「原油が高騰している」「石油価格が上がった」——ニュースでよく耳にするこの2つの言葉、何となく同じものとして受け取っていませんか?
実は、原油と石油はまったく同じものを指しているわけではありません。
正確には、石油という大きなカテゴリーの中に原油が含まれており、さらにガソリンや灯油、軽油なども石油製品として位置づけられています。
この記事では、
「原油と石油の違いとは何か」
「日常で使う灯油やガソリンは原油からどうやって作られるのか」
「原油価格が家庭の光熱費にどう影響するのか」
を、現在も燃料会社に勤める著者がわかりやすく解説します。
灯油ストーブや給湯器を使う方にとっても、エネルギーコストを理解するうえで欠かせない知識だと思いますので、ぜひご参考ください。
原油と石油の違いとは?まず結論から

「原油」と「石油」は混同されがちですが、簡単に整理すると以下のようになります。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 石油(せきゆ) | 地中から採れる炭化水素系の液体燃料の総称。ガソリン・灯油・軽油・重油なども含む広い概念 |
| 原油(げんゆ) | 油田から採掘された、精製前の石油。いわば「素の状態」の石油 |
| 石油製品 | 原油を精製・加工して作られた製品。ガソリン・灯油・軽油・重油・LPガスなど |
つまり、原油は「石油の原材料」にあたるものです。
原油を工場で分解・精製することで、はじめてガソリンや灯油が生まれます。
ニュースで「原油価格が上昇した」と報じられると、その数週間後「ガソリン代が上がった」「灯油が値上がりした」という形で家庭に影響が及びます。
この連動のしくみを理解するには、まず原油と石油製品の関係を把握しておくことが大切です。
石油はどうやって生まれるのか

石油は、太古の時代に海底に堆積したプランクトンなどの微生物の死骸が原料とされています。
何億年もの時間をかけて、地熱や地圧の影響を受けながら変化し、地層の隙間にたまっていったものが石油です。
石油の主成分は炭化水素(水素と炭素が結びついた化合物)です。
そのほかにも、微量の硫黄・窒素・酸素・金属などを含んでいます。
この地中に埋蔵されている石油を採掘できる地域を「油田(ゆでん)」と呼びます。
油田から掘り出し、ガスや水分・異物を大まかに取り除いた状態のものが「原油(crude oil)」です。
原油は黒褐色から黄褐色をしており、独特の臭いがあります。
石油という言葉の意味範囲
「石油」という言葉は、使われる文脈によって意味の範囲が変わります。
- 広い意味:天然ガスや固体のアスファルトも含む、地中由来の炭化水素資源の総称
- 狭い意味:天然の原油(crude oil)そのもの
- 日常会話:「石油ストーブ用の灯油」を「石油」と呼ぶ場合もある(ポリタンクに入れて買う「石油」は、正確には灯油です)
日本語で「灯油を買いに行く」代わりに「石油を買いに行く」と言う方は多いですが、厳密には灯油は原油を精製した石油製品の一つです。
原油から石油製品ができるまで

原油は、そのままでは燃料として使えません。
製油所と呼ばれる工場に運ばれ、精製工程を経ることでガソリン・灯油・軽油などの製品に変わります。
精製の基本:分留(蒸留)
原油に含まれるさまざまな成分は、それぞれ沸点が異なります。
この沸点の差を利用して成分を分ける操作を「分留(ぶんりゅう)」または「分別蒸留」といいます。
製油所には高さ約50メートルにおよぶ「常圧蒸留装置(じょうあつじょうりゅうそうち)」と呼ばれる塔があります。
原油をこの塔で350℃以上に加熱し、蒸気を塔の中に送り込みます。
塔の中は上にいくほど温度が低くなっており、それぞれの成分が自分の沸点で液体に戻るタイミングで回収されます。
各製品と沸点の目安
| 石油製品 | 沸点の目安 | 主な用途 |
|---|---|---|
| LPガス(プロパン・ブタン) | -42℃〜-1℃ | プロパンガス給湯器・コンロ、カセットコンロ |
| ガソリン・ナフサ | 30〜180℃ | 自動車燃料、プラスチック原料 |
| 灯油 | 170〜250℃ | 石油ストーブ・石油ファンヒーター・灯油ボイラー |
| 軽油 | 240〜350℃ | ディーゼル車、トラック・重機 |
| 重油・アスファルト | 350℃以上 | 船舶燃料、道路舗装材 |
このように、原油から1種類の製品だけを作ることはできません。
ガソリンを作れば灯油も軽油も同時にできます。これを「連産品」と呼び、各製品の生産割合は原油の種類や精製条件によって変わります。
蒸留後の二次処理
蒸留だけで分けた留分は、そのままでは品質が不十分なものもあります。
- 脱硫処理:各留分から硫黄分を取り除く。燃焼時のSOx(硫黄酸化物)発生を抑える目的で行われます。ガソリンと軽油は2005年より硫黄分10ppm以下の「サルファーフリー」製品が供給されています
- 分解処理:重油など沸点の高い留分を、炭素数の少ないガソリン基材などに変換する
- 改質処理:ナフサのオクタン価を高め、自動車用ガソリンとして使えるようにする
これらの工程を経て、私たちが日常で使うガソリン・灯油・軽油などの「石油製品」として出荷されます。
家庭で使う燃料はどれが原油由来?
住宅設備で使われる燃料の多くは、原油を起源としています。
灯油(石油ストーブ・ファンヒーター・灯油ボイラー)
灯油は、原油の蒸留で得られるケロシン留分を水素化精製した製品です。
石油ファンヒーターや石油ストーブ、灯油給湯器(灯油ボイラー)などで広く使われています。
原油価格が上がれば、タイムラグを経て灯油の仕入れコストも上昇するため、店頭価格や配達価格に反映されます。
ホームセンターや量販店で購入するポリタンク入りの「石油(18L)」は、この灯油です。
LPガス(プロパンガス給湯器・コンロ)
LPガス(液化石油ガス)のプロパン・ブタンは、原油の蒸留工程で得られる成分を加圧・冷却して液化したものです。
プロパンガス給湯器やガスコンロの燃料として、都市ガスが通っていないエリアを中心に広く使われています。
原油価格の影響を比較的受けやすい燃料の一つです。
都市ガス(ガス給湯器・ガスコンロ)
都市ガスの原料は、石油ではなく天然ガス(LNG)です。
原油とは別の資源で、日本では主にオーストラリアや中東から液化天然ガスとして輸入されています。
長期契約で調達されることが多いため、短期的な原油価格の変動の影響は比較的小さいとされています。
ガソリン(自動車・バイク)
自動車燃料として最もなじみ深いガソリンも原油由来です。
原油価格の変動は1〜2週間程度のタイムラグで店頭価格に反映される傾向があります。
原油価格が家庭の光熱費に与える影響

原油価格が変動すると、家庭のエネルギーコストにさまざまな形で影響が及びます。
大まかなタイムラグの目安を以下に整理します。
| 影響の段階 | 具体的な影響 | タイムラグの目安 |
|---|---|---|
| 第1段階 | ガソリン・灯油の店頭価格が変動 | 1〜2週間 |
| 第2段階 | 電気代・LPガス代が変動 | 1〜3か月 |
| 第3段階 | 食料品・日用品価格への転嫁(輸送コスト増) | 数か月〜半年 |
このように、原油価格の上昇は「まずガソリン・灯油」から始まり、じわじわと生活全般に広がっていく性質があります。
日本の石油価格と政府補助金
日本では2022年1月より「燃料油価格激変緩和補助金」が導入され、石油元売会社への補助を通じてガソリン・灯油・軽油などの店頭価格を一定水準に抑える措置が続けられてきました。
2025年末には旧暫定税率が廃止されるなど、ガソリン税制にも変化が生じています。
補助金は消費者が直接申請する必要はなく、ガソリンスタンドや灯油販売店の価格に自動的に反映されます。
ただし補助金額や制度の有無によって、同じ原油水準でも店頭価格は大きく変わる点に注意が必要です。
資源エネルギー庁は毎週、ガソリン・灯油・軽油などの全国平均価格を公表しています。
価格の見通しを把握したい場合は、資源エネルギー庁の公表資料を参照することをおすすめします。
原油の種類とブランド名

原油にはいくつかの代表的なブランドがあり、国際市場での「指標原油」として価格の基準に使われています。
| ブランド名 | 産地・特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| WTI(ウェスト・テキサス・インターミディエート) | 北米産。硫黄分が少ない軽質原油 | 米国市場の価格指標 |
| ブレント原油 | 北海産。欧州・アジア取引の基準 | 国際取引の主要指標 |
| ドバイ原油 | 中東産。中質原油 | アジア向け輸出の指標 |
日本が輸入する原油は、中東産のドバイ原油が多くの割合を占めており、ドバイ原油価格の変動は日本の石油製品価格に直接影響を与えます。
軽質原油と重質原油の違い
原油は、含まれる炭化水素の重さ(分子の大きさ)によって「軽質原油」「重質原油」に分類されます。
- 軽質原油:ガソリンや灯油など価値の高い製品を多く得られる。価格は高め
- 重質原油:重油やアスファルトなどの残渣が多い。精製に手間がかかるが価格は安め
製油所は各装置の構成に応じて、最適な原油の組み合わせを選んで調達しています。
重質原油を分解してガソリン留分などを得る「二次処理装置」を多く備えた製油所ほど、コスト競争力が高いとされています。
「石油」を日常会話で使うときの注意点
日常会話では「石油」という言葉が複数の意味で使われており、混乱を招くことがあります。
| 場面 | 「石油」が指すもの | 正確な表現 |
|---|---|---|
| 「石油を買ってきて」 | ポリタンク入りの灯油 | 灯油 |
| 「石油ストーブ」 | 灯油を燃料とするストーブ | 灯油ストーブ |
| 「石油価格が上がった」 | 原油または石油製品全般 | 原油価格/灯油価格など |
| 「石油資源の枯渇」 | 地下に埋蔵される原油・天然ガスなど | 化石燃料 |
住宅設備のメンテナンスや燃料の補充をするうえでは、「石油=灯油」として使われる場面がほとんどです。
ただし、価格や資源に関する話題では「原油」と区別して考えることが重要です。
よくある質問(Q&A)
Q1. 原油と石油は同じものですか? A. 厳密には異なります。石油は地中由来の炭化水素系燃料の総称で、原油はその中の「精製前の石油」のことを指します。ガソリンや灯油は原油を精製した「石油製品」です。
Q2. 灯油は原油から作られているのですか? A. はい。灯油は原油を蒸留したときに得られるケロシン留分を、さらに水素化精製して作られた石油製品です。石油ファンヒーター・灯油ストーブ・灯油給湯器の燃料として使われています。
Q3. ガソリンと灯油は何が違うのですか? A. どちらも原油由来の石油製品ですが、蒸留で分けられる沸点の範囲が異なります。ガソリン(ナフサ)は約30〜200℃、灯油は約150〜250℃の留分から作られます。成分が異なるため、ガソリンエンジンで灯油を使うことや、石油ファンヒーターにガソリンを入れることは危険であり、絶対に行ってはいけません。
Q4. LPガス(プロパンガス)は原油とは別ものですか? A. プロパンガス(LPガス)は原油の精製工程で得られるプロパン・ブタンを液化したものです。原油価格の影響を受けやすい燃料です。一方、都市ガスは天然ガス(LNG)を原料とするため、原油とは異なる資源から作られています。
Q5. 原油価格が上がると灯油価格はすぐに上がりますか? A. 原油価格の変動は、おおむね1〜2週間程度のタイムラグを経て灯油やガソリンの店頭価格に反映される傾向があります。ただし、政府の補助金制度の有無や補助金額によって、実際の店頭価格は大きく異なります。資源エネルギー庁では毎週の燃料油価格を公表していますので、参考にしてください。
まとめ|原油と石油の違い、押さえておきたいポイント

原油と石油の関係を整理すると、以下のようにまとめられます。
- 石油は総称で、原油・ガソリン・灯油・軽油・LPガスなどをすべて含む概念
- 原油は精製前の石油であり、油田から採掘したままの状態のもの
- 原油を製油所で蒸留・精製することで、ガソリン・灯油・軽油・LPガスなどの石油製品が作られる
- 灯油ストーブや石油ファンヒーター、灯油ボイラーで使う「灯油」も、原油を精製した石油製品の一つ
- 原油価格が上昇すると、まずガソリン・灯油の価格に影響が出て、その後電気代・ガス代・食料品価格へと波及する
- 日常会話で「石油」と言う場合は「灯油」を指すことが多いが、ニュースでは「原油」と区別して使われる
冬場の暖房シーズンに灯油代が気になる方や、光熱費の変動が気になる方にとって、原油と石油の関係を理解しておくことは「なぜ値上がりするのか」「今後どうなるか」を考えるための基礎知識になります。
資源エネルギー庁が公表する最新の燃料油価格も定期的に確認しておくと、家庭の燃料管理に役立つでしょう。

