石油ストーブとガスストーブは、どちらも燃料を燃やして部屋を暖める暖房器具です。
違いは、燃料が灯油かガス(都市ガス・LPガス)かという点だけではありません。燃料の入れ方、設置に必要なもの、燃料費の決まり方、停電時の使い方が、大きく異なります。
この記事では、燃料費を「熱1kWhあたりの単価」にそろえて比べたうえで、暖まり方・設置条件・換気・停電時の違いを、タイプ別に整理します。
なお、ガスの料金は契約や地域で大きく変わるため、特定の価格ではなく、単価を3通りに変えた早見表で示します。
ガスストーブの種類
一口に「ガスストーブ」といっても、いくつかの種類があります。
| 種類 | 特徴 | 石油ストーブで近いタイプ |
|---|---|---|
| ガスファンヒーター | ガス栓につなぎ、温風を出す。持ち運べる機種が多い。換気が必要で、換気不足だと安全装置が働くことがある | 石油ファンヒーター |
| ガスFF暖房機 | 屋外へ排気する密閉式。据付けが必要。ガスファンヒーターほど換気の影響を受けない設計とされる | FF式石油ストーブ |
| ガスストーブ(輻射式など) | 機種による | 反射式・対流式 |
※ガスファンヒーター・ガスFF暖房機の換気の扱いは、当サイトのリンナイ ガスストーブ エラー一覧の記事の記載によります。
機種ごとの取扱説明書で確認してください。
ガス機器は、都市ガス用とLPガス用で機種が分かれています。たとえばリンナイのガスファンヒーター SRC-364E は都市ガス用、SRC-364E-LP はLPガス用として、別の型番で販売されています。住まいのガスの種類に合わない機種は、使えません。
確認できた仕様の例
| 機種 | 種類 | 暖房のめやす | 消費電力 |
|---|---|---|---|
| リンナイ SRC-364E(都市ガス) | ガスファンヒーター | 木造11畳/コンクリート15畳 | 急速18W、強16W、弱9W、待機0.6W |
| リンナイ SRC-364E-LP(LPガス) | ガスファンヒーター | 木造11畳/コンクリート15畳 | 同上 |
※販売店ページの仕様表です。
ガス消費量と暖房能力は、掲載ページに記載がなく、確認できませんでした。
そのため、ガス機器の1時間あたりの費用は、機種の数値ではなく、燃料の熱量から計算します。
燃料費を熱1kWhあたりで比べる
燃料の熱量
| 燃料 | 熱量(総発熱量) | 熱1kWhあたりの換算 |
|---|---|---|
| 灯油 | 暖房出力÷燃料消費量 ≒ 10.3kWh/L(トヨトミ・コロナの取扱説明書・仕様表の数値から算出) | 灯油の単価 ÷ 10.3 |
| 都市ガス(13A) | 45MJ/m³(環境省の算定資料の簡易値)= 約12.5kWh/m³ | 都市ガスの単価(円/m³) ÷ 12.5 |
| LPガス | 50.08MJ/kg。体積に直すと約109MJ/m³(資料の換算式から算出)= 約30.3kWh/m³ | LPガスの単価(円/m³) ÷ 30.3 |
※都市ガスの熱量は、ガス会社によって異なる場合があります(資料では「ガス会社の提供値を使用するのが望ましい」とされています)。
LPガスの体積あたりの値は、資料の換算式を使った計算値です。
いずれも、燃料が持つ熱量の目安であり、機器の効率は考慮していません。
熱1kWhあたりの燃料費(仮の単価)
| 燃料 | 単価(仮) | 熱1kWhあたり | 3.0kWh(3.0kWを1時間)あたり |
|---|---|---|---|
| 灯油 | 100円/L | 約9.7円 | 約29円 |
| 灯油 | 120円/L | 約11.7円 | 約35円 |
| 灯油 | 140円/L | 約13.6円 | 約41円 |
| 都市ガス | 150円/m³ | 約12.0円 | 約36円 |
| 都市ガス | 200円/m³ | 約16.0円 | 約48円 |
| 都市ガス | 250円/m³ | 約20.0円 | 約60円 |
| LPガス | 400円/m³ | 約13.2円 | 約40円 |
| LPガス | 600円/m³ | 約19.8円 | 約59円 |
| LPガス | 800円/m³ | 約26.4円 | 約79円 |
ここで示した単価は、計算のための仮の値です。実際のガス料金は、地域、契約、基本料金との組み合わせで大きく変わります。必ず、お手元の検針票や契約内容の単価で計算し直してください。
読み方
| 状況 | 傾向 |
|---|---|
| 都市ガスの単価が低い地域 | ガスのほうが灯油より安くなる場合がある |
| 都市ガスの単価が高い・LPガス | 灯油のほうが安くなりやすい |
| LPガスは単価が高め | 灯油との差が大きくなりやすい。LPガスの料金の背景は、プロパンガスが高い理由の記事を参照 |
自宅の単価で比べる式は、灯油:単価÷10.3、都市ガス:単価÷12.5、LPガス:単価÷30.3(いずれも円/kWh)です。
数字が小さい方が安くなります。
電気代・その他の費用
| 項目 | 石油ストーブ | ガスストーブ |
|---|---|---|
| 電気代 | 電池点火はなし。FF式・ファンヒーターは少額 | ガスファンヒーターは運転中に16〜18W程度の機種がある(SRC-364E) |
| 電池代 | 電池点火の機種は必要 | 機種による |
| ガス栓・ガスコード | 不要 | 必要(ガスファンヒーターは、ガス栓にコードで接続) |
| 基本料金 | 不要 | 契約中のガスの基本料金に含まれる |
ガスファンヒーターの電気代は、SRC-364E の強16Wで計算すると、1,200時間(1日8時間・150日)で約19.2kWh、31円/kWhとして約595円です(当サイト計算)。
灯油代・ガス代と比べると、わずかな金額です。
灯油と逆転するガスの単価(損益分岐)
灯油と同じ熱1kWhあたりの費用になる、ガスの単価を計算します(当サイト計算。
「灯油の単価÷10.3」に等しくなるガス単価)。
| 灯油の単価 | 熱1kWhあたり | 同じになる都市ガスの単価 | 同じになるLPガスの単価 |
|---|---|---|---|
| 100円/L | 約9.7円 | 約121円/m³ | 約294円/m³ |
| 120円/L | 約11.7円 | 約146円/m³ | 約353円/m³ |
| 140円/L | 約13.6円 | 約170円/m³ | 約412円/m³ |
計算式は、都市ガスなら「灯油の単価÷10.3×12.5」、LPガスなら「灯油の単価÷10.3×30.3」です。お住まいのガスの従量単価が、この表の数字より低ければ、燃料費だけならガスのほうが安く、高ければ灯油のほうが安いという目安になります。
1シーズンの総額で見る
3.0kWの熱を、1日8時間・150日(計1,200時間、合計3,600kWh)出し続けたと仮定して、1シーズンの燃料費を計算します(当サイト計算。
最大出力で連続運転する前提の上限の目安)。
| 燃料・単価(仮) | 熱1kWhあたり | 1シーズンの燃料費 |
|---|---|---|
| 灯油 120円/L | 約11.7円 | 約42,000円 |
| 都市ガス 150円/m³ | 約12.0円 | 約43,200円 |
| 都市ガス 200円/m³ | 約16.0円 | 約57,600円 |
| LPガス 400円/m³ | 約13.2円 | 約47,500円 |
| LPガス 600円/m³ | 約19.8円 | 約71,300円 |
※実際は、1日中最大出力で使い続けることは少なく、費用はこれより小さくなります。
機器の効率、電気代、電池代、換気で逃げる熱は含んでいません。
暖まり方・立ち上がりの違い
| 項目 | 石油ストーブ | ガスストーブ |
|---|---|---|
| 立ち上がり | 点火後、炎が安定するまで数分(RB-25Cは約2分で炎が上がる) | 機種による。取扱説明書で確認 |
| 暖まり方 | 対流式は部屋全体、反射式は前方、FF式・ファンヒーターは温風 | ガスファンヒーターは温風、ガスFF暖房機は温風、輻射式は前方 |
| 出力 | 確認できた機種で約2.3〜6.7kW(FF式は最大7.79kW) | 機種による。暖房のめやす畳数で確認(SRC-364Eは木造11畳) |
| 火力調節 | 機種による(最小が最大の約5割〜8割の機種、FF式は約3割の機種) | 機種による |
暖房の方式ごとの違いは、石油ファンヒーターと石油ストーブの違いを解説した記事で整理しています。
設置条件・燃料の入れ方の違い
| 項目 | 石油ストーブ | ガスストーブ |
|---|---|---|
| 燃料の入れ方 | 給油(消火して冷えてから)。灯油の購入・運搬・保管が必要 | ガス栓につなぐだけ。給油の手間がない |
| 設置場所 | 水平で安定した床。ガス栓は不要。電池点火なら電源も不要 | ガス栓の近くに限られる(ガスファンヒーター)。コードが届く範囲 |
| 持ち運び | 可能。ただし、移動前に消火・冷却、灯油を抜く場合もある | ガス栓の位置に縛られる。コードを長くする場合は、規格に合った物を使う(機種の取扱説明書で確認) |
| ガスの種類 | 不要 | 都市ガス用/LPガス用を間違えない |
| 賃貸 | 禁止の物件がある | ガス栓が設置されていれば使える場合が多い。契約を確認 |
| 取り付け・移設 | 開放式は不要。FF式・煙突式は専門業者 | ガスFF暖房機は据付けが必要(機種の取扱説明書で確認)。ガスファンヒーターはガス栓への接続 |
手間を時間で考える
燃料の入れ方の違いを、1シーズンの手間に置き換えてみます(当サイト計算。
RB-25C を最大火力で毎日8時間、150日使った場合)。
| 項目 | 石油ストーブ(RB-25C) | ガスファンヒーター |
|---|---|---|
| 灯油の購入量 | 約292L(18L缶で約16本) | なし |
| 給油の回数 | 約60回(4.9Lのタンク) | なし |
| 灯油の運搬・保管 | 必要 | 不要 |
給油の手間がまったくない点は、ガスの大きな強みです。
一方、灯油は缶やポリタンクで購入して、好きな場所へ運べる自由度があります。
換気・安全の違い
| 項目 | 石油ストーブ | ガスストーブ |
|---|---|---|
| 一酸化炭素 | 開放式は、使用中に1時間に1〜2回、1〜2分の換気が必要(トヨトミ、コロナ) | ガスファンヒーターも換気が必要。換気不足だと安全装置が働くことがある |
| FF式・FF暖房機 | 屋外へ排気する密閉式 | 同じく屋外へ排気する密閉式 |
| 燃料の取り扱い | 灯油の保管、給油時のこぼれ、ガソリン混入に注意 | ガス漏れ、接続部のゆるみに注意 |
| 就寝時 | 必ず消火 | 取扱説明書に従う |
| 地震 | 対震自動消火装置がある(月1回の作動確認が案内されている) | 機種による |
ガス臭いときは、火を使わず、換気扇や電気のスイッチにも触れず、窓を開けて、ガス会社に連絡してください。ガスの臭いについては、ガスストーブの臭いを解説した記事で紹介しています。
停電のときの違い
| タイプ | 停電時 |
|---|---|
| 電池点火の石油ストーブ | 電池があれば使える |
| 電池レスの石油ストーブ | 電気がなくても使える(トヨトミ) |
| FF式石油ストーブ | 電源が必要で、基本的に使えない |
| 石油ファンヒーター | 使えない |
| ガスファンヒーター | 電源が必要(消費電力16〜18W程度の機種がある)。基本的に使えない |
| ガスFF暖房機 | 電源が必要で、基本的に使えない |
停電や災害への備えとしては、電池点火・電池レスの石油ストーブが有利です。一方、ガスは、地震などで供給が止まる場合があります。どちらの場合も、使う前に換気の確保が必要です。
選び方の目安
| 状況 | 向いている選択 |
|---|---|
| 灯油の購入・給油が苦にならない | 石油ストーブ |
| 給油の手間をなくしたい、ガス栓がある部屋 | ガスファンヒーター/ガスFF暖房機 |
| 都市ガスの単価が低い地域 | ガスも候補(単価で計算) |
| LPガス | 灯油のほうが安くなりやすい(単価で計算) |
| 停電に備えたい | 電池式・電池レスの石油ストーブ |
| 持ち運んで使いたい | 石油ストーブ。ガスはガス栓の位置に縛られる |
| 換気を気にせず使いたい | FF式・ガスFF暖房機(据付けが必要) |
| 賃貸 | 管理規約・契約を確認 |
どのタイプでも、開放式は使用中に1時間に1〜2回を目安に窓を開けて換気してください。就寝中や、長時間その場を離れるときは必ず消火し、給油は消火して冷めてから行ってください。ガソリンは絶対に入れないでください。
よくある質問
Q1. 石油ストーブとガスストーブでは、どちらが安いですか?
燃料の単価で変わります。
熱1kWhあたりでは、灯油120円/Lで約11.7円、都市ガス200円/m³で約16.0円、LPガス600円/m³で約19.8円という計算です(いずれも仮の単価)。
お住まいの単価で計算してください。
Q2. ガスの料金は、どこで調べますか?
検針票や、ガス会社の料金表に載っている「従量単価」(1m³あたりの料金)です。
基本料金は別で、暖房の費用を計算するときは、従量単価を使います。
Q3. LPガスと都市ガスでは、何が違いますか?
ガスの種類で、1m³あたりの熱量も、料金も違います。
LPガスは単価が高めになりやすい傾向があります。
機器も、都市ガス用とLPガス用に分かれています。
Q4. ガスストーブは、換気しなくていいですか?
ガスファンヒーターも換気が必要で、換気不足だと安全装置が働くことがあります。
ガスFF暖房機は、屋外へ排気する密閉式です。
機種ごとの取扱説明書で確認してください。
Q5. 停電のときに使えるのは、どちらですか?
電池点火や電池レスの石油ストーブです。
ガスファンヒーターは電源が必要で、基本的に使えません。
まとめ
石油ストーブとガスストーブは、燃料費、設置条件、手間、停電時の使い方で、向き不向きがあります。
最後に、この記事のポイントを整理します。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 燃料費の比較 | 熱1kWhあたり。灯油は単価÷10.3、都市ガスは単価÷12.5、LPガスは単価÷30.3 |
| 損益分岐 | 灯油120円/Lなら、都市ガス約146円/m³、LPガス約353円/m³が同額(当サイト計算) |
| 単価の前提 | 計算用の仮の値。実際は契約の単価で計算 |
| 手間 | 石油ストーブは給油が必要。ガスは給油不要だが、ガス栓の位置に縛られる |
| ガスの種類 | 機器は都市ガス用とLPガス用で分かれる |
| 換気 | 石油ストーブ(開放式)とガスファンヒーターは必要 |
| 停電 | 電池点火・電池レスの石油ストーブが有利 |
まずは、検針票でガスの従量単価を確認し、上の式で熱1kWhあたりの費用を出して、灯油と比べてみてください。

