「灯油の値段が、また上がるらしい」——そんな不安が、北海道を中心に広がっています。
結論から言うと、今冬の灯油は「値下がりを待つ」より「値上がりと品薄に備える」ほうが現実的な状況です。
2026年10月9日、コープさっぽろ(エネコープ)は記者会見を開き、仕入れ価格の急騰で販売価格が追いつかない「逆ザヤ」になっていると説明しました。
このまま続けば年内に1リットル190円前後まで引き上げざるを得ないという見通しも示しています。
あわせて国と北海道に対し、石油元売りへの出荷制限の解除などを求める緊急要請を行うと発表しました。
この記事では、現:燃料店社員の筆者が、会見の内容、今冬の灯油の仕入れが厳しくなっている理由、値下がりするための条件、そして今から家庭でできる備えを整理します。
まず結論|今冬の灯油についてわかっていること
| 項目 | 現時点でわかっていること |
|---|---|
| 190円前後の見通し | コープさっぽろ(エネコープ)が10月9日の会見で言及。確定価格ではなく「このまま仕入れ価格の高騰が続けば」という見通し |
| 現在の価格 | コープさっぽろの定期配達は札幌159円/L(10月1日〜)。道内すべての地域で過去最高 |
| 供給面 | 10月に入り、道内で仕入れ価格の急騰と、元売りの出荷制限による供給不安があると説明 |
| 国の補助 | 継続中。10月8日以降の支給単価は灯油も1Lあたり42.4円(週ごとに見直し) |
| 値下がりの時期 | 現時点で「○月に下がる」と言える材料はない |
注意したいのは、190円はコープさっぽろの配達価格についての見通しだという点です。全国一律の価格予測ではありません。
コープさっぽろの記者会見(10月9日)で語られたこと

10月9日、コープさっぽろと北海道生活協同組合連合会(道生協連)は、道内の灯油価格の急騰を受けて国と北海道に緊急対策を要請すると発表しました。会見の主なポイントは次のとおりです。
| 発言・発表 | 内容 |
|---|---|
| 現状の価格 | 10月1日に全道一律で1Lあたり15円値上げ。札幌は前年同時期より35円高い159円で、各地で過去最高を更新 |
| 逆ザヤの状況 | エネコープの社長は、1日の値上げを踏まえても仕入れ価格の急騰で逆ザヤになっていると説明 |
| 今後の見通し | このままの状況が続けば、年内に190円前後に上げるのは避けられないとの認識 |
| 道生協連の指摘 | 急騰は道内に限定して発生しており、原油相場の上昇にとどまらず流通構造上の「目詰まり」が起きていると指摘 |
| 国・道への要請 | 石油元売りへの出荷制限の即時解除、道内の灯油緊急価格安定措置の検討、助成金の交付など |
| 要請の提出 | 10月13日に経済産業相へ緊急要請文を提出する予定 |
道生協連の会長は、190円台について「命の選択を迫る限界を超えた数字」と述べています。北海道では冬の灯油が暖房の中心であり、価格の影響が家計に直結することが背景にあります。
なお、コープさっぽろは道内世帯の約7%に灯油を供給する大手で、その価格が道内の指標になっているとされています。この会見の内容は、北海道の灯油相場を占う材料として注目されています。
190円は「確定」ではなく「このままなら」という見通し
ここは誤解しやすいポイントです。190円前後という数字は、「仕入れ価格の高騰が今の状況のまま続いた場合」の見通しです。仕入れ価格が落ち着けば、値上げ幅は小さくなる可能性もあります。
一方で、10月1日に15円の値上げをした直後にもかかわらず逆ザヤだと説明されている点は重い事実です。値下がりを期待しにくい局面であることは確かです。
なぜ今冬は灯油の仕入れが厳しいのか

今冬の灯油が厳しくなっている背景は、1つではありません。
公表されている情報から、順に整理します。
1. 3月から続く中東情勢の緊迫化と原油高
きっかけは、2026年2月末からの中東情勢の緊迫化です。原油輸送の要衝であるホルムズ海峡周辺の安全性への懸念から、原油価格が急騰しました。この影響で、コープさっぽろは3月16日に灯油を1Lあたり20円値上げし、10月1日にさらに15円を上乗せしています。3月の改定前から、札幌では合計35円の上昇です。
ホルムズ海峡が滞った場合に日本のエネルギー価格や暮らしがどう影響を受けるかは、別記事で詳しく解説しています。
ホルムズ海峡が封鎖されたらどうなる?日本への影響をわかりやすく解説
2. 10月に入って出た「出荷制限」と仕入れ価格の急騰
今回の会見で特に目立つのが、元売りの出荷制限です。コープさっぽろは、10月に入ってから道内の灯油の仕入れ価格が急激に高騰し、出荷制限による供給不安も出ていると説明しています。
出荷制限とは、元売りが販売店や商社に出す灯油の量に上限をかける措置です。制限がかかると、販売店は必要な量を確保しにくくなります。3月にも、一部の販売店で受注の一時停止や、1回の給油量を制限する対応が出ていました。
3. 原油が下がっても、灯油は下がらなかった
「原油が下がれば灯油も下がるはず」と思われがちですが、今年の動きはそうなっていません。
| 月(2026年) | WTI原油価格(ドル/バレル) | 道内の灯油(配達)全道平均(円/L) |
|---|---|---|
| 4月 | 105.64 | 142.9 |
| 5月 | 89.44 | 143.7 |
| 6月 | 69.50 | 144.2 |
| 7月 | 84.67 | 144.5 |
| 8月 | 85.76 | 144.0 |
| 9月 | ― | 144.3 |
※WTIは各月最終取引日の終値。道内価格は北海道消費生活モニター調査(各月10日現在・税込)。
原油相場が6月に約70ドルまで下がっても、道内の灯油は144円台のままでした。原油相場は国際市場の指標であり、販売店の仕入れ値そのものではありません。代替調達にかかる費用など、相場以外の要素が価格に影響していると考えられます。
4. 道生協連が指摘する「流通の目詰まり」
道生協連は、価格の急騰が道内に限定して起きている点を指摘し、原油の値上がりだけでなく流通構造上の目詰まりが起きていると述べました。出荷制限や仕入れの偏りが、北海道の価格を押し上げている可能性があります。ただし、どの要因が何円分にあたるのかは公表されていません。
補助金はあるのに、なぜ灯油は上がるのか
国は2026年3月19日から「中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置」を実施しており、灯油も対象です。
2026年10月8日以降の支給単価は、ガソリン・軽油・灯油・重油がいずれも1Lあたり42.4円(調達費用に基づく調整単価3.7円を含む)です。
ただし、この補助は「灯油の店頭価格を一定にする制度」ではありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助の対象 | ガソリン・軽油・重油・灯油・航空機燃料 |
| 支給先 | 石油元売り・輸入事業者(利用者への直接給付ではない) |
| 仕組み | 元売りの卸価格を抑え、小売価格の上昇を和らげる |
| 支給単価 | 週ごとに見直し。10月8日以降は灯油も42.4円/L |
| 価格の目標 | ガソリンの全国平均170円程度。灯油に具体的な目標価格はない |
| 終了時期 | 公式サイトでは示されていない(2026年10月9日確認時点) |
補助は元売りに支給され、そこから卸価格、販売店の仕入れ、店頭価格へと反映されていきます。
仕入れコストが補助の効果を上回って上がれば、補助が続いていても店頭価格は上がります。
また、出荷制限のような「量」の問題は、価格を抑える補助では解決できません。
道生協連とコープさっぽろは10月1日にも、補助金の継続や国の石油備蓄の柔軟な運用を国と道に求めていました。
春の補助金の効果や、販売店ごとの価格の違いについては、こちらの記事も参考になります。
2026年4月からの灯油価格はどうなる?補助金効果と販売店ごとの値下げ事情を解説
灯油が値下がりするための4つの条件

では、灯油はいつ値下がりするのか。
結論として、次の条件がそろわない限り、本格的な値下がりは期待しにくい状況です。
条件1:中東情勢の緩和と調達コストの低下
最も根本的な条件です。
原油の調達環境が落ち着き、代替調達の上乗せ費用が小さくなれば、元売りの仕入れコストが下がります。
ただし中東情勢は流動的で、いつ収束するかを断言できる材料はありません。
条件2:出荷制限の解除と流通の正常化
今回の北海道では、これが最も直接的な条件です。
コープさっぽろが国に求めているのも出荷制限の即時解除です。
販売店が必要な量を安定して仕入れられるようになれば、仕入れ価格の急騰も落ち着く可能性があります。
条件3:原油価格と補助の水準
原油相場が下がることに加え、補助の支給単価がどう推移するかも影響します。
支給単価は毎週変わるため、補助が縮小すれば、その分は卸価格に上乗せされやすくなります。
条件4:円高方向への為替変動
灯油の輸入コストはドル建てで決まるため、円安が続く限り、円換算のコストは下がりにくい構造です。
原油が下がっても、為替次第では店頭価格が思ったほど下がらないことがあります。
米国産原油の増産など、調達先を広げる動きについては次の記事で解説しています。
アラスカ原油の増産で日本のガソリン・灯油価格はどう変わる?日米合意の背景と生活への影響
季節による灯油価格の動き——例年のパターンを知る

中東情勢という特殊要因を除いて、灯油価格には例年どのような季節的な動きがあるのでしょうか。
通常の年であれば、灯油価格はおおむね以下のようなパターンで推移します。
| 時期 | 価格の動き | 理由 |
|---|---|---|
| 9〜10月 | 緩やかに上昇し始める | 暖房シーズン前の需要増への先読み |
| 11〜1月 | 最も高い水準 | 暖房需要がピーク、販売店も強気な価格設定 |
| 2〜3月 | 高止まり〜やや軟化 | 暖房需要が続くが、ピークは越える |
| 4〜5月 | 徐々に下落 | 暖房シーズン終了、需要が急減 |
| 6〜8月 | 年間最安値圏 | 需要がほぼゼロ、在庫調整で価格が下がりやすい |
今年(2026年)は、この例年のパターンに、中東情勢による高騰と出荷制限による供給不安が重なっています。例年なら価格が上がり始める時期にあたる10月に、すでに過去最高値圏で追加の値上げが見込まれている点が異例です。
暖房シーズンが終わる春以降は、需要が減ることが価格の下落要因になります。ただし、それが実際の値下がりにつながるかどうかは、仕入れと供給の状況次第です。
北海道以外の地域はどうなる?
今回のコープさっぽろの会見は、北海道の状況についてのものです。道生協連は、価格の急騰が道内に限って発生していると指摘しており、本州などの価格が同じように190円前後になるとは示されていません。
とはいえ、原油高や調達コストの上昇は全国共通の要因です。お住まいの地域の最新価格は、資源エネルギー庁の石油製品価格調査(毎週水曜日更新)や、お使いの販売店の案内で確認してください。
📎 出典:資源エネルギー庁「石油製品価格調査」
今冬の灯油の買い方|買いだめより「切らさない」準備を

今すぐ大量に買い込む必要はありません。ただし、残量が少ない状態のまま冬本番を迎えないことが大切です。供給が不安定になると、価格だけでなく「買いたいときに買えない」リスクが出てくるためです。
| 状況 | 推奨する行動 |
|---|---|
| ホームタンク・定期配達を使っている | 残量を確認し、配達日や最低注文量を早めに販売店へ確認する |
| ポリタンクで店頭購入している | 品薄時は給油量の制限や受付停止が出ることもある。残量が半分を切る前に購入する |
| 今シーズン分をまとめて確保したい | 今シーズン内に使い切れる量にとどめる |
| 来シーズンへの持ち越し | 変質のおそれがあるため推奨しない |
3月には、一部の販売店で定期配達の会員以外に1回の給油量を制限する対応も出ました。定期配達の契約があると、供給が不安定な時期でも優先して配達してもらえる場合があります。
灯油の保管には期限と条件がある
灯油は、購入した暖房シーズン内に使い切ることが推奨されています。
変質した灯油を石油ストーブやファンヒーターに使うと、燃焼不良や異臭、すすの発生、機器の故障のほか、不完全燃焼による一酸化炭素中毒のおそれがあります。
- 直射日光の当たらない冷暗所で保管する
- 専用の灯油缶(赤色ポリタンク)を使う
- キャップをしっかり閉め、空気の混入を防ぐ
- 車のトランクなど高温になる場所に置かない
- 前シーズンの残りは、使う前に販売店で確認するか処分する
まとめて大量に保管する場合は、貯蔵量によって市町村の火災予防条例に基づく届出が必要になることがあります。目安を超えそうなときは、事前に最寄りの消防署へ確認してください。
灯油代の負担を減らすために今できること
値下がりを待つだけではなく、灯油の使用量そのものを減らす工夫も効果があります。
価格が自分でコントロールできない以上、使う量を減らすことが最も確実な家計防衛策です。
暖房効率を上げて灯油の消費量を減らす
窓の断熱強化
暖房の熱が最も逃げやすいのは窓です。室内の暖気の約50〜60%は窓から流出するとされています。断熱シートや窓用プチプチ(気泡緩衝材)を窓ガラスに貼るだけで、保温効果が高まります。
厚手カーテンへの変更
薄いカーテンを厚手の断熱カーテンに替えるだけでも、窓からの冷気の侵入を抑えられます。既存のカーテンにライナー(裏地)を追加する方法もあります。
ドアや隙間のすき間テープ活用
玄関ドアや窓の隙間から入る冷気も、暖房効率を下げる原因です。すき間テープで、体感温度を上げつつ暖房の消費を抑えられます。
暖房器具の使い方を見直す
設定温度を1〜2度下げる
設定温度を1度下げるだけで、燃料の消費量は1割前後減るとされています。厚着や膝掛けと組み合わせれば、体感温度を落とさずに設定温度を下げられます。
サーキュレーターで暖気を循環させる
暖かい空気は天井に溜まり、足元は冷たいままになりがちです。サーキュレーターで空気を循環させると、部屋全体を効率よく暖められます。
使わない部屋の暖房は切る
家族が集まる部屋に暖房を集中させ、使っていない部屋は切るか温度を下げます。
石油ストーブ・ファンヒーターのメンテナンスで燃費を保つ
芯が劣化したり、フィルターが汚れたりすると、燃焼効率が落ちて同じ量の灯油でも暖房能力が下がります。
- 芯の状態:先端が均一に燃えない、炎の色がオレンジから黄色に変わってきたら交換のサインです。交換芯はホームセンターや通販で入手できます。
- フィルター清掃:ほこりが溜まると燃焼効率が下がります。シーズン中に数回、取り外して清掃しましょう。
- タンク内の確認:水や異物が混入すると燃焼不良の原因になります。異常があれば販売店や修理業者に相談してください。
お得に灯油を購入するための工夫
価格改定のタイミングは販売店によって異なります。可能であれば、地域の複数の販売店の価格を比較しましょう。配達価格より店頭価格のほうが安い場合もありますが、高齢者世帯や運搬が難しい方は、生協などの定期配達を使うほうが、労力と安全性の面で有利なこともあります。
📎 出典:エネコープ「灯油価格・お支払い」
よくある質問(Q&A)
Q1. 灯油は本当に190円になりますか?
A. 確定ではありません。190円前後という数字は、コープさっぽろ(エネコープ)が10月9日の会見で、仕入れ価格の高騰が今の状況のまま続いた場合の見通しとして示したものです。北海道の配達価格についての話で、全国一律の予測ではありません。仕入れ環境が改善すれば、値上げ幅が変わる可能性もあります。
Q2. 補助金があるのに、なぜ灯油は値上がりするのですか?
A. 国の補助は石油元売りに支給されて卸価格を抑える仕組みで、灯油の店頭価格を固定する制度ではないためです。仕入れコストが補助の効果を上回って上がれば、補助が続いていても販売価格は上がります。また、出荷制限のように量が確保しにくくなる問題は、補助金だけでは解決できません。
Q3. 灯油は今すぐ買いだめしたほうがいいですか?
A. 大量の買いだめはおすすめしません。灯油は購入した暖房シーズン内に使い切るのが基本で、シーズンをまたぐと変質するおそれがあります。ただし、残量が少ない状態で冬を迎えると、品薄や受付停止の影響を受けやすくなります。今シーズン使い切れる量を、余裕をもって確保しておくのが現実的です。
Q4. 北海道以外に住んでいても灯油は値上がりしますか?
A. 今回の会見は北海道の状況についてのもので、他の地域が同じ水準になるとは示されていません。ただし、原油高や調達コストの上昇は全国共通の要因です。お住まいの地域の価格は、資源エネルギー庁が毎週公表する石油製品価格調査や、販売店の案内で確認してください。
Q5. 灯油が安くなるのはいつ頃ですか?
A. 現時点で「いつ」と言い切れる材料はありません。例年は暖房シーズンが終わる春以降に需要が減って下がりやすくなりますが、今年は中東情勢や出荷制限、補助の水準といった要因が絡んでいます。原油価格、出荷制限の動向、国の補助の支給単価、為替の4点を継続して確認することが大切です。
まとめ|今冬の灯油は「備える」が基本
2026年10月時点の状況を整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 現状 |
|---|---|
| 価格 | コープさっぽろの配達は札幌159円/L。道内すべての地域で過去最高 |
| 今後の見通し | 仕入れ高騰が続けば、年内に190円前後まで上がる見通し(コープさっぽろ) |
| 供給面 | 10月に入り、仕入れ価格の急騰と出荷制限による供給不安 |
| 国の補助 | 継続中。10月8日以降の支給単価は1Lあたり42.4円(週ごとに見直し) |
| 値下がりの見通し | 不透明。出荷制限の解除や原油の落ち着きがなければ期待しにくい |
| 家庭でできること | 残量の確認・早めの手配、断熱と暖房の使い方の見直し |
今後の価格は、中東情勢や出荷制限の行方といった外部要因に左右されるため、「○月には値下がりする」と断言できる状況ではありません。できることは、灯油を切らさないように早めに手配しながら、断熱や暖房器具の使い方を見直して消費量そのものを減らすことです。
灯油価格の動向は、資源エネルギー庁の週次調査(毎週水曜日更新)で確認できます。こまめにチェックして、冬を迎える準備を進めてください。
