「ゴミ袋が店頭から消えている」「いつも使っている洗剤が値上がりした」「メガネのレンズが注文できなくなった」——2026年、こうした身近な変化を感じている方は多いのではないでしょうか。
これらすべてに共通する根本原因が、「ナフサ不足」です。
ナフサは石油を精製する際に取り出される原料で、プラスチック・合成繊維・合成ゴム・合成洗剤・塗料・医薬品原料など、現代の暮らしを支える製品のほぼすべての出発点となっています。
このナフサの供給に深刻な支障が生じたとき、影響はガソリンや灯油の価格上昇にとどまらず、食品・日用品・衣料品・医療・建設・交通・農業と、社会のあらゆる分野に波及していきます。
このページでは、ナフサ不足がどのような仕組みで広範囲に影響するのか、そして各分野で今何が起きているのかを、生活者の視点から分野別に整理します。
ナフサ不足とは何か——なぜこれほど広く影響するのか

ナフサが「石油化学の起点」である理由
原油を精製すると、沸点の違いによってさまざまな石油製品が得られます。
ガソリン・灯油・軽油・重油……そしてそのなかの一つが、沸点30〜180℃の留分であるナフサ(粗製ガソリン)です。
ナフサが他の石油製品と根本的に異なるのは、「燃料として使われない」という点です。ナフサはナフサクラッカー(分解炉)と呼ばれる化学工場設備に送られ、約800〜900℃の高温で分解(スチームクラッキング)されます。
この工程で生まれるのが、エチレン・プロピレン・ブタジエン・ベンゼン・トルエン・キシレンといった「基礎化学品」です。
これらの基礎化学品が、さらに加工・重合されることで以下のような製品群が生まれます。
| 基礎化学品 | 主な誘導品 | 身近な製品例 |
|---|---|---|
| エチレン | ポリエチレン(PE) | ゴミ袋・レジ袋・食品ラップ・農業用フィルム |
| プロピレン | ポリプロピレン(PP) | 食品容器・医療用注射器・繊維・自動車部品 |
| ブタジエン | 合成ゴム(SBR・BR) | タイヤ・ゴム手袋・靴底 |
| ベンゼン | ナイロン・ポリスチレン | 食品トレー・断熱材・衣類 |
| キシレン | ペット樹脂(PET) | ペットボトル・ポリエステル繊維 |
| トルエン | 塗料・接着剤・溶剤 | 建築塗料・印刷インク・接着剤 |
つまり、ナフサが不足すると「プラスチック・合成繊維・合成ゴム・塗料・洗剤・医薬品原料」という石油化学製品の全体が原料不足に陥ります。
現代の製造業において、これらの素材を使わない分野はほとんど存在しません。
日本はなぜ特に脆弱なのか
日本のエチレン生産原料の約95%はナフサです。
米国はシェール革命で生まれたエタン(天然ガス由来)が主力原料となっており、欧州もLPGや天然ガス由来の原料を幅広く活用しています。
これに対して日本は「ナフサほぼ一本足」という構造的に脆弱な立場にあります。
さらに、日本は輸入ナフサの約74%を中東産に依存しており(2024年データ)、国内民間在庫はわずか約20日分という薄い水準でした。
原油・天然ガスとは異なり、ナフサには国家備蓄制度がありません。
この構造上の弱点が、2026年2月末の中東情勢の急変によって一気に表面化しました。
ホルムズ海峡の通航が事実上困難となったことで、日本のナフサ調達に直撃の影響が生じ、国内主要石油化学メーカーが相次いでエチレン設備の減産を発表する事態となりました。
ポイント:ナフサ不足の影響が食品・医療・建設・衣料と横断的に広がるのは、ナフサが「石油化学製品すべての起点」であり、日本がその供給をほぼ中東産輸入に頼っているからです。
分野別|ナフサ不足が暮らしに与える影響

1. 日用品・生活消耗品への影響
最も早く、最も広く影響が出るのが日用品分野です。
プラスチック製の容器・袋・フィルムは、ポリエチレンやポリプロピレンを素材とし、いずれもナフサ由来です。在庫がはけ始めると、メーカーは調達コストの上昇分を価格に転嫁せざるを得なくなります。
ゴミ袋・指定ごみ袋
ゴミ袋の主材料はポリエチレンです。エチレン生産量が減れば、ゴミ袋メーカーへの原料供給量が落ち込み、生産量が絞られます。2026年春以降、全国各地のドラッグストア・ホームセンターで指定ごみ袋の品薄・欠品が相次いで報告されており、自治体によっては他社製袋の一時使用を認める対応が出始めています。

食品用ラップ・ポリ袋
食品用ラップはポリ塩化ビニリデン(PVDC)またはポリエチレン(PE)製で、いずれもナフサ由来です。ポリ袋・ジッパーバッグも同様です。日常的な消耗品であるため使用量が多く、価格上昇の影響が家計に直接響く品目です。
洗剤・シャンプー・柔軟剤
合成洗剤の界面活性剤(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩など)の多くは、ベンゼン・プロピレンなどのナフサ由来成分から製造されます。容器(ポリエチレン・ポリプロピレン製ボトル)のコスト上昇も重なり、原料コスト・容器コストの両面から価格上昇圧力を受けやすい品目です。

化粧品・スキンケア用品
化粧水・乳液・クリームに広く配合されているBG(ブチレングリコール)・プロピレングリコール(PG)・シリコーン類は、いずれもナフサ由来の石油化学製品です。原料コストの上昇は製品価格に反映され、スキンケアからメイクアップまで幅広いカテゴリで価格改定が進んでいます。

2. 食品・食材への影響
「ナフサが不足して、なぜ食品の値段が上がるの?」——この疑問を持つ方は多いですが、食品分野への影響は少なくとも4つのルートから生じます。
①食品容器・包装材コストの上昇
食品トレー(ポリスチレン製)・ペットボトル(PET製)・食品フィルム(PE製)・カップ麺容器(PP製)など、食品に直接触れる包材のほぼすべてがナフサ由来のプラスチックで作られています。容器・包装材のコスト上昇は、そのまま食品の出荷価格の上昇につながります。
②農業資材コストの上昇
ビニールハウスのフィルム(PE製)・農業用マルチシート・農薬容器・肥料袋はいずれもポリエチレン・ポリプロピレン製で、ナフサ由来です。農業資材のコスト増は、野菜・果物などの生産コストに上乗せされ、最終的には食品価格の上昇要因となります。
③輸送コストの上昇(ガソリン・軽油高騰)
原油全体の供給が細れば、ガソリン・軽油も値上がりします。食品物流にかかるトラック輸送費の増加は、食品価格を押し上げるもう一つの要因です。
④食品パッケージの意匠変更
2026年5月、カルビーが主力商品14品の包装デザインを白黒に切り替えると発表しました。背景には印刷インクの原料不足があります。印刷インクに使われる顔料・樹脂バインダー・溶剤の多くはトルエン・キシレンなどナフサ由来であり、カラー印刷の維持コストが急上昇しているためです。見た目の変化だけでなく、製品の識別や購買行動にも影響を与える可能性があります。

3. 衣料・繊維製品への影響
衣類の「化学繊維」はほぼすべてナフサ由来です。
| 繊維名 | 原料 | 主な用途 |
|---|---|---|
| ポリエステル | PET(テレフタル酸+エチレングリコール) | Tシャツ・スポーツウェア・フリース |
| ナイロン(ポリアミド) | ベンゼン由来のカプロラクタム | ストッキング・アウトドアウェア・バッグ |
| アクリル | アクリロニトリル(プロピレン由来) | セーター・毛布・ぬいぐるみ |
| ポリウレタン | MDI/TDI(ベンゼン・トルエン由来) | 水着・スポーツインナー・ストレッチ素材 |
日本の衣料品市場において化学繊維の使用比率は非常に高く、製品の多くがナフサ由来の素材を含んでいます。
ナフサコストの上昇は素材メーカー→縫製メーカー→アパレルブランドと連鎖的に波及し、衣料品全体の価格上昇圧力となります。
また繊維原料だけでなく、染料・加工助剤・撥水剤・防縮剤といった仕上げ工程で使われる化学薬剤の多くもナフサ由来です。
高機能衣料(防水・吸湿速乾・抗菌防臭など)への影響は特に大きくなる可能性があります。
4. 住宅・建設分野への影響
住宅設備・建築資材へのナフサの関与は、一般に思われているより広範囲に及んでいます。
断熱材
住宅断熱に広く使われる発泡ポリスチレン(EPS・XPS)や硬質ウレタンフォームは、ポリスチレン・イソシアネート(ベンゼン・トルエン由来)を原料とするナフサ由来製品です。断熱材メーカーが生産コスト増を受けて値上げを実施すれば、新築・リフォーム工事の費用が上昇します。
配管・水道管
塩化ビニル管(VPパイプ)はポリ塩化ビニル(PVC)製であり、塩化ビニルモノマーの製造にはエチレン(ナフサ由来)が使われます。給水管・排水管・ガス配管に広く使われており、新設・更新工事のコスト増要因になります。
塗料・防水材
外壁塗料・屋根防水材・床塗料に使われるアクリル樹脂・ポリウレタン樹脂・エポキシ樹脂はいずれもナフサ由来成分を含みます。塗装工事・防水工事のコストが上昇し、外装リフォームの見積額が増加傾向にあります。
接着剤・シーリング材
建築用接着剤・シーリング材(コーキング材)の主成分であるシリコーン・変性シリコーン・ポリウレタンも、ナフサ由来の化学品を含んでいます。窓廻り・外壁目地のシーリング打ち替えなど、メンテナンス工事の単価にも影響が出てきます。

5. 医療・衛生用品への影響
医療分野は、ナフサ由来プラスチックへの依存度が特に高い領域の一つです。
医療器具・容器
使い捨て注射器(シリンジ)の本体・プランジャーはポリプロピレン製です。点滴バッグはポリ塩化ビニル(PVC)製またはポリプロピレン製、採血管はPET製がほとんどです。カテーテル・チューブ類にもPVC・ポリウレタンが使われています。これら医療現場の消耗品の大半がナフサ由来プラスチックです。
衛生用品
使い捨てマスク(不織布:ポリプロピレン製)・手袋(ポリエチレン製またはニトリル製)・おむつの防水バックシート(ポリエチレン製)なども同様です。介護・育児・医療介入が必要な方にとっては、価格上昇が直接的な家計負担となります。
医薬品原料
医薬品の有効成分そのものではなく、溶剤・界面活性剤・安定化剤などの補助原料にナフサ由来の化学品が使われているケースが多くあります。また錠剤のコーティング剤・カプセルの素材にも石油化学由来成分が含まれており、製造コストへの影響は小さくありません。

6. 交通・輸送分野への影響
タイヤ
自動車・トラック・バイク・自転車のタイヤには合成ゴム(SBR・BR)が使われており、その原料はブタジエン(ナフサ由来)です。タイヤは輸送コストに直結する消耗品であり、価格上昇は物流コスト全体を押し上げます。
自動車部品
自動車の内外装・バンパー・ダッシュボード・シートなどに使われるポリプロピレン・ポリウレタン・ABS樹脂・ナイロン・ポリカーボネートはいずれもナフサ由来です。新車価格の上昇や、整備・修理部品の価格上昇につながります。
燃料コスト(ガソリン・灯油・都市ガス)
原油全体の供給が細れば、ナフサだけでなくガソリン・灯油・軽油の価格も連動して上昇します。家庭の暖房コスト・マイカーの給油費・農業機械の燃料費が増加し、家計への多面的な打撃となります。
7. 農業・食料生産への影響
食品への影響に加え、農業の生産現場でも直接的なコスト増が生じています。
| 農業資材 | 素材・原料 | 影響 |
|---|---|---|
| ビニールハウスフィルム | ポリエチレン | 施設園芸コスト増 |
| 農業用マルチシート | ポリエチレン | 露地野菜の生産コスト増 |
| 農薬容器・肥料袋 | PP・PE | 資材費上昇 |
| 農業用ホース・チューブ | PVC・PE | 灌水コスト増 |
| 農薬・除草剤の有効成分 | ベンゼン・トルエン系化合物 | 農薬価格上昇 |
これらのコスト増は農家の経営を圧迫し、生産量の抑制や作付けの変更を招く可能性があります。農業の生産性低下は、中長期的な食料の安定供給にも影響し得る問題です。
8. 情報・電子機器分野への影響
電子機器・通信インフラも、ナフサ由来の化学品から無縁ではありません。
電子部品・半導体
半導体の製造工程では、フォトレジスト(感光性樹脂)・洗浄溶剤・封止材(エポキシ樹脂)などにナフサ由来の化学品が使われています。半導体の製造コストへの直接影響は相対的に小さいものの、長期化すれば電子部品全体のコスト増につながる可能性があります。
スマートフォン・PCの筐体・部品
スマートフォン・PCの外装に使われるABS樹脂・ポリカーボネートはナフサ由来です。ケーブルの絶縁被覆(PVC・PE)も同様です。消費電子機器の価格上昇の一因となる可能性があります。
インターネット・通信インフラ
光ファイバーケーブルの外装・電線の被覆にはPVCやポリエチレンが使われており、通信インフラの維持・新設工事コストにも影響します。
9. 産業・企業経営への影響
ナフサ不足の影響は、家庭の消費生活だけでなく産業全体にも及んでいます。
石油化学・化学メーカーの減産
2026年3月、三菱ケミカルグループ・出光興産・三井化学・旭化成などが相次いでエチレン設備の減産を発表しました。国内6か所の半数以上に相当する拠点が減産に入っており、川下産業への原料供給が細っています。
中小製造業への連鎖的ダメージ
石油化学の川下には、樹脂加工業・フィルムメーカー・包装資材メーカー・容器メーカー・繊維メーカーなど、中小企業が多く集積しています。
これらの企業は原料コストの上昇を価格に転嫁しきれず、利益の圧迫・資金繰りの悪化・最悪の場合は倒産へと追い込まれるリスクがあります。
帝国データバンクによれば、原材料価格高騰を直接の原因とする倒産件数は増加傾向にあり、影響企業は4万社超にのぼるとの試算もあります。

輸出産業への影響
自動車・電機・機械などの輸出産業も、製品に使われる樹脂・塗料・ゴム部品のコスト増を受けます。円安と原料高が重なると、製造コストは一層圧迫されます。
影響の「タイムライン」——いつ、どの分野に出るか

ナフサ不足の影響は、川上から川下へと時間差をもって伝播します。
| 時期 | 主な影響の波 |
|---|---|
| 発生直後(0〜1か月) | ナフサ現物価格の急騰、石油化学各社の減産発表、在庫取り崩し開始 |
| 1〜3か月後 | ゴミ袋・包装フィルム等の一次加工品の品薄・値上がり開始、ガソリン・灯油価格上昇 |
| 3〜6か月後 | 食品・日用品・化粧品・衣料品など川下製品の価格改定が本格化、建材・農業資材に波及 |
| 6か月〜1年後 | 医療機器・電子部品・自動車など高付加価値製品への影響顕在化、中小企業の経営悪化加速 |
| 1年超(長期化した場合) | サプライチェーンの構造的な見直し、国内生産の縮小・海外移転、食料安全保障への影響 |
川下の製品ほど影響の顕在化まで時間がかかります。
一方で、いったん価格が上がった製品は供給が回復しても元の価格には戻りにくいという傾向があります。
値上げ後の価格が「新しい水準」として定着するリスクには注意が必要です。
生活者が今できること
備蓄・購買行動の見直し
品薄・値上がりが懸念される品目については、無理のない範囲で1〜2か月分の使用量を目安とした備蓄を検討することが有効です。特にゴミ袋・食品ラップ・洗剤・マスクなどの日常消耗品は、保管スペースの許す範囲でまとめ買いしておくと安心です。ただし、必要以上の過剰備蓄は市場の品薄を助長するため、慎みましょう。

「非ナフサ」素材・代替品への切り替え検討
状況が長期化する場合、以下のような代替選択肢を検討することで、一部コストを抑えられる場合があります。
- ゴミ袋の代替:紙製ゴミ箱・生分解性袋(植物由来)への部分切り替え
- 衣料品:綿・麻・ウールなど天然繊維製品へのシフト
- 食品保存:ガラス保存容器・ステンレス容器の活用でラップ使用量を削減
- 洗剤:固形石けん・重曹・クエン酸などの天然由来洗剤への部分切り替え
完全に切り替えることは難しい品目も多いですが、使用量の削減や一部代替によって家計への影響を和らげることは可能です。
光熱費・エネルギーコストへの対応
ガソリン・灯油・都市ガスの価格上昇は家庭の光熱費を直撃します。省エネ機器への切り替え・エコ運転の徹底・断熱リフォームによる暖冷房効率の改善など、エネルギー消費量そのものを減らす取り組みが中長期的な家計防衛になります。
今後の見通し——終息はいつか

2026年5月現在、ナフサ不足の根本原因であるホルムズ海峡の通航問題は解決しておらず、終息の時期を具体的に示せる材料は現時点でありません。ただし、以下の動きにより最悪のシナリオは一定程度回避されつつあります。
- 政府による原油・石油製品の備蓄放出
- 調達先の代替化(オーストラリア・北米・東南アジア産ナフサへのシフト)
- 石油化学各社の生産効率化・原料転換の検討
とはいえ、代替調達には輸送コスト・精製設備の対応という制約があり、完全な代替は容易ではありません。短期的な品薄緩和は期待できても、価格水準が大幅に下がるには相応の時間を要するとみるのが現実的な見通しです。

よくある質問(FAQ)
Q. ナフサ不足はガソリン価格にも影響しますか?
A. 直接的な関係としては、ナフサとガソリンは同じ原油の精製工程から得られるため、原油の供給制約が起きると両方に影響します。ただし「ナフサ不足がガソリンを不足させる」という直接の因果関係ではなく、原油全体の供給不安がガソリン・ナフサ双方の価格を押し上げるという構造です。
Q. ナフサ不足でペットボトル飲料が買えなくなりますか?
A. 現時点では「買えなくなる」という事態は想定されていませんが、PET樹脂の調達コスト増によってペットボトル製品の値上がりは起こり得ます。完全な供給停止に至るには相当程度の長期化が必要であり、現段階では「価格上昇」が主な影響です。
Q. 天然素材の製品なら影響を受けませんか?
A. 木綿・麻・ウール・紙などの天然素材製品は、素材そのものはナフサ由来ではありません。ただし、製造工程で使う染料・加工薬剤・包装材・輸送用燃料はナフサに関連するケースが多く、完全に影響ゼロとはいえません。それでも化学繊維・プラスチック素材の製品と比べると、影響の度合いははるかに小さいといえます。
Q. 外国産のナフサに切り替えれば問題は解決しますか?
A. 代替調達自体は進んでいますが、以下の理由から「すぐに完全解決」とはなりません。①輸送距離が延びることでコストが上昇する、②既存の精製設備が特定の産地原油に最適化されており、原料を変えると設備調整が必要になる、③代替産地の供給余力にも限界がある——こうした制約から、完全な代替には時間と費用がかかります。
Q. 住宅設備の修理・交換工事も高くなりますか?
A. はい、影響は出てきています。給湯器・エアコン・換気設備などの住宅設備には樹脂部品が多く使われており、部品調達コストが上昇しています。また断熱材・配管材・塗料などの建材コストも上がっており、工事費用全体が上昇傾向にあります。
まとめ

ナフサ不足の影響は、ガソリンや灯油の価格上昇という「目に見えやすい変化」をはるかに超えた範囲に及んでいます。
| 分野 | 主な影響 |
|---|---|
| 日用品 | ゴミ袋・ラップ・洗剤・化粧品の品薄・値上がり |
| 食品 | 容器・包材コスト増、農業資材費上昇による食品価格上昇、パッケージ変更 |
| 衣料 | 化学繊維・合成ゴム素材の製品価格上昇 |
| 住宅・建設 | 断熱材・配管材・塗料・接着剤コスト増、工事費上昇 |
| 医療・衛生 | 使い捨て医療器具・マスク・おむつの価格上昇 |
| 交通・輸送 | タイヤ・自動車部品コスト増、物流費上昇 |
| 農業 | 農業資材費増大、生産コスト上昇 |
| 産業全体 | 中小製造業の倒産増加リスク、輸出産業のコスト圧迫 |
これほど広範囲に影響が及ぶのは、ナフサが現代の産業・生活の「縁の下の原料」であり、日本がその供給を特定のルートに強く依存してきた構造的な問題があるからです。
生活者としては、①必要最低限の備蓄、②代替品・天然素材製品への部分切り替え、③エネルギー消費の削減——この3点を軸に、過度に不安になることなく現実的に対処することが大切といえるでしょう。

