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ナフサからできるものは何?種類・用途・灯油やガソリンとの違いをわかりやすく解説

石油精製プラントとナフサを運ぶタンカーから、矢印でペットボトル・洗剤・プラスチック容器・靴・ぬいぐるみなどの日用品へつながる、ナフサと生活用品の関係を示したイラスト。
Yuta
記事監修者
現:ガス会社に勤める兼業WEBライター。所持資格はガス開栓作業に必要な高圧ガス販売主任者二種、ガス工事に必要な液化石油ガス設備士、灯油の取り扱いに必要な危険物乙四種、その他ガス関連資格多数と電気工事士などの資格も多数所持。

「ナフサ」という言葉を耳にしたことがあっても、実際に何を指すのかよくわからないという方は多いのではないでしょうか。
ニュースや燃料の話題に登場するわりに、日常生活の中でなじみがないため、ガソリンと似たもの?」「灯油とは違うの?と疑問に思うのは自然なことです。

ナフサは石油から精製される重要な石油製品の一つで、プラスチック・合成繊維・合成ゴムといった私たちの暮らしに欠かせない製品の原料として広く使われています。
住宅設備や燃料の観点からも、灯油・ガソリン・軽油などとの関係を理解しておくと、エネルギーに対する理解が深まります。

この記事では、ナフサの定義・種類・製造方法・主な用途、そして灯油やガソリンとの違いまでをわかりやすく解説します。


目次

ナフサとは|基本的な定義と特徴

ナフサが入ったドラム缶と試験管の液体、背景に石油精製プラントが見える石油化学原料のイメージ

ナフサの定義

ナフサ(Naphtha)とは、原油を常圧蒸留(じょうあつじょうりゅう)という精製プロセスで分離したときに得られる、沸点がおおむね30〜180℃程度の軽質な石油留分(りゅうぶん)のことを指します。

「留分」とは、蒸留によって沸点の範囲ごとに分けられた石油成分のことです。
原油は加熱すると各成分が沸点の違いによって順番に蒸発・分離されますが、ナフサはそのなかでも比較的低い温度帯で取り出される成分に相当します。

日本語では「粗製ガソリン」「石油ナフサ」と呼ばれることもあります。
英語圏ではガソリン(Gasoline)と同義に使われる場合もありますが、日本の石油業界ではナフサとガソリンは別物として区別されています。

ナフサの外観と性質

ナフサは常温では無色〜淡黄色の液体で、独特の石油系の臭いがあります。
揮発性が高く引火しやすい特性を持ち、取り扱いには注意が必要な物質です。

項目内容
外観無色〜淡黄色の液体
沸点範囲約30〜180℃(種類による)
引火点約−20〜20℃前後(種類による)
臭い石油系の独特な臭い
主な用途石油化学の原料・溶剤・燃料など

引火点が低い(特に軽質ナフサは−20℃前後)ため、保管・輸送には消防法の規定に従った適切な管理が求められます。


原油からナフサができるまで|石油精製の基本

原油の組成とは

原油(crude oil)は地下から採掘された天然の石油で、炭素と水素を主成分とする炭化水素化合物の混合物です。
炭素数が少ないものから多いものまで、さまざまな種類の炭化水素が混ざり合っています。

炭素数が少ないほど沸点が低く揮発しやすく、炭素数が多いほど沸点が高く粘度が上がる傾向があります。
ガソリン・ナフサ・灯油・軽油・重油・アスファルトなどの石油製品は、すべてこの炭素数の違い(≒沸点の違い)によって分けられています。

常圧蒸留塔での分離

原油は製油所(せいゆしょ)に運ばれると、最初に「常圧蒸留塔(じょうあつじょうりゅうとう)」と呼ばれる大型の装置で加熱・蒸留されます。
沸点の低いものから順に塔の上部から取り出され、沸点の高いものは塔の下部に残ります。

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取り出し順(上→下)石油製品沸点の目安
1番目(最も低い)LPG・ガス成分〜30℃
2番目ナフサ(軽質・重質)30〜180℃
3番目灯油170〜250℃
4番目軽油240〜350℃
5番目重油・残渣油350℃〜

このように、ナフサは原油精製の初期段階で取り出される軽質な留分であり、石油化学工業の出発点となる非常に重要な原料です。

精製後のナフサの処理

蒸留で得られたナフサはそのまま製品になるわけではなく、用途に応じてさらに処理が施されます。

  • 水素化精製(脱硫処理):硫黄分を除去して品質を高める
  • 改質(リフォーミング):ガソリン製造や化学原料として使いやすい成分に変換する
  • 分解(クラッキング):エチレン・プロピレンなどのより小さな分子に分解する

これらの処理を経て、ナフサはガソリンの材料になったり、プラスチックの原料になったりします。


ナフサの種類|軽質ナフサと重質ナフサ

ナフサは沸点の範囲によって大きく2種類に分類されます。

軽質ナフサ(Light Naphtha)

沸点がおおよそ30〜90℃の留分を軽質ナフサと呼びます。
炭素数5〜6程度の炭化水素が主成分で、揮発性が高く引火しやすい性質を持ちます。

主な用途は以下のとおりです。

  • 石油化学原料:エチレン・プロピレン製造のための分解原料
  • 溶剤:工業用途・塗料・印刷インクなどの溶媒
  • ガソリンのブレンド材:ガソリンの品質調整に使用

重質ナフサ(Heavy Naphtha)

沸点がおおよそ90〜220℃の留分を重質ナフサと呼びます。
炭素数6〜10程度の炭化水素が主成分で、軽質ナフサよりも揮発しにくく、比較的扱いやすい特性があります。

主な用途は以下のとおりです。

  • 接触改質(リフォーミング)の原料:オクタン価の高いガソリン成分の製造
  • 芳香族(ベンゼン・トルエン・キシレン)の原料:合成繊維・合成樹脂の製造に使用
  • 航空燃料(ジェット燃料)の原料

軽質・重質ナフサの比較

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項目軽質ナフサ重質ナフサ
沸点範囲約30〜90℃約90〜220℃
主な炭素数C5〜C6C6〜C10
揮発性高い比較的低い
主な用途石化原料・溶剤改質原料・芳香族原料

ナフサの主な用途|私たちの暮らしとのつながり

ナフサの液滴を中心に、プラスチック製品、衣類などの合成繊維、化学製品、タイヤなどの合成ゴム、化粧品、医薬品、ガソリンなどの製品へ広がる関係を示したイメージイラスト

ナフサは直接消費者が使う製品ではありませんが、その用途は非常に広く、私たちの日常生活を支える製品の多くに関わっています。

石油化学の基幹原料(エチレン・プロピレン)

ナフサの最も重要な用途が、石油化学工業における分解原料です。
ナフサを高温で熱分解(スチームクラッキング)することで、エチレン・プロピレン・ブタジエン・ベンゼンなどの「基礎化学品」が生産されます。

これらの基礎化学品は、さらに加工されて以下のような最終製品になります。

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基礎化学品主な製品例
エチレンポリエチレン(レジ袋・容器・包装材)・PVC(塩化ビニル管)など
プロピレンポリプロピレン(食品容器・自動車部品)・アクリル繊維など
ブタジエン合成ゴム(タイヤ・ゴム製品)など
ベンゼンナイロン・ポリエステル・合成樹脂・洗剤など

つまり、私たちが日常的に使っているペットボトル・プラスチック容器・衣類・タイヤ・建材など、数え切れないほどの製品がナフサを出発点として作られているのです。

ガソリンの製造・ブレンド

ナフサはガソリンの製造にも使われます
特に重質ナフサを「接触改質装置(リフォーマー)」で処理することで、オクタン価(燃えやすさの指標)が高い改質ガソリン成分が得られます。
これがガソリンのベースとなり、さまざまな成分をブレンドして市販のガソリンが完成します。

溶剤・クリーナーとしての用途

軽質ナフサは工業用溶剤(ソルベント)としても使われます。
塗料の希釈・洗浄剤・金属の脱脂洗浄などに利用されており、いわゆる「ミネラルスピリット」「ホワイトスピリット」と呼ばれる製品もナフサの一種です。

家庭用品の中にも、ナフサ系溶剤を使ったシールはがし剤・ライター用燃料・クリーニング溶剤などが存在します。
ただし、これらは専用製品として販売されており、扱い方を誤ると引火・火災の危険があるため、必ず使用上の注意を守ることが大切です。

航空燃料・特殊燃料

重質ナフサは航空機用のジェット燃料(ケロシン系)の製造原料としても使われます。
また、一部の国や地域では発電・暖房目的の燃料として利用されるケースもあります。


ナフサ・灯油・ガソリン・軽油の違い|比較でわかる石油製品

ナフサと他の石油製品の違いを理解するには、沸点と用途で整理するとわかりやすいです。

石油製品の比較表

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石油製品沸点の目安主な用途家庭との関わり
LPG(液化石油ガス)−40℃以下都市ガス代替・調理・暖房ガスコンロ・給湯器
ナフサ30〜220℃石化原料・溶剤・ガソリン製造間接的(プラスチック製品など)
ガソリン40〜200℃自動車燃料車・バイク
灯油150〜300℃暖房・給湯・農業機械ストーブ・ボイラー・給湯器
軽油(ディーゼル)200〜350℃トラック・バス・農機業務用車両
重油300℃〜船舶・発電・工場一般家庭での使用は少ない

ナフサとガソリンの違い

最もよく混同されるのがナフサとガソリンの関係です。
沸点範囲が重なる部分があるため似て見えますが、日本の石油業界では明確に区別されています。

  • ナフサ:精製途中の「未処理〜一次処理」段階の留分。主に石化原料・ガソリン製造の素材として使われる。
  • ガソリン:ナフサを含む複数の留分をブレンド・改質して作られた最終製品。自動車燃料として規格化されている。

簡単に言えば、「ナフサはガソリンの素材の一つ」という関係です。
ただし、成分が近いため取り違えは絶対に避けてください。ガソリン・ナフサ・灯油はそれぞれ専用の機器・容器で管理する必要があります。

ナフサと灯油の違い

灯油は家庭の暖房機器(石油ストーブ・ファンヒーター)や給湯器・ボイラーで使われる燃料です。
ナフサより沸点が高く(150〜300℃)、引火点も約40℃以上と比較的安全な範囲に設定されています。

ナフサは灯油より揮発性が高く、引火点が低いため、灯油を使う機器にナフサを誤って入れることは非常に危険です。
逆もまた同様で、用途・機器に合った燃料を使うことが安全の大前提です。

⚠️ 注意
ガソリン・ナフサ・灯油・軽油はそれぞれ別物です。暖房機器や給湯器には必ず指定された灯油を使用してください。誤った燃料の使用は故障・火災・一酸化炭素中毒の原因になります。


ナフサ価格が家庭の光熱費に与える影響

石油化学製品の価格に影響する

ナフサは石油化学工業の基幹原料であるため、ナフサの市場価格(ナフサ価格)が上昇すると、それを原料とするプラスチック・合成繊維・合成ゴムなどの価格も連動して上がる傾向があります。

日用品・食品包装・家電製品など、プラスチックを使う製品全般のコストに波及するため、一般消費者の家計にも間接的な影響があると言えます。

都市ガス・LPGの料金とも関係がある

日本の都市ガス・LPG(プロパンガス)の原料には、天然ガスのほかにナフサから分離されたLPG成分(プロパン・ブタン)も使われています。
国際的なナフサ価格の動向は、家庭のガス料金にも影響する場合があります。

特に、LPGを使った給湯器・ガスコンロ・ガスファンヒーターをお使いの家庭では、原油・ナフサ価格の変動がガス料金の改定として反映されることがあります。

灯油価格との連動

灯油の価格は原油・ナフサ価格と密接に連動しています。
灯油ボイラーや石油ストーブをお使いの家庭では、冬季の暖房費がナフサを含む石油市況に影響されることになります。
灯油の価格動向をチェックする際は、国際的な原油・ナフサ相場を背景として理解しておくと役立ちます。


日本のナフサ事情|輸入依存と石油化学産業

石油精製プラントを背景に、ビーカーやフラスコに入った淡黄色のナフサと原油ドラム缶が並ぶ石油化学産業のイメージ

日本はナフサの主要輸入国

日本は原油のほぼ全量を輸入に頼っており、ナフサも同様に海外から大量に輸入しています。
主な輸入先は中東(サウジアラビア・UAE・クウェートなど)で、原油と同じルートで輸送されることが多いです。

石油化学コンビナートとナフサ

日本各地の石油化学コンビナート(千葉・川崎・四日市・大阪・水島・徳山・大分など)では、ナフサを原料としてエチレン・プロピレン等の基礎化学品が生産されています。
これらの工場群は「コンビナート」として連携し、日本の製造業・素材産業を支えています。

ナフサは日本の製造業の土台とも言える存在であり、自動車産業・電機産業・繊維産業など幅広い分野に原材料を供給しています。

カーボンニュートラルとナフサの将来

近年、脱炭素化(カーボンニュートラル)の流れを受け、石油化学業界でもナフサの代替原料が検討されています。

  • バイオナフサ:植物由来の廃油・残渣を原料としたナフサ代替品。カーボンニュートラルな石化原料として注目される。
  • 廃プラリサイクル由来ナフサ:廃プラスチックを熱分解して得られるナフサ。化石燃料の使用量削減に貢献する。
  • グリーンケミストリー:再生可能エネルギーを使った化学品製造の取り組み。

これらの動向は、将来的にプラスチック製品・日用品のコストや品質に影響する可能性があり、注目しておきたい分野です。


ナフサ系溶剤を家庭で使うときの注意点

ナフサそのものを一般家庭で取り扱う機会はほとんどありませんが、ナフサを成分として含む製品(ライター用燃料・シールはがし剤・工業用洗浄剤など)が家庭に存在することはあります。

取り扱い時の注意事項

  • 火気厳禁:引火点が低く、わずかな火花でも引火する可能性があります。コンロ・ストーブの近くでは使用しないでください。
  • 換気を徹底する:揮発したガスを吸い込むと頭痛・めまい・吐き気などの症状が出る場合があります。必ず窓を開けて換気しながら使用してください。
  • 保管場所に注意:直射日光・高温多湿の場所を避け、子どもの手の届かない冷暗所で保管してください。
  • 皮膚・目への接触を避ける:直接触れた場合は、すぐに水で洗い流してください。
  • 廃棄は適切に:使用済みのナフサ系溶剤は、各自治体の廃棄ルールに従って処分してください。下水・排水溝への流し込みは厳禁です。

万が一の場合の対処

もしナフサ系溶剤を誤飲した、または大量に吸入してしまった場合は、すぐに新鮮な空気のある場所に移動し、症状が出ている場合は医療機関を受診してください。
自己判断での催吐(吐かせること)は避け、医師の指示に従ってください。


よくある質問(Q&A)

Q1. ナフサと灯油は同じものですか?

A. 異なります。ナフサと灯油はどちらも原油から精製される石油製品ですが、沸点範囲・成分・用途が異なります。灯油は暖房機器や給湯器の燃料として規格化された製品であり、ナフサは主に石油化学工業の原料・溶剤として使われます。両者を混同して暖房機器に使用することは、故障・火災の原因になります。

Q2. ナフサはガソリンスタンドで購入できますか?

A. 一般的には購入できません。ナフサは工業用途が主であり、一般消費者向けには販売されていないことがほとんどです。家庭で使う燃料は、それぞれの機器に指定された製品(灯油・ガソリン・LPGなど)を正規の販売店から購入してください。

Q3. 「ホワイトガソリン」はナフサと同じですか?

A. ホワイトガソリン(ホワイトスピリット)は精製度の高い軽質ナフサの一種です。キャンプ用の液体燃料ストーブや、工業用洗浄剤として使われます。ただし、自動車用ガソリンとは別物であり、取り扱いには十分な注意が必要です。

Q4. ナフサ価格が上がると何に影響しますか?

A. ナフサ価格の上昇は、プラスチック製品・合成繊維・合成ゴムなど石油化学製品の原料コストを押し上げます。日用品・食品容器・家電製品・衣類・自動車部品など幅広い製品の価格に間接的な影響が及ぶ可能性があります。また、都市ガス・LPGの原料にも関連するため、家庭のガス・光熱費にも波及することがあります。

Q5. バイオナフサとは何ですか?

A. バイオナフサとは、植物油・廃食油・廃プラスチックなどバイオマス(生物由来の資源)を原料として製造されるナフサの代替品です。製造・使用の過程で排出されるCO₂が原料生産時に吸収されたCO₂と相殺されるとみなせるため、カーボンニュートラルな素材として注目されています。現在、大手石化メーカーや化学会社がバイオナフサを使った製品の開発・供給を進めています。


まとめ|ナフサは暮らしの素材を支える石油製品

ナフサは、原油を精製する過程で得られる沸点30〜220℃の石油留分で、石油化学工業の最も重要な基幹原料の一つです。

この記事のポイントをまとめます。

スクロールできます
項目内容
定義原油蒸留で得られる軽質な石油留分(沸点30〜220℃)
種類軽質ナフサ(30〜90℃)・重質ナフサ(90〜220℃)
主な用途エチレン・プロピレン製造の原料、ガソリン製造、溶剤
家庭との関係プラスチック・繊維・ゴム製品などを通じて間接的に関わる
灯油・ガソリンとの違い用途・規格・取り扱い方法がそれぞれ異なる別物
将来の動向バイオナフサ・廃プラリサイクル由来ナフサへの移行が進む

ナフサ自体を家庭で直接使う機会はほとんどありませんが、プラスチック・衣類・日用品・燃料など、ナフサから作られた製品は私たちの暮らしのあらゆる場面に存在しています。
住宅設備の燃料を選ぶ際も、それぞれの石油製品の特性と違いを理解することが、安全で賢い使い方につながります。

燃料に関するご不明点や住宅設備のトラブルについては、専門業者への相談をおすすめします。

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この記事を書いた人

「暮らしの設備ガイド」は、給湯器・ストーブ・換気設備など、
家庭の安心と快適を支える“住まいの設備”に関する専門メディアです。

現在もガス業界で設備施工・保守に携わるYuta(ガス関連資格保有者)が監修し、一般家庭向けのガス機器・暖房設備・給湯器交換の実務経験をもとに、現場の知識に基づいた、正確で実用的な情報を発信しています。

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