、鍋を選ばない手軽さ、そして「炎で調理したい」という調理面での好みが、ガスコンロを支え続けています。
特に民営賃貸ではガスがほぼ標準装備であり、この住宅ストックがある限り、ガスの多数派は当面続くと考えられます。
一方でIH側にも、直火がなく安心して使える、フラットな天面で掃除がしやすい、夏場に調理の熱気がこもりにくいといった明確な強みがあり、戸建て・新築を中心に選ばれ続けています。
カセットコンロはどう位置づけられる?

ここまでの「普及率」の話は、キッチンに据え付けて日常的に使うコンロ(据え置き型・ビルトイン型)を対象にしています。
カセットボンベを使う卓上のカセットコンロは、これらの統計では主役として扱われないのが一般的です。
というのも、カセットコンロはメインの調理コンロというより、鍋料理や卓上調理、アウトドア、そして災害時の備えとして使われる補助的な位置づけだからです。
そのため「世帯普及率」を語るときのガス・IHの二択とは、そもそも役割が異なります。
とはいえ、ガス・IHいずれの家庭にとってもカセットコンロは有用です。
IHは停電時に使えず、都市ガスも災害時に供給が止まることがあります。
どちらの世帯でも、停電・ガス停止に備えて、カセットコンロとカセットボンベを備蓄しておくことは、防災の観点から広く推奨されています。
なお、カセットボンベは高温になる場所での保管を避け、使用期限の目安を守って管理してください。
これからコンロを選ぶ人が普及率をどう読むか
普及率の数字は、そのまま「どちらを選ぶべきか」の答えにはなりません。
大切なのは、数字の背景にある条件が自分に当てはまるかどうかです。
- 賃貸住宅にお住まいなら、選択肢は基本的に備え付けのコンロになり、ガスであることが多い
- 戸建て・持ち家でリフォームやオール電化を検討中なら、IHは有力な候補になる
- 「炎で調理したい」「鍋を選びたくない」ならガス、「掃除のしやすさ・安全性」を重視するならIH
普及率はあくまで「多くの家庭がどう選んできたか」の結果であって、あなたの住まいと使い方に最適な答えとは限りません。
住宅のタイプ・工事の可否・調理スタイルを照らし合わせて判断するのが、後悔の少ない選び方です。
まとめ|数字は「住まいのタイプ」で読み解く
IHコンロの普及率について、要点を整理します。
- 全国ではガスコンロが約7割で多数派、IHは4分の1前後という構成が続いている
- 戸建て・持ち家・新築ではIHの比率が高く、集合住宅・賃貸ではガスが大多数を占める
- 累計出荷は2016年に1,100万台を超え、現在は買い替え中心の安定した市場になっている
- カセットコンロは補助・防災用の位置づけで、ガス・IHどちらの家庭でも備えておくと安心
普及率は「平均的な傾向」を示すものであり、住まいのタイプによって実感は大きく変わります。
これからコンロを選ぶ際は、数字そのものよりも、自分の住宅条件と調理スタイルに合うかどうかを軸に検討してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. IHコンロの普及率は今どのくらいですか?
環境省の家庭部門のCO2排出実態統計調査などから見ると、IHクッキングヒーターを使う世帯は全体の2割強〜4分の1程度で、ガスコンロを使う世帯が約7割と多数派です。IHは着実に伸びてきたものの、全国的にはガスコンロが依然として主流という位置づけになります。ただし住宅のタイプによって割合は大きく変わるため、全体の平均値だけで自分の周囲の状況を判断するのは避けたほうがよいでしょう。
Q2. IHとガス、これから増えるのはどちらですか?
新築住宅やオール電化住宅を中心に、IHクッキングヒーターの採用は緩やかに増える傾向が続くとみられます。一方で、民営賃貸を含む既存住宅の多くはガスコンロのままであり、この住宅ストックがある限りガスの多数派は当面続くと考えられます。どちらか一方に一気に置き換わるというより、住宅の建て替えやリフォームのペースに合わせて、IH比率が少しずつ高まっていくイメージです。
Q3. なぜ戸建てのほうがIHの普及率が高いのですか?
ビルトインのIHクッキングヒーターは200Vの専用電源を必要とし、設置に電気工事を伴う場合が多いためです。戸建てや新築・リフォームの場面ではオール電化とセットで導入しやすい一方、既存の賃貸集合住宅では電気容量や工事の制約からガスのまま使われることが多くなります。この工事のしやすさの違いが、戸建てでIHが選ばれやすい大きな理由になっています。
Q4. カセットコンロは普及率の統計に含まれますか?
一般的な世帯普及率の統計では、キッチンに据え付けて日常使いする据え置き型・ビルトイン型のコンロが対象で、卓上のカセットコンロは主役として扱われないのが通例です。カセットコンロは鍋料理やアウトドア、災害時の備えといった補助的な用途で使われるため、メインコンロのガス・IHの割合とは役割が異なります。ただし防災用として、ガス・IHどちらの家庭でも備えておくと安心です。
Q5. IHは電気代が高くつくから普及していないのですか?
必ずしもそうとは言えません。日本電機工業会の試算では、標準的な4人家族が朝・昼・夕食で標準的なメニューを作った場合の消費電力を電気代に換算すると1か月あたり約1,170円(電力料金目安単価31円/kWhで算出)とされています。IHの熱効率は約90%と高く、光熱費だけが普及の妨げになっているわけではなく、賃貸の多さや工事の要否といった住宅側の事情が普及率を大きく左右しています。

