エアコンの電気代を自分で計算しようとして、カタログの「消費電力」の欄を見た瞬間に手が止まった、という経験はないでしょうか。
そこには「590W(135〜900W)」のように幅のある数字が並んでいて、どれを使えばいいのか分からない。
仮に真ん中の数字を選んで24時間分を掛け算しても、実際の請求額とはまるで合いません。
原因ははっきりしていて、エアコンの電気代は定格消費電力から計算しても正しい答えが出ない構造になっているからです。
この記事では、カタログのどの数字を使えば実態に近い金額が出せるのか、期間消費電力量という指標の意味と正しい使い方、1時間・1か月・1年それぞれの計算式、そして計算結果と実際の請求額がずれる理由までを順に整理します。
エアコンの年間電気代は「期間消費電力量×電力量単価」で概算できる
先に結論をお伝えします。
エアコンの年間電気代をもっとも簡単かつ実態に近い形で出すなら、次の1本の式で足ります。
年間電気代(円)= 期間消費電力量(kWh)× 電力量単価(円/kWh)
期間消費電力量は、カタログや取扱説明書の仕様表に「期間消費電力量 717kWh」といった形で必ず記載されている数値です。
1年間エアコンを使ったときに消費する電力量の目安として、規格で条件を決めたうえで算出されています。
電力量単価は、契約している電力会社の検針票を見るのが最も正確ですが、手元にない場合は31円/kWhという公的な目安単価を使えば十分です。
これは公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会(家電公取協)が定めている単価で、家電メーカーのカタログに載っている「電気代の目安」もこの数字をもとに計算されています。
つまり、期間消費電力量が717kWhの機種なら、717 × 31 = 約22,227円が年間電気代の目安ということになります。
定格消費電力を使った計算のように「1日24時間×30日」といった掛け算をする必要はありません。
年間の使用パターンがすでに数値の中に織り込まれているからです。
定格消費電力で計算すると請求額と大きくずれる
多くの方がつまずくのが、カタログの「消費電力(W)」欄をそのまま使ってしまうパターンです。
ここには落とし穴が2つあります。
カタログの消費電力は「最小〜最大」の幅で書かれている
現在のエアコンはほぼすべてインバーター方式で、室内の温度に合わせて圧縮機(コンプレッサー)の回転数を細かく変えています。
そのため消費電力は一定ではなく、カタログでも「冷房 590W(135〜900W)」のように、代表値とその変動幅がセットで表示されます。
この3つの数字は、それぞれ意味が違います。
| 表示 | 意味 | 電気代計算に使えるか |
|---|---|---|
| 代表値(例:590W) | 定格条件(外気35℃など決められた試験条件)で運転したときの値 | 使えない(その条件で1年動き続けるわけではない) |
| 最小値(例:135W) | 設定温度に到達し、安定運転に入ったときの下限 | 使えない(立ち上がり時を無視している) |
| 最大値(例:900W) | 起動直後や猛暑日など、最も負荷が高いときの上限 | 使えない(常時この出力ではない) |
どれを選んでも実態から外れるのは、そもそも「1つの数値で1年を代表させる」という発想が、インバーター機と噛み合っていないためです。
定格運転が続くのは立ち上がりの数十分だけ
エアコンが最大出力に近い運転をするのは、スイッチを入れてから室温が設定温度に近づくまでの間です。
断熱性能や外気温にもよりますが、一般的な木造6畳間で日中に冷房を入れた場合、この立ち上がりはおおむね15〜30分程度で、そのあとは最小出力付近を行き来する安定運転に移ります。
したがって、定格590Wの機種を8時間つけても、消費電力量は「0.59kW×8時間=4.72kWh」にはなりません。
実際には立ち上がり30分が高出力、残り7時間30分が低出力という配分になるため、この式は実態を大きく上回る数字を出します。
逆に、30分ごとにこまめに消したり点けたりを繰り返すと、高出力の立ち上がりが何度も発生して電力量が増えます。
この点は、風量やオンオフの体感と実際の消費が食い違いやすい部分で、エアコン自動運転がずっと強風…電気代は上がる?原因・故障の見分け方・正しい対処まで徹底解説でも詳しく整理しています。
期間消費電力量はJIS C 9612で条件を固定した年間の目安値
では、期間消費電力量はどうやって決められている数値なのでしょうか。
これはメーカーが自由に名乗っている値ではなく、日本産業規格 JIS C 9612:2013 に基づいて、試算条件を全メーカー共通に固定したうえで算出されています。
試算条件は「東京・木造・1日18時間」
具体的な条件は次のとおりです。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 外気温度 | 東京をモデルとする |
| 設定室内温度 | 冷房時27℃/暖房時20℃ |
| 冷房期間 | 5月23日〜10月4日 |
| 暖房期間 | 11月8日〜4月16日 |
| 使用時間 | 6:00〜24:00の18時間 |
| 住宅 | JIS C 9612による平均的な木造住宅(南向き) |
| 部屋の広さ | 機種に見合った広さの部屋 |
ここが非常に重要なポイントです。
期間消費電力量は「1日18時間・年間およそ9か月弱」というかなり長い稼働を前提にしています。
在宅時間が短く、夏の2か月だけ夜間に使うという家庭であれば、実際の電気代はこの目安をはっきり下回ります。
反対に、24時間つけっぱなしにしている家庭や、北海道・東北など暖房期間が長い地域では、目安を上回ることがあります。
APFと期間消費電力量は表裏の関係にある
カタログにはAPF(通年エネルギー消費効率)という数値も併記されています。
両者の関係は次の式で表されます。
APF = 1年間に必要な冷暖房能力の総和 ÷ 期間消費電力量
分子の「1年間に必要な冷暖房能力の総和」は、同じ能力クラス(同じ畳数向け)であれば規格上ほぼ共通です。
したがって、同クラス内ではAPFが高い機種ほど期間消費電力量が小さく、年間電気代も安くなるという関係が成り立ちます。
注意したいのは、能力クラスをまたいでAPFを比較しても意味がないことです。
6畳用(2.2kW)と20畳用(6.3kW)ではそもそも分子が違うため、APFの数字を並べても省エネ性の優劣は判断できません。
比較は必ず同じ能力クラス同士で行ってください。
年間・1か月・1時間の電気代を出す3つの計算式
期間消費電力量が手元にあれば、必要な期間の金額はすべてそこから導けます。
① 年間電気代(もっとも精度が高い)
期間消費電力量(kWh)× 電力量単価(円/kWh)
計算例を挙げます。単価は31円/kWhとしています。
| 期間消費電力量 | 年間電気代の目安 | 目安となる機種クラス |
|---|---|---|
| 600kWh | 約18,600円 | 6畳用(2.2kW)前後 |
| 800kWh | 約24,800円 | 8〜10畳用(2.5〜2.8kW)前後 |
| 1,000kWh | 約31,000円 | 12畳用(3.6kW)前後 |
| 1,300kWh | 約40,300円 | 14〜16畳用(4.0〜5.0kW)前後 |
| 1,600kWh | 約49,600円 | 18〜20畳用(5.6〜6.3kW)前後 |
※期間消費電力量の値は計算例として置いたものです。実際の数値はお使いの機種のカタログ・仕様表でご確認ください。
② 1か月あたりの電気代(季節で按分する)
年間値を単純に12で割ると、使っていない春・秋の分まで平均に混ざってしまい、真夏の請求額の説明になりません。
より実感に近づけるには、冷房期間と暖房期間で分けて考えます。
JISの前提では冷房期間は約135日、暖房期間は約160日です。
おおまかな目安として、期間消費電力量のうち冷房が3〜4割、暖房が6〜7割を占める機種が多いため、暖房側が重い点を意識しておくと見積もりを外しにくくなります。
冷房1か月あたり ≒ 期間消費電力量 × 冷房比率 ÷ 4.5か月 × 単価
③ 1時間あたりの電気代(実測が最も確実)
「1時間あたり何円か」を知りたい場合、期間消費電力量からの逆算では精度が出ません。
使用状況が家庭ごとに違いすぎるためです。
確実なのは、実際に消費している電力を測ってしまう方法です。
コンセントと機器の間に挟むだけで消費電力量を積算できるワットチェッカー(電力量計)を使えば、自宅の実使用条件そのままの数値が取れます。
ただしエアコンは200V・専用回路で接続されている機種も多く、その場合は市販のワットチェッカーが使えません。
100Vの窓用エアコンや、他の家電の消費電力を把握したい場合に有効な方法と考えてください。
200V機の場合は、分電盤に取り付けるタイプのエネルギーモニターや、電力会社が提供する「見える化」サービス(30分ごとの使用量グラフ)で、エアコンを付けた時間帯と使用量の増減を突き合わせるのが現実的です。
実際に計算してみる|10畳リビングのケース
数式だけでは掴みにくいので、条件を置いて最後まで計算してみます。
前提
- 機種:冷房能力2.8kW(10畳用)、期間消費電力量 820kWh
- 住まい:関東の木造戸建て、リビング10畳
- 使い方:夏は7〜9月に1日10時間、冬は12〜3月に1日8時間
- 検針票から求めた実効単価:33円/kWh
ステップ1:カタログ値ベースの年間電気代を出す
820kWh × 33円 = 約27,060円。
これがJISの前提(1日18時間・冷房135日・暖房160日)どおりに使った場合の目安です。
ステップ2:自分の使い方との差を補正する
前提の使用時間は年間で、冷房135日+暖房160日=295日 × 18時間 = 5,310時間です。
一方、このケースは夏92日 × 10時間+冬121日 × 8時間 = 1,888時間。
おおよそ前提の36%程度の稼働時間になります。
ただし、単純に0.36を掛けるのは正確ではありません。
使用時間が短いほど、立ち上がりの高出力運転が全体に占める割合が上がるためです。
補正の目安としては、時間比率をそのまま掛けた値より1〜2割多めに見ておくと実態に近づきます。
27,060円 × 0.36 = 約9,740円。
これに立ち上がり分の割増を見て、年間およそ11,000〜12,000円程度が現実的な着地点、という読み方になります。
ステップ3:月あたりに落とす
冷房期の3か月と暖房期の4か月に配分します。
暖房のほうが外気との温度差が大きく負荷が重いため、冷房4割・暖房6割程度を目安に按分すると、夏場は月あたり1,500円前後、冬場は月あたり1,700円前後という水準が見えてきます。
この数字が請求額の増え方と大きく食い違う場合は、断熱条件や設置環境、あるいは機器の状態を見直す手がかりになります。
「なんとなく高い気がする」を「計算上はこのくらいのはずなのに2倍かかっている」に変えられるのが、期間消費電力量から入る計算の最大の利点です。
単価は「31円」より検針票の実効単価のほうが正確
計算式のもう一方の項である電力量単価についても、少し踏み込んでおきます。
家庭の電気料金は、次の3つの要素で構成されています。
| 構成要素 | 内容 | エアコンの電気代への影響 |
|---|---|---|
| 基本料金(または最低料金) | 契約アンペアや契約容量で決まる固定額 | 使用量に関係なくかかるため、エアコン単体の計算には含めない |
| 電力量料金 | 使用した電力量(kWh)に応じた従量部分。多くのプランで3段階制 | ここが計算の対象。使用量が増えると単価も上がる場合がある |
| 燃料費調整額・再エネ賦課金 | 燃料価格や制度に応じて毎月変動する調整分 | kWhあたりで加算されるため、実質的な単価を押し上げる |
31円/kWhという目安単価は、これらをならした全国平均的な水準です。
自宅の数字を知りたい場合は、検針票(またはWebの利用明細)から次のように計算してください。
実効単価(円/kWh)= 当月の請求額(円)÷ 当月の使用量(kWh)
基本料金を含んだ割り算になるため厳密な従量単価とは異なりますが、「電気を1kWh使うと家計から実際に何円出ていくか」を表す数字として、家電の電気代を見積もる用途にはこちらのほうが実用的です。
オール電化プランや深夜割引プランを契約している場合は時間帯で単価が大きく異なるため、エアコンを主に使う時間帯の単価を確認しておくと精度が上がります。
部屋の広さと能力クラスが合っていないと計算が崩れる
期間消費電力量は「機種に見合った広さの部屋」で使うことが前提です。
この前提が崩れると、どんなに省エネ性能の高い機種でも計算どおりになりません。
冷房能力(kW)とおおよその適用畳数の対応は次のとおりです。
| 冷房能力 | 目安の畳数 |
|---|---|
| 2.2kW | 6畳 |
| 2.5kW | 8畳 |
| 2.8kW | 10畳 |
| 3.2kW/3.6kW | 12畳 |
| 4.0kW | 14畳 |
| 5.0kW | 16畳 |
| 5.6kW | 18畳 |
| 6.3kW | 20畳 |
| 7.1kW | 23畳 |
能力が不足していると、エアコンは設定温度に到達できないまま最大出力付近で運転し続けます。
インバーターの強みである「低出力での安定運転」に入れないため、効率のよい領域を使えないまま電力を消費することになります。
節約のつもりで小さめの機種を選ぶと、かえって電気代が上がるのはこのためです。
なお、この畳数表はJISが前提とする木造南向き住宅を基準にしたものです。
最上階・西日が強く入る部屋・天井が高い部屋・キッチンと一体のリビングなどは、表より1〜2ランク上の能力を選ぶほうが結果的に電気代を抑えられるケースがあります。
除湿・自動運転・つけっぱなしの電気代を計算で考える
読者から質問が多い運転モード別の違いも、これまでの考え方で整理できます。
除湿(ドライ)が冷房より高くなることがある理由
除湿には大きく分けて2つの方式があります。
- 弱冷房除湿:冷房を弱く運転して湿気を取る方式。消費電力は冷房よりやや少なめになる傾向
- 再熱除湿:一度冷やして水分を取った空気を、再び温めてから室内に戻す方式。温め直す分の電力が加わる
つまり、再熱除湿は冷房より電気代が高くなることがあるという点が、「除湿のほうが安いはず」という一般的な感覚と食い違います。
どちらの方式かは取扱説明書に記載されています。
梅雨時の湿度対策として快適性を優先するなら再熱除湿、電気代を優先するなら冷房または弱冷房除湿、という使い分けが目安です。
自動運転が結果的に安くなりやすい
風量を「弱」に固定すると節電になりそうに感じますが、実際には設定温度への到達が遅れ、圧縮機が長く高出力で回り続けます。
風を送るファンの消費電力は圧縮機に比べて小さいため、風量を絞って得られる節電幅より、到達が遅れて増える分のほうが大きくなりがちです。
自動運転は、立ち上がりに強め、到達後は弱めという配分を機器側が行うため、多くの場面で合理的な選択になります。
つけっぱなしの妥当性を計算する
「つけっぱなしが得か」は、外出時間と再起動時の消費で決まります。
判断の考え方はシンプルで、
(消したことで浮く電力量)と(再起動の立ち上がりで余分に使う電力量)を比べる
という比較になります。
立ち上がりで余分に使う電力量は、外出時間が長いほど室温が戻ってしまうため大きくなりますが、上限があります。
一方、消して浮く電力量は外出時間に比例して増え続けます。
したがって外出が長くなるほど「消す」が有利になり、短いほど「つけっぱなし」が有利になるという関係になり、分岐点はおおむね30分〜1時間程度に置かれることが多いです。
計算どおりにならない5つの要因
期間消費電力量で計算した金額と実際の請求額がずれることは珍しくありません。
主な要因を整理します。
| 要因 | ずれる方向 | 補足 |
|---|---|---|
| 使用時間が前提と違う | 短ければ下、つけっぱなしなら上 | 前提は1日18時間 |
| 地域の気候が東京と違う | 寒冷地・猛暑地域では上 | 外気温との温度差が大きいほど負荷が増す |
| 住宅の断熱性能 | 断熱が弱い住宅は上 | 前提は平均的な木造住宅(南向き) |
| 部屋と能力のミスマッチ | 能力不足なら上 | 常時フルパワー運転になり効率が落ちる |
| 電力量単価が31円と違う | 契約プラン次第で上下 | 燃料費調整額・再エネ賦課金の影響も受ける |
特に見落とされやすいのが、最後の電力量単価です。
電気料金には基本料金のほかに燃料費調整額と再生可能エネルギー発電促進賦課金が上乗せされるため、検針票の「請求額 ÷ 使用量(kWh)」で実効単価を出したほうが、31円で計算するより実態に合います。
また、寒冷地では暖房期間そのものが長く、外気温が低いほど暖房効率も落ちるため、目安との差が大きく出ます。
この点は寒冷地エアコンの電気代は高い?節約方法と賢い選び方を徹底解説で地域条件を踏まえて解説しています。
買い替えを検討するときは「期間消費電力量の差×使用年数」で見る
古いエアコンを使い続けるか買い替えるかを判断する場面でも、期間消費電力量は有効な物差しになります。
判断の手順は次のとおりです。
- 現在使っている機種の期間消費電力量を、取扱説明書または型番検索で調べる
- 候補となる新機種の期間消費電力量を確認する
- 差分(kWh)× 電力量単価 × 想定使用年数を計算する
- その総額と、本体価格+工事費の差額を比べる
資源エネルギー庁は、省エネ基準の引き上げによる家計への効果として、6畳用エアコン(2.2kW機)でAPFが2010年度基準の5.8から2027年度基準の6.6に向上した場合、年間の光熱費が約2,760円安くなると試算しています(2023〜2025年の電力料金平均31.75円/kWhが前提)。
14畳向け(4.0kW機)では年間約12,600円という試算も示されています。
能力の大きい機種ほど省エネ性能の差が金額に効くという点は、買い替え判断の実務でも押さえておきたいところです。
6畳用で年間2,760円なら10年で約27,600円、14畳向けで年間12,600円なら10年で約126,000円の差になります。
本体価格の差が数万円であれば、大きい機種ほど買い替えが合理的になりやすいという結論が導けます。
計算結果を踏まえて電気代を下げる
計算方法が分かったら、次はどこを動かせば数字が下がるのかです。
資源エネルギー庁は、機器ごとの省エネ行動の効果を数値で公表しています。
| 行動 | 条件 | 年間の省エネ効果 |
|---|---|---|
| 冷房の設定温度を27℃から1℃上げる | 外気温31℃・2.2kW機・9時間/日 | 電気30.24kWh |
| 暖房の設定温度を21℃から20℃にする | 外気温6℃・2.2kW機・9時間/日 | 電気53.08kWh |
| 目詰まりしたフィルターを清掃する | 2.2kW機 | 電気31.95kWh |
31円/kWhで換算すると、暖房を1℃下げるだけで年間約1,645円、フィルター清掃で約990円の差になります。
注目すべきは、暖房側の設定温度を1℃動かす効果が冷房側の1.7倍以上ある点です。
夏の節電ばかりが話題になりますが、金額インパクトは冬のほうが大きいのが実情です。
フィルター清掃は2週間に1回が目安とされています。
効果が年間約1,000円分と考えると、手間に対する見返りは十分にあると言えるでしょう。
設定温度以外にも、消費電力量を左右する要素はいくつかあります。
効果が出やすい順に整理すると次のようになります。
| 対策 | 効きやすさ | 補足 |
|---|---|---|
| 室外機の吸込・吹出をふさがない | 高 | 前方に物を置くと熱交換ができず、圧縮機の負荷が上がる |
| 窓からの熱の出入りを抑える | 高 | 夏は外側の遮光、冬は厚手カーテンや断熱シートが有効 |
| フィルターを定期清掃する | 中 | 2週間に1回が目安 |
| 空気を循環させて温度ムラを消す | 中 | 設定温度を無理に下げなくても体感が整いやすい |
| 短時間のオンオフを繰り返さない | 中 | 立ち上がりの高出力運転が増えるため |
このうち、空気の循環はサーキュレーターを1台足すだけで改善することが多い部分です。
冷たい空気は下に、暖かい空気は上にたまるため、天井付近と床付近で数℃の差が生まれます。
攪拌して差を減らせば、設定温度を極端に上下させなくても快適さを保ちやすくなります。
室外機まわりの環境も見落とされがちです。
直射日光が当たり続ける設置場所では熱交換の効率が落ちるため、吹出口をふさがない位置に日よけを設けるだけでも負荷が変わります。
計算値と請求額が大きく離れているときの見分け方
計算した目安と実際の電気代を比べたとき、乖離の大きさで疑うべきポイントが変わります。
おおまかな判断の線引きは次のとおりです。
| 計算値との差 | 考えられる主因 | まず確認すること |
|---|---|---|
| ±3割以内 | 使用時間・気候・断熱の違い | 補正の範囲内。異常ではない |
| 1.5倍前後 | 能力不足、断熱の弱さ、設定温度の攻めすぎ | 畳数と能力の対応、窓まわり、設定温度 |
| 2倍以上 | フィルター・熱交換器の汚れ、室外機の環境、経年劣化 | 清掃状況、室外機まわりの障害物、使用年数 |
| 冷え方・暖まり方も悪化 | 冷媒不足、圧縮機やファンの不具合 | 症状を控えてメーカー窓口へ相談 |
特に、焦げくささや異音を伴う場合は運転を止めて電源プラグを抜き、自分で分解せずメーカーまたは購入店に連絡してください。
内部の電装部品や冷媒回路に関わる作業は、資格と専用工具が必要な領域です。
一方、10年以上使っている機種で計算値との差が大きい場合は、故障ではなく単純な経年による効率低下であることも少なくありません。
修理で対応するか買い替えるかは、修理見積もりと、前述した期間消費電力量の差額を合わせて比較すると判断しやすくなります。
よくある質問
Q1. カタログに期間消費電力量が載っていない古い機種は、どう計算すればよいですか。
2006年以前の機種や一部の業務用機種では、期間消費電力量が表示されていないことがあります。
その場合は型番でメーカーの製品情報ページを検索すると、旧機種の仕様表が公開されているケースがあります。
それでも見つからない場合は、同じ冷房能力(kW)・同じ年代の機種の期間消費電力量を参考値として当てはめ、おおよその水準をつかむ方法が現実的です。
ただし10年以上前の機種は現行機より効率が低いため、参考値より2〜3割多めに見積もっておくと実態から外れにくくなります。
Q2. 「つけっぱなし」と「こまめに消す」では、どちらが安くなりますか。
外出時間の長さによって答えが変わります。
エアコンは室温を設定温度まで下げる(上げる)立ち上がりの段階で最も電力を使うため、30分程度の外出であればつけたままのほうが有利になることが多いです。
一方、数時間以上家を空けるのであれば、消したほうが電力量は少なくなります。
おおまかな分岐点として、1時間前後を目安に判断するとよいでしょう。
ただし断熱性能や外気温によって変わるため、絶対的な基準ではありません。
Q3. 電力量単価は31円/kWhで計算して問題ありませんか。
概算であれば問題ありません。
ただし実際の単価は契約している小売電気事業者やプラン、使用量の段階によって変わり、燃料費調整額や再生可能エネルギー発電促進賦課金も上乗せされます。
より正確に出したい場合は、検針票やマイページに記載された請求額を使用量(kWh)で割り、自宅の実効単価を求めてください。
この実効単価を使えば、計算結果と請求額のずれをかなり小さくできます。
Q4. APFが高い機種を選べば、必ず電気代は安くなりますか。
同じ能力クラスの機種同士で比べる限り、APFが高いほうが年間の消費電力量は少なくなります。
ただし部屋の広さに対して能力が不足している機種を選ぶと、常に高出力で運転し続けることになり、APFが高くても実際の電気代は下がりません。
まず部屋の条件に合った能力クラスを決め、そのうえで同クラス内でAPFや期間消費電力量を比較する、という順番が大切です。
Q5. 電気代が急に上がったのですが、エアコンの故障を疑うべきでしょうか。
まずは電力量単価の改定や、猛暑・厳冬による使用時間の増加といった外的要因を確認してください。
それらで説明がつかず、以前より冷えにくい・暖まりにくいという体感の変化を伴う場合は、機器側の要因が考えられます。
フィルターや熱交換器の汚れ、室外機まわりの障害物、冷媒不足などが代表的です。
清掃と設置環境の見直しで改善しない場合は、購入店またはメーカーのサービス窓口に相談してください。
まとめ
エアコンの電気代を計算するときは、カタログの定格消費電力ではなく期間消費電力量を使う。
この一点を押さえるだけで、見積もりの精度は大きく変わります。
- 年間電気代=期間消費電力量(kWh)× 電力量単価(円/kWh)で概算する
- 定格消費電力は試験条件下の値であり、年間の実使用を表していない
- 期間消費電力量はJIS C 9612により「東京・木造・1日18時間」という条件で算出されている
- 自宅の使い方が前提と違えば、その分だけ上下にずれると理解しておく
- 単価は31円/kWhを目安に、より正確に出したいときは検針票から実効単価を求める
- 買い替え判断は、期間消費電力量の差×単価×使用年数と、本体価格差を比べる
数字の意味が分かれば、店頭で並んだ機種のどれが自分にとって安いのかを、自分で判断できるようになります。
まずはお使いのエアコンの仕様表を開き、期間消費電力量の欄を確認するところから始めてみてください。

