電気の使用量はほとんど変わらないのに、請求額が月によって上がったり下がったりして、不思議に思ったことはありませんか。
検針票を見ると「燃料費調整額」という項目があり、プラスになっている月もあればマイナスになっている月もあります。
燃料費調整額とは、発電に使う燃料の輸入価格の変動を、毎月の電気料金に反映させるための調整額です。
燃料が高くなれば電気代に上乗せされ、安くなれば差し引かれます。
この記事では、燃料費調整額がどのように決まるのかを順を追って整理し、計算方法、プラスとマイナスになる理由、料金プランによる違い、検針票での確認方法までを解説します。
燃料費調整額の基本

電気料金は、主に次の4つで構成されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 基本料金 | 契約アンペアなどに応じた固定費 |
| 電力量料金 | 使った電力量(kWh)× 単価 |
| 燃料費調整額 | 燃料価格の変動を反映する調整額(毎月変わる) |
| 再エネ賦課金 | 再生可能エネルギーの普及費用の負担分 |
燃料費調整額は、この中で唯一、毎月変わる項目です。
日本の電気の多くは火力発電でつくられており、その燃料である原油・LNG(液化天然ガス)・石炭の大部分を輸入に頼っています。
燃料の輸入価格は、国際的な市場の動きや為替によって日々変動します。
その変動を電気料金に反映させるための仕組みが、燃料費調整制度です。
電力会社にとっては、燃料価格が上がったときに料金を改定し直さなくても、毎月自動的に調整できるという意味があります。
使う側にとっては、燃料が安くなったときには電気代が下がるという仕組みでもあります。
燃料費調整額が決まるまでの流れ
燃料費調整額は、次の順番で決まります。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| ① 平均燃料価格を出す | 原油・LNG・石炭の3か月間の輸入価格(貿易統計価格)の平均を出す |
| ② 基準燃料価格と比べる | 料金設定の前提になっている燃料価格(基準燃料価格)との差を見る |
| ③ 燃料費調整単価を出す | 差の大きさに応じて、1kWhあたりの調整単価を決める |
| ④ 燃料費調整額を出す | 調整単価 × その月の使用量(kWh) |
東京電力エナジーパートナーは、原油・LNG・石炭それぞれの3か月間の貿易統計価格にもとづいて毎月平均燃料価格を算定し、基準燃料価格との差分にもとづいて燃料費調整単価を算定すると説明しています。
平均燃料価格が基準燃料価格を上回る場合はプラス調整、下回る場合はマイナス調整になります。
平均燃料価格
原油・LNG・石炭は、それぞれ熱量や単位が違います。
そこで、各燃料の価格を原油に換算した1klあたりの価格にそろえ、電力会社ごとの係数を掛けて合算したものが平均燃料価格です。
計算式の形は次のとおりです。
平均燃料価格(原油換算1klあたり)= α × 原油価格 + β × LNG価格 + γ × 石炭価格
α・β・γは、各電力会社が燃料の使用構成などをもとに定めた係数です。
たとえば東京ガスは、自社の電気料金での係数を「0.0048 × A + 0.3827 × B + 0.6584 × C」(Aは原油、BはLNG、Cは石炭の平均価格)と公表しています。
📎 出典:東京ガス「燃料費調整制度とは?」
係数は電力会社ごとに違うため、同じ時期でも会社によって燃料費調整単価は異なります。
LNGの比率が高い会社はLNG価格の影響を、石炭の比率が高い会社は石炭価格の影響を強く受けます。
基準燃料価格
基準燃料価格は、電力会社が料金プランを設定・改定したときに前提とした燃料価格です。
この価格を基準に、実際の燃料価格が高いか安いかで調整が行われます。
基準燃料価格も、電力会社や料金プランによって異なります。
燃料費調整単価の計算方法
平均燃料価格と基準燃料価格の差から、1kWhあたりの燃料費調整単価を計算します。
燃料費調整単価(円/kWh)=(平均燃料価格 − 基準燃料価格)× 基準単価 ÷ 1,000
基準単価は、平均燃料価格が1klあたり1,000円変動したときに、電気料金の単価が1kWhあたりいくら変わるかを示す値で、電力会社ごとに定められています。
最後に、その月の使用量を掛けたものが燃料費調整額です。
燃料費調整額 = 燃料費調整単価 × 使用量(kWh)
たとえば、燃料費調整単価がプラス2円/kWhの月に300kWhを使えば、燃料費調整額は600円の上乗せです。
単価がマイナス1円/kWhなら、300円が差し引かれます。
| 燃料費調整単価 | 月200kWh | 月300kWh | 月500kWh |
|---|---|---|---|
| +3円/kWh | +600円 | +900円 | +1,500円 |
| +1円/kWh | +200円 | +300円 | +500円 |
| −1円/kWh | −200円 | −300円 | −500円 |
| −3円/kWh | −600円 | −900円 | −1,500円 |
使用量が多い家庭ほど、燃料費調整単価の変動の影響を大きく受けます。
単価が1円違うだけでも、月500kWhを使う家庭では月500円、年間6,000円の差になります。
燃料価格が電気代に反映されるまでの時間差
燃料費調整制度には、もう一つ重要な特徴があります。
それは、燃料価格の変動がすぐには電気代に反映されないことです。
資源エネルギー庁は、燃料価格の変動をより迅速に料金に反映させるとともに料金変動を平準化するため、料金反映までの期間を最短の2か月とし、3か月分の平均燃料価格を毎月反映する仕組みにしたと説明しています。
例として、12月から翌年2月の燃料価格は、同じ年の5月の料金に反映されるとしています。
| 燃料価格の算定期間 | 反映される電気料金の月 |
|---|---|
| 12月〜翌年2月 | 5月分 |
| 1月〜3月 | 6月分 |
| 2月〜4月 | 7月分 |
| 3月〜5月 | 8月分 |
この仕組みには、2つの意味があります。
- 3か月の平均を使うため、一時的な価格の急変が和らげられる
- 反映が遅れるため、ニュースで燃料高が報じられても、電気代に出るのは数か月後になる
逆に、燃料価格が下がり始めても、電気代が下がるのは数か月後です。
「燃料が安くなったのに電気代が下がらない」と感じる時期があるのは、この時間差のためです。
燃料価格を動かす要因
燃料費調整額の元になる燃料の輸入価格は、次のような要因で動きます。
| 要因 | 影響 |
|---|---|
| 国際的な原油・LNG・石炭の価格 | 世界的な需給や産油国の動向、国際情勢で変動する |
| 為替(円安・円高) | 円安になると、同じ価格でも円建ての輸入価格が上がる |
| 季節的な需要 | 世界的な暖房・冷房の需要期に価格が上がりやすい |
とくに見落とされやすいのが為替です。
燃料は外貨建てで取引されるため、国際価格が変わらなくても、円安が進めば燃料費調整額は上がります。
なお、LNGの輸入先はオーストラリアや東南アジア、米国などが中心で、中東からの比率は1割程度です。
ただし、LNGの長期契約には原油価格に連動するものが多く、原油価格の上昇はLNGの輸入価格にも時間差を伴って波及します。
国際情勢の緊迫化が電気代に影響するのは、供給が止まるからというより、価格の連動を通じてという面が大きいと考えてください。
原油価格と電気代の関係は原油価格が高騰すると電気代はどうなる?知らないと損する家庭への影響で詳しく解説しています。
規制料金と自由料金で「上限」が違う
燃料費調整額には、料金プランによって上限がある場合とない場合があります。
| 料金の種類 | 上限の扱い |
|---|---|
| 規制料金(大手電力の従量電灯など) | 平均燃料価格に上限がある(基準燃料価格の1.5倍) |
| 自由料金(大手電力・新電力の自由化後のプラン) | 上限の有無は電力会社・プランごとに異なる |
規制料金とは、電力自由化の前から続いている、大手電力会社の従量電灯などのプランです。
東京電力エナジーパートナーの規制料金では、平均燃料価格が基準燃料価格の1.5倍を上回る場合、それを上回る部分については調整を行わないとしています。
つまり、燃料価格がどれだけ上がっても、燃料費調整額には天井があるということです。
一方、自由料金では、上限を設けていないプランが増えています。
たとえば沖縄電力は、2023年4月から全ての自由料金メニューで、燃料費調整制度における平均燃料価格の上限を廃止したと案内しています。
📎 出典:沖縄電力「燃料費調整制度について」
上限のないプランでは、燃料価格が急騰したときに、その上昇分がそのまま電気代に反映されます。
東京電力エナジーパートナーは、過去の事例として、世界的な燃料価格の高騰の影響で、同社の代表的な料金プランの260kWhモデルでは、2023年1月の電気料金が燃料費調整の適用がない場合と比べて1.4倍程度になったと示しています。
自分の契約に上限があるかどうかは、電力会社の約款や料金表、会員ページで確認できます。
電力会社を選ぶときは、単価の安さだけでなく、燃料費調整の上限の有無も確認することが大切です。
市場価格連動型プランとの違い
燃料費調整額と混同されやすいのが、市場価格連動型のプランです。
| 比較項目 | 燃料費調整額 | 市場価格連動型プラン |
|---|---|---|
| 何に連動するか | 燃料の輸入価格(3か月平均) | 電力の卸市場の価格(30分ごと) |
| 反映の速さ | 2か月以上の時間差 | ほぼリアルタイム |
| 変動の大きさ | 比較的なだらか | 需給のひっ迫時に大きく跳ねる |
市場価格連動型のプランは、燃料費調整額の代わりに、電力市場の卸価格に連動して単価が変わる仕組みです。
寒波や猛暑で電力の需給がひっ迫すると、単価が短期間に大きく上がることがあります。
燃料費調整額のように3か月の平均で緩やかに動く仕組みとは、変動の性質がまったく違います。
国の支援による値引きとの関係
電気・ガス料金支援が行われている期間は、燃料費調整額とは別に、国の支援による値引きが適用されます。
電力会社によっては、燃料費調整単価の欄に支援の値引きを含めた単価を表示していることがあります。
検針票の燃料費調整単価が大きく下がった月は、燃料価格の下落によるものか、支援の値引きが加わったものかを区別して見る必要があります。
支援が終わると、その分だけ単価が上がって見えるため、燃料価格が上がったと誤解しやすくなります。
検針票で燃料費調整額を確認する
検針票やWeb明細では、次の項目を確認してください。
| 確認する項目 | 見方 |
|---|---|
| 燃料費調整額 | プラスなら上乗せ、マイナスなら値引き |
| 燃料費調整単価 | 1kWhあたりの調整額。電力会社のサイトで毎月公表されている |
| 使用量(kWh) | 燃料費調整額は、単価×使用量で決まる |
| 支援による値引き | 支援期間中は、別の項目か燃料費調整単価に含めて表示される |
請求額が前年同月より上がっていても、使用量が同じなら、原因は燃料費調整額や支援の有無にあると切り分けられます。
まず使用量(kWh)を比べ、次に燃料費調整単価を比べるのが、請求額の変化の理由を正確につかむ順番です。
電力会社は、翌月以降の燃料費調整単価を事前に公表しています。
電力会社のサイトで数か月分の推移を見ておくと、今後の請求額の動きをある程度予想できます。
燃料費調整額が上がったときにできること
燃料費調整単価そのものは、使う側では変えられません。
できるのは、次のような対応です。
- 使用量を減らす(燃料費調整額は単価×使用量なので、使用量が減れば額も減る)
- 燃料費調整の上限があるプランかどうかを確認し、必要なら見直す
- 市場価格連動型のプランを使っている場合、需給ひっ迫時の変動に備える
使用量を減らす方法は、金額の大きい家電から見直すのが効率的です。
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よくある質問
Q1. 燃料費調整額とは何ですか?
発電に使う燃料(原油・LNG・石炭)の輸入価格の変動を、毎月の電気料金に反映させるための調整額です。
3か月間の燃料の輸入価格の平均(平均燃料価格)が、料金設定の前提になっている基準燃料価格より高ければ電気代に上乗せされ、低ければ差し引かれます。
燃料費調整額は、1kWhあたりの燃料費調整単価に、その月の使用量を掛けて計算します。
電気料金を構成する項目の中で、唯一毎月変わる項目です。
Q2. 燃料費調整額がプラスになるのはなぜですか?
平均燃料価格が基準燃料価格を上回っているためです。
燃料の国際価格が上がった場合だけでなく、円安が進んだ場合も、円建ての輸入価格が上がるため燃料費調整額はプラスに動きます。
また、燃料価格の変動は2か月以上遅れて反映されるため、ニュースで燃料価格が下がったと報じられても、しばらくはプラスのままになることがあります。
国の支援が行われている期間は、支援の値引きが加わるため、見かけ上マイナスになることもあります。
Q3. 燃料価格が変わってから電気代に反映されるまでどれくらいかかりますか?
最短で2か月です。
資源エネルギー庁の説明では、3か月分の平均燃料価格を2か月後の料金に反映する仕組みで、例えば12月から翌年2月の燃料価格は、同じ年の5月の料金に反映されます。
3か月の平均を使うため、一時的な価格の急変が和らげられる一方、燃料価格が上がり始めてから電気代に出るまで、また下がり始めてから電気代が下がるまで、数か月の時間差があります。
Q4. 燃料費調整額に上限はありますか?
料金プランによります。
大手電力会社の規制料金(従量電灯など)では、平均燃料価格に基準燃料価格の1.5倍という上限があり、それを超える部分は調整されません。
一方、自由料金では上限の有無が電力会社・プランごとに異なり、上限を廃止している会社もあります。
上限のないプランでは、燃料価格が急騰したときに上昇分がそのまま電気代に反映されます。
自分の契約に上限があるかは、約款や料金表、会員ページで確認してください。
Q5. 燃料費調整額は電力会社によって違いますか?
違います。
平均燃料価格を計算するときの原油・LNG・石炭の係数や、基準燃料価格、基準単価が、電力会社ごとに定められているためです。
同じ時期でも、LNGの比率が高い会社と石炭の比率が高い会社では、燃料費調整単価の動き方が異なります。
また、同じ会社でも、規制料金と自由料金で上限の有無が違うことがあります。
比較するときは、燃料費調整単価の水準だけでなく、上限の有無もあわせて確認してください。
まとめ
燃料費調整額は、燃料の輸入価格の変動を毎月の電気料金に反映させる仕組みです。
- 原油・LNG・石炭の3か月平均の価格が、基準燃料価格より高ければプラス、低ければマイナス
- 燃料費調整額は「燃料費調整単価 × 使用量」。使用量が多い家庭ほど影響が大きい
- 燃料価格の変動は最短2か月遅れて反映される。燃料高・燃料安と電気代の動きにはズレがある
- 国際価格だけでなく、円安も燃料費調整額を押し上げる
- 規制料金には上限があり、自由料金は上限の有無がプランごとに違う
燃料費調整単価そのものは変えられませんが、上限の有無は契約の選び方で変わります。
まずは検針票で燃料費調整額の欄と使用量を確認し、自分の契約に上限があるかを調べてみてください。

