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賃貸のエアコンが故障したら?費用負担の考え方と連絡の手順

賃貸のエアコンが故障した際の費用負担の考え方と連絡手順を紹介するサムネイル画像
Yuta
記事監修者
現:ガス会社に勤める兼業WEBライター。所持資格はガス開栓作業に必要な高圧ガス販売主任者二種、ガス工事に必要な液化石油ガス設備士、灯油の取り扱いに必要な危険物乙四種、その他ガス関連資格多数と電気工事士などの資格も多数所持。

真夏の夜、賃貸の部屋でエアコンのスイッチを入れたのに冷たい風が出てこない。

そんなとき、多くの方が最初に不安になるのは「この修理代、自分が払うことになるのだろうか」という点ではないでしょうか。
賃貸住宅のエアコンは、持ち主が自分ではないぶん、勝手に修理を頼んでよいのかどうかも判断しづらいところです。
結論から言えば、そのエアコンが契約上の「設備」であれば、修理費は原則として貸主(大家さん)の負担になります。
ただし、契約書の書かれ方や故障の原因によっては、この原則が当てはまらないこともあります。

この記事では、費用負担が誰になるのかを見分ける基準、管理会社への連絡の手順と伝えるべき内容、修理が長引いたときの賃料減額の考え方、そして退去時に費用を請求されたときの見方までを、法令と国の資料に沿って整理します。

目次

賃貸のエアコン修理費は原則として貸主負担、まずは管理会社への連絡が最短ルート

最初に全体像をお伝えします。
賃貸物件に備え付けられているエアコンが自然に壊れた場合、修理・交換の費用は貸主が負担するのが原則です。
これは民法に定められた賃貸人の修繕義務にもとづくもので、貸主は借りている人が物件を使えるように必要な修繕をする義務を負っています。

一方で、借りている側にも法律上の義務があります。
不具合を見つけたときに、遅滞なく貸主へ知らせる「通知義務」です。
つまり、エアコンが壊れたときに借主が最初にやるべきことは、自分で修理業者を探すことではなく、管理会社または貸主へ連絡することだと言えます。

📎 出典:e-Gov法令検索「民法」(第606条・第607条の2・第611条・第615条)

順番を間違えると、修理そのものはできても費用を負担してもらえない、という事態になりかねません。
以下では、その判断の分かれ目を順に見ていきます。

動き出す前に押さえたい3つの原則

原則内容例外になる主なケース
費用は貸主負担備付け設備の自然故障は貸主が修繕する借主に落ち度がある/設備ではない
連絡が先、修理は後借主は不具合を遅滞なく通知する緊急時や貸主が対応しないとき
記録を残す症状・日付・やり取りを文書と写真で残す

この3点を押さえておけば、たいていの場面は落ち着いて進められます。

エアコンが「設備」か「残置物」かで費用負担は正反対になる

賃貸のエアコンで最もトラブルになりやすいのが、そのエアコンが「設備」なのか「残置物」なのかという区別です。
見た目はまったく同じ壁掛けエアコンでも、契約上の扱いが違えば費用負担は正反対になります。

  • 設備:貸主が物件の一部として提供しているもの。故障したら貸主が修繕する義務を負う
  • 残置物(ざんちぶつ):前の入居者が置いていったものを、貸主が「あるけれど責任は持たない」形で残しているもの。故障しても貸主に修繕義務はないのが一般的

残置物のエアコンは、「使えるうちは自由に使ってよいが、壊れたときの修理・撤去は入居者の判断と負担で」という条件で引き渡されているケースが多く見られます。
入居時に説明を受けたつもりでも、内見や引っ越しの慌ただしさの中では記憶に残っていないことも珍しくありません。

契約書の「設備等の状況」欄と物件状況確認リストで見分ける

見分ける方法は明快です。
賃貸借契約書と、入居時に取り交わした書類を確認してください。

  1. 契約書に添付されている「設備等の状況」の一覧表に、空調設備(エアコン)が「有」と記載されているか
  2. 「入居時物件状況確認リスト」など、入居時に設備の状態を記録した書面にエアコンが含まれているか
  3. 特約欄に「エアコンは残置物とし、修繕義務を負わない」といった趣旨の記載がないか

国土交通省が公表している賃貸住宅標準契約書にも、物件に付属する設備を一覧で記載する様式が用意されています。
多くの管理会社の契約書はこの様式をベースにしているため、同じような一覧表が付いているはずです。

📎 出典:国土交通省「『賃貸住宅標準契約書』について」

書類が見つからない、あるいは記載があいまいで判断できない場合は、自己判断で結論を出さず、管理会社に「このエアコンは設備扱いでしょうか、それとも残置物でしょうか」と直接確認するのが確実です。
これは責めるための質問ではなく、事実確認として当然に尋ねてよい内容です。

残置物エアコンでも、貸主に相談する価値はある

残置物と判明した場合、修理費は基本的に自己負担になります。
ただし、そこで話が終わるとは限りません。

  • 残置物であっても、貸主の判断で新品の設備エアコンに入れ替えてもらえることがある
  • 入居時に「使えます」と説明されていた場合、その説明内容が争点になり得る
  • 交換に貸主の許可が必要か、退去時に撤去するのか置いていってよいのかも、あわせて確認しておく必要がある

自費で新しいエアコンを設置する場合、設置と退去時の扱いについて事前に書面で合意しておくことが、後の原状回復トラブルを防ぐ最大のポイントです。
壁に穴を開ける、専用回路を引くといった工事を伴う場合はなおさらです。

借主の使い方が原因なら、修理費は借主の負担になる

設備エアコンであっても、費用が借主負担になる場合があります。
民法の修繕義務には「借主の責めに帰すべき事由によって修繕が必要になったときは、この限りでない」というただし書きがあり、故障の原因が借主側にある場合、貸主は修繕義務を負いません

具体的には、次のような区分になります。

貸主負担と借主負担の線引き早見表

状況費用負担の考え方補足
経年劣化で冷媒が抜けた、基板が壊れた貸主自然故障の典型例
コンプレッサーの寿命による停止貸主使用年数10年前後で起こりやすい
落雷やサージによる基板故障貸主が多い火災保険や施設賠償で処理される場合あり
掃除を長期間せずカビ・詰まりで水漏れ争いになりやすい通常のフィルター清掃は借主の管理範囲
室内機を物にぶつけて破損させた借主故意・過失にあたる
室外機に物を置いて風路をふさぎ故障した借主用法違反と評価され得る
リモコンを紛失・水没させた借主が多い消耗品・小物の扱いは契約次第

判断が難しいのは、真ん中あたりのケースです。
たとえばドレン詰まりによる水漏れは、フィルター清掃を怠っていたことが原因なら借主側の管理不足と見られる可能性がありますが、ドレンホースの屋外側の勾配不良や施工上の問題であれば貸主側の問題になります。
エアコンから水が垂れる原因の切り分けについてはエアコンから水が垂れる原因とは?今すぐ確認すべきポイントと正しい対処判断で詳しく解説しています。

「日常の手入れ」はどこまでが借主の責任か

多くの賃貸借契約では、借主に善良な管理者としての注意義務(善管注意義務)が課されています。
エアコンで言えば、次のような範囲が一般的な借主の管理範囲と考えられます。

  • フィルターの定期的な清掃(メーカーはおおむね2週間に1回程度を推奨していることが多い)
  • 吹き出し口まわりの拭き取り
  • 室外機の周囲に物を置かない、吹き出しをふさがない
  • 異音・異臭・水漏れなど、異常に気づいたら早めに通知する

一方、内部の分解洗浄、熱交換器の高圧洗浄、冷媒の充填といった作業は借主の管理範囲を超えます。
むしろ、賃貸のエアコンを許可なく分解洗浄すると、破損させた場合の責任を問われるおそれがあります
市販の洗浄スプレーを電装部に吹き込んで発煙・発火に至った事例も報告されており、賃貸物件では自己判断での内部洗浄は避けるのが無難です。

自分で修理業者を呼ぶ前に知っておきたい、費用を請求できる条件

「連絡がつかないから、とりあえず自分で業者を呼んでしまおう」という判断は、気持ちとしてはよく分かります。
しかし、貸主に無断で修理を発注すると、その費用を請求できない場合があります

民法には、借主が自分で修繕できる場面が限定的に定められています。
おおまかには、次の2つです。

  1. 借主が貸主に修繕が必要である旨を通知したか、貸主がそれを知ったにもかかわらず、相当の期間内に必要な修繕をしないとき
  2. 急迫の事情があるとき

逆に言えば、通知もしていない段階でいきなり業者を手配すると、この要件を満たさないと判断される可能性があります。
費用の償還を求めるつもりなら、「通知した事実」と「相当期間が経過した事実」を記録として残しておくことが前提条件になります。

判断に迷ったときの流れ

状況取るべき行動
冷房・暖房が効かないが、生活は続けられるまず連絡し、返答を待つ
連絡したが数日〜1週間以上、具体的な返答がない期限を切って書面で再度依頼する
焦げ臭い、発煙している、水が電気配線にかかっている直ちにブレーカーを落とし、緊急連絡先へ
猛暑・厳寒で健康被害の危険が現実的にある緊急性を明示して連絡し、代替手段も相談する

なお、多くの管理会社は緊急対応窓口を設けています。
契約書やマグネット、入居のしおりに24時間対応の番号が記載されていないか確認してください。

連絡する前の5分で確認したい、故障ではないかもしれない4項目

管理会社に連絡したあとで「フィルターが詰まっていただけでした」となると、出張費を請求されるケースもあります。
連絡前に、工具を使わない範囲で次の4点だけは確認しておくと安心です。

  1. リモコンの電池と設定:電池切れ、送風モードのまま、温度設定が28度のまま、といったケースは想像以上に多く見られます
  2. フィルターの目詰まり:ほこりが詰まっていると風量が落ち、「効かない」と感じられます。取り外して掃除機をかけるだけで改善することがあります
  3. ブレーカーと電源プラグ:分電盤のエアコン専用ブレーカーが落ちていないか、プラグが抜けかけていないかを見ます
  4. 室外機のまわり:吹き出し口の前に物が置かれていないか、雪や落ち葉でふさがれていないかを確認します

これらは、いずれも借主が触れて問題のない範囲です。
逆に、前面パネルの内部を開ける、アルミフィンをブラシでこする、配管の接続部を触るといった作業は行わないでください。

冷えない症状の切り分け手順はダイキンのエアコンが冷えない原因|自分でできる確認と業者依頼の目安でメーカー別に整理しています。
リモコンやランプにエラー表示が出ている場合は、その内容もあわせて控えておくと連絡がスムーズです。
表示コードの意味はパナソニックエアコンのエラーコード一覧|F・Hから始まる全コードを解説などのメーカー別記事が参考になります。

確認してはいけないこと

  • 室内機のカバーを外して内部を触る
  • 冷媒配管の接続ナットを緩める
  • 洗浄スプレーを電装部・基板側に噴射する
  • 室外機の天板を開けて内部を点検する

これらは感電や機器破損のリスクがあるうえ、賃貸物件では他人の所有物を勝手に分解したことになり、責任問題に発展しかねません

管理会社への連絡は「症状・発生日・型番・写真」をそろえると対応が早くなる

連絡の内容が具体的であるほど、部品の手配や業者の選定が早く進みます。
逆に「エアコンが壊れました」だけでは、現地確認からやり直しになり、対応が数日遅れることもあります。

伝えるべき項目は次の5つです。

項目具体例
部屋番号・氏名○○マンション305号室・△△
症状冷房運転で風は出るが冷たくならない。室外機のファンが回っていない
発生日時8月20日夜から。それ以前は正常に動作
機種情報室内機側面のシールに記載の メーカー名・型番・製造年
自分で試したことフィルター清掃、電池交換、ブレーカー確認済み。改善なし

写真は、室内機の型番シール、リモコンの表示、室外機の設置状況の3枚があれば十分です。
型番は室内機の右側面や前面パネルを開けた内側にシールで貼られていることが多く、スマートフォンで撮っておくと後の連絡でも役立ちます。

電話だけで終わらせず、必ず文面を残す

電話は早いのですが、記録が残りません。
のちのち賃料減額や費用負担の話になったとき、「いつ、何を、誰に伝えたか」を示せるかどうかで結論が変わることがあります。

国土交通省の資料でも、借主は発生日時や経緯を文書で整理し、状態を写真等で記録しておくよう努めることが示されています。
電話で第一報を入れたあと、メールや管理会社のWebフォーム、チャットなどで同じ内容を送っておくのが確実です。

📎 出典:国土交通省「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集~賃借物の一部使用不能による賃料の減額等について~」

そのまま使える連絡テンプレート

件名:【○○マンション305号室】エアコン故障のご連絡お世話になっております。○○マンション305号室の△△です。
8月20日の夜より、居室のエアコンが冷房として機能しない状態が続いています。
運転はしますが風がぬるく、室外機のファンが回っていません。 フィルター清掃・リモコンの電池交換・ブレーカーの確認は済ませましたが、
症状は改善しませんでした。 機種:○○(メーカー)/型番 ○○○○/製造年 20○○年
(型番シールと室外機の写真を添付します) 日中は不在のため、平日夜間または土日であれば立ち会いが可能です。
修理業者の手配について、ご対応の見込みをお知らせいただけますでしょうか。 よろしくお願いいたします。

このように、症状・自分で試したこと・立ち会い可能な日時までを一度に伝えると、往復が減って復旧が早まります。

修理が長引くときは、民法611条により賃料が減額される場合がある

部品の取り寄せや業者の混雑で、修理まで1週間以上かかることは珍しくありません。
特に真夏は修理依頼が集中し、エアコン専門業者の予約が取りづらくなります。

このとき知っておきたいのが、民法611条第1項の規定です。
借主の責任によらない事由で物件の一部が使用できなくなった場合、賃料はその使用できなくなった部分の割合に応じて、当然に減額されるとされています。
2020年4月の改正で、それまでの「請求できる」から「減額される」へと表現が変わりました。

ただし、これは自動的に金額が決まるという意味ではありません。
国土交通省の資料では、賃料が減額される要件として、使用できない状態が社会通念上の受忍限度を超えて、通常の居住ができない程度に達していること、そして借主に帰責事由がないことが挙げられています。
さらに、減額の程度や期間は貸主と借主の協議で決めることが望ましいとされています。

実務では「日割り相当〜5割」程度の対応例が報告されている

同じ資料には、管理業者へのアンケートにもとづく実際の対応事例が掲載されています。
エアコンが作動しないケースについて報告された内容を整理すると、次のようになります。

修繕完了までの日数対応の内容減額割合等
1日お詫び金の提供月額の20%
1〜3日お詫び金の提供日割り分程度
4〜5日一時的な賃料の減額月額の5%
5日お詫び金の提供月額の10%
30日一時的な賃料の減額月額の50%

同じ資料には、賃借物の一部使用不能によるトラブルの内容として「エアコンが作動しない」が53.1%と、風呂・上階からの漏水に次いで多く挙がっていることも示されています。
つまり、エアコンの故障は賃貸トラブルの中でも上位に来るテーマだということです。

一方で、この事例集は「あくまでアンケート結果であり、賃料減額等の基準を決定するものではない」と明記しています。
上の数字は交渉の相場表ではなく、あくまで参考として押さえておくのが適切です。

エアコンの不具合だけでは減額が認められなかった裁判例もある

注意しておきたいのは、エアコンの不調が常に賃料減額の理由になるわけではない、という点です。

同資料が紹介する裁判例には、賃借人がエアコンの未作動などを理由に賃料減額を主張したものの、修理費用が軽微であることなどを理由に減額が否定されたケースがあります。
判例全体の傾向としても、一部使用不能が「通常の居住を不可能にするほどの状態か」が判断の軸になっており、単に不便であるという程度では減額は認められにくいと整理されています。

このことから、実務的には次のように考えるのが現実的です。

  • 数日で修理される見込みなら、減額よりも修理の早期化と代替手段の提供を求めるほうが実益がある
  • 猛暑期に何週間も放置される、健康被害の危険があるといった段階になって初めて、減額の議論が意味を持ってくる
  • いずれにせよ、まず求めるべきは減額ではなく修繕である

修理までの数日をどうしのぐか|代替手段の相談と暑さ・寒さ対策

修理待ちの期間をどう過ごすかは、実は交渉よりも切実な問題です。
国土交通省の資料でも、賃料減額に代えて代替手段や代替品を提供する柔軟な対応が実務上とられていることが紹介されています。

管理会社に相談する際は、次のような依頼の仕方があります。

  • 修理完了までの間、扇風機やスポットクーラーを貸与してもらえないか
  • 猛暑日や乳幼児・高齢者がいる世帯であることを伝え、優先的な手配を依頼する
  • 復旧の見込み日を具体的に示してもらう

貸主側にも、部品調達や業者手配に時間がかかる事情はあります。
そのうえで、修繕完了のスケジュールを具体的に説明することは貸主に求められる対応とされていますので、「いつまでに直るのか」を尋ねること自体は正当な要望です。

手元に1台あると心強い機器

数日のしのぎとしては、サーキュレーターや扇風機を1台持っておくと体感温度がかなり変わります。
窓用エアコンやスポットクーラーは工事不要で設置できるタイプもありますが、設置に窓枠の加工や排熱ダクトが必要になる製品もあるため、賃貸では事前確認が欠かせません

エアコンなしで室温を下げる工夫についてはエアコンのない部屋を涼しくする方法13選|夏の暑さを大幅に軽減できる対策とは?にまとめています。
遮光カーテンや換気のタイミングなど、費用をかけずにできる対策も多く、修理待ちの数日には十分役立ちます。

貸主が対応してくれないときの相談先と、自己判断で賃料を減らしてはいけない理由

連絡しても返事がない、修理を先延ばしにされる、といったケースもあります。
このとき絶対に避けたいのが、自分の判断で賃料を減額して支払う、あるいは支払いを止めることです。

国土交通省の資料は、賃料が当然に減額されることを理由とした一方的な支払拒否について、貸主から契約を解除され、建物明渡訴訟を提起されるリスクがあると明確に注意を促しています。
実際の裁判例でも、減額幅が過大だとして問題視された事案があります。
減額が法律上「当然に」生じるとしても、その割合を借主が単独で決めてよいわけではない、という点は誤解されやすいところです。

段階を踏んだ進め方

  1. 書面で期限を切って再度依頼する:メールや書面で、症状・これまでの連絡経緯・希望する対応期限を明記して送る
  2. 記録を整える:連絡日時、担当者名、回答内容を時系列でメモに残す
  3. 公的な相談窓口を使う:自治体の住宅相談窓口、消費生活センター、宅建業協会などの相談窓口が利用できる
  4. 法律専門家に相談する:法テラスや弁護士会・司法書士会の無料相談を活用する

国土交通省の資料でも、法的な判断が必要な場合は法律専門家に委ねること、弁護士会や司法書士会、法テラスなどの相談窓口が利用できることを伝えるよう示されています。
金額や契約解除が絡む段階では、自己流の対応を続けるより早めに専門家へ相談したほうが結果的に負担が小さくなります。

退去時にエアコンの修理・クリーニング費用を請求されたときの考え方

入居中だけでなく、退去時にエアコン関連の費用を求められることもあります。
このときの判断基準になるのが、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」です。

このガイドラインでは、原状回復を「借主の故意・過失や善管注意義務違反、通常の使用を超える使用によって生じた損耗・毀損を復旧すること」と位置づけています。
つまり、普通に使っていて生じた経年劣化や通常損耗は、借主が負担するものではないという考え方が土台にあります。

📎 出典:国土交通省「『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』について」

エアコンに当てはめると、次のような整理になります。

請求される内容考え方
経年劣化による故障の修理費通常は借主負担にあたらない
通常使用の範囲での内部の汚れ通常損耗として扱われるのが原則
タバコのヤニによる著しい汚損借主負担とされる可能性がある
ぶつけて割った吹き出し口の破損借主負担
ハウスクリーニング特約に含まれる清掃特約の有効性と内容による

ガイドライン自体に法的な強制力はありませんが、裁判所や消費生活センターが判断の参考にする指針として広く用いられています。
請求内容に納得できないときは、「どの損耗が、どの理由で借主負担にあたるのか」を明細で示してもらうところから始めるのが有効です。

なお、エアコンの残存価値の考え方も理解しておくと交渉がしやすくなります。
設備には税務上の耐用年数が定められており、時間の経過とともに価値が減っていくという前提が原状回復の議論にも用いられます。
耐用年数の考え方はエアコンの減価償却とは?まず「耐用年数」の基本を押さえるで詳しく整理しています。

「修理」ではなく「交換」になるかどうかは、製造からの年数が分かれ目

貸主から「修理ではなく交換になります」と言われることがあります。
借主にとっては工事日程が変わる程度の話に見えますが、貸主側の判断には理由があります。

家庭用エアコンは、メーカーが補修用性能部品を保有する期間を機種ごとに定めており、ルームエアコンではおおむね製造打ち切りから9〜10年程度とされていることが一般的です。
この期間を過ぎると、基板やコンプレッサーといった主要部品が入手できず、修理そのものが物理的に不可能になることがあります。
室内機の型番シールに記載された製造年が10年以上前であれば、修理ではなく交換になる可能性が高いと考えておくとよいでしょう。

交換になる場合、借主として確認しておきたいのは次の3点です。

  • 工事日程と、当日の立ち会いに必要な時間(通常は2〜4時間程度)
  • 室外機の設置場所やコンセント形状の変更が生じないか
  • 交換までの間の代替手段について、どのような対応が可能か

なお、200V機種への入れ替えでコンセント形状や専用回路の変更が必要になると、電気工事が加わって日程が延びることがあります。
「いつ直るか」を尋ねるときは、部品待ちなのか工事待ちなのかまで聞いておくと、見通しが立てやすくなります。

入居してすぐに故障した場合の考え方

入居から数日〜数週間で不具合が出た場合、借主の使い方が原因とは考えにくいため、貸主側で対応されるのが通常です。
このケースでは、入居時点ですでに不具合があった可能性も含めて話が進みます。

そのため、入居直後の不具合はできるだけ早く連絡してください。
時間が経つほど「入居後に発生したもの」と扱われやすくなり、原因の特定も難しくなります。
入居時に記入する物件状況確認リストがある場合は、その控えを保管しておくと説明の裏づけになります。

入居前・入居中にやっておくと後で助かる備え

トラブルは起きてから対処するより、起きる前の準備で負担が大きく変わります。

入居時にやっておくこと

  • 契約書の「設備等の状況」欄で、エアコンが設備か残置物かを確認しておく
  • 入居時に一度すべてのエアコンを冷房・暖房の両方で試運転し、動作を確認する
  • 動かない、異音がある場合は入居直後に書面で報告し、記録を残す
  • 室内機の型番シールを撮影して保存しておく

冬に入居した場合、冷房を試さないまま夏を迎えてしまい、真夏になって故障が発覚するというのはよくあるパターンです。
入居直後に冷暖房を両方確認しておくだけで、責任の所在が明確になります

入居中にやっておくこと

  • フィルター清掃を定期的に行い、掃除した記録を残しておく
  • 異音・水漏れ・においなど、軽微な段階でも管理会社に一報を入れる
  • 借家人賠償責任保険や家財保険の内容を確認しておく

軽微な段階で通知しておくことには、二重の意味があります。
早期に対応してもらえる可能性が高まると同時に、後で「放置していたから悪化した」と言われるリスクを減らせます。

よくある質問

Q1. 賃貸のエアコンが壊れたとき、修理業者に直接連絡してもよいですか。

原則として、まず管理会社または貸主へ連絡してください。
設備エアコンの修繕は貸主の義務であり、業者の選定も通常は貸主側が行います。
借主が無断で手配すると、その費用を負担してもらえない可能性があります。
民法では、借主が修繕できる場面として「通知したのに相当期間内に修繕されないとき」と「急迫の事情があるとき」が定められています。
発煙や焦げた臭いなど危険がある場合は、ブレーカーを落としたうえで緊急連絡先へ連絡してください。

Q2. エアコンが「残置物」だと言われました。修理費は全額自己負担でしょうか。

残置物であれば、貸主に修繕義務はないのが一般的で、修理や交換は入居者の判断と費用で行うことになります。
ただし、実務では貸主が好意で対応したり、この機会に設備エアコンへ入れ替えたりするケースもあります。
まずは相談してみる価値はあります。
自費で新しいエアコンを設置する場合は、設置の可否と退去時に撤去が必要かどうかを、事前に書面で確認しておいてください。

Q3. 修理まで2週間かかると言われました。その間の家賃は減額してもらえますか。

民法611条第1項では、借主に責任のない事由で物件の一部が使用できなくなった場合、その割合に応じて賃料が減額されるとされています。
ただし国土交通省の資料では、減額の要件として、使用できない状態が受忍限度を超えて通常の居住ができない程度に達していることが挙げられており、減額の程度や期間は貸主と借主の協議で決めることが望ましいとされています。
自分の判断で家賃を減らして支払うのは避け、まずは修理の早期化や代替品の貸与を含めて相談してください。

Q4. フィルター掃除をしていなかった場合、修理費は自己負担になりますか。

一律に自己負担となるわけではありませんが、争点になりやすい部分です。
フィルター清掃は借主の日常的な管理範囲と考えられており、明らかな清掃不足が原因で内部の汚れや詰まりが生じ、故障や水漏れにつながったと判断されれば、借主の負担とされる可能性があります。
一方、コンプレッサーや基板の故障のように清掃と関係のない不具合であれば、清掃状況は直接の理由になりません。
日頃から掃除の記録を残しておくと説明がしやすくなります。

Q5. 退去時に「エアコンクリーニング代」を請求されました。支払う必要はありますか。

契約内容によります。
国土交通省の原状回復ガイドラインでは、通常の使用によって生じた損耗は借主の負担ではないという考え方が示されており、通常使用の範囲での内部の汚れは原則として通常損耗にあたります。
一方で、ハウスクリーニング費用を借主負担とする特約が契約書に明記され、内容が説明されている場合は、その特約にもとづく請求が有効とされることがあります。
まずは契約書の特約欄を確認し、金額の内訳を明細で示してもらったうえで判断してください。

まとめ

賃貸のエアコンが故障したときの考え方を、あらためて整理します。

  • 契約上の設備エアコンの自然故障は、修理費を貸主が負担するのが原則
  • 前の入居者が残した残置物エアコンは、原則として入居者の負担。契約書の設備欄で見分ける
  • 借主の故意・過失が原因の故障は、設備であっても借主負担になる
  • 最初にやることは業者への発注ではなく、管理会社・貸主への連絡と記録の保存
  • 連絡前に、リモコン・フィルター・ブレーカー・室外機まわりの4点だけは確認しておく
  • 症状・発生日・型番・写真・立ち会い可能日をまとめて伝えると復旧が早い
  • 修理が長引く場合、賃料の減額が問題になり得るが、自己判断で家賃を減らして支払うのは避ける
  • 退去時の請求は、通常損耗か借主の過失かという軸で内訳を確認する

エアコンの故障は生活に直結するだけに、つい急いで動きたくなります。
それでも、順番を守って連絡し、やり取りを記録しておくことが、費用面でも復旧の早さでも結局は近道になります。
契約書の設備欄をもう一度開いてみるところから始めてみてください。

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この記事を書いた人

「暮らしの設備ガイド」は、給湯器・ストーブ・換気設備など、
家庭の安心と快適を支える“住まいの設備”に関する専門メディアです。

現在もガス業界で設備施工・保守に携わるYuta(ガス関連資格保有者)が監修し、一般家庭向けのガス機器・暖房設備・給湯器交換の実務経験をもとに、現場の知識に基づいた、正確で実用的な情報を発信しています。

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