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シンナー不足・値上げの影響とは|建築・塗装・家庭を直撃する理由

シンナー缶と塗料、刷毛、防毒マスクが並ぶ作業台のイメージ
Yuta
記事監修者
現:ガス会社に勤める兼業WEBライター。所持資格はガス開栓作業に必要な高圧ガス販売主任者二種、ガス工事に必要な液化石油ガス設備士、灯油の取り扱いに必要な危険物乙四種、その他ガス関連資格多数と電気工事士などの資格も多数所持。

「シンナーが手に入らない」
「値段が突然2倍近くに跳ね上がった」

――そんな声が2026年、建築・塗装・製造業の現場から相次いで聞こえてきています。

塗料大手の日本ペイントホールディングスが、子会社の日本ペイントを通じて建築用シンナー製品の価格を3月19日発注分から75%値上げしたことを明らかにしたのを皮切りに、業界全体に衝撃が走りました。
一般の方にはなじみの薄い「シンナー」ですが、その不足は住宅の外壁塗装工事から自動車の板金修理、さらには私たちの身の回りのモノの製造まで、幅広い場面に波及する問題です。

この記事では、シンナーが不足・値上がりしている背景とその仕組みを整理し、建築業界をはじめとする各産業への影響、そして家庭への具体的な影響についてわかりやすく解説します。


目次

そもそも「シンナー」とは何か

シンナーとは、塗料を薄めるために使われる有機溶剤(溶かす力を持つ液体)の総称です。
用途によっていくつかの種類がありますが、住宅の外壁塗装や建築現場でよく使われる「塗料用シンナー」は、ミネラルスピリット(ミネラルターペン)という脂肪族炭化水素を主成分としています。

シンナーは原油を蒸留して得られる複数の揮発性有機溶剤を、用途に合わせて精密に配合して製造される製品です。主な用途は以下の通りです。

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用途具体的な内容
塗料の希釈粘度が高い塗料を刷毛・ローラー・スプレーに適した柔らかさに調整する
塗装面の脱脂塗料が弾かれないよう、油分を拭き取って密着性を高める
道具の洗浄刷毛・スプレーガンなどの塗装器具を洗浄する
塗膜の剥離・修正古い塗装面の除去、塗り間違い箇所の拭き取り
機械部品の洗浄加工油やグリースを除去する工業用途

つまりシンナーがなければ塗料を塗ること自体ができない」「道具を洗うこともできないという状況になります。
建築・塗装・製造のあらゆる現場で欠かせない存在であることがわかります。


なぜシンナーが不足しているのか|ホルムズ海峡封鎖が根本原因

原油からシンナーができるまでの流れ

シンナーの不足を理解するには、まず原料の流れを把握することが重要です。

原油 → 蒸留 → ナフサ(粗製ガソリン)→ さらに精製 → トルエン・キシレン等 → 配合してシンナー

シンナーはナフサ(粗製ガソリン)から作られる基礎化学品を原料とする製品です。
ナフサが手に入らなければ、シンナーをつくることができません。

ホルムズ海峡の封鎖という「急所」

塗料用シンナーの主成分のミネラルスピリットは原油を精製してつくられます。
日本は原油の99.5%を輸入に頼り、そのうちの約90%がホルムズ海峡を経由しています。
同海峡の封鎖で原油を積んだタンカーが通行できず、日本に入る原油の供給が滞りつつあることが、塗料用シンナーの供給不安と品薄、値上げを引き起こしています。

ホルムズ海峡は、アラビア半島と対岸の間に位置する幅の狭い海峡で、世界の石油タンカーの主要航路です。
ここが通れなくなると、日本への原油供給に直接影響が出ます。

日本のナフサ需要量の約45%を中東から輸入しており、国内で使用するナフサは約6割を輸入に頼り、残る4割の国産ナフサも原料原油の9割以上を中東輸入に依存しているため、日本のナフサ供給網は事実上ホルムズ海峡に大きく依存しています。

つまり「中東情勢の悪化→ホルムズ海峡の封鎖→ナフサが入らない→シンナーが作れない→建築・製造現場で品薄・値上がり」という連鎖が起きているのです。

価格への直撃

封鎖によって日本へのナフサ輸入は激減し、相場価格は2月末時点の1トン当たり600ドル台後半から約2週間で1,100ドル近くまで急騰しました。
わずか2週間で価格がほぼ倍増するという、異例の事態です。
このコスト上昇が、そのままシンナー製品の値上がりに直結しています。

原料価格の高騰に加え、海峡を避けるための迂回ルート(南アフリカ・喜望峰経由など)の利用により輸送日数と燃料費が大幅に増加し、原料メーカー各社が不可抗力による出荷停止を宣言しており、製品確保のために極めて高い調達コストが発生しています。

原料価格の高騰、物流コストの増大、供給制限という三重の要因が重なった結果、シンナーは「高くても手に入ればまだいい」という状況になっています。


建築業界への影響|外壁塗装工事が直撃

電動ドリルで液体を撹拌する作業員をイラスト風に描いた様子

シンナー不足による最も大きな影響を受けているのが、建築・塗装業界です。

塗料が使えなくなる

外壁塗装や屋根塗装では、塗料を適切な粘度に希釈してから塗布します。
シンナーなしでは塗料を均一に塗ることができません。
希釈用シンナーがないと塗料を塗ることも機材を洗浄することもできず「仕事にならない」との悲痛な声が現場から上がり、工期の遅延や追加コストといった下流への影響も現実化しています。

工事費が上昇する

シンナー本体の値上がりは、当然ながら塗装工事全体のコストを押し上げます。
ナフサ不足によってシンナーが75%値上げとなり、修理内容によって塗装費用が数千円〜上がるという事例が自動車整備業でも報告されており、住宅の外壁塗装でも同様のコスト転嫁が避けられない状況です。

工期の遅延リスク

材料が手に入らなければ、工事の着工そのものが遅れるケースも生じます。

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建築塗装への影響詳細
塗料希釈ができない塗料がそのまま使えないため工事不可となるケースも
道具洗浄ができない刷毛・スプレーガンが使えず作業効率が激減
工事費の増加シンナーコスト上昇分が見積もりに転嫁される
工期の遅延材料調達の見通しが立たず着工が後ずれ
希望塗料が使えない溶剤系塗料を水性塗料に急きょ変更する事態も

ホームセンターの棚からシンナーが消えた

業界では複数のメーカーからシンナー類の出荷数量制限通知が相次ぎ、ある大手通販サイトでは関西ペイント製シンナーの在庫切れが発生し、次回出荷予定が「2026年6月下旬」と案内されるなど、少なくとも数ヶ月規模の供給遅延が予想されています。
店頭でも「一人1缶まで」「入荷時期未定」といった貼り紙が並び、ホームセンター等で棚から商品が消える事態が報告されています。

プロの塗装業者だけでなく、DIYで外壁のタッチアップや補修を考えていた一般の方にも影響が直撃しています。


製造業への影響|鉄のサビ止めから印刷まで

スプレーガンで白い塗料を車のパネルに吹き付けている作業を描いたイラスト

建築・塗装業界だけではありません。
シンナー(工業用有機溶剤)は、日本の「ものづくり」の幅広い場面で使われています。

金属加工・製造業

原油から精製されるナフサの調達が困難になっていることから、ナフサ由来の石油化学製品も価格高騰や供給制限が相次いでおり、中小企業の経営を圧迫する要因となっています。

工業用シンナーは「素材のさび防止に使う油を拭き取るために、どうしても必要」と製造現場の担当者は語っています。
シンナーの成分である有機溶剤の販売数量を前年比50%までに制限する卸売業者や、シンナーの大幅値上げの見通しを示す業者もあるといい、製造の工程でシンナーが使えなくなれば、製品の品質管理や生産ライン自体が止まる可能性もあります。

自動車修理・板金業

値上げの対象となるのは建築や自動車製造の現場で塗装する際に塗料を薄める目的などで使用されるシンナー製品です。
今月から来月にかけて、50%から75%程度の値上げが行われています。
車のキズや板金修理では補修塗装の際にシンナーが不可欠なため、修理費が高騰するとともに、「修理は受けられるが部材が届くまで時間がかかる」というケースも増えることが予想されます。

印刷業・電子部品製造

印刷インキにも溶剤が含まれており、精密電子部品の洗浄にも有機溶剤が使われます。
シンナーの原料と共通するナフサ由来の溶剤が幅広い産業に使われているため、影響は幅広い業界に及ぶ可能性があります。

影響を受ける業種シンナー(有機溶剤)の主な用途
建築・外壁塗装業塗料の希釈、塗装器具の洗浄
自動車修理・板金業補修塗装の希釈、脱脂洗浄
金属加工・製造業部品の油脂除去(脱脂)、防錆処理
印刷業印刷インキの希釈、ローラー洗浄
電子部品製造精密部品・基板の洗浄
造船・重機製造大型機械・船体の塗装・防錆

一般家庭への影響|住まいに関わる3つのポイント

屋根の上でローラーを使い、暗い屋根材を明るいグレーに塗り替えている作業風景のイラスト

「シンナーの問題は業者の話でしょ?」と思われる方も多いかもしれません。
しかし、住まいに関わる部分で、一般家庭への影響も確実に出てきています。

① 外壁・屋根塗装の工事費が上がる

住宅の外壁塗装や屋根塗装を検討中、あるいは業者に見積もりを依頼しようとしている方は注意が必要です。
シンナーのコスト増は、塗装工事全体の費用に上乗せされます。

具体的には以下のような変化が起きる可能性があります。

  • シンナー使用量が多い溶剤系塗料の工事費が上昇する
  • 見積もり後に資材コスト分の追加請求が発生するケースがある
  • 業者によっては受注を絞るため、工事の予約が取りにくくなる

溶剤系塗料から水性塗料への切り替えを勧められるケースも増えています。
水性塗料はシンナーを使わず水で希釈するため、現在の状況では安定して調達しやすい選択肢です。
ただし、下地の状態や塗料の性質によって向き不向きがあるため、業者とよく相談することをお勧めします。

② DIY塗装の材料が手に入りにくい

フェンスや門扉、ベランダの手すりなど、自分で塗装のメンテナンスをしようとしている方には、現在の状況は大きな壁となります。
ホームセンターでのシンナー購入が難しくなっているため、以下の点に注意してください。

  • 店頭在庫の有無を事前に確認する
  • 購入数量が制限されている場合がある(1缶限り等)
  • 通販サイトでも品切れや入荷未定となっているケースがある

シンナーを使わない水性塗料やペイントへの切り替えも、DIYでは現実的な対応策の一つです。
水性タイプは扱いやすく臭いも少ないというメリットもあります。

③ 外壁補修・メンテナンスの工事遅延リスク

「今年こそ外壁を塗り替えたい」と思っていた方は、業者の繁忙期と資材不足が重なることで、工事の日程が後ずれする可能性があります。
施工業者への早めの相談・見積もり依頼が、工期確保の面でも有利に働く場面が増えているといえます。


代替品と業界の対応策

エコ塗料用シンナー(代替溶剤)

塗料用シンナーの代替品として注目されているのが、石油由来成分を使わないエコ塗料用シンナーです。
有機則・特定化学物質障害予防規則非該当、引火点が40℃以上のため防爆設備不要、臭気が穏やかという特徴があります。
ただし、塗料との相性があるため、使用前に確認が必要です。

水性塗料への移行

溶剤系シンナーの調達不安と環境規制(低VOC化)を背景に、水性塗料や粉体塗料への切り替えが産業界全体で急速に進む見通しです。
水性塗料はシンナーを使わないため、今回のような供給危機の影響を直接受けません。
長期的に見ると、この流れが今回の危機を機に加速する可能性があります。

代替調達先の模索

一部のメーカーや卸業者は、中東以外からの原料調達先の確保に動いています。
ただし、代替調達には時間を要するため、短期的な解消策とはなりにくいのが現状です。

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対応策特徴課題
エコ塗料用シンナーへの切り替え石油依存を減らせる塗料との相性確認が必要
水性塗料への移行シンナー不要、環境にも有利下地・用途によっては適さない場合も
代替原料調達先の確保中東依存からの脱却代替調達まで時間がかかる
在庫の計画的な確保当面の対応として有効入荷自体が困難な状況も

よくある質問(Q&A)

Q. シンナーが値上がりしたら、外壁塗装の工事費はどのくらい上がりますか?

A. 塗装工事に使用するシンナーの量は工事規模によって異なりますが、シンナー自体の価格が50〜75%上昇すると、塗料の希釈や器具洗浄にかかるコストも増加します。工事全体への影響は数千円〜数万円規模になることが予想されますが、使用する塗料の種類(溶剤系か水性か)によって差が生じます。見積もり時に業者へ確認することをお勧めします。

Q. 水性塗料に切り替えれば、今回の影響を避けられますか?

A. 水性塗料はシンナーを使わず水で希釈するため、今回のシンナー不足の直接的な影響を受けません。ただし、水性塗料が使えるかどうかは下地の素材や状態、塗装箇所によって異なります。業者に現状を確認した上で判断することをお勧めします。

Q. DIYで外壁補修を予定しているのですが、シンナーが買えない場合はどうすればいいですか?

A. シンナーが必要な油性・溶剤系塗料の代わりに、水で薄める水性塗料を選ぶのが現実的な対応策です。市販の水性ペンキは扱いやすく、住宅の木部・鉄部・コンクリート面など幅広い素材に対応した製品が揃っています。塗装箇所に合った水性タイプを選んでください。

Q. 外壁塗装の工事を先送りすべきですか?

A. 先送りすることで資材状況が改善するケースもありますが、外壁の劣化が進んでいる場合は放置することで補修コストが増える可能性があります。業者に現状の資材調達状況を確認した上で、柔軟にスケジュールを組むことをお勧めします。早めに業者へ相談して予約を入れることで、工事枠を確保しやすい場合もあります。

Q. 今回のシンナー不足はいつ解消されますか?

A. 情勢の変化に左右されるため、明確な時期は見通せない状況です。短期的な供給不安が極めて深刻で、ホルムズ海峡封鎖の長期化により4月中旬以降は原料の在庫底突きや入手困難が予想されています。状況は日々変化しているため、最新の情報を業者や資材メーカーに確認することをお勧めします。


まとめ

屋根の上で手袋をした作業者がローラーを使い、劣化したスレート屋根に塗装を施している様子をイラスト風で表現した画像

シンナー不足・値上げの現状と影響をまとめると、以下のようになります。

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ポイント内容
不足の根本原因中東情勢の悪化によるホルムズ海峡の封鎖→原油・ナフサの供給不安
値上げ幅主要塗料メーカーで50〜75%の大幅値上げが実施
最も影響が大きい業界建築・外壁塗装業、自動車修理業、金属加工・製造業
一般家庭への影響外壁塗装工事費の上昇、DIY材料の品薄、工事の遅延リスク
対応策水性塗料への切り替え、エコ塗料用シンナーへの代替、早めの業者相談

「シンナー」という言葉は専門的に聞こえますが、その不足は住宅の維持管理や暮らしのコストに直結する問題です。
外壁塗装のリフォームや設備まわりのメンテナンスを検討されている方は、最新の資材状況を踏まえた上で業者と早めに相談されることをお勧めします。

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この記事を書いた人

「暮らしの設備ガイド」は、給湯器・ストーブ・換気設備など、
家庭の安心と快適を支える“住まいの設備”に関する専門メディアです。

現在もガス業界で設備施工・保守に携わるYuta(ガス関連資格保有者)が監修し、一般家庭向けのガス機器・暖房設備・給湯器交換の実務経験をもとに、現場の知識に基づいた、正確で実用的な情報を発信しています。

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