灯油の「指定数量は1,000リットル」と聞いても、家庭には関係のない数字のように感じるかもしれません。
けれど、ホームタンクを設置したり、ポリタンクをたくさん買い置きしたりするとき、この数字は意外と身近になります。
指定数量の5分の1にあたる200リットルを超えるあたりから、消防署への届出が必要になる場合があるからです。
しかも、その境目は、住んでいる市町村の条例によって、少しずつ違います。
この記事では、指定数量とは何か、1,000リットルという数字の意味、少量危険物とは何か、届出が必要になる量の目安、複数の危険物を置くときの計算方法、届出の流れまでを、順に整理していきます。
指定数量とは、規制を強める「ものさし」の量
指定数量とは、消防法で、危険物の品名ごとに定められた「ものさし」となる量のことです。
この量以上を貯蔵したり、取り扱ったりするときは、市町村長などの許可が必要になり、危険物取扱者などの有資格者も必要になります。
危険性が高い物ほど、指定数量は小さく、危険性が低い物ほど、大きく定められています。
| 危険物 | 指定数量 | 位置づけ |
|---|---|---|
| ガソリン | 200リットル | 引火点が低く、危険度が高い |
| アルコール類 | 400リットル | 中程度 |
| 灯油・軽油 | 1,000リットル | ガソリンの5倍の量 |
| 重油 | 2,000リットル | 引火点が高く、危険度が低め |
灯油の1,000リットルは、ガソリンの200リットルの5倍です。
それだけ、灯油はガソリンより燃えにくいと、法律の上で位置づけられています。
灯油が第4類・第二石油類にあたることは、灯油は第何類の危険物?で整理しています。
1,000リットルとは、どれくらいの量なのか
ふだん使う量に置き換えて、1,000リットルの大きさを実感してみましょう。
| 単位 | 1,000リットルにあたる量 |
|---|---|
| 18リットルのポリタンク | 約55.6缶 |
| 200リットルのドラム缶 | 5本 |
| 490リットルのホームタンク | 約2基分 |
家庭で、1,000リットルもの灯油を貯蔵することは、まずありません。
そのため、一般の家庭が許可の対象になることは、ほとんどないでしょう。
家庭にとって、現実に関係してくるのは、指定数量未満の「少量危険物」のほうです。
少量危険物とは、指定数量の5分の1以上、指定数量未満
指定数量には届かなくても、一定量以上を貯蔵する場合は、「少量危険物」として、市町村の火災予防条例で規制されます。
基準になるのは、指定数量の5分の1です。
| 危険物 | 指定数量 | 少量危険物の範囲(5分の1以上、指定数量未満) |
|---|---|---|
| ガソリン | 200リットル | 40リットル以上、200リットル未満 |
| 灯油・軽油 | 1,000リットル | 200リットル以上、1,000リットル未満 |
| 重油 | 2,000リットル | 400リットル以上、2,000リットル未満 |
灯油なら、200リットル以上1,000リットル未満が、少量危険物にあたります。
この範囲で貯蔵する場合、消防署への届出が必要になることがあります。
また、標識を掲げる、消火器を置く、タンクを固定するといった、貯蔵や取り扱いの基準も守らなければなりません。
灯油の量ごとの扱いを整理する
量ごとの扱いを、段階に分けて見てみましょう。
ただし、境目は、市町村の条例で違うため、あくまで一般的な目安です。
| 貯蔵する量(灯油) | 指定数量との関係 | 一般的な扱い |
|---|---|---|
| 200リットル未満 | 5分の1未満 | 届出は不要なのが一般的。ただし、条例の基本ルールは守る |
| 200リットル以上、1,000リットル未満 | 5分の1以上 | 少量危険物。届出や基準の対象になる |
| 1,000リットル以上 | 指定数量以上 | 市町村長などの許可が必要。資格者も必要 |
注意したいのは、真ん中の200リットル以上の範囲です。
家庭用のホームタンクのうち、容量が大きいものは、200リットルを超えます。
そのため、設置の前に、自分の市町村での扱いを確かめることが、とても大切です。
一般の住宅では、基準が緩くなる市町村もある
実は、同じ200リットル以上でも、住んでいる建物によって、扱いが変わる市町村があります。
たとえば、個人の住居については、規制の下限を、指定数量の2分の1とする市町村があります。
| 場面 | 灯油の貯蔵量 | 扱いの例 |
|---|---|---|
| 事業所や店舗など | 200リットル以上 | 届出の対象 |
| 個人の住居(下限を2分の1とする市町村の例) | 500リットル以上 | 届出の対象 |
| 共同住宅で灯油90リットルを貯蔵する例 | 90リットル | 届出は不要 |
この例では、個人の住居の場合、灯油が500リットル以上1,000リットル未満のときに、届出が必要になります。
また、届出が不要な範囲でも、200リットル以上になると、空地の確保や、建築設備の制限が必要とされる市もあります。
つまり、自治体によって、境目も、守るべき中身も違うわけです。
自分の住む地域の扱いは、消防署に確認するのが確実でしょう。
「貯蔵」と「取り扱い」は、別の言葉
指定数量の話では、「貯蔵」と「取り扱い」という、2つの言葉が出てきます。
似ていますが、意味は異なります。
| 言葉 | 意味 | 家庭での例 |
|---|---|---|
| 貯蔵 | 容器やタンクに入れて、保管しておくこと | ホームタンクやポリタンクに、灯油を入れて置く |
| 取り扱い | 消費したり、移し替えたりすること | ストーブに給油する、缶からタンクへ移す |
家庭で、暖房のために、灯油を使うこと自体は、日常の取り扱いです。
一度に取り扱う量は、ふつう、給油タンクの容量(数リットル)ですから、基準にはまったく届きません。
実際に基準が関わってくるのは、貯蔵する量のほうです。
とくに、シーズン前にまとめて買い置きをするときや、大型のホームタンクを置くときに、意識しておきたい点でしょう。
ポリタンクの数で考えてみる
ホームタンクだけでなく、ポリタンクの買い置きも、量が増えれば、基準に近づきます。
18リットルのポリタンクを基準に、数と倍数を計算しました。
| ポリタンクの数 | 量 | 指定数量に対する倍数 |
|---|---|---|
| 5缶 | 90リットル | 0.09 |
| 10缶 | 180リットル | 0.18 |
| 11缶 | 198リットル | 0.198 |
| 12缶 | 216リットル | 0.216 |
| 20缶 | 360リットル | 0.36 |
倍数が0.2以上になると、少量危険物の範囲に入ります。
18リットルのポリタンクで、11缶(198リットル)までは、200リットル未満です。
12缶以上になると、200リットルを超えます。
通常の家庭で、そこまで買い置きする機会は少ないものの、複数の缶と、ホームタンクを合わせた量でも、判断されることに注意してください。
複数の危険物を置くなら「倍数の合計」で判断する
灯油だけでなく、ガソリンも一緒に保管している場合は、それぞれの量を足して判断します。
計算は、危険物ごとに、量を指定数量で割った「倍数」を出して、合計する方法です。
| 危険物 | 量 | 指定数量 | 倍数 |
|---|---|---|---|
| 灯油 | 100リットル | 1,000リットル | 0.1 |
| ガソリン | 20リットル | 200リットル | 0.1 |
| 合計 | 0.2 |
この例では、灯油が100リットル、ガソリンが20リットルで、合計は0.2です。
どちらも、単独では5分の1に満たないのに、合計すると、少量危険物の基準に届いてしまいます。
草刈り機や発電機のガソリンと、灯油を、同じ物置に置いている家庭は、とくに注意が必要でしょう。
5分の1未満なら、何もしなくてよいのか
200リットル未満なら、届出の必要はない、というのが一般的です。
ただし、だからといって、何をしてもよいわけではありません。
市町村の条例によっては、指定数量の5分の1未満でも、守るべき基本的なルールを定めています。
| 基本のルール | 内容 |
|---|---|
| 火気を使わない | 貯蔵や取り扱いの場所では、火を使わない |
| 適した容器を使う | 灯油に適した、破損のない容器に入れる |
| 転倒・転落を防ぐ | 容器や棚が倒れないようにする |
| 漏れや飛散を防ぐ | こぼれたり、あふれたりしないようにする |
| 整理整頓 | 周囲を片づけ、不要な物を置かない |
量が少ないから大丈夫、と考えず、基本を守ることが大切です。
灯油の保管の詳しい方法は、灯油の保管方法でも解説しています。
指定数量以上を扱う場合は、どうなるのか
参考までに、1,000リットル以上、つまり指定数量以上を扱う場合の扱いも、見ておきましょう。
一般の家庭には、ほとんど関係がありませんが、店舗や事業所では、現実の話です。
| 項目 | 少量危険物(200〜1,000リットル) | 指定数量以上(1,000リットル以上) |
|---|---|---|
| 手続き | 消防署への届出 | 市町村長などの許可 |
| 資格 | 原則、不要 | 危険物取扱者などが必要 |
| 施設の基準 | 条例で定められた基準 | 消防法に基づく、厳しい基準 |
| 検査 | 場合により、あり | 許可前と、使い始める前に検査 |
指定数量以上になると、貯蔵する施設そのものに、きびしい技術上の基準がかかります。
ガソリンスタンドや、灯油の販売店が、専用の設備を備えているのは、このためです。
家庭でも、これに近い量を扱う予定がある場合は、必ず、事前に消防署へ相談してください。
届出が必要なときの流れ
少量危険物の届出が必要になったとき、おおまかな流れは、次のとおりです。
- 管轄の消防署に、事前に相談する。設置の予定や、タンクの容量を伝える。
- 「少量危険物貯蔵取扱い届出書」などの書類を、受け取り、記入する。
- 設置場所の図面などを添えて、消防署に提出する。多くの自治体で、設置の10日前までなど、事前の届出が求められる。
- 設置後、必要に応じて、消防署の検査を受ける。
- タンクの容量を変えたり、撤去したりするときも、変更や廃止の届出を出す。
届出の手続きに、手数料がかからない自治体も多いようです。
届出をしないまま、貯蔵や取り扱いを始めると、条例違反になり、罰則の対象となることがあります。
ホームタンクを、販売店に設置してもらう場合は、届出の手続きを、代わりに案内してくれることもあります。
まずは、販売店か消防署に、相談してみてください。
ホームタンクの容量との関係
ホームタンクを検討するとき、容量の選び方と、指定数量の関係が気になるでしょう。
| ホームタンクの容量 | 指定数量との関係 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 90リットル程度の小型 | 5分の1未満 | 一般に、届出は不要 |
| 200リットル程度 | ちょうど5分の1 | 自治体によって、届出が必要。事前に確認 |
| 490リットル程度の大型 | 5分の1以上、2分の1未満 | 自治体によって、届出や基準の対象になる |
大型のタンクほど、基準の対象になる可能性が高まります。
タンクの容量で判断されるのか、実際に入れる量で判断されるのかも、扱いが分かれることがあります。
そのため、設置を決める前に、消防署への確認が、いちばん確実です。
ホームタンクの容量の選び方は、灯油タンクの容量にも整理しています。
よくある質問
Q1. 灯油の指定数量は、何リットルですか?
1,000リットルです。
この量以上を貯蔵するときは、市町村長などの許可が必要になります。
Q2. 少量危険物とは、何ですか?
指定数量の5分の1以上、指定数量未満の危険物のことです。
灯油なら、200リットル以上1,000リットル未満が目安です。
Q3. 家庭で灯油を何リットルまで置けますか?
200リットル未満なら、届出は不要なのが一般的です。
ただし、個人の住居の基準を緩める市町村もあれば、200リットルから基準をかける市町村もあります。
お住まいの消防署に、確認してください。
Q4. ガソリンも一緒に置く場合は、どう計算しますか?
それぞれの量を指定数量で割った「倍数」を出し、合計します。
合計が0.2以上になると、少量危険物の基準に入ります。
Q5. 届出はどこに出しますか?
管轄の消防署です。
設置の前に、相談したうえで、届出書を提出します。
まとめ
灯油の指定数量と少量危険物の要点を、最後に整理します。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 指定数量 | 灯油は1,000リットル。ガソリンの5倍 |
| 少量危険物 | 指定数量の5分の1以上、指定数量未満。灯油は200〜1,000リットル |
| 家庭の目安 | 200リットル未満なら、届出は不要なのが一般的 |
| 自治体の違い | 個人の住居の下限を、2分の1にする市町村もある |
| 複数の危険物 | 倍数を足して、0.2以上になったら少量危険物 |
| 迷ったら | 設置の前に、管轄の消防署に確認する |
まずは、お住まいの市町村の消防署に電話して、「ホームタンクを置く場合の、灯油の届出の基準」を聞いてみませんか。

