トイレのリフォームや新築を予定していたのに、「納期が未定です」と言われて困っていませんか?
2026年4月、住宅設備業界を揺るがす事態が起きています。
大手メーカーのTOTOがトイレ関連製品の一部について受注停止、パナソニックがトイレ関連製品全ての納期未定を発表し、LIXILも供給への影響を示唆するなど、業界全体に混乱が広がっています。
原因は中東情勢の緊迫化に伴うナフサ不足です。
この記事では、なぜトイレが届かなくなっているのか、各社の対応状況はどうなっているのか、そして今後の見通しと取るべき対応策を詳しく解説します。

なぜトイレが「納期未定」になっているのか

ホルムズ海峡の緊迫化がもたらした供給ショック
2026年4月、中東情勢の緊迫化によりホルムズ海峡の通航が事実上制限される事態となりました。
ホルムズ海峡はペルシャ湾と外洋を結ぶ幅わずか33kmの海峡で、世界の原油輸送量の約2割が通過する重要な航路です。
この通航制限が、日本の住宅設備産業に直接的な打撃を与えています。
ナフサとは何か
ナフサ(粗製ガソリン)は原油を精製する過程で得られる石油化学の基礎原料です。
エチレン・プロピレンなどの基礎化学品の原料となり、プラスチック・合成樹脂・有機溶剤など幅広い工業製品の製造に使われています。
日本はナフサの約45%を中東から直接輸入しています。
さらに国内精製分の原油も約93%が中東産であるため、実質的に日本のナフサの8割超がホルムズ海峡を経由しているとされています。
加えて、日本はナフサ輸入量の一部を韓国に頼っていましたが、韓国政府が2026年3月末にナフサの輸出を一定期間禁止する措置を取ったため、代替調達先まで塞がれた形となっています。
備蓄が限られるなかで供給の大部分が止まり、国内化学メーカーがエチレン減産を開始するなど、石油化学素材全体の供給が不安定化しています。
トイレにナフサが必要な理由
「トイレは陶器でできているのに、なぜナフサが関係するのか」と思われる方も多いでしょう。
便器本体の陶器部分はナフサの影響を受けにくいのですが、現代のトイレは多くの石油化学製品を使用しています。
具体的には以下のような部材が影響を受けています。
| 部材・工程 | ナフサ由来素材の用途 |
|---|---|
| 内装フィルム(壁・天井) | フィルム接着剤に含まれる有機溶剤 |
| 人工大理石浴槽・カウンター | コーティング材に含まれる有機溶剤 |
| ウォシュレット・温水洗浄便座 | 樹脂部品・電子部品の封止材 |
| トイレユニットの内装材 | 各種接着剤・シール材 |
| タンクレストイレの本体ケース | ABS樹脂・エンジニアリングプラスチック |
特にタンクレストイレや一体型トイレは電子部品・樹脂部品の割合が高く、ナフサ由来素材への依存度も大きくなっています。
また、Panasonicのアラウーノシリーズは便器本体に「有機ガラス系素材(スゴピカ素材)」を採用しており、陶器を使わない分、石油化学製品への依存がより高いという特性があります。
各社の現状と対応状況

TOTO|トイレユニットの受注停止・ウォシュレットは出荷上限
TOTOは2026年4月13日付で、取引先の卸業者にFAXで通知を送り、以下の対応を発表しました。
受注停止対象
- システムバス・ユニットバス(全シリーズ)
- トイレユニット(全シリーズ)
出荷上限設定(受注停止ではないが制限あり)
- ウォシュレット単体
- 便器単体
再開時期は現時点で未定とされています。
既存の受注分については「個別に対応する」としていますが、材料不足が続けば既存注文の出荷にも遅延が生じる可能性があります。
TOTOの株価は報道を受けて一時前週末比8.8%安まで下落し、市場でも事態の深刻さが認識されています。
トイレユニットが停止対象になった理由
便器(陶器製)自体はナフサの直接的な影響を受けにくいのですが、TOTOがトイレユニットまで受注停止に踏み切ったのは、トイレの内装部分(壁・天井のフィルム張り工程)にもナフサ由来の有機溶剤が使われているためです。
便器単体ではなく「トイレ空間をまるごと提供するユニット製品」である以上、内装材の調達難が直接影響します。
LIXIL|納期未定・受注は継続するが出荷を確約できない状況
LIXILは2026年4月14日、ユニットバスについて同日受注分から納期を「未定」とすることを発表しました。
TOTOが新規受注を完全に停止したのに対し、LIXILは受注そのものは止めていません。
ただし出荷を確約することができず、今後の状況によっては受注停止に踏み切る可能性もあるとしています。
背景にはTOTOの受注停止による影響もあります。
TOTOで発注できなくなった施工業者がLIXILに注文を集中させたため、通常を超える受注量となり、材料不足の問題と重なって納期の即答が困難になっています。
13日までに受注済みの製品については、納期通りに出荷する方針です。
また、樹脂・アルミニウムを含む原材料の調達が不安定との説明もあり、今後の価格改定の可能性も示唆されています。
LIXILのトイレ単体への影響
2026年4月14日時点で、LIXILはトイレ単体(サティス・プレアス・アメージュなど)についてはユニットバスと同様の受注停止・納期未定の公式発表は行っていません。
ただし同社は「石油由来原材料の不足により、生産・出荷・受注の調整や制限を行う可能性がある」と予告しており、状況によってはトイレ製品にも影響が波及する可能性があります。
LIXILのサティスやプレアスなどタンクレス・一体型トイレも、温水洗浄便座部の樹脂部品や電子基板など石油化学由来の素材を多く含んでいます。
現時点でのトイレ単体の受注状況については、施工業者を通じて最新情報を確認されることをおすすめします。
Panasonic(パナソニックハウジングソリューションズ)|バス・トイレ関連全般が納期未定
パナソニックハウジングソリューションズ(PHS)は2026年4月14日、中東情勢の影響によるナフサ等一部素材の調達不安定化を理由に、同日以降に受注したバス・トイレ関連商品について顧客に納期未定の通知を行いました。
対象は、アラウーノシリーズを含むバス・トイレ関連商品全般です。便器単体・温水洗浄便座(ビューティー・トワレ等)も対象に含まれます。
PHSが顧客に送った文書によれば、原油由来原材料(ナフサ等)やアルミニウムを含む一部素材の調達が不安定化しているとしています。受注自体はTOTOのように停止していませんが、納期の確定ができない状態で、必要な材料の確保状況を踏まえて順次回答する対応に切り替えています。
PHSはJ-CASTニュースの取材に対し、「現時点では価格変更や受注中止の予定はない」と回答しています。
ただし「今後の受注量の状況によって、納期の回答ができなくなる可能性もある」とも明記しており、状況の悪化によっては対応が変わる可能性があります。
13日までに受注した商品については、納期通りに納品するとしています。
アラウーノへの影響が大きい背景
パナソニックのアラウーノシリーズは、便器本体に有機ガラス系素材(スゴピカ素材)を採用しています。
陶器に比べて製造の自由度が高く清掃性に優れる一方、石油化学由来の素材をより多く使用する構造です。
ナフサ不足の影響がTOTOやLIXILの陶器製便器よりも大きく出やすい可能性があります。
3社の対応状況まとめ
| 対応内容 | TOTO | LIXIL | Panasonic(PHS) |
|---|---|---|---|
| ユニットバス | 新規受注停止 | 納期未定 | 納期未定 |
| トイレユニット | 新規受注停止 | 影響拡大の可能性あり | 納期未定 |
| 便器・温水洗浄便座単体 | 出荷上限あり | 現時点で制限発表なし | 納期未定 |
| 受注継続 | 停止 | 継続(現時点) | 継続(現時点) |
| 価格変更・受注中止予定 | 未発表 | 価格改定の可能性示唆 | 現時点で予定なし |
| 既存受注(〜4/13) | 個別対応 | 納期通り出荷予定 | 納期通り出荷予定 |

今後の見通し|いつ解消されるのか

現時点では、事態の収束時期を見通すことは難しい状況です。
ただし、以下の観点から状況を整理することができます。
短期(1〜3か月)
中東情勢の動向次第ですが、ナフサの備蓄が非常に限られているなかで供給の大部分が止まっている状況は、すぐには改善しない可能性が高いと見られています。
国内化学メーカーのエチレン減産が続けば、有機溶剤・樹脂素材の不足は長引く可能性があります。
中期(3〜6か月以上)
中東情勢が落ち着いた場合でも、ナフサ・石油化学素材の供給が正常化し、住宅設備メーカーが生産・在庫を回復させるまでには一定の時間がかかります。
サプライチェーンの回復には数か月単位を要することが多く、今年中に完全正常化できるかどうかは現時点では不透明です。
価格への影響
ナフサ価格は短期間で大幅に上昇しているとされており、供給が再開された後も、各メーカーが調達コストの増加分を価格改定に反映させる可能性があります。
すでにLIXILは価格改定の可能性を示唆しています。
困っている方がとるべき対応

リフォームを予定している方
まず施工業者に現状を確認する
発注済みの製品については、施工業者を通じて最新の納期を確認してください。
在庫がある場合は出荷される可能性がありますが、透明性が低い状況です。
代替メーカーへの切り替えを検討する
TOTOとLIXILのシェアが大きい市場ですが、他のメーカーも検討する価値があります。
ただし、代替メーカーにも注文が集中しているため、早めの問い合わせが重要です。
トイレ以外の工事を先行させる
トイレ工事を後回しにして、内装・電気・他の水回りなど影響を受けない工事を先に進めることも選択肢のひとつです。
新築を計画中の方
ハウスメーカー・工務店に即座に確認し、採用予定のトイレ製品の納期状況を把握してください。
工期全体への影響が生じる可能性があるため、代替品や工程変更についても早めに相談することをおすすめします。
リフォームをまだ検討中の方
パニック買い・焦りによる判断ミスに注意してください。
状況は流動的であり、数週間後には状況が変化している可能性もあります。
最新情報を確認しながら、冷静に判断することが重要です。
代替メーカーの選択肢
TOTOとLIXILが大きな影響を受けているなかで、代替として検討できるメーカーについても触れておきます。
タカラスタンダード
タカラスタンダードは、浴槽・浴室にホーロー素材を採用しています。
ホーローは鉄やアルミの下地にガラス質の釉薬を焼き付けたもので、石油化学製品への依存が相対的に低い素材です。
そのため、今回のナフサ不足の影響を最も受けにくいメーカーとして注目されています。
ただし、タカラスタンダードも原材料の調達が不安定な状況で、長期化した場合は納期・数量・価格に影響が出る可能性があると発表しています。
トイレ製品の在庫状況も含め、施工業者を通じて確認することをおすすめします。
よくある質問
Q. 既に発注済みの製品はどうなりますか?
TOTOは「個別に対応する」としており、LIXILとPanasonicは13日以前の受注分について納期通りの出荷を基本方針としています。ただし、材料不足が長引けば既存注文にも影響が出る可能性があります。施工業者を通じて最新の納期状況を確認してください。
Q. ウォシュレット(温水洗浄便座)だけでも買えますか?
TOTOのウォシュレット単体については、受注停止ではなく出荷上限が設定されている状況です。入手できない状況ではありませんが、制限がある点に注意してください。Panasonic(PHS)の温水洗浄便座(ビューティー・トワレ等)はバス・トイレ関連商品全般の対象に含まれており、納期未定となっていますが、受注自体は継続しています。LIXILについては現時点で温水洗浄便座単体の制限発表はありません。
Q. トイレの便器だけなら問題ないですか?
TOTOの便器単体は出荷上限はあるものの受注停止ではありません。LIXILの陶器製便器も同様に、ユニット製品ほどの深刻な影響は現時点では報告されていません。ただし状況は流動的なため、施工業者に確認することをおすすめします。
Q. いつ状況が正常化しますか?
中東情勢の動向に左右されるため、現時点では見通しをお伝えすることが難しい状況です。状況が改善されても、サプライチェーンの回復には一定の時間を要します。
Q. この機会にどのトイレを選べばいいですか?
現在は選択肢自体が限られている状況です。焦って高額な製品を購入することよりも、施工業者に相談しながら、入手可能な製品のなかから生活スタイルに合ったものを選ぶことをおすすめします。
まとめ

2026年4月、中東情勢の緊迫化によるナフサ不足が、日本の住宅設備業界に深刻な影響をもたらしています。
各社の状況を整理すると、次のようになります。
| メーカー | トイレへの影響 | 状況 |
|---|---|---|
| TOTO | トイレユニット:新規受注停止 | 再開時期未定 |
| LIXIL | ユニットバス:納期未定 | 受注は継続・出荷確約不可 |
| Panasonic | バス・トイレ全般(アラウーノ含む):納期未定 | 受注は継続・出荷確約不可 |
今後の見通しは中東情勢次第であり、短期での解消は難しい可能性があります。
リフォームや新築を予定されている方は、施工業者を通じた最新の納期確認、代替製品の検討、工程の見直しなど、柔軟な対応を心がけることが重要です。
状況は日々変化していますので、各メーカーの公式情報や施工業者からの最新情報を随時確認されることをおすすめします。

