給油中に灯油が跳ねて、目に入ってしまった。
そのとき、最初の数分間の動きが、そのあとの経過を左右します。
この記事では、灯油が目に入ったときの洗い流し方、やってはいけないこと、受診の目安、病院で伝えることを順番に整理します。
灯油を飲み込んだ場合は、別記事の灯油を飲んだ時の応急処置をご覧ください。
最初の1分でやること
灯油が目に入ったら、迷わず「水で洗う」ことから始めます。
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 目をこすらない |
| 2 | すぐに、水道の流水で洗い始める |
| 3 | 洗いながら、まぶたを指で開く |
| 4 | コンタクトレンズが容易に外せるなら、外す |
| 5 | 洗浄を続ける(最低15分) |
| 6 | 洗い終えたら、医師の手当てを受ける |
最も大切なのは、洗い始めるまでの早さです。洗眼薬を探したり、誰かを呼んだりして、時間を使わないでください。
水道水で、すぐ始めることが優先です。
洗い流し方の手順
石油会社が公開している灯油の安全データシート(SDS)には、眼に入った場合として、清浄な水で数分間注意深く洗い、コンタクトレンズを外せるなら外し、最低15分間洗浄した後に医師の手当てを受ける、という趣旨の記載があります。
これをもとに、家庭でやりやすい形に直すと、次のようになります。
| 項目 | 方法 |
|---|---|
| 水 | 水道水を、弱めの流水にして使う |
| 姿勢 | 洗う側の目を下にして、顔を横に傾ける |
| 水の当て方 | 目頭側から目尻側へ流れるように当てる |
| まぶた | 指で上下に開き、目の表面全体に水が当たるようにする |
| 水圧 | 強すぎると痛いため、やさしい流れにする |
| 時間 | 最低15分。時計やタイマーで測る |
水道の蛇口の位置が使いにくいときは、洗面器にぬるめの水をため、顔をつけてまばたきを繰り返す方法もあります。
その際は、水を替えながら続けてください。
お風呂場なら、シャワーを弱くして、額のあたりから流す方法も使えます。
両目に入ったとき、一人しかいないとき
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 片方の目だけに入った | 入った側を下にして洗い、もう一方に流れ込まないようにする |
| 両目に入った | 両目を同時に流水へ当てる。シャワーが使いやすい |
| 周りに人がいる | 洗い続ける間に、受診先の確認や連絡を頼む |
| 一人しかいない | 洗浄を優先し、洗い終えてから電話をかける |
| 痛くて目が開かない | 水で洗いながら、指で少しずつ開く |
灯油を浴びたのが、目だけではないことも少なくありません。
顔や服についたときは、洗浄が一段落したあと、汚れた衣類を脱ぎ、皮膚を多めの水と石けんで洗います。
やってはいけないこと
| NG | 理由 |
|---|---|
| 目をこする | 角膜(黒目の表面)を傷つけるおそれがある |
| 目薬でごまかす | 市販の目薬では、洗い流す量が足りない |
| 自己判断で洗浄を早く切り上げる | 15分は最低ラインと考える |
| 灯油で汚れた手で、目に触れる | 指に付いた灯油が、さらに目に入る |
| 無理にコンタクトを外そうとして、目を傷つける | 外せるときだけ外す |
| 痛みが引いたからと、そのままにする | 痛みが消えても、傷が残る場合がある |
コンタクトレンズは、容易に外せる場合だけ外します。
外しにくいときは、無理をせず洗浄を続け、医療機関で外してもらってください。
灯油の安全データシート(SDS)には、何と書かれているか
石油販売会社などが公開しているSDSは、灯油の危険有害性を整理した資料です。
灯油のSDSの一例では、眼への影響と周辺の項目が、次のように整理されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 眼に対する刺激性 | 試験で刺激性が認められなかったとして、区分に該当しないとされている例がある |
| 皮膚への刺激性 | 人で、皮膚への接触により刺激性が認められた |
| 誤えん(飲み込んで気道に入る) | 生命に危険のおそれがあり、区分1とされている |
| 眼に入った場合の応急措置 | 数分間洗い、コンタクトを外し、最低15分洗浄して、医師の手当てを受ける |
SDSの書き方は、会社や製品によって異なります。
また、「眼への刺激が区分に該当しない」ことは、洗わなくてよいという意味ではありません。
実際には、異物感や充血、痛みが出ることがあります。
SDSの応急措置は、洗浄の後に医師の手当てを受ける、という流れです。
洗ったあと、受診するか迷ったとき
最低15分洗ったあとは、医師の手当てを受けるのが、SDSに沿った流れです。
そのうえで、次の症状があるときは、特に急いで受診します。
| 症状 | 受診の目安 |
|---|---|
| 強い痛みが続く | すぐ眼科へ |
| 目が開けられない | すぐ眼科へ |
| ものがかすんで見える | すぐ眼科へ |
| 光がまぶしくて、目を開けていられない | すぐ眼科へ |
| 充血や涙が止まらない | 当日中に受診 |
| ごろごろした異物感が残る | 当日中に受診 |
| 症状が軽くなった | 念のため、受診して確認する |
受診先は、眼科が基本です。
夜間や休日で眼科が開いていないときは、救急に対応している医療機関を探します。
お住まいの地域で救急安心センター(#7119)などの電話相談が使える場合は、受診先の相談に使えます。
命に関わるような症状(呼吸が苦しい、意識がもうろうとする)があるときは、ためらわず119番へ連絡してください。
受診するときに伝えること
| 伝えること | 内容 |
|---|---|
| 何が入ったか | 灯油(白灯油)。ガソリンや軽油が混ざっていないか、分かる範囲で |
| いつ入ったか | 何時ごろか |
| どれくらい洗ったか | 洗った時間と方法 |
| コンタクトの有無 | 装着していたか、外したか |
| 他の症状 | 皮膚の痛み、においで気分が悪いなど |
| 持ち物 | 分かれば、購入店や容器の表示 |
灯油にガソリンや軽油が混ざっていた可能性があるときは、必ず伝えてください。
混ざり物の種類によって、注意すべき点が変わるためです。
目だけでなく、顔・皮膚・においも気をつける
灯油が目に入る場面では、顔や服にも灯油がついていることが多くあります。
| 部位・状況 | 対応 |
|---|---|
| 顔の皮膚 | 石けんと多めの水で洗う。こすらない |
| 衣類 | 汚れた服は脱いで、風通しのよい場所へ置く |
| 手 | 洗ってから、目や口に触れる |
| においで気分が悪い | 風通しのよい場所へ移り、休む |
| 火気 | ストーブやたばこの火を、先に消す |
灯油は、衣類にしみこんだ状態で火に近づくと、燃えやすくなります。
灯油の燃え方については、別記事の灯油に火は付くのかで整理しています。
目の洗浄を始める前に、ストーブなどの火気が近くで使われていないかを、ひと目だけ確かめてください。
子どもが灯油を目に入れたとき
小さな子どもは、嫌がって目を閉じ、洗浄が続けにくくなります。
| 場面 | 対応 |
|---|---|
| 嫌がって暴れる | 大人が二人で、一人は体を支え、一人が水を当てる |
| 洗面台が使えない | お風呂場でシャワーを弱くして使う |
| 泣いて目を開けない | 泣くと涙で洗い流される。水を当て続ける |
| 洗ったあと | 年齢にかかわらず、医療機関で診てもらう |
子どもが灯油を口に入れた疑いがあるときは、無理に吐かせずに、医療機関や相談窓口へ連絡してください。
詳しくは、前述の灯油を飲んだ時の応急処置をご確認ください。
液体が入ったときと、蒸気でしみるとき
目が痛くなる場面は、灯油が直接入ったときだけではありません。
給油中に、においの強い蒸気で、目がしみることもあります。
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 液体が目に入った | 流水で最低15分洗い、医師の手当てを受ける |
| においでしみる程度 | 風通しのよい場所へ移り、まばたきや水洗いで様子を見る |
| 室内で給油して、においがこもった | 窓を開けて換気し、作業を中断する |
| しみる症状が長く続く | 眼科に相談する |
蒸気でしみるだけの場合は、液体が入ったときほど急ぐ必要はありません。
ただし、においが強いほど、換気が足りていない合図です。
給油は、風通しのよい屋外で行うのが基本です。
15分が長く感じるときの考え方
実際に洗ってみると、15分はとても長く感じます。
痛みが少しやわらぐと、「もう十分だろう」と切り上げたくなります。
けれども、目の表面に残った油分は、見た目では分かりません。
洗浄の時間は、感覚ではなく、時計で測ってください。
スマートフォンのタイマーを15分にセットして、洗い場の近くに置いておくと、途中でやめずに済みます。
洗っている間にも、まばたきをして、目の表面に水が行き渡るようにします。
水が冷たすぎて続けにくいときは、ぬるま湯に切り替えても構いません。
大切なのは、洗浄を途切れさせないことです。
洗ったあとの過ごし方
洗い終えて、医療機関へ向かうまで、あるいは受診したあとの過ごし方も整理しておきます。
| 場面 | 注意点 |
|---|---|
| 受診までの移動 | 自分で運転せず、家族や公共交通機関を使う |
| 目の状態 | こすらず、清潔なガーゼやタオルで軽く押さえる |
| 痛みがあるとき | 無理に目を開けて確かめようとしない |
| 受診後 | 医師の指示した点眼や通院の予定を守る |
| 数日後 | 充血、かすみ、痛みが戻らないか確認する |
洗い終えて痛みが和らいでも、視界がかすんでいるときは、運転を避けてください。
運転中に見えにくくなると、事故につながります。
職場・店舗・家庭で備えておくもの
灯油を扱う機会が多い職場や、家庭の給油場所には、次のような備えがあると安心です。
| 備え | 内容 |
|---|---|
| 洗眼できる水場 | 給油場所の近くに、蛇口やホース付きの水栓があると早く洗える |
| 保護めがね | 液体の跳ねを防ぐ。普段のめがねでも、ないよりは役に立つ |
| 受診先のメモ | 近くの眼科と、夜間・休日に対応する医療機関を控えておく |
| 緊急連絡先 | 家族の連絡先、救急相談の電話番号 |
| 時計・タイマー | 15分を測るため、洗い場の近くに置く |
灯油を扱う場所の近くに水場がない場合は、給油の場所そのものを見直すことも考えられます。
給油場所が、室内や水場から遠いときほど、洗い始めが遅れるためです。
灯油が目に入るのを防ぐには
| 場面 | 工夫 |
|---|---|
| 給油するとき | 保護めがね、ゴム手袋をつける |
| ポンプを使うとき | 自動停止タイプを選び、ホースが外れないよう確認する |
| 缶を傾けるとき | 顔を缶の口から離し、注ぎ口を見下ろさない |
| 風の強い日 | 風上に立たず、風下側で作業する |
| 缶を運ぶとき | キャップをしっかり閉め、缶を振らない |
| 子どもがいる家庭 | 給油中は、近づけない |
特に、ポンプのホースが缶から外れる、注ぎ口から灯油が跳ねる、という場面で、目に入る事故が起きやすくなります。
給油の姿勢を少し変えるだけでも、リスクは下がります。
よくある質問
Q1. 灯油が目に入ったとき、目薬を差せばよいですか?
目薬では足りません。
まず、水道水で最低15分洗い流してください。
洗ったあとに、医師の手当てを受けます。
Q2. 痛みが引いたら、病院に行かなくてもよいですか?
SDSでは、洗浄のあとに医師の手当てを受けることとされています。
痛みが引いても、角膜に傷が残ることがあるため、念のため受診して確認してください。
Q3. コンタクトレンズをしたまま洗ってもよいですか?
容易に外せるなら、外してから洗います。
外しにくいときは、無理に外さず、洗浄を続けて、医療機関で外してもらってください。
Q4. 水道水で洗って、目に害はありませんか?
清浄な水で、数分間注意深く洗う、とSDSにも書かれています。
強い水圧は避け、やさしい流れで続けてください。
洗眼薬を探して時間を使うより、水道水ですぐ洗うことを優先します。
Q5. 灯油とガソリンで、対応は違いますか?
目に入ったときの基本は、流水で洗う、という点で同じです。
ただし、ガソリンなどは別の危険性があるため、混ざった可能性があるときは、受診時に必ず伝えてください。
まとめ
灯油が目に入ったときの対応を、最後に整理します。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 最初の動き | こすらず、すぐ流水で洗う |
| 洗う時間 | 最低15分。時計で測る |
| コンタクト | 容易に外せるなら外す |
| 洗ったあと | 医師の手当てを受ける(眼科が基本) |
| 急ぐ症状 | 強い痛み、目が開かない、かすむ、まぶしい |
| 予防 | 保護めがね、自動停止ポンプ、風上に立たない |
まずは、給油用の缶やポンプを置いている場所に、保護めがねとゴム手袋を一組、そろえてみませんか。

