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灯油に火は付く?ライターで燃えにくい理由と炎が上がる仕組み

灯油に火は付くのか、ライターで燃えにくい理由と炎が上がる仕組みを解説するサムネイル。灯油用ポリタンクと液体のイラスト。
Yuta
記事監修者
現:ガス会社に勤める兼業WEBライター。所持資格はガス開栓作業に必要な高圧ガス販売主任者二種、ガス工事に必要な液化石油ガス設備士、灯油の取り扱いに必要な危険物乙四種、その他ガス関連資格多数と電気工事士などの資格も多数所持。

灯油に、ライターの火を近づけたら、燃えるのでしょうか。
「灯油は、ガソリンと違って、簡単には火がつかないらしい」と、聞いたことのある方も多いでしょう。

たしかに、常温の灯油に、ライターの火を近づけただけでは、すぐには燃え出しません。
ところが、その同じ灯油が、条件が変わると、勢いよく燃えることがあります。
灯油の事故の多くは、「火がつきにくいから大丈夫」という思い込みから、起きているといえるでしょう。

この記事では、灯油が燃えにくい理由と、燃える仕組みを整理したうえで、火がつきやすくなる場面、ストーブの炎が上がる仕組み、そして日ごろ気をつけたいことを、順に説明していきます。
なお、ここで紹介する内容は、安全に使うための知識です。実際に火を近づけて確かめるようなことは、絶対にしないでください。

目次

全体像:常温の液体は燃えにくい。ただし条件しだいで燃える

まず、全体像を整理しておきましょう。

場面火のつきやすさ理由
常温の灯油(液体のまま)つきにくい燃える濃度の蒸気が、ほとんど出ていない
布・紙・ぼろにしみこんだ灯油つきやすい表面積が広がり、蒸気が出やすくなる
霧状(ミスト)の灯油非常につきやすい細かい粒が、空気とよく混ざる
温度が高くなった灯油つきやすい蒸気の量が増える
ガソリンが混ざった灯油きわめてつきやすい引火点が大きく下がる
ストーブの芯の先意図して燃える芯で吸い上げ、気化して燃える

「液体のままなら、つきにくい」という性質は、条件が変わると、あっさりと崩れます。
次の章から、その理由を、順番に見ていきましょう。

燃えているのは、液体ではなく「蒸気」

物が燃えるとき、実際に燃えているのは、液体そのものではありません。
液体の表面から出た、気体(蒸気)が、空気中の酸素と混ざって燃えているのです。
灯油も同じです。

燃えるためには、次の条件がそろう必要があります。

条件内容
燃えるもの灯油の蒸気
酸素空気中の酸素
熱源火やスパークなど、着火するエネルギー
蒸気の濃度空気と混ざった蒸気が、燃える範囲の濃さであること

とくに大事なのは、4つ目の「蒸気の濃度」です。
蒸気が薄すぎても、濃すぎても、火はつきません。
灯油の蒸気が、空気中で燃えることのできる濃さは、およそ0.7%から5%とされています。
この範囲を、燃焼範囲(爆発範囲)と呼びます。

📎 出典:労働安全衛生総合研究所 特別研究報告 JNIOSH-SRR-No.53(灯油ミストの静電気着火)

なぜ、ライターの火では燃えにくいのか

常温の灯油は、蒸発しにくい液体です。
家庭用の白灯油は、引火点が40℃以上と定められています。
引火点とは、液体の表面に、火が近づくと燃え出す蒸気が出る、いちばん低い温度のことです。

項目ガソリン灯油
引火点−40℃以下40℃以上
冬の屋外(0℃前後)燃える蒸気が出ている燃える蒸気は、ほとんど出ない
夏の屋外(30℃前後)燃える蒸気が出ているまだ、燃える蒸気は少ない

灯油は、気温が20℃や30℃のときには、燃える濃度の蒸気を、ほとんど出していません。
そのため、ライターの火を近づけても、燃え移る蒸気がなく、火がつきにくいのです。
ある研究では、灯油の蒸気は、30℃や50℃では、火花を当てても着火せず、80℃になって、はじめて着火したと報告されています。
つまり、温度が低いほど、火がつきにくいという性質が、はっきり見て取れます。

ただし、これは「液体のままで、温度が低いとき」の話にすぎません。
次の章で見るように、条件が変わると、この安全は、簡単に失われます。

引火点については、別の記事で詳しく

引火点と発火点の違いや、数値の意味については、灯油の引火点と発火点で詳しく解説しています。
この記事では、「火がつくかどうか」という、日常の疑問に焦点を当てて、話を進めます。

それでも燃える場面1:布や紙にしみこんだとき

灯油が、燃えやすくなる代表的な場面が、布や紙にしみこんだときです。
液体のまま、床に溜まっているよりも、危険が高まります。

状態燃えやすさが増す理由
灯油をこぼして拭いた雑巾繊維の間に広がり、空気に触れる面が増える
新聞紙やぼろに吸わせた灯油表面積が大きくなり、蒸気が出やすくなる
衣類についた灯油繊維が芯のように働き、火が長くとどまる

ストーブの芯も、原理は同じです。
繊維に灯油を吸わせると、表面積が広がり、そこから蒸気が出やすくなります。
その結果、液体だけのときよりも、火がつきやすくなるのです。
こぼした灯油を拭いた布は、火気の近くに置かず、適切に処理してください。

それでも燃える場面2:霧状になったとき

もうひとつ、見落とされがちなのが、霧状(ミスト)になった灯油です。
液体は、細かい粒になると、空気に触れる面積が桁違いに大きくなります。
その結果、蒸気を出すのを待たなくても、空気とよく混ざって、燃えやすい状態になります。

労働安全衛生総合研究所の実験では、直径が約5マイクロメートルの灯油のミストは、1ミリジュール以下の、ごく小さな静電気の火花でも、着火することが確認されています。
引火点が高いからといって、霧状になった灯油は、安全とはいえないのです。

霧状になる場面注意点
高い圧力で噴き出す配管の破損や、ホースの接続不良による噴出に注意
スプレーのように吹き付ける灯油をスプレー容器に入れて使うのは避ける
高温の機器に、灯油がかかる高温の表面に触れると、一気に蒸発して燃えやすくなる

灯油を扱うときは、配管やホースの劣化に注意し、噴き出したり、飛び散ったりしないようにしましょう。

それでも燃える場面3:温度が高くなったとき

灯油は、温度が上がるほど、蒸気を多く出します。
引火点の40℃を超えると、火が近づいただけで、燃える蒸気が出はじめます。

場面温度が上がる理由
夏の車内閉め切った車内は、高温になる
日なたに置いた容器直射日光で、容器と中身が温まる
ストーブやヒーターの近く輻射熱で、容器や床の灯油が温まる
加熱された機器にこぼれた高温の表面で、急に蒸気が出る

夏の車内に、灯油の缶を置きっぱなしにすることは、避けてください。
温度が上がった灯油は、冬の寒い日とは、まるで別の物のように、燃えやすくなります。

それでも燃える場面4:ガソリンが混ざったとき

灯油に、わずかでもガソリンが混ざると、引火点が一気に下がります。
ガソリンは、マイナス40℃以下でも、燃える蒸気を出す物質です。
灯油に混ざると、全体が、ガソリンに近い性質を持ち始めます。

場面起こりうること
灯油の缶に、ガソリンを入れてしまった引火点が下がり、常温でも引火する
ガソリン用の缶を、灯油に流用した缶に残ったガソリン分が混ざる
同じポンプを、ガソリンと灯油で使い回した残ったガソリンが、灯油に混ざる

見た目は、ほとんど変わらないため、混ざったことに気づきにくい点が、危険です。
においが違う、色が少しオレンジがかる、といった違和感を感じたら、ストーブには入れないでください。

ストーブの炎が上がる仕組み

ここまでは、「燃えにくい灯油が燃えてしまう」場面を見てきました。
次は、反対に、「安全に燃やす」仕組みを見てみましょう。
石油ストーブの炎は、次のような流れで、つくられています。

順番仕組み
1タンクの灯油が、芯の下端に届く
2芯の細かい繊維のすき間を、灯油が毛細管現象で、上へ吸い上げられる
3点火すると、芯の先端が温まり、灯油が蒸気に変わる
4蒸気が、空気中の酸素と混ざって燃え、炎が安定する
5炎の熱で、芯の先からも蒸発が続き、燃焼がつづく

芯を使うのは、液体の灯油を、安全に、少しずつ蒸気に変えるためです。
液体のままでは火がつきにくい灯油を、芯の先端で、効率よく気化させているわけです。
消火するときは、芯を下げて、蒸気の供給を止めます。

なお、石油ファンヒーターには、芯はなく、灯油を熱して気化させる方式(気化式)が使われています。
方式は違っても、「蒸気になって燃える」という点は、同じです。

変質した灯油は、炎のトラブルを招く

灯油が古くなって変質すると、ストーブの炎にも、不具合が出ます。
製品評価技術基盤機構(NITE)の資料でも、変質した灯油が、芯の先にタール状の残りかすをつくり、芯が下がらなくなったり、消火の位置に戻らなくなったりして、炎が消えない事故につながった例が紹介されています。

📎 出典:製品評価技術基盤機構(NITE)の灯油ストーブ事故に関する資料

灯油は、買ったシーズンのうちに使い切るのが基本です。
前のシーズンの灯油は、使わないようにしましょう。

灯油を「焚きつけ」に使ってはいけない

キャンプや庭の焚き火で、「火をつけやすくするために、灯油をかける」という話を聞くことがあります。
けれど、これは、非常に危険な行為です。

行為危険な理由
燃えている火に、灯油をかける炎が急に大きくなる。容器に燃え移ることもある
炭や薪に、灯油をしみこませて、点火する蒸気がたまり、一気に炎が広がる
落ち葉やごみを、灯油をかけて燃やす火の制御が効かなくなる。法令違反にもなりうる

しみこんだ灯油は、時間をおいて、蒸気を出し続けます。
点火した瞬間に、予想外の勢いで炎が上がることがあるのです。
灯油は、燃料であって、着火剤ではありません。
火をおこすときは、専用の着火剤を使ってください。

灯油を扱うときの、火災予防の基本

灯油の事故を防ぐため、日ごろから、次の点を守りましょう。

場面守ること
給油するときストーブの火を消し、十分に冷めてから給油する
保管するとき火気や直射日光から離れた、風通しのよい場所に置く
運ぶときフタを確実に閉め、倒れないようにする
こぼしたときすぐに拭き取り、換気する。拭いた布は火気から離す
静電気給油の前に、金属に触れて、体の静電気を逃がす
古い灯油前のシーズンのものは、使わない

とくに、給油のときの、火の確認は大切です。
ストーブの火が、消えたように見えても、芯や燃焼筒が熱いことがあります。
火を消したあと、しばらく待ってから、給油してください。

こぼしたときの詳しい対処は、灯油をこぼしたときの対処法でも紹介しています。

万一、火がついてしまったら

灯油に火がついてしまったときは、落ち着いて、次のように動きます。

状況行動
小さな火粉末や泡の消火器を使う。または、ぬらした厚手の布で空気を断つ
火が大きい無理に消そうとせず、すぐ避難して、119番に通報する
衣類に火がついた地面に倒れて転がり、火を消す

灯油の火災に、水をかけてはいけません。
灯油は水に浮くため、燃えたまま水の上に広がり、火が拡大するおそれがあります。
灯油の分類や、火災時の考え方は、灯油は第何類の危険物?でも整理しています。

よくある質問

Q1. 灯油に、ライターで火はつきますか?

常温の液体の灯油には、すぐには火がつきにくいです。
ただし、布にしみこんだ状態や、霧状、高温、ガソリンの混入といった条件では、燃えやすくなります。
火を近づけて確かめることは、絶対にやめてください。

Q2. 灯油は、なぜ火がつきにくいのですか?

燃えているのは液体ではなく、蒸気だからです。
灯油は引火点が40℃以上で、常温では、燃える濃度の蒸気が、ほとんど出ていません。

Q3. ストーブでは、どうやって燃えているのですか?

芯が、毛細管現象で灯油を吸い上げ、先端で気化させて燃やしています。
消火のときは、芯を下げて、蒸気の供給を止めます。

Q4. 灯油を焚き火の着火剤に使ってもよいですか?

使ってはいけません。
しみこんだ灯油が、予想外の勢いで燃え上がり、やけどや火災の原因になります。

Q5. 灯油の火災に、水をかけてもよいですか?

かけてはいけません。
灯油は水に浮き、燃えたまま広がるおそれがあります。
粉末や泡の消火器を使い、火が大きいときは避難して119番へ通報してください。

まとめ

灯油の「火のつきやすさ」について、要点を最後に整理します。

ポイント内容
燃えるもの液体ではなく、蒸気
常温の灯油引火点が40℃以上のため、火がつきにくい
燃えやすくなる場面布へのしみこみ、霧状、高温、ガソリンの混入
ストーブの炎芯で吸い上げ、先端で気化させて燃やす
やってはいけないこと焚きつけに使う、火を近づけて確かめる
万一の火災水はかけない。粉末・泡の消火器、大きい火は避難して119番

まずは、灯油を保管している場所の近くに、火気やガソリン、燃えやすい物が置かれていないかを、確かめてみませんか。

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この記事を書いた人

「暮らしの設備ガイド」は、給湯器・ストーブ・換気設備など、
家庭の安心と快適を支える“住まいの設備”に関する専門メディアです。

現在もガス業界で設備施工・保守に携わるYuta(ガス関連資格保有者)が監修し、一般家庭向けのガス機器・暖房設備・給湯器交換の実務経験をもとに、現場の知識に基づいた、正確で実用的な情報を発信しています。

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