「今夏の海外旅行、思ったより高くなってしまった」。
そんな声がSNSやニュースで急増しています。
原因のひとつが、航空券に上乗せされる燃油サーチャージ(燃油特別付加運賃)の大幅な値上げです。
2026年2月28日に始まった中東情勢の急変を契機に、ジェット燃料の市況価格が急騰し、JAL・ANAをはじめとする航空各社の燃油サーチャージが急激に上昇しています。
ANAホールディングス傘下のANAと日本航空(JAL)は、6月の発券分から国際線の航空運賃に上乗せする燃油特別付加運賃を大幅に引き上げる見通しで、旅行者の家計に直接影響します。
本記事では燃油サーチャージの仕組みから値上げの背景、路線別の金額比較、そして注意点までを整理します。
燃油サーチャージとは何か
燃油サーチャージ(燃油特別付加運賃)は、航空会社が航空燃料費の変動に対応するために航空運賃に加えて請求する変動性の追加料金です。
普段使用しているガスや電気の燃料費調整額と同じ、といえばわかりやすいかもしれません。
原油価格の高騰に伴い、航空会社の企業努力で収受しきれない航空燃料費用の一部をお客様に負担いただく形となっており、一部の航空会社を除いて通常の航空券運賃とは別にかかるものです。
1991年の湾岸戦争以降、原油価格高騰に対する措置として、1997年に国際航空運送協会(IATA)が制度を認可し、日本ではJAL・ANAが2005年から導入しています。
JAL・ANAの算出方法
日本航空(JAL)および全日本空輸(ANA)は、シンガポール市場で取引されるケロシン(ジェット燃料)価格を指標として価格設定されます。
直近2か月のケロシン1バレルあたりのシンガポール市場平均価格(米ドル)に、同じ2か月の為替レート平均を掛けて円換算した額をもとに適用額を確定します。
つまり燃油サーチャージが上がる要因は、以下の2点です。
- ジェット燃料(ケロシン)価格の上昇
- 円安の進行
どちらか一方でも悪化すれば値上がりし、両者が同時に動けば影響は倍加します。
2か月ごとに見直される仕組み
原則としてJAL・ANAの燃油サーチャージは2ヶ月間固定です。
設定された2か月間は航空燃料価格の動向による変更は行われませんが、関係国政府の認可状況に応じた変更についてはこの限りではありません。
この仕組みにより、市況が急変した場合でも次の改定時期(2か月後)まで航空会社はサーチャージを変更できません。
逆にいえば、旅行者は発券時点のサーチャージ額を確定させることができます。
2026年値上げの背景:なぜ今、急騰しているのか
ジェット燃料価格の急変
2026年2月以降、原油価格は中東情勢の急変を受けて大きく動きました。
2月28日の開戦前後でジェット燃料の市況が一変し、3月6日までの1週間のIATA平均燃油価格は1バレル157.41ドルと急騰。
さらに3月20日までの1週間では1バレル197.00ドルに達したと報じられています。
これに1ドル159円台の円安が重なり、ケロシンの円換算価格は月間平均31,000円超という水準まで上昇しました。
航空会社へのコスト影響
米デルタ航空のCEOは、ジェット燃料の急騰により3月単月だけで最大4億米ドル(約640億円)のコスト増になると発言しています。
アメリカン航空も同様に、燃料コスト増により第1四半期の費用が4億米ドル増加する見通しを示しました。
日系航空会社も同様の状況にあり、コスト増の一部を旅客へ転嫁せざるを得ない状況となっています。
現行制度の上限に到達する見通し
6〜7月発券分は、JAL・ANAが公表している改定条件表の上限値に達する見通しです。
現行の燃油サーチャージ制度は一定の上限設定を前提に設計されており、それを超えるような原油高が続いた場合、制度そのものの改定に向けた議論が進む可能性があります。
4月・5月発券分の確定額
まず、現在(2026年4月1日〜5月31日)発券分の確定額を確認しておきます。
JALでは、2025年12月から2026年1月のシンガポールケロシン市況価格2か月平均が1バレルあたり84.26米ドルでした。
これに同期間の為替平均1米ドル156.27円を乗じた円貨換算額は13,166円となり、2026年4月から5月に発券される航空券はゾーンH(13,000円基準)の金額が適用されます。
JAL・ANA 4〜5月発券分(日本発・片道1区間あたり)
| 路線区分 | JAL | ANA |
|---|---|---|
| 欧州・北米・中東・オセアニア | 29,000円 | 31,900円 |
| ハワイ・インド・インドネシア等 | 17,800円 | 20,400円 |
| 東アジア(韓国・中国・台湾等) | 7,400円 | 9,400円 |
※ 日本発・お一人さま・1区間片道あたりの金額。航空保険特別料金(JAL:550円、ANA:800円)は別途加算。
ANAはJALより高めの設定になっています。
欧州線を往復・2人分で比較すると、ANAは127,600円、JALは116,000円の負担です。
6月・7月発券分の見通し:最大2倍の値上げへ
値上げ幅の試算
4〜5月発券分は欧州・北米行きで3万円前後でしたが、6〜7月発券分は7割ほど引き上げられ、ANAが5万5,000円、JALは5万円となる見通しです。
韓国行きはANAが6,500円、JALは5,900円と2倍近くに引き上げる見通しとなっています。
JAL・ANA 4〜5月発券分 vs 6〜7月発券分の比較(日本発・片道)
| 路線区分 | JAL(4〜5月) | JAL(6〜7月見通し) | ANA(4〜5月) | ANA(6〜7月見通し) |
|---|---|---|---|---|
| 欧州・北米・中東・オセアニア | 29,000円 | 約50,000円 | 31,900円 | 約55,000円 |
| ハワイ・インド等 | 17,800円 | 約30,000円前後 | 20,400円 | 約35,000円前後 |
| 東アジア(韓国等) | 7,400円 | 約5,900円 | 9,400円 | 約6,500円 |
※ 6〜7月分は2026年4月時点の報道・各社広報ベースの見通し。正式発表は2026年4月中旬〜下旬予定。確定額は各社公式サイトでご確認ください。
往復・家族分で積み上がると
燃油サーチャージは大人・小児ともに同額が課されます。
たとえば6〜7月発券分のANAで欧州に家族4人(大人2人+子ども2人)が往復する場合、燃油サーチャージだけで約44万円(55,000円×8区間)になる計算です。
旅行全体の予算を立てる際、燃油サーチャージを見落としたまま計画すると、想定外の出費となることがあります。
必ず航空券の「総額(運賃+燃油サーチャージ+空港諸税)」で比較・確認することをおすすめします。
路線別の影響:どの路線がどれほど上がるか
欧州・北米線
今回最も影響が大きい路線です。
6〜7月発券分では往復10万円前後になる見通しで、航空券の運賃本体と合わせると旅行コストが大幅に上昇します。
5月までの発券なら欧州往復5.8万円ですので、6月以降に1.6倍程度になるのは確実な見通しとなっています。
ハワイ・東南アジア線
ハワイはファミリー旅行に人気の路線ですが、燃油サーチャージは大人・小児ともに同額のため、家族4人での往復では燃油サーチャージだけで8〜16万円超になるケースもあります。
東南アジア路線も同様に注意が必要です。
韓国・中国・台湾等の近距離路線
近距離路線も2倍近い引き上げが見込まれますが、金額の絶対値は欧米に比べて小さく、影響は相対的に限定的です。ただし頻繁に渡航する方にとっては積み重なる負担となります。
8〜9月発券分以降はさらなる上昇も
8月以降の燃油サーチャージ額を決めるのは4月以降の市況ですが、現在の原油・為替水準が続く場合、欧米往復で15万円程度に達する可能性があるとも報じられています。
現時点では未確定ですが、情勢の長期化が懸念されています。
燃油サーチャージの仕組みで押さえておきたい3つのポイント
① 「発券日基準」に注意
燃油サーチャージは搭乗日ではなく発券日(購入・決済日)が基準です。
ANAは予約日に関わらず購入時点の金額が適用され、JALも発券時に有効な金額が適用されます。
予約だけ先に済ませていても、発券が6月以降になれば値上がり後の金額になります。
② マイル特典航空券でも対象になる
燃油サーチャージは有償チケットだけの話ではありません。
JAL・ANAのマイルを使った特典航空券にも適用されます。
運賃はゼロでも、燃油サーチャージは有償チケットと同額が必要です。
マイルを活用して節約を図る方も、この点を念頭に置いてください。
③ 航空会社によって差がある
産油国系(カタール航空・エミレーツ航空など)や一部のアジア系航空会社は、燃油サーチャージを運賃に内包しているか、そもそも徴収しないケースがあります。LCCも原則として徴収しません。
ただし運賃本体との総額で比較することが重要です。
燃油価格の上昇は航空券だけではない——家庭のエネルギーコストへの波及
燃油サーチャージの急騰は、航空便にとどまらず、家庭のエネルギーコスト全体に波及しています。
ガス・電気料金への影響
LNG(液化天然ガス)は都市ガスの主要原料であり、その多くはアジア・太平洋地域から輸入されています。
原油価格の高騰は石油連動型のLNG契約価格を押し上げ、都市ガス料金の上昇圧力となります。電気料金についても、火力発電の燃料コストが上昇すれば、電気料金の値上げにつながります。
灯油・ガソリン価格の上昇
ジェット燃料と同様に原油を精製して作られる灯油・ガソリンも、原油価格の高騰と円安の影響を受けます。
暖房用灯油を使用しているご家庭は、特に冬場のエネルギーコスト上昇に注意が必要です。
LPG(プロパンガス)への影響
LPGの輸入価格はサウジアラムコが毎月発表するCP(Contract Price)に連動しています。
CPは原油価格との相関が高く、原油高が続く局面ではLPG料金にも上昇圧力がかかります。
プロパンガスを使用しているご家庭は、ガス会社からの単価改定通知に注意してください。
エネルギーコストの家計全体への影響
| エネルギー種別 | 原油高の影響 | 主な用途 |
|---|---|---|
| ジェット燃料 | 直接影響(燃油サーチャージ) | 航空券 |
| 灯油 | 原油高で上昇 | 暖房・給湯 |
| ガソリン | 原油高で上昇 | 自動車燃料 |
| 都市ガス(LNG) | 原油連動契約を通じて影響 | 給湯・調理・暖房 |
| LPG | CP価格を通じて影響 | 給湯・調理・暖房 |
| 電気 | 火力燃料費を通じて影響 | 全般 |
特定のエネルギー価格が動くとき、他のエネルギーも連動して動く傾向があります。
燃油サーチャージの急騰は、家計全体のエネルギーコストが上昇局面に入っているシグナルでもあります。
家庭でできるエネルギーコスト対策
燃油価格の上昇局面では、以下のような対策が有効です。
- 給湯器の設定温度を適正化する:必要以上に高い設定温度はガス消費量を増やします。使用温度に合わせた適切な設定が節約につながります
- 暖房機器の効率を見直す:エネルギー効率の高い暖房機器への切り替えを中長期で検討する
- 電力会社・ガス会社の料金プランを確認する:エネルギー自由化により、プランの見直しで負担を軽減できる場合があります
- 太陽光発電・蓄電池の検討:初期費用は大きいものの、エネルギー価格の変動リスクを軽減する手段として有効です
国内線への波及:JALが2027年度から導入検討
現時点(2026年4月)ではJAL・ANAとも国内線に燃油サーチャージはかかりません。
ただし、JALが2027年4月からの国内線への導入を計画しているとの報道があり(2026年4月1日・日経新聞、JAL公式の正式発表ではありません)、今後の動向に注意が必要です。スカイマークなども導入を検討中と報じられています。
国内線専業の中堅航空会社は燃油高をカバーする策が限られ、経営が圧迫される構造にあります。今後の燃油価格の動向次第では、国内線の旅行コストにも影響が及ぶ可能性があります。
旅行者が今できること
5月31日までに発券する
現行の4〜5月水準が適用されるのは、2026年5月31日までに発券した航空券です。
夏以降の旅行が決まっている方は、旅程の確度を確認したうえで早めの発券を検討する価値があります。
旅程が決まっていて近いうちに発券する予定がある方は、5月31日までに発券するかどうかで負担額に大きな差が生じる可能性があります。
ただし旅程が未確定のまま先走って発券するのも考えものです。取消時には燃油サーチャージは手数料なしで全額返金されますが、航空券本体の取消手数料は別途かかります。
燃油サーチャージの改定スケジュールを把握する
JAL・ANAの燃油サーチャージは偶数月(2月・4月・6月・8月・10月・12月)頃に翌2か月分が発表されます。
| 発券対象期間 | 正式発表予定時期 |
|---|---|
| 2026年4〜5月発券分 | 確定済み |
| 2026年6〜7月発券分 | 2026年4月中旬〜下旬 |
| 2026年8〜9月発券分 | 2026年6月頃 |
改定発表後すぐに内容を確認し、次のタイミングで値下がりの可能性があるかを判断することが重要です。
燃油サーチャージの構造を総額で比較する
LCCや外国系航空会社を選ぶ際は、燃油サーチャージが含まれているかどうかを確認のうえ、運賃との合計額で比較することが大切です。
サーチャージ単体が安く見えても、運賃本体が高い場合もあります。
よくある質問
Q. 燃油サーチャージは全員に必要ですか?
A. JAL・ANAの国際線を利用する方は大人・小児ともに同額が必要です。ただし座席を使用しない2歳未満の幼児は対象外です。また、マイレージを使った特典航空券でも同様に徴収されます。
Q. 予約済みの航空券は値上がりの影響を受けますか?
A. 発券(購入・決済)が完了していれば、その時点の金額が適用されます。予約だけで発券が6月以降になる場合は、値上がり後の金額が適用されますのでご注意ください。
Q. 国内線にも燃油サーチャージはかかりますか?
A. 現時点(2026年4月)ではJAL・ANAとも国内線には燃油サーチャージはかかりません。ただし、2027年度以降に変更となる可能性があります。
Q. 燃油サーチャージが安い航空会社はありますか?
A. 産油国系の航空会社(カタール航空・エミレーツ航空など)はサーチャージを運賃に内包しているケースが多く、LCCも原則徴収しません。ただし運賃本体との総額で比較することが重要です。
Q. 燃油サーチャージは払い戻しされますか?
A. 航空券を払い戻す場合、燃油サーチャージは取消手数料なしで全額返金されます(JALの場合)。ただし航空券本体の取消手数料は別途かかります。
まとめ:2026年の燃油サーチャージ値上げのポイント
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 値上げの背景 | 中東情勢の緊張による原油・ジェット燃料の急騰+円安の進行 |
| 影響が出る発券時期 | 2026年6月1日以降の発券分から |
| 値上げ幅の目安 | 欧州・北米路線で現行比約7割増(JAL:約5万円、ANA:約5.5万円/片道) |
| 今後の見通し | 市況が続けば8〜9月発券分はさらに上昇する可能性あり |
| 注意点① | 燃油サーチャージは「搭乗日」ではなく「発券日」が基準 |
| 注意点② | マイル特典航空券でも同額のサーチャージが必要 |
| 家庭への波及 | 灯油・ガス・電気料金にも同じ原油高の影響が及ぶ |
| 現時点での対策 | 5月31日までの発券が最も確実な節約手段 |
燃油サーチャージは旅行総費用のなかで見落とされやすい項目ですが、欧州往復では10万円を超える規模になりつつあります。
また、同じ原油高の波は家庭の暖房・給湯・調理のエネルギーコストにも影響しています。
航空券の発券タイミングを検討しながら、家庭のエネルギー使用全体も見直す機会としてください。
なお、6〜7月分の正式な金額は2026年4月中旬〜下旬にJAL・ANA各公式サイトで発表される予定ですので、旅行を計画している方は最新情報を必ず確認するようにしましょう。

