「スーパーでゴミ袋の棚が空になっていた」「ホームセンターで断熱材が入荷未定と言われた」
——2026年春、ナフサ不足による品薄はすでに生活のあちこちに顔を出しています。
中東情勢の緊迫化によってホルムズ海峡の通航が事実上困難になり、日本のナフサ調達に深刻な支障が生じています。
ゴミ袋やユニットバスの問題はニュースでも繰り返し報じられるようになりましたが、「自分の生活にどこまで影響が及ぶのか」「これから何が買えなくなるのか」を整理して把握したい方は多いのではないでしょうか。
このページでは、ナフサ不足によって実際に品薄・入手困難になっている製品と、今後さらに影響が広がるとみられる品目を分野別にまとめます。
「値段が上がるかどうか」よりも「そもそも買えるかどうか」という視点で、現在進行中の状況と今後の見通しをお伝えします
ナフサ不足でなぜ「なくなる」のか

ナフサは石油を精製する過程で得られる基礎原料です。
高温分解処理によってエチレン・プロピレン・ブタジエンなどの基礎化学品になり、さらにポリエチレン・ポリプロピレン・合成ゴムなどへと加工されていきます。
プラスチック製品・合成繊維・塗料・接着剤……私たちが日常生活で使うものの大部分が、このナフサを起点とするサプライチェーンでつながっています。
日本はナフサの約74〜82%を中東産に依存してきた構造があります(財務省貿易統計)。
さらに、国家備蓄制度がなく民間在庫は約20日分しかなかったため、ホルムズ海峡の通航問題は即座に供給不安として現れました。
2026年3月、三菱ケミカルグループ・出光興産・三井化学・旭化成などが相次いでエチレン設備の減産を発表。
稼働率は過去最低水準に落ち込み、川下にある樹脂・ゴム・繊維の供給が順番に細っていきます。
重要なポイント 品薄・欠品は「価格が高くなって買えない」だけでなく、「在庫がそもそもない」という現物不足として現れます。エチレン設備の減産から生活用品への影響が届くまでには1〜3か月のタイムラグがあります。
【すでに進行中】第1波:品薄・受注停止が確認されている製品

2026年4〜5月時点で、実際に店頭在庫の減少や受注停止が確認されている品目です。
ゴミ袋・ポリ袋類
ポリエチレン製のゴミ袋は、市民生活に最も直結する品薄品目の一つです。
宮城県栗原市など一部自治体では指定ゴミ袋の在庫がほぼゼロに近い状況が報告されています。
国内大手の日本サニパックは2026年5月下旬出荷分から全製品を従来比30%以上値上げすると発表しており、値上げ前の駆け込み購入と実需が重なって棚が空になるケースが増えています。
| 品目 | 主な原料 | 状況 |
|---|---|---|
| 指定ゴミ袋(自治体別) | ポリエチレン(PE) | 一部自治体で在庫切れ |
| 45L・30Lゴミ袋 | ポリエチレン(PE) | 店頭での品薄が散発 |
| 冷凍保存袋・ジッパーバッグ | ポリエチレン(PE) | 大容量タイプを中心に品薄傾向 |
| 無地ポリ袋 | ポリエチレン(PE) | ホームセンターで欠品報告あり |
ゴミ袋は「代替品がない」という性質上、入手できないと日常生活に直接支障をきたします。
ユニットバス・住宅設備
住宅設備メーカーへの影響はすでに表面化しています。TOTOが2026年4月、ユニットバスの受注を一時停止・調整したことが報じられました(日本経済新聞、2026年4月)。
ユニットバスの浴槽・壁パネル・床材にはFRP(繊維強化プラスチック)やABS樹脂などのナフサ由来素材が多用されているためです。
| 設備 | 影響の出方 |
|---|---|
| ユニットバス | 受注一時停止・一部モデル受注制限(TOTOで報告) |
| 断熱材(発泡ウレタン系) | 工場出荷制限・納期未定が増加 |
| 配管材(塩ビ管・ポリエチレン管) | 価格高騰と入手困難が重なるケースあり |
| シーリング材・接着剤 | 建設現場で調達困難の報告 |
| 塗料・シンナー | 価格暴騰と在庫ひっ迫が同時進行 |
給湯器や暖房機器の交換を検討されている方は、部品・本体の納期が従来より長くなっている可能性があります。
工事業者への確認を早めに行うことをおすすめします。

塗料・シンナー
シンナーはその成分のほぼ100%がナフサ由来の溶剤です。
2026年2月以降、業務用シンナーの価格は最大75〜80%の値上がりが記録されており、従来1缶4,000円程度だったものが15,000円を超えるケースも出ています。
自動車補修・建築塗装の現場では「入荷未定」「受注制限」が広がり、工期遅れが相次いでいます。
医療・衛生用品(一部)
ナフサ由来のプラスチックを使う医療用品にも影響が及んでいます。
注射器(シリンジ)・点滴バッグ・採血管・医療用手袋(ニトリルゴム製・ポリエチレン製)などが品薄リスクにさらされています。
医療機関・介護施設での現場では調達の難しさが増しているとの報告もあります。
【今夏以降】第2波:品薄が広がる可能性がある製品
2026年夏(6〜8月)以降、エチレン設備減産の影響が川下製品に届くタイムラグを踏まえた見通しです。
食品ラップ・食品包装材
食品用ラップフィルムはポリ塩化ビニリデン(PVDC)またはポリエチレン(PE)製で、いずれもナフサ由来です。
現時点では価格上昇が先行していますが、夏以降は在庫不足として現れる可能性があります。
食品ラップは使い捨て需要が高く消費量も多い品目です。1〜2か月分程度の備蓄を確保しておくことが現実的な備えといえます。
ペットボトル容器
ペットボトルの原料PET(ポリエチレンテレフタレート)はナフサ由来のエチレン・キシレンを出発点とします。
容器メーカーの生産調整が飲料メーカーへの供給に影響する可能性があります。
飲料水そのものが不足するわけではありませんが、ペットボトル入り飲料の品薄が夏場の需要期と重なる懸念があります。
ウォーターサーバーへの切り替えはペットボトル消費を減らす観点からも選択肢の一つです。
農業用マルチフィルム
農業用マルチフィルム(ポリエチレン製)は春の作付けシーズンと品薄リスクが重なりやすい品目です。
農家・家庭菜園向けの小ロール品も品薄が報告されており、夏の生育シーズンへの影響が懸念されています。
【秋以降】第3波:さらに影響が広がる可能性
| 分野 | 主な品目 | ナフサ由来の部分 |
|---|---|---|
| タイヤ・ゴム製品 | タイヤ・パッキン・Oリング | 合成ゴム(ブタジエン系) |
| 家電製品・部品 | 筐体・内部パーツ | ABS樹脂・ポリカーボネート |
| 合成繊維製品 | 衣類・寝具・カーペット | ポリエステル・ナイロン |
| 洗剤・日用品容器 | 液体洗剤ボトル・詰め替え容器 | ポリプロピレン・PE |
特に住宅設備の補修に使うゴム部品(パッキン・ガスケット)は「代替しにくい小物部品」として影響を受けやすく、特定規格品が入手困難になる可能性があります。
品薄リスク早見表
| 品目 | 品薄リスク | 時期の目安 |
|---|---|---|
| ゴミ袋・指定袋 | ★★★ 高 | すでに進行中 |
| ユニットバス | ★★★ 高 | すでに進行中 |
| 断熱材(発泡系) | ★★★ 高 | すでに進行中 |
| 塗料・シンナー | ★★★ 高 | すでに進行中 |
| 医療用手袋 | ★★★ 高 | すでに進行中 |
| 食品ラップ | ★★☆ 中 | 2026年夏ごろ〜 |
| ペットボトル容器 | ★★☆ 中 | 2026年夏ごろ〜 |
| 農業用マルチ | ★★☆ 中 | 2026年初夏〜 |
| タイヤ・ゴム部品 | ★★☆ 中 | 2026年秋ごろ〜 |
| 家電筐体・部品 | ★☆☆ やや低 | 2026年秋以降 |
| 合成繊維衣料 | ★☆☆ やや低 | 2026年秋〜冬 |
※2026年5月時点の状況をもとにした目安です。中東情勢の変化によって前後する可能性があります。
「なくなる」ことへの現実的な備え
生活消耗品は1〜2か月分の備えを
必要以上の買いだめは需要集中をさらに悪化させ、本当に必要な人が入手できなくなる悪循環につながります。
ゴミ袋・食品ラップ・洗剤などは1〜2か月分を余裕として手元に置く程度が現実的です。
優先度の高い備蓄品目:
- ゴミ袋(特に指定ゴミ袋は自治体別に早めの確保を)
- 食品ラップ・保存袋
- 使い捨て手袋・マスク
- 洗剤類(容器ごと買い置き)
住宅設備の交換・工事は早めに動く
断熱材・配管材・ユニットバスなど住宅設備については、「待てば安くなる・手に入りやすくなる」という期待は現時点では成立しにくい状況です。
必要な工事・設備交換がある場合は、複数の業者から早めに見積もりを取り、現在の価格・納期水準を把握したうえで判断することをおすすめします。
住宅設備交換を検討中の方へのポイント
- 機器の型番と品番を早めに確認する
- 複数の工事業者に見積もり依頼をする
- 「納期未定」の返答には代替機種の提案を求める
- 価格固定の条件を事前に確認する
石油フリーの代替品も選択肢に
洗剤は固形石鹸・粉末タイプが合成界面活性剤の比率が低く、容器も省資源です。断熱材はグラスウール・ロックウールなど鉱物系素材が発泡ウレタン系より影響を受けにくいとされます。
繊維製品は綿・麻・ウールなどの天然素材を選ぶことで合成繊維への依存を減らせます。
政府と現場のギャップについて
経済産業省は2026年4月、「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保のための対応方針」を発表し、備蓄放出・代替調達を進めています。
「日本全体で必要量は確保できている」との政府見解がある一方、現場では「在庫なし」「入荷未定」という事態が続いているのが実情です。
帝国データバンクの分析によると、国内全製造業の約3割がナフサ由来製品の調達リスクに直面する可能性があるとされています。
原料が確保されても、それが最終製品として店頭に届くまでには製造工程と物流を経るため時間差が生じます。
最新情報は以下で随時確認してください。
- 経済産業省「中東情勢関連対策ワンストップポータル」
- 各製品メーカーの公式サイト(お知らせ・生産体制情報)
- 入居・購入予定の住宅設備については担当業者への直接確認

よくある質問
Q. ゴミ袋が売り切れていた場合、どうすればいいですか?
A. 複数の店舗(スーパー・ホームセンター・ドラッグストア・ネット通販)を確認してみてください。種類・メーカーを柔軟に変えることで入手できる場合があります。自治体の指定ゴミ袋が入手困難な場合は、自治体の窓口に相談すると代替措置(特例期間の設定など)が案内されることがあります。
Q. 住宅の建設・リフォームが予定通り進むか不安です。
A. 発泡系断熱材・塗料・シーリング材・配管材などは特に影響を受けやすい素材です。施工業者に「現時点での入手状況と納期見通し」を確認し、代替素材の提案を求めてください。断熱材については発泡系よりもグラスウール・ロックウールのほうが影響を受けにくい場合があります。
Q. 給湯器や暖房機器の交換を検討していますが、部品は入りますか?
A. 樹脂製パーツ・ゴム部品を使用している設備は、部品入手が従来より時間がかかる場合があります。修理・交換を検討している場合は早めに工事業者に相談し、部品の在庫状況を確認することをおすすめします。
Q. 「政府が230日分の備蓄を確保した」と聞きました。安心していいですか?
A. 政府の備蓄・代替調達によって最悪のシナリオは回避されつつあります。ただし、これは「原料としてのナフサが確保されている」という話であり、製品として店頭に並ぶまでにはサプライチェーン全体の目詰まり解消が必要です。「全体は大丈夫でも、特定の品目は品薄になりうる」という認識が現実的です。
Q. ナフサ不足はいつごろ終わりますか?
A. 2026年5月現在、根本原因であるホルムズ海峡の通航問題は解決しておらず、終息時期を示せる材料はありません。楽観的なシナリオで情勢が落ち着いた場合でも、製造・物流が元の水準に戻るまでには数か月単位の時間がかかると考えられます。
まとめ

ナフサ不足による品薄・入手困難は、ゴミ袋・ユニットバス・断熱材・シンナーなど、すでに実際の欠品・受注停止として現れています。
- ゴミ袋・指定袋は一部自治体で在庫切れが報告されており、影響はすでに始まっている
- ユニットバスは大手メーカーが受注を一時停止するなど、住宅設備への影響は深刻
- 断熱材・シンナー・配管材など建設関連資材は現場で調達困難が続いている
- 食品ラップ・ペットボトル・合成繊維など、夏〜秋以降にさらに影響が広がる見通し
- 1〜2か月分の消耗品備蓄と、住宅設備交換の早期相談が現実的な対処
価格変動よりも「そもそも手に入るかどうか」という問題は、日常生活への影響がより直接的です。過度なパニック買いではなく、計画的な備えと早めの相談がこの状況を乗り越えるための現実的な選択肢です。

