冬の停電や、天候による配達の遅れに備えて、灯油を多めに置いておきたい。
寒冷地では、490Lのホームタンクを置く家も多く、量の線引きが気になります。
そう考えたとき、気になるのが「家庭では何リットルまで持てるのか」という点です。
この記事では、備蓄量の法的な区切りと、災害時を想定した量の決め方、置いておくときの注意を順番に整理します。
保管場所や容器の基本は、別記事の灯油の保管方法をご覧ください。
量の区切りは「200L」「500L」「1,000L」
灯油は、消防法で第4類・第二石油類に分類され、指定数量は1,000Lです。
この1,000Lを基準に、量で扱いが変わります。
ここでは、寒冷地の例として、札幌市の火災予防条例を見てみます。
| 貯蔵量 | 扱い(札幌市の例) |
|---|---|
| 1,000L以上 | 消防法の危険物施設として、許可などが必要になる |
| 200L以上、1,000L未満(個人の住居以外) | 少量危険物。貯蔵・取扱いの開始前に、所轄の消防署長への届出が必要 |
| 500L以上、1,000L未満(個人の住居) | 少量危険物。同じく届出が必要 |
| 個人の住居で、500L未満 | 届出は不要(ただし、技術基準には従う) |
札幌市火災予防条例の第71条では、指定数量の5分の1以上を貯蔵・取り扱う場合は、あらかじめ消防署長への届出が必要とされています。
ただし、個人の住居で貯蔵する場合は、指定数量の2分の1以上(灯油なら500L以上)が届出の対象になります。
「個人の住居」とは、個人専用住宅、共同住宅の居室、併用住宅の住居部分などを指します。
なお、届出が不要な量でも、条例の技術基準には従う必要があります。
指定数量の考え方は、別記事の灯油の指定数量とはで整理しています。
寒冷地の490Lホームタンクの場合
寒冷地では、冬の暖房や給湯を灯油に頼る家が多く、490Lのホームタンクが使われることがあります。
個人の住居なら、490Lは、札幌市の届出基準(500L以上)の手前に収まります。
| 持っているもの | 考え方(札幌市の例) |
|---|---|
| 90Lのホームタンクのみ | 200L未満 |
| 200Lのホームタンクのみ | 個人の住居なら、500L未満で届出は不要。事業所なら、200L以上で届出が必要 |
| 490Lのホームタンクのみ | 個人の住居なら、500L未満で届出は不要。事業所なら、届出が必要 |
| 490Lのタンク+18Lのポリ缶1缶 | 合計508L。合算の扱いは、消防署に確認 |
最後の行は、実務上、見落としやすい点です。
タンクの量と、置いてあるポリ缶の量が合算されるかどうかは、消防の運用に関わるため、確認してください。
また、店舗併用住宅の事業部分や、事務所、共同住宅の共用タンクなどは、「個人の住居」に当たらない場合があります。
その場合は、200Lの基準で考えるのが安全です。
届出が不要な個人の住居でも、技術基準には従う必要があります。
条例では、個人の住居の屋外タンクで、暖房や給湯の燃料として指定数量の2分の1未満を貯蔵する場合は、標識や掲示板の設置が免除されます。
ただし、これは免除される項目の一つで、そのほかの基準は適用されます。
18Lのポリ缶に直すと、何缶か
家庭では、18Lの容器で持つことが多いため、缶の数に直しておきます。
| 缶の数 | 合計 |
|---|---|
| 5缶 | 90L |
| 8缶 | 144L |
| 10缶 | 180L |
| 11缶 | 198L |
| 12缶 | 216L |
| 27缶 | 486L |
| 28缶 | 504L |
個人の住居以外では、12缶で200Lを超えます。
個人の住居では、28缶で500Lを超えます。
缶の数だけで覚えるのではなく、合計の量と、住居か事業所かで考えてください。
自治体の基準は、どこで確かめるか
少量危険物の区切りや、届出の要否は、市町村の火災予防条例で決まります。
同じ「個人の住居は2分の1」でも、自治体によって運用や数字の細部が異なる場合があります。
| 例 | 内容 |
|---|---|
| 札幌市 | 5分の1以上で届出。個人の住居は2分の1以上 |
| 北海道の留萌地域 | 指導指針で、個人住宅は500L以上、法人は200L以上を少量危険物と定義 |
| 千葉市 | 200L以上で、届出等が必要 |
| 確認先 | 市町村の消防本部・消防署の予防担当 |
お住まいの地域の基準は、必ず、市町村の条例か、消防署の予防担当で確認してください。
その際は、灯油であること、貯蔵する量、置く場所、住宅か事業用か、を伝えると話が早く進みます。
災害時に、何リットル必要かを考える
「何リットルまで持てるか」の前に、「何日分必要か」を考えておきます。
当別町の防災資料でも、停電や災害に備えて、灯油やカセットボンベの備蓄が必要、とされています。
ただし、必要な量の目安までは、書かれていません。
ご家庭で、次の式を使って、必要な量を見積もってみてください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 計算式 | 1時間の灯油消費量 × 1日の使用時間 × 備えたい日数 |
| 1時間の消費量 | ストーブの取扱説明書にある「燃料消費量」を見る |
| 使用時間 | 在宅時間、寝る前後などを想定する |
| 日数 | 停電や配達の途絶が、どれくらい続くかを想定する |
仮に、1時間あたり0.3Lのストーブを、1日8時間、3日間使うなら、0.3 × 8 × 3 = 7.2Lです。
これは計算例であり、実際の消費量は、ストーブの機種や火力の設定で変わります。
お使いの機器の説明書で、数字を確かめてください。
停電時に使える暖房、使えない暖房
備蓄した灯油が役に立つのは、停電時にも使える暖房器具がある場合です。
| 暖房器具 | 停電時 |
|---|---|
| ポータブル石油ストーブ(芯式) | 運転に電気を使わないため、電池やマッチで点火して使える |
| 石油ファンヒーター | 送風や点火にコンセントの電気を使うため、停電時は使えない |
| FF式の暖房機 | 送風機やセンサーに電気を使うため、停電時は使えない |
| 電気ストーブ | 使えない |
当別町の資料では、ポータブル石油ストーブは、マッチや電池で点火できて、運転時に電気を使わないため停電時にも使える、とされています。
一方、帯広市の資料にも、ガスや灯油を熱源にする暖房器具でも、コンセントを使うタイプは停電時に使えない、という趣旨の注意があります。
お使いの機器が、停電時にどうなるかを、取扱説明書で確かめておきましょう。
備蓄量は、多ければよいわけではない
灯油は、長く置くと劣化します。
たくさん持つほど、使い切れずに、翌シーズンへ持ち越すことになりかねません。
| 考え方 | 内容 |
|---|---|
| 使い切れる量を持つ | シーズン中に、使い回せる量にとどめる |
| 古いものから使う | 先に入れた缶から使い、新しい灯油を補充する |
| 昨シーズンの灯油 | 使用しない(NITEの注意でも、新しい灯油を使うよう示されている) |
| ペットボトル | 使わない。ポリ缶か金属缶に入れる |
こうした「使いながら備える」考え方は、食料の備蓄でいうローリングストックに近いものです。
劣化の見分け方は、別記事の灯油の劣化をご参考ください。
置いておくときの注意
備蓄量を決めたら、置き方も大切です。
消防庁や自治体の資料などで示されている、基本的な点を整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 容器 | 金属製か、安全性を示す推奨マークや認定証がついたポリエチレン製 |
| 栓 | しっかり締めて密閉する |
| 場所 | 火気を使う場所から遠ざけ、直射日光を避けた冷暗所 |
| 地震対策 | 容器が転倒したり、落下物で破損したりしないようにする |
| ガソリンとの区別 | 別の場所に置き、誤って給油しないようにする |
| 積み重ね | 缶を積み重ねず、棚の固定や滑り止めを設ける |
容器の色や、見分け方については、別の記事で扱う予定です。
ここでは、「容器を、灯油用として、きちんと選ぶ」ことだけ押さえておけば十分です。
配達を利用している家の備え
ホームタンクで配達を頼んでいる家では、備蓄の考え方が少し変わります。
灯油が減ってから連絡すると、天候や混雑で、届くまでに日数がかかることがあるためです。
| 状況 | 備え |
|---|---|
| タンクの残量が少ない | 早めに、配達を頼む |
| 大雪や悪天候が予想される | 前もって、タンクを満たしておく |
| 配達が遅れそう | 予備として、ポリ缶に少量を確保しておく |
| 長期不在の前 | 残量を確かめ、不要な量を持ちすぎない |
タンクの残量は、メーターで日ごろから確認する習慣をつけておくと安心です。
残量が3分の1ほどになったら注文する、といった自分なりの目安を決めておくと、慌てずに済みます。
この目安は、配達の頻度や地域の事情によって調整してください。
備蓄の置き場所を決める
量を決めたら、どこに置くかも、あらかじめ決めておきます。
| 置き場所 | 向いている点 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 屋外の物置 | 室内に蒸気が入らない | 直射日光、積雪、凍結 |
| ベランダ | 取り出しやすい | 日が当たる、避難経路をふさがない |
| 玄関まわり | 給油に便利 | 火気や、暖房器具から離す |
| 室内の居間 | 近くて便利 | 蒸気がこもるため、避けたほうがよい |
集合住宅では、ベランダなどの共用部分に置いてよい量や、置き方が、管理規約で決められていることがあります。
備蓄量を増やす前に、規約を読み、必要なら管理会社へ確認してください。
備蓄を見直すタイミング
備蓄は、一度決めたら終わりではありません。
次のような節目で、量と状態を見直します。
| タイミング | 見直すこと |
|---|---|
| 暖房シーズンの始まり | 前シーズンの灯油が残っていないか |
| 暖房シーズンの終わり | 使い切れる量だったか、残量はどれくらいか |
| 暖房器具を買い替えたとき | 消費量と、停電時の使い勝手 |
| 家族の人数や在宅時間が変わったとき | 必要な量の計算 |
| 引っ越したとき | 保管場所と、市町村の条例 |
シーズンの終わりに残った灯油は、翌年に持ち越さず、使い切るか、販売店に相談して処分します。
持ち越しを避けるだけでも、劣化による機器の不調を、減らすことにつながります。
災害時に、特に気をつけること
停電や災害のときは、普段と違う状況で灯油を使うことになります。
| 場面 | 注意 |
|---|---|
| 換気 | 石油ストーブは、一酸化炭素中毒を防ぐため、こまめに換気する |
| 地震 | 対震自動消火装置が、正しく作動するか確かめておく |
| 給油 | 必ず消火してから行い、暗い中では特に慎重にする |
| こぼれ | 灯油がストーブにこぼれたら、再点火せず使用を中止する |
| 車の燃料 | 車は暖房や電源にも使えるため、日ごろから燃料を補給しておく |
暗い中での給油は、こぼしやすく、危険です。
懐中電灯やランタンを、手の届く場所に置き、火のついていない状態で給油できる環境を整えておいてください。
備蓄と同時に用意したいもの
灯油だけを備えても、停電時に使えなければ意味がありません。
一緒に、次のようなものを、まとめておくと安心です。
| 用意するもの | 理由 |
|---|---|
| 乾電池 | 芯式ストーブの電池点火に使えるタイプがある |
| マッチ・ライター | 点火に使う(保管場所は、子どもの手の届かない所) |
| 灯油ポンプ(手動) | 停電時にも、電気なしで給油できる |
| 懐中電灯・ランタン | 暗い中で、安全に給油するため |
| 毛布・防寒具・使い捨てカイロ | 暖房が使えない時間をしのぐ |
| 一酸化炭素警報器 | 換気が不十分なときに、異常に気づける |
電動ポンプは、電池が切れていると使えません。
停電に備えるなら、手動のポンプも1本、置いておくと確実です。
また、災害時は、停電が長引くほど、灯油を使う時間も伸びがちです。
暖房に頼る時間が長くなる場合は、無理をせず、避難所や親戚宅など、暖かい場所への移動も選択肢に入れてください。
備蓄はあくまで、安全に過ごすための手段のひとつです。
よくある質問
Q1. 家庭で、灯油は何リットルまで持てますか?
自治体の条例によって異なります。
札幌市の例では、個人の住居は500L以上、それ以外は200L以上で、届出が必要になります。
1,000L以上では、消防法の許可が必要です。
お住まいの地域の基準は、消防署の予防担当に確認してください。
Q2. 490Lのホームタンクは、届出が必要ですか?
札幌市の例では、個人の住居なら、500L未満のため届出は不要です。
ただし、事業所や、個人の住居に当たらない場所では、200L以上で届出が必要です。
届出が不要でも、技術基準には従う必要があります。
ポリ缶などとの合算も含め、消防署に確認してください。
Q3. 災害に備えて、灯油は何日分用意すればよいですか?
決まった日数はありません。
機器の燃料消費量、使用時間、想定する日数で、必要な量を計算してください。
使い切れる範囲にとどめるのが、現実的です。
Q4. 去年の灯油を、備蓄として使い続けてもよいですか?
昨シーズンから持ち越した灯油は、使用しないよう呼びかけられています。
外見が変わらなくても、劣化している場合があります。
今シーズンの分を、新しく入れて使うのが基本です。
Q5. 停電のとき、石油ファンヒーターは使えますか?
電気を使う機種は、停電時に使えないことが多くあります。
停電時に頼れるのは、電池やマッチで点火できる芯式のポータブルストーブなどです。
お持ちの機器の取扱説明書で、確認してください。
まとめ
灯油の備蓄量について、最後に整理します。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 量の区切り | 札幌市の例では、個人の住居は500L以上、それ以外は200L以上で届出。1,000L以上は許可が必要 |
| 判断に迷うとき | 消防署の予防担当に、量と場所を伝えて確認する |
| 必要量の決め方 | 消費量 × 使用時間 × 日数で計算する |
| 備え方 | 使い切れる量を、古いものから使う |
| 停電時 | 電気を使わない芯式ストーブなどが頼りになる |
| 置き方 | 金属缶または推奨マーク付きのポリ缶、火気から離す |
まずは、お使いのストーブの取扱説明書で、1時間あたりの灯油の消費量を、確かめてみませんか。

