「エアコンを注文したのに、いつ届くかわからない」「工事の予約が取れない」——こうした不安の声が最近増えています。
その背景にあるのが、ナフサ不足による部材の品薄と工事業者の経営悪化です。
エアコン本体の価格上昇については各メディアで報じられていますが、問題はそれだけではありません。
取り付け工事に必要な部材が手に入らない、工事業者が廃業している——という「入手困難」「施工困難」の問題が、今まさに現場で起きています。
この記事では、なぜナフサ不足がエアコンの納期・工事スケジュールに影響するのかを構造から整理し、消費者が取れる具体的な対処法をお伝えします。
ナフサとエアコンの関係——本体から工事部材まで

エアコンは「金属の機械」というイメージを持たれがちですが、実際には多くのナフサ由来素材で構成されています。
エアコン本体に使われるナフサ由来素材
| 部位 | 素材 | ナフサとの関係 |
|---|---|---|
| 室内機・室外機の外装ケース | ABS樹脂・ポリプロピレン | ナフサ→プロピレン→PP |
| フィン(熱交換器のフィン周囲) | 樹脂製部品 | ナフサ由来の汎用樹脂 |
| 冷媒配管の断熱材 | 発泡ポリエチレン・発泡スチロール系 | ナフサ→エチレン→PE |
| ドレンホース | ポリ塩化ビニル(PVC)・ポリエチレン | ナフサ→エチレン→樹脂 |
| 配管化粧カバー | 硬質塩化ビニル | ナフサ由来の塩ビ樹脂 |
| 電線・配線被覆 | ポリ塩化ビニル | ナフサ由来の塩ビ樹脂 |
| 配管固定パテ・テープ類 | 合成ゴム・ブチルゴム系 | ナフサ由来の合成ゴム |
工事に使う「施工部材」も全面的に影響を受けている
見落とされがちなのが、工事に使う部材への影響です。
エアコンを設置するためには、本体以外にも多くの部材が必要です。
ペアコイル(被覆銅管)は、室内機と室外機をつなぐ冷媒配管で、銅管の外側をポリエチレン(ナフサ由来)で断熱被覆した製品です。
この「被覆」部分がナフサ不足の直撃を受けており、2026年、品薄・価格高騰が進んでいます。
エアコン工事の専門部材を製造・販売する因幡電機産業(因幡電工)は2026年5月1日、被覆銅管・ドレンホース・配管化粧カバーなどのエアコン施工部材について、2026年6月1日出荷分より現行定価から20%以上の値上げを発表しています。
「原油および石油化学原料であるナフサの調達・供給環境が不安定な状況となっており、樹脂原材料や各種部材の生産・確保が困難」(因幡電機産業 公式発表 2026年5月1日)
配管化粧カバーの黒色製品については、すでに一部で製造が止まり、品薄・入手困難の状況になっているという報告も、消費者・施工業者の双方から上がっています。
現場で起きていること——工事業者の「廃業」という深刻な問題

部材の値上がりは、消費者だけでなく工事業者の経営にも直撃しています。
テレビ朝日系の報道(2026年5月13日放映)では、東京・江東区のエアコン専門店の代表が以下のように語っています。
「(工事代も)3,000円くらいしか値段を上げていないが、実際には7,000〜8,000円上げないと合わない。エアコンは収入の大部分を占めているので、経営的にも厳しくなってくる」
大手家電量販店がエアコンを販売する場合、本体の仕入れコストが上がっても価格競争の激しさから販売価格に転嫁しにくい。その結果、消費者の目が届きにくい「工事業者への報酬」が削られる構図になっています。
採算の合わない工事を続けられず、廃業を決める業者も出てきているというのが現場の実情です。
これは消費者にとっても深刻な問題です。業者数が減れば、需要が集中する夏場の工事予約はさらに取りにくくなります。
2026年夏の工事待ち時間の見通し
例年、エアコンの取り付け工事は7〜8月に需要が集中し、繁忙期は2〜3週間待ちが当たり前でした。しかし以下の3つの要因が重なることで、異例の長待ちになる可能性があります。
- ナフサ不足による部材品薄:施工部材の在庫が細っており、工事をすぐに始められないケースが出ている
- 工事業者の減少:採算悪化による廃業・縮小で、処理できる工事件数が減っている
- 2027年問題による前倒し需要:フロン規制・省エネ基準強化を控えた買い替え需要が前倒しで集中している
現場からは「今年の夏は1ヶ月待ちもあり得る。夏が終わってしまう」という声も出ています(テレ朝NEWS報道、現場証言ベース)。
ナフサ不足が「工事できない」を引き起こす仕組み

「本体はある。でも工事ができない」——この状況が起きる構造を整理しておきます。
ペアコイル(被覆銅管)の品薄が工事を止める
エアコン工事の現場では、ペアコイルの品薄が深刻な課題になっています。ペアコイルは冷媒を通す配管であり、これがなければ室内機と室外機をつなぐことができません。
ペアコイルの「被覆」(断熱材)はポリエチレン製で、ナフサ由来です。2026年春以降、この部材の入荷が安定しないという報告が施工業者の間で相次いでいます。
「本体はあるけど工事ができない」という事態は、給水設備(配管不足)と同じ構造でエアコン工事にも起きつつあります。
配管化粧カバーの供給停止
壁に沿って配管を整えるための「配管化粧カバー(スリムダクト)」も影響を受けています。
特に黒色など一部の色の製品は製造が止まっているとの情報があり、施工業者が必要な規格・色の部材を確保できない状況が生じています。
化粧カバーがなければ、配管をむき出しのまま施工することになり、美観・耐候性の両面で問題が生じます。
工事部材コスト上昇で「採算の合う工事」が減る
施工部材の値上がりが工事業者の採算を直撃しています。部材費が上がっても、消費者向けの工事代金をすぐに引き上げることは難しい(量販店経由の工事は特に)。
結果として工事1件あたりの利益が圧縮され、体力のない小規模業者から順に廃業・受注停止が起きています。
消費者への影響——「夏に間に合わない」を回避するために

これらの状況は、家庭にどのような形で影響が出るのでしょうか。具体的なシナリオを整理します。
シナリオ①:注文したが納期未定になる
本体の生産・在庫がある段階では、注文自体はできても、メーカーから「納期未定」の回答が来る可能性があります。部材調達の見通しが立たない状況では、メーカー側も正確な納期を約束できないためです。
シナリオ②:工事の予約が取れない
家電量販店でエアコンを購入した場合、取り付け工事は提携の施工業者が行います。業者数が減り、1業者あたりの工事対応件数も限られているため、購入後も工事日が夏以降になる可能性があります。
エアコンが届いていても工事が終わらなければ使えません。「物はある、でも涼しくならない」という状況は、十分に起こり得ます。
シナリオ③:工事費が値上がりする
因幡電工の施工部材値上げ(6月1日出荷分から20%以上)が工事費に転嫁されていく可能性があります。今後、工事費の追加見積もりや変更を求められるケースが増えることも考えられます。
シナリオ④:故障修理に時間がかかる
既存のエアコンが夏場に故障した場合、補修部品の調達に時間がかかる可能性があります。修理業者も同様に部材不足の影響を受けており、「すぐに直せない」という状況が生じやすくなっています。
今からできる対処法——「夏に困らない」ための行動
状況を理解したうえで、消費者として取れる行動を整理します。
① できるだけ早く動く
まずは工事を完了させることを目標に、できるだけ早く動くことが最も有効な対策です。
工事業者の予約枠は先着順で埋まります。夏本番になってから動いても、すでに工事が満杯で断られるケースが増えることが予想されます。
② 販売店・工事業者に「今すぐ」在庫と日程を確認する
電話・来店で以下を確認しておくことをおすすめします。
- 希望機種の在庫状況
- 工事の最短日程
- 施工部材の調達見込み
- 工事費の現在の金額(6月以降に値上がりする可能性)
「工事が必要になってから考える」では手遅れになるリスクがあります。
③ 複数の工事業者に見積もりを取る
量販店の工事だけでなく、地域の電気工事店・エアコン専門業者にも見積もりを依頼することで、工事日程の確保がしやすくなります。
ただし、現在は業者側も繁忙・部材不足という状況です。業者を選ぶ際は「部材の確保状況」も合わせて確認してください。
④ 使用中のエアコンを今すぐ試運転する
買い替えを急ぐ必要がなくても、今使っているエアコンの動作確認は今すぐ行うことを強くおすすめします。
夏本番に「動かない」と気づいても、修理・交換に時間がかかる可能性が高い状況です。冷房・暖房それぞれを試運転し、以下の点を確認してください。
試運転チェックリスト
- 冷房設定で10〜15分動かし、冷気が出るか確認
- 異音(カタカタ・ゴー・ブーンなど)がないか
- 水漏れ・異臭がないか
- リモコンが正常に動作するか
- フィルターが詰まっていないか(清掃が必要かどうか)
問題があれば、夏になる前にメーカー・業者に相談しておきましょう。
⑤ フィルター清掃・室外機の点検を行う
ナフサ不足の影響で修理・交換が難しくなっているからこそ、今あるエアコンを長持ちさせるメンテナンスが重要です。
フィルターが詰まると冷暖房効率が落ちるだけでなく、本体への負担が増して故障の原因にもなります。シーズン前に清掃しておくことで、故障リスクと電気代の両方を抑えられます。
また、室外機の周囲に物が置いてあったり、直射日光が強く当たったりする場合は、通気確保・遮光の対策も有効です。
「2027年問題」との関係——今後の見通し

2026年のナフサ不足に加え、エアコン業界にはもう一つの問題が控えています。
2027年問題とは
2027年度から家庭用エアコンの省エネ基準が強化される予定です(トップランナー制度の改定)。基準を満たさない低価格帯モデルは販売できなくなるため、選択肢が絞られ、価格帯が全体的に上昇する見込みです。
また、旧冷媒(R410Aなど)を使用した機器のフロン規制強化も重なります。
現在の状況がどう重なるか
| 要因 | 現在 | 2027年以降 |
|---|---|---|
| ナフサ不足による部材コスト上昇 | 進行中 | 状況次第で継続 |
| 省エネ基準強化による低価格帯撤退 | 準備段階 | 価格底上げが確定 |
| 旧冷媒規制強化 | 一部進行中 | 修理費・交換費が上昇 |
| 工事業者数の減少 | 進行中 | さらに加速する懸念 |
2つの逆風が重なっている現在の局面は、「急いで買う必要はないが、後回しにする理由もない」という状況といえます。
特に10年以上使用しているエアコンをお持ちの方は、壊れてから動くと「本体が買えない・工事が取れない・夏に間に合わない」という3重のリスクを抱えることになります。
Q&A——よくある疑問
Q. エアコン本体はまだ買えますか?
A. 2026年5月現在、エアコン本体は多くの機種で購入できる状況です。ただし、一部メーカーから「納期・供給に影響が出る可能性がある」との公式アナウンスが出ています。在庫が豊富な今のうちに動いておく方が、夏の工事スケジュールを確保しやすいといえます。
Q. 工事費は今後どのくらい上がりますか?
A. エアコン施工に使う被覆銅管・化粧カバー等の部材が2026年6月1日出荷分より20%以上値上がりします(因幡電機産業公式発表)。これが工事費に転嫁される場合、数千円〜1万円程度の上昇が想定されます。ただし、業者や地域によって対応は異なります。
Q. 夏が来る前に絶対に工事を完了させるべきですか?
A. 緊急性が高いのは「現在のエアコンが故障中または動作不安定」「設置されていない部屋に新規設置が必要」という場合です。現在のエアコンが正常に動いているなら、今すぐ焦って購入する必要はありません。ただし、工事の予約は早めに入れておく方が安心です。
Q. 購入後に工事業者が見つからない場合はどうすればよいですか?
A. 購入前に工事業者の確保を先行させることをおすすめします。量販店で購入する場合は、工事の日程が確定してから本体購入に進む流れが安全です。
Q. 古いエアコンを修理するのは今後難しくなりますか?
A. 補修部品もナフサ由来の樹脂部品を含むため、部品調達に時間がかかるリスクが高まっています。製造から10年以上経過した機種は、部品が廃番になる可能性もあります。修理か交換かの判断は、メーカーや業者に事前に相談しておくと安心です。
まとめ——「手に入らない夏」を回避するために

ナフサ不足がエアコンに与えている影響を整理すると、次のようになります。
| 影響の種類 | 現状 |
|---|---|
| 本体の供給 | 現時点では入荷あり。今後の状況次第 |
| 施工部材(ペアコイル・化粧カバー等)の供給 | 品薄・値上がりが進行中 |
| 工事業者数 | 採算悪化による廃業が出始めている |
| 夏の工事待ち期間 | 1ヶ月待ちになる可能性も(現場証言) |
| 工事費 | 6月以降の部材値上げが工事費に波及する見込み |
| 故障時の修理 | 補修部品の調達に時間がかかるリスク |
エアコンは「夏に困ってから考える家電」ではなくなりつつあります。
今できる3つのことを再確認しておきましょう。
- 現在のエアコンを試運転して動作確認する
- 買い替えや新規設置を検討している場合は、工事業者の確保を先行させる
- フィルター清掃・室外機点検でメンテナンスを行い、故障リスクを下げる
「まだ動いているから大丈夫」は、今年の夏は通じないかもしれません。早めの確認と行動が、快適な夏を守るための最大の対策です。
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