「石油ストーブとエアコンは、どちらが安いのか」。
この疑問に、一言で答えるのは難しいのが実際のところです。
灯油の価格、電気の契約単価、外気温、エアコンの性能で、結論が入れ替わるからです。
そこでこの記事では、「同じ熱量を1時間出したら、いくらかかるか」を、前提を明示して計算します。
灯油とエアコンを比べる考え方は、石油ファンヒーターとエアコンの比較記事でも紹介しています。
この記事では、石油ストーブ(対流式・反射式・FF式)側の事情、つまり換気・結露・点火・立ち上がりなどに重点を置いて整理します。
比較の前提
熱量をそろえる
石油ストーブとエアコンは、出力の表し方が違います。
比べやすくするため、ここでは3.0kW相当の熱を1時間出したときの費用で比べます。
3.0kWは、確認できた木造8畳向けの石油ストーブ(トヨトミ RS-G3024 は最大3.01kW)の最大出力に近い値です。
| 前提 | 内容 |
|---|---|
| 熱量 | 3.0kW × 1時間 = 3.0kWh |
| 灯油 | 暖房出力÷燃料消費量 ≒ 10.3(kWh/L)。トヨトミ・コロナの取扱説明書・仕様表の数値から算出 |
| 灯油の単価 | 100円・120円・140円/L(仮の値。実際の価格ではない) |
| 電気の単価 | 31円/kWh(計算用の目安。契約により異なる) |
| エアコンの効率 | COP(消費電力1kWあたりの暖房能力)を2.0〜5.0で例示 |
この計算は、取扱説明書や仕様表の数値から出した簡易的な目安です。実際の部屋で測定した結果ではありません。
石油ストーブの1時間あたりの費用
灯油の使用量は、熱量÷10.3で求めます。
3.0kWhの熱を出すには、3.0÷10.3 ≒ 0.29Lの灯油が必要です。
| 灯油の単価 | 3.0kW相当を1時間出す費用 |
|---|---|
| 100円/L | 約29円 |
| 120円/L | 約35円 |
| 140円/L | 約41円 |
電池点火の対流式・反射式は、電気代がかかりません(電池代はかかります)。
FF式や石油ファンヒーターは、運転中の電気代が1時間あたり1円に満たない機種がありますが、これも灯油代と比べるとわずかです。
詳しくは石油ストーブの電気代を解説した記事をご覧ください。
エアコンの1時間あたりの電気代
エアコンは、電気で熱をつくるのではなく、外の熱を室内へ運ぶ仕組み(ヒートポンプ)のため、消費電力より大きな熱を得られます。
この効率を表すのがCOPで、COPが高いほど、同じ熱量を少ない電力で出せます。
仕組みは、エアコン暖房の仕組みを解説した記事で紹介しています。
| COP | 3.0kWhの熱に必要な電力量 | 1時間の電気代(31円/kWh) |
|---|---|---|
| 2.0 | 1.5kWh | 約47円 |
| 3.0 | 1.0kWh | 約31円 |
| 4.0 | 0.75kWh | 約23円 |
| 5.0 | 0.6kWh | 約19円 |
COPは条件で変わる
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| カタログの値と実際 | カタログのCOPは、決められた条件での値。実際の使い方では、これより低くなることがある |
| 外気温 | 外気温と室温の差が大きいほど、効率は落ちやすい。真冬の早朝は最も落ちやすい時間帯 |
| 霜取り運転 | 室外機に霜が付くと、暖房を一時的に止める。10〜15分ほどかかることがある |
| 立ち上がり | 冷えた部屋を一気に暖めるとき、最も電力を使う |
COPが2.0〜3.0の場合を想定すると、灯油と同程度か、灯油より高くなる場合があります。COPが4.0〜5.0の場合は、エアコンのほうが安くなりやすい計算です。
費用の比較表(3.0kW相当を1時間出した場合)
| 暖房の方法 | 条件 | 1時間の費用 |
|---|---|---|
| 石油ストーブ(灯油 100円/L) | 暖房出力÷消費量 ≒ 10.3 | 約29円 |
| 石油ストーブ(灯油 120円/L) | 同上 | 約35円 |
| 石油ストーブ(灯油 140円/L) | 同上 | 約41円 |
| エアコン COP2.0 | 電気 31円/kWh | 約47円 |
| エアコン COP3.0 | 同上 | 約31円 |
| エアコン COP4.0 | 同上 | 約23円 |
| エアコン COP5.0 | 同上 | 約19円 |
読み方
| 条件 | 有利になりやすい方 |
|---|---|
| 灯油が安い時期、外気温が低い地域、COPが2.0〜3.0に下がる場面 | 石油ストーブ |
| 灯油が高い時期、温暖な地域、高効率のエアコン、長時間つけっぱなし | エアコン |
| 電気の単価が高い契約 | 石油ストーブ寄り |
| 電気の単価が低い契約(夜間料金など) | エアコン寄り |
自宅の条件で比べる場合は、灯油の単価(円/L)÷10.3 = 熱1kWhあたりの灯油代、電気の単価(円/kWh)÷ COP = 熱1kWhあたりのエアコン電気代を求めて、小さい方が安くなります。
結論が入れ替わる条件を計算する
2つの式が等しくなる点(損益分岐)を計算すると、「どの条件で逆転するか」が分かります(当サイト計算。
電気31円/kWhの場合)。
| エアコンのCOP | 灯油がこの単価より高ければエアコンが有利 |
|---|---|
| 2.0 | 約160円/L |
| 3.0 | 約106円/L |
| 4.0 | 約80円/L |
| 5.0 | 約64円/L |
計算式は「灯油の単価 ÷ 10.3 = 電気単価 ÷ COP」を、灯油の単価について解いたものです(COP3.0なら 31 ÷ 3.0 × 10.3 ≒ 106円/L)。
つまり、灯油が1L=120円のとき、COP3.0以上のエアコンなら、エアコンのほうが安い計算になります。
逆に、灯油の単価が決まっているときの、エアコンが有利になるCOPの境目は次のとおりです。
| 灯油の単価 | エアコンが有利になるCOPの目安 |
|---|---|
| 100円/L | 約3.2以上 |
| 120円/L | 約2.7以上 |
| 140円/L | 約2.3以上 |
電気単価が変わると、境目も動きます。
たとえば電気が27円/kWhの契約で、COP3.0のエアコンを使うと、1時間の電気代は約27円(3.0kWh÷3.0×27円)です。
1シーズンの総額で見る
1日8時間・150日(計1,200時間)、3.0kWの熱を出し続けたと仮定して、1シーズンの総額を比べます(当サイト計算。
電気31円/kWh)。
| 暖房の方法 | 1シーズンの総額 |
|---|---|
| 石油ストーブ(100円/L):灯油 約350L | 約35,000円 |
| 石油ストーブ(120円/L) | 約42,000円 |
| 石油ストーブ(140円/L) | 約49,000円 |
| エアコン COP2.0:電力 約1,800kWh | 約55,800円 |
| エアコン COP3.0:電力 約1,200kWh | 約37,200円 |
| エアコン COP4.0:電力 約900kWh | 約27,900円 |
| エアコン COP5.0:電力 約720kWh | 約22,300円 |
※最大出力で連続運転し続ける仮定のため、実際の費用はこれより小さくなります。
換気で逃げる熱は含んでいません。
費用以外で結論が分かれる点
換気
| 項目 | 石油ストーブ(開放式) | エアコン |
|---|---|---|
| 換気 | 使用中は1時間に1〜2回、1〜2分の換気が必要(トヨトミ、コロナの取扱説明書) | 暖房のための換気は不要(別途、室内の換気は必要) |
| 熱の損失 | 換気のたびに暖気が逃げる | 暖房の運転に影響しない |
換気で逃げる熱の分も、暖房費の一部です。この損失は、計算には含めていません。FF式は屋外へ排気する密閉式で、確認したコロナ FF式の取扱説明書には、通常使用時の定期的な換気の記載はありませんでした(機種ごとの取扱説明書で確認してください)。
結露・乾燥
| 項目 | 石油ストーブ | エアコン |
|---|---|---|
| 結露 | 気密性の高い部屋では結露に注意(コロナの取扱説明書) | 運転による水分の発生はない |
| 乾燥 | 加湿の効果は機種・使い方による。やかんを置いてよい機種は限られる | 暖房が水分を奪うわけではない |
立ち上がり・暖まり方
| 項目 | 石油ストーブ | エアコン |
|---|---|---|
| 立ち上がり | 点火後、炎が安定するまで数分(トヨトミ RB-25C は約2分で炎が上がる) | 部屋が冷えているときは、立ち上がりに電力が必要 |
| 暖まり方 | 対流式は部屋全体、反射式は前方 | 温風が天井に集まりやすい。サーキュレーターの併用(エアコンとサーキュレーターの記事)で足元へ |
| 外気温の影響 | 影響を受けにくい | 外気温が低いと、暖房能力が落ちる機種がある |
手間・安全
| 項目 | 石油ストーブ | エアコン |
|---|---|---|
| 給油・手入れ | 給油、芯の手入れ、電池交換 | フィルター掃除 |
| 就寝時 | 必ず消火 | タイマーなどで運転できる(機種による) |
| 停電時 | 電池点火・電池レスの機種は使える | 使えない |
| 一酸化炭素 | 開放式は換気が必要 | なし |
| 賃貸 | 禁止の物件がある | 設置済みの場合が多い |
タイプ別|石油ストーブ側の考え方
| タイプ | エアコンと比べるときのポイント |
|---|---|
| 対流式 | 部屋全体を暖める点はエアコンと同じ。灯油代と換気の損失を見る |
| 反射式 | 人のいる前方を暖める。エアコンのように部屋全体を均一に暖める用途とは異なる |
| 電池レス | 停電時の備えとして強み。費用は他の開放式と同水準 |
| 煙突式 | 機種による。取扱説明書で確認し、販売店・専門業者に相談 |
| FF式 | 屋外へ排気する密閉式。換気の扱いは機種の取扱説明書で確認。据付けは販売店・専門業者 |
| 石油ファンヒーター | 比較は石油ファンヒーターとエアコンの記事を参照 |
併用という選択
どちらか一方に決めなくても、場面に応じて使い分けられます。
| 場面 | 例 |
|---|---|
| 朝の立ち上がり | 石油ストーブで素早く暖め、暖まったらエアコンに切り替える |
| 長時間の在宅 | 効率のよいエアコンを基本に、寒い日だけ石油ストーブを足す |
| 停電への備え | 電池式の石油ストーブを備えておく |
| 寝室 | 就寝時はエアコン(石油ストーブは消火) |
どのタイプでも、開放式は使用中に1時間に1〜2回を目安に窓を開けて換気してください。就寝中や、長時間その場を離れるときは必ず消火し、給油は消火して冷めてから行ってください。ガソリンは絶対に入れないでください。
よくある質問
Q1. 石油ストーブとエアコンでは、結局どちらが安いですか?
条件によって変わります。
同じ熱量(3.0kW)を1時間出す場合、灯油が100〜140円/Lなら約29〜41円、エアコンはCOP3.0で約31円、COP5.0で約19円という計算です。
灯油の単価、電気の単価、エアコンの効率、外気温で入れ替わります。
Q2. 寒冷地では、どちらが有利ですか?
外気温が低い地域では、エアコンの効率が落ちやすい点が不利になります。
寒冷地仕様のエアコンもあるため、外気温が低いときの暖房能力の記載を確認してください。
石油ストーブは外気温の影響を受けにくい一方、換気で熱が逃げます。
Q3. エアコンのCOPは、どこで調べますか?
カタログの暖房能力(kW)と消費電力(kW)から、「能力÷消費電力」で求められます。
実際の使い方では、カタログより低くなることがあります。
Q4. 石油ストーブの換気は、暖房費に含まれますか?
この記事の計算には含めていません。
換気のたびに暖気が逃げるため、実際の暖房費は少し増えます。
FF式は、換気の扱いが機種の取扱説明書で異なります。
Q5. 電気代と灯油代は、どちらが上がりやすいですか?
どちらも、時期や契約で変わります。
灯油の価格の動きは、灯油の価格見通しの記事も参考にしてください。
まとめ
石油ストーブとエアコンの暖房費は、前提によって、どちらが安くなるかが入れ替わります。
最後に、この記事のポイントを整理します。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 比較の物差し | 同じ熱量(3.0kWh)を出す費用で比べる |
| 石油ストーブ | 灯油100〜140円/Lで、1時間約29〜41円 |
| エアコン | COP2.0で約47円、COP3.0で約31円、COP5.0で約19円(31円/kWh) |
| 損益分岐 | 灯油120円/Lなら、COP約2.7以上でエアコンが有利(31円/kWhの場合) |
| 結論が変わる条件 | 灯油価格、電気単価、外気温、エアコンの性能、使用時間 |
| 費用以外 | 換気、結露、立ち上がり、停電時、賃貸の規約 |
| 注意 | 仕様値による簡易計算で、実際の部屋で測った結果ではない |
まずは、お持ちの灯油の単価と電気の単価、エアコンの暖房能力と消費電力を調べて、上の式で熱1kWhあたりの費用を出してみてください。

