石油ストーブには、地震や強い衝撃を受けると、自動的に火を消す「対震自動消火装置」が付いています。
普段は意識しない装置ですが、地震のときに働くだけでなく、つまみの「カチカチ」という音、勝手に消える、芯が下がらない、といったトラブルにも関わる、重要な安全装置です。
この記事では、トヨトミとコロナの取扱説明書の記載をもとに、対震自動消火装置の作動条件、セット方法、点検、作動後の対応を解説します。
あわせて、FF式・石油ファンヒーターの安全装置との違いも整理します。
対震自動消火装置とは
地震や強い振動・衝撃を受けたときに、自動的に消火する安全装置です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 目的 | 地震などでストーブが倒れたり、ずれたりする前に火を消す |
| 作動条件 | 震度約5以上の地震や、強い振動・衝撃(トヨトミ)。JIS規格の100〜195ガルの振動で作動するよう調整(コロナ SX-CE280Y) |
| 作動しない場合 | 日常的な弱い振動や傾斜では作動しない(コロナ) |
| 消火の仕組み | 芯が下がって消火する(芯式の機種) |
対震自動消火装置は、分解したり、油を塗ったり、油でふいたりしないでください(取扱説明書)。
「ガル」とは
コロナの取扱説明書にある「100〜195ガル」は、揺れの加速度の単位です。
1ガルは、1秒間に1cm/秒の速さが増す加速度(1cm/s²)を表し、地球の重力加速度は約980ガルです。
これをもとに計算すると、100〜195ガルは、重力加速度のおよそ0.10〜0.20倍(約0.1〜0.2G)にあたります(当サイト計算)。
| 数字 | 意味 | 当サイト計算 |
|---|---|---|
| 100ガル | 1m/s²の加速度 | 重力加速度の約0.10倍 |
| 195ガル | 1.95m/s²の加速度 | 重力加速度の約0.20倍 |
つまり、作動する揺れの強さは、「ストーブが倒れる前に、早めに火を消す」ことを目的とした、比較的小さめの揺れに設定されているのが特徴です。
一方で、日常的な足音や、ドアの開閉による弱い振動では作動しないように調整されています。
タイプ別|安全装置の違い
| タイプ | 地震・衝撃への安全装置 |
|---|---|
| 対流式 | 機械式の対震自動消火装置(芯が下がる)。この記事の中心 |
| 反射式 | 同上 |
| FF式 | 電子式のセンサー等で、地震・衝撃を検知して停止する機種が多い。表示が出る機種がある |
| 石油ファンヒーター | 同上 |
※機種によって異なります。
取扱説明書で確認してください。
FF式・石油ファンヒーターでは、地震や衝撃で停止すると、エラー表示が出る機種があります。
トヨトミ、コロナ、サンポットなど、メーカーごとに表示のコードや意味が異なるため、表示が出たら、取扱説明書の「故障かな?と思ったら」のページで確認してください。
停止した後の再開は、安全確認をしてから、取扱説明書の手順で行います。
セット方法
芯式のストーブでは、点火のとき、つまみを回すと、対震自動消火装置が自動的にセットされます。
| 機種 | セット方法 |
|---|---|
| トヨトミ RB-25C | しん調節つまみを、止まるまでゆっくり回す(取扱説明書の箇所によって「燃焼」と「点火」の方向の表記が分かれているため、実機の表示で確認) |
| トヨトミ RS-S23C | つまみを「点火」の方向へ、止まるまでゆっくり回す |
| コロナ SX-CE280Y | しん調節つまみを点火方向にゆっくり止まるまで回すと、自動的にセットされる |
セットできない場合は、一度、つまみを消火の方向(トヨトミ RS-S23Cは「緊急消火位置」)へ回してから、やり直すよう案内されています。
「カチカチ」という音
コロナの取扱説明書では、つまみを回すときの「カチカチ」という音と、つまみの重さは、対震自動消火装置がセットされているためで、異常ではないとされています。
一度セットされると、つまみは軽くなり、音もしなくなります。
音については、石油ストーブの「ボッボッ」「ボン」という音を解説した記事で整理しています。
点検方法(月1回以上)
取扱説明書では、使用開始時と使用中に、1か月に1回以上の点検が案内されています。
| 機種 | 点検方法 |
|---|---|
| トヨトミ RB-25C | しん調節つまみを回して芯を上げ、置台をゆすって、芯が下がるか確認する |
| トヨトミ RS-S23C | 芯を上げてから置台をゆすり、芯が下がって、目印が「緊急消火位置」に戻るか確認する |
| コロナ SX-CE280Y | 乾電池を抜き、芯を上げた状態で、置台の左側を前後に強く動かし、芯が最後まで下がるか確認する |
芯が完全に下がらない、または目印が戻らない場合は、使用しないでください。販売店に修理を依頼してください。
コロナの取扱説明書では、保管後の来シーズンの使用前にも、作動を2〜3回繰り返して、芯が最後まで下がることを確かめるよう案内されています。
点検の注意
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| 電池 | 機種によっては、電池を抜いて点検する |
| 火を消した状態で | 燃焼中ではなく、消火した状態で点検する(機種の説明に従う) |
| 手順 | 機種ごとに異なるため、取扱説明書に従う |
点検の記録
点検は「やったつもり」になりやすいため、簡単に記録をつけると、習慣になります。
| 記録する項目 | 内容 |
|---|---|
| 日付 | 点検した日 |
| 結果 | 芯が最後まで下がったか(○/×) |
| 気づいたこと | 重い、引っかかる、音がするなど |
| 次回の予定 | 1か月後 |
11月から3月までの5か月間、月1回点検するなら、1シーズンで5回、シーズン前の確認を加えると、合計6回程度になります(当サイト計算。
使用期間は仮定です)。
カレンダーやスマートフォンのリマインダーに、毎月の点検日を入れておくと、忘れにくくなります。
作動したあとの対応
地震や衝撃で消火した場合は、すぐに再点火せず、次のことを確認します。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 周囲の可燃物 | 倒れたり、ストーブに近づいたりしていないか |
| 本体の損傷 | 変形、破損、ガラスの割れがないか |
| 灯油の漏れ | こぼれ、にじみがないか |
| 芯と燃焼筒 | 位置がずれていないか |
トヨトミ、コロナの取扱説明書とも、これらを確認してから、再点火するよう案内しています。
燃焼中に作動した場合は、消火時のにおいが強く出ることがあります(トヨトミ)。
地震のあとは、灯油の漏れや転倒の有無を確認してください。油が漏れている場合は、火気を使わず、使用を中止して販売店に連絡してください。
勝手に消える・芯が下がらないとき
勝手に消える
コロナの取扱説明書では、燃焼中に消える原因として、次の点が挙げられています。
| 原因 | 対処 |
|---|---|
| 強い地震や振動、衝撃 | 周囲を確認してから再点火する |
| 給油タンクを持ち上げた/正しくセットされていない | 給油時消火装置が作動する。正しくセットし直す |
| 風や振動の影響 | 風のあたらない、振動のない場所に置く |
| 水・変質灯油・不純灯油の混入 | 灯油を入れ替え、芯を手入れまたは交換する |
| 芯のタール付着 | 芯を手入れする |
| 対震自動消火装置の不具合 | 販売店または相談窓口に修理を依頼する |
詳しくは、石油ストーブの火が弱い・途中で消えるときの原因を解説した記事で紹介しています。
作動しても、芯が下がらない
| 原因 | 対処 |
|---|---|
| 芯にタールが多く付着している | 芯の手入れを行う(コロナ) |
| 芯の取り付け直後で、なじんでいない | 取り付け手順をやり直す(トヨトミの芯の資料) |
| 安全装置・上下機構の故障 | 使用せず、販売店に修理を依頼する |
芯が下がらない場合の対処は、石油ストーブの芯が動かないときの原因を解説した記事、芯の手入れは石油ストーブの空焚き(から焼き)を解説した記事で紹介しています。
給油時消火装置との違い
トヨトミ RS-S23Cのような気密油タンクの機種には、対震自動消火装置とは別に、「給油時消火装置」があります。
| 項目 | 対震自動消火装置 | 給油時消火装置 |
|---|---|---|
| 働くとき | 震度約5以上の地震、強い振動・衝撃 | 燃焼中に油タンクを取り出したとき |
| 目的 | 地震時の安全確保 | 給油時の安全確保 |
| 点検 | 月1回以上 | 月1回以上(芯を上げてから油タンクを持ち上げ、芯が下がるか確認) |
注意点として、トヨトミ RS-S23Cでは、消火後でも油タンクを抜くと目印が「緊急消火位置」に戻り、対震自動消火装置がセットできなくなると記載されています。
給油前は、つまみで消火してから、油タンクを取り出してください。
コロナの取扱説明書でも、燃焼中に給油タンクを持ち上げると、給油時消火装置が働いて自動的に消火すると記載されています。タンクを取り出すときは、天板の上を通さないでください。
灯油がたれると火災の原因になります。
設置・使用上のポイント
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 水平で安定した場所 | 傾いた場所、ぐらつく場所に置かない |
| 風や振動を避ける | 風や振動で、意図せず消えることがある |
| 周囲の可燃物 | 離しておく |
| 耐震対策 | 家具の転倒防止など、周囲の安全対策も合わせて行う |
対震自動消火装置は、地震時の被害を完全に防ぐものではありません。周囲の可燃物を離す、使用しないときは消火するなどの基本を守ってください。
ストーブのまわりに、背の高い家具や、倒れやすい物を置いていないかも確認してください。
地震でストーブ本体が安全に消火しても、倒れた家具がストーブに当たったり、カーテンや衣類が近くにあったりすると、火災の原因になることがあります。
保管前後の確認
| タイミング | 確認すること |
|---|---|
| シーズン後の保管前 | 灯油を抜く、電池を外す(片付け方は石油ストーブの片付け方を解説した記事) |
| 来シーズンの使用前 | 対震自動消火装置を2〜3回作動させ、芯が最後まで下がることを確認する(コロナ) |
| 使用中 | 月1回以上、点検する |
寿命が近い機種では、安全装置も劣化している可能性があります。
長年使った機種は、点検で少しでも異常を感じたら、使用を中止して、販売店に相談してください。
どのタイプでも、開放式は使用中に1時間に1〜2回を目安に窓を開けて換気してください。就寝中や、長時間その場を離れるときは必ず消火し、給油は消火して冷めてから行ってください。ガソリンは絶対に入れないでください。
よくある質問
Q1. 対震自動消火装置は、どのくらいの揺れで作動しますか?
トヨトミの取扱説明書では、震度約5以上の地震や強い振動・衝撃で自動的に消火するとされています。
コロナ(SX-CE280Y)の取扱説明書では、JIS規格の100〜195ガルの振動で作動するよう調整されており、日常的な弱い振動や傾斜では作動しないとされています。
Q2. 点検は、どのくらいの頻度で行いますか?
トヨトミの取扱説明書では、使用開始時と使用中に1か月に1回以上の確認が案内されています。
コロナでは、来シーズンの使用前にも、作動を2〜3回繰り返して確認するよう案内されています。
Q3. 地震で消えた後、すぐ再点火していいですか?
いいえ。
周囲の可燃物、本体の損傷、灯油の漏れを確認してから再点火してください。
Q4. 点検で、芯が下がらなかったときは?
使用しないでください。
芯へのタール付着が原因のこともあります。
手入れで改善しない場合は、販売店に修理を依頼してください。
Q5. FF式や石油ファンヒーターにも、同じ装置はありますか?
地震や衝撃で停止する安全機能を備えた機種が多く、停止するとエラー表示が出る機種があります。
仕組みや表示は機種ごとに異なるため、取扱説明書で確認してください。
まとめ
対震自動消火装置は、地震や強い衝撃のときに、自動的に消火する大切な安全装置です。
最後に、この記事のポイントを整理します。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 作動条件 | 震度約5以上の地震や強い振動・衝撃(トヨトミ)。JIS 100〜195ガル(コロナ SX-CE280Y) |
| ガルの目安 | 100〜195ガルは、重力加速度の約0.1〜0.2倍(当サイト計算) |
| セット方法 | つまみを止まるまでゆっくり回す。方向の表記は機種で異なる |
| 点検 | 月1回以上。芯が最後まで下がるか確認。下がらなければ使用しない |
| 作動後 | 可燃物・損傷・灯油漏れを確認してから再点火 |
| 分解 | 分解・油ふきは禁止 |
| FF式・ファンヒーター | 電子式。停止するとエラー表示が出る機種がある |
まずは、お持ちのストーブの取扱説明書で、点検方法を確認し、今日、月に一度の点検をしてみてください。

