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ナフサ不足で住宅資材が値上がり|給湯器・断熱材・配管への影響と対策

建築資材(木材・鉄筋・セメントなど)の価格が上昇し、コインの積み上がりと上向きの矢印で値上がりを表現したイラスト
Yuta
記事監修者
現:ガス会社に勤める兼業WEBライター。所持資格はガス開栓作業に必要な高圧ガス販売主任者二種、ガス工事に必要な液化石油ガス設備士、灯油の取り扱いに必要な危険物乙四種、その他ガス関連資格多数と電気工事士などの資格も多数所持。

最近、給湯器の交換見積もりを取ったら、以前より費用が上がっていた
リフォームを頼んだら断熱材が高くなっていると言われた

——そんな経験をされた方は、2026年の今、少なくないのではないでしょうか。

その背景にあるのが「ナフサ不足」です。
ガソリン・灯油・プラスチック製品の原料となるナフサの供給が急激に逼迫し、私たちの住まいを直接支える資材と設備の価格が、広い範囲で上昇しています。

この記事では、住宅設備を専門とするメディアの立場から、ナフサ不足が断熱材・配管・塗料・シンナー・給湯器などに与えている具体的な影響と、家庭でできる対応策をまとめます。


目次

ナフサとは何か――住宅資材との意外な関係

ナフサとは、原油を精製する過程で得られる軽質の石油製品です。
ガソリンや灯油の「隣人」ともいえる存在ですが、燃料として使われるのではなく、石油化学工場でエチレン・プロピレンなどの基礎化学品に分解され、プラスチック・合成繊維・塗料・接着剤など、数え切れないほどの素材の出発点となります。

住宅1棟には、ナフサ由来の素材が驚くほど多く使われています。
目に見えない壁の中の断熱材、床下に張り巡らされた配管、外壁を保護する塗料、塗装現場で使われるシンナー、窓回りのコーキング材——いずれもナフサを起点とした化学製品です。
給湯器やエアコン本体にも樹脂(プラスチック)部品が多数使われており、ナフサ価格の動向は製品コストに直接影響します。

2026年、中東情勢の緊迫化を背景にホルムズ海峡の通過が事実上制限される事態が発生し、日本のナフサ供給に大きな不安が生じました。
日本は原油輸入の約9割を中東に依存しており、その影響は石油化学全体に及んでいます。
三菱ケミカル・三井化学・旭化成・出光興産などの大手化学メーカーがエチレン設備の減産を相次いで発表し、住宅資材メーカーはその波を真っ先に受ける形となっています。


住宅資材への具体的な影響

断熱材——ZEH必須素材が最大40%値上がり

住宅の省エネ化に欠かせない押出法ポリスチレンフォーム(XPS)は、ナフサ由来のポリスチレンを原料とします。
カネカ(カネライトフォーム)は2026年4月1日出荷分より現行比40%の値上げを発表しており、デュポン・スタイロなども同様の値上げに踏み切っています。

押出法ポリスチレンフォームは、床・基礎・外壁の断熱工事に広く使われる素材であり、国が推進するZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)や高断熱リフォームでも必須の建材です。
断熱工事を計画中の方は、資材費の大幅な上昇を念頭に置いた予算設定が必要になっています。

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断熱材の種類主な用途ナフサ依存度値上げ状況(2026年時点)
押出法ポリスチレンフォーム(XPS)床・基礎・外断熱最大40%値上げ
ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)壁・屋根値上げ傾向
硬質ウレタンフォーム壁・屋根・床高(ポリオール原料)値上げ傾向
グラスウール壁・天井低(ガラス系)比較的安定
ロックウール壁・天井低(鉱物系)比較的安定

断熱材の選定にあたっては、ナフサ依存度の低いグラスウール・ロックウールも選択肢に入れることで、資材コストを抑えられる可能性があります。
ただし、各材料には断熱性能・施工性・使用箇所の適合条件が異なりますので、施工業者との相談が重要です。

塩化ビニル(PVC)配管——水道・給湯設備工事に直撃

水道管・給湯配管・排水管などに広く使われる塩化ビニル樹脂(PVC)は、エチレンと塩素から作られます。
エチレンはナフサを熱分解して得られるため、ナフサ供給の逼迫はPVC価格の上昇に直結します。

信越化学工業・積水化学工業などは2026年4月の納入分から、塩化ビニル樹脂を1kgあたり30円以上値上げすると発表しています。

給湯器の交換工事や、配管の引き直し・リフォームを予定している方にとっては、配管材費が上乗せになる可能性があります。
設備工事の見積もり取得は、できる限り早い段階で行うことをおすすめします。

外壁塗料・コーキング材の値上げ

外壁の保護や防水に使われる建築塗料・コーキング材(シーリング材)の多くも、ナフサ由来の樹脂や溶剤を原料としています。
5月以降、主要な塗料メーカー各社が製品価格を10〜20%程度値上げする方針を示しており、現場では今後の塗装見積もり単価の上昇が避けられない状況です。

外壁塗装の予定がある方は、資材の調達状況も含めて施工業者に確認することをおすすめします。

シンナー——50〜80%値上げ・出荷制限という異例の事態

今回のナフサ不足で、住宅業界が特に深刻な影響を受けている素材のひとつがシンナーです。

シンナーとは、塗装工事の現場で塗料を薄める(希釈する)ために使われる溶剤で、外壁塗装・屋根塗装・各種仕上げ塗装のほぼすべてで使用される、施工に欠かせない副資材です。
塗装後の用具(ハケ・ローラー)の洗浄にも使われます。

このシンナーの主原料もナフサです。
ナフサを熱分解して得られるベンゼン・トルエン・キシレン(BTX)や、脂肪族炭化水素系の溶剤が、各種シンナーの主成分となっています。

2026年3月、この状況が一気に表面化しました。

塗料大手の日本ペイントは、建築・自動車の塗装現場で使われるシンナー製品全般について、50〜75%程度の値上げを発表(3月〜4月にかけて実施)。
大手塗料メーカーのエスケー化研でも80%の値上げがすでに始まっています。
5月以降は全塗料メーカーで塗料製品自体の値上げも予定されており、10〜20%程度の引き上げが見込まれています。

値上がりだけではありません。
複数の塗料メーカー・材料商社から「出荷制限(荷制限)」の通知が相次いでいます。
KFケミカル・プレマテックスなど、各メーカーが通常以上の発注数量を制限する動きに出ており、「価格が上がるだけでなく、そもそも必要な量が入荷できない」という状況が現場で広がっています。

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メーカー製品・対象値上げ幅時期
日本ペイントシンナー製品全般50〜75%2026年3月〜4月
エスケー化研シンナー製品80%2026年3月〜
各塗料メーカー塗料製品全般10〜20%程度(予定)2026年5月〜
各材料商社シンナー類全般30〜80%2026年3月〜

※値上げ幅・時期は各社発表に基づく。今後変動する可能性があります。

住宅の外壁塗装・屋根塗装を検討している方への影響は、次のように整理できます。

まず、施工費用の上昇です。
シンナー・塗料の資材費が大幅に上がるため、見積もり額が以前より高くなるケースが増えています。
一部の塗装業者はすでに見積もり単価に5〜10%の上乗せを始めています。

次に、工期への影響です。
シンナーが入荷できない場合、工事の開始・進行が遅れる可能性があります。
特に繁忙期と重なると、材料の確保が難しくなる場面も出てくると考えられます。

なお、一部のメーカーは今回のシンナー不足を受けて、水溶性溶剤塗料(水性化)への切り替えを提案しています。
水性塗料はシンナーではなく水で希釈するため、今回の影響を受けにくいという特徴があります。
ただし、施工適性や仕上がりの特性が溶剤系と異なる場合があるため、業者との事前確認が必要です。

床材・サッシ・コーキング

PVC素材は配管だけでなく、フローリング下地・塩ビシート床材・窓枠サッシのシール材にも使われています。
リフォーム工事全体のコストが上昇傾向にあることを踏まえ、複数業者から相見積もりを取ることが重要になっています。


給湯器・暖房設備への波及

ナフサ不足の影響は、建材にとどまりません。
給湯器・ストーブ・エアコンといった住宅設備の本体価格にも、じわじわと影響が及んでいます。

製品本体の樹脂部品コスト上昇

給湯器1台には、燃焼室の外装カバー・配管継手・コントローラーケースなど、多数の樹脂(プラスチック)部品が使われています。
エアコンの室外機・室内機も同様です。
ナフサ由来のポリプロピレン・ABSなどの汎用樹脂が値上がりすれば、これらの部品コストが上昇し、製品価格に転嫁されていきます。

実際に、ノーリツ・リンナイなどの大手給湯器メーカーは近年、原材料・物流コストの上昇を背景に製品価格の引き上げを続けており、2026年以降も価格の上昇傾向が続く可能性があります。

修理部品の調達にも影響する可能性

エチレン系の樹脂を使った部品は、修理・交換用の補修部品にも使われています。
メーカーが部品の製造・在庫を維持するためのコストが上昇するため、修理費用にも影響が出てくる可能性があります。

設備の寿命を延ばすためにも、定期的なメンテナンスと早めの点検が、今まで以上に重要です。

工事費全体の上昇

資材費だけでなく、工事に使う工具・消耗品・養生材などにも石油化学製品が使われています。
施工業者側のコスト増加が工事費に反映されやすくなっており、同じ工事内容でも以前より見積もりが上がるケースが増えています。


「ウッドショック」との違い

2021年に起きた「ウッドショック」は、木材の国際価格が急騰して新築住宅の建設コストが跳ね上がった出来事として記憶されています。
今回のナフサ不足による影響は、性質が異なります。

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比較項目ウッドショック(2021年)ナフサ不足(2026年)
影響する資材木材(構造材・合板中心)断熱材・配管・塗料・シンナー・床材など広範囲
影響の範囲主に新築・木造建築新築・リフォーム・設備交換全般
設備機器への影響間接的直接的(部品コスト上昇)
供給回復の見通し数年かけて徐々に改善中東情勢次第で長期化の可能性

ウッドショックが「木造住宅の建設コスト問題」だったのに対し、今回は石油化学製品全般に影響が及ぶため、木造・鉄骨・RC造を問わず、新築からリフォーム・設備交換まで幅広く影響が出ている点が特徴です。


今、家庭でできる対応策

1. 設備交換・リフォームの計画を前倒しに検討する

給湯器の交換や断熱リフォームを「数年後に」と考えている場合、資材費・工事費がさらに上昇する前に計画を前倒しにすることが選択肢になります。特に築10年以上の給湯器をお使いの方は、故障してから急いで対応するより、計画的な交換のほうがコスト・工期ともに有利になる場合があります。

2. 複数業者から相見積もりを取る

同じ工事内容でも、業者によって使用する資材や調達ルートが異なります。相見積もりを複数業者から取ることで、現時点の適正な価格水準を把握できます。

3. 補助金制度を積極的に活用する

国の「給湯省エネ2026事業」では、エコキュートや省エネ給湯器の新設・更新に最大12万円の補助金が設けられています。また「みらいエコ住宅2026事業」では、断熱リフォームや窓の改修工事を対象とした補助が行われています(予算に限りがあるため、最新情報は各省庁の公式サイトでご確認ください)。

資材費・工事費が上昇しているこの時期だからこそ、補助金を組み合わせることで実質的な負担を抑えることができます。

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補助制度対象補助額の目安
給湯省エネ2026事業エコキュート・省エネ給湯器の新設・更新最大12万円
みらいエコ住宅2026事業断熱改修・省エネリフォーム工事内容により異なる
先進的窓リノベ2026事業窓の断熱改修工事内容により異なる

※補助金は予算上限に達し次第終了となる場合があります。申請前に各事業の公式サイトで最新情報を確認してください。

4. 現在の設備を丁寧にメンテナンスして延命する

新しい設備への交換が難しい場合、現在の設備を長持ちさせることも重要な対応策です。

  • 給湯器:年に1回程度の点検・フィルター清掃
  • エアコン:フィルター清掃を月1〜2回
  • 暖房機器:シーズン前の点火確認・燃焼状態の確認

部品交換が必要な故障は、早期発見するほど修理費を抑えられる可能性があります。
異音・異臭・エラーコードの表示があれば、早めにメーカーまたは専門業者に相談することをおすすめします。

5. グラスウール・ロックウールなど代替素材も検討する

断熱リフォームを検討中の場合、ポリスチレン系断熱材に限定せず、ナフサ依存度が低いグラスウールやロックウールを選択肢に含めることで、資材コストを抑えられる場合があります。
断熱性能・施工箇所・コストのバランスを施工業者と相談してみてください。

6. 塗装工事は水性塗料への切り替えも選択肢に

外壁・屋根の塗装リフォームを検討中の場合、シンナー不足の影響を受けにくい水性塗料の採用を施工業者に相談してみることも一つの方法です。
近年の水性塗料は性能面で溶剤系に引けを取らない製品も増えており、においが少ない・乾燥が速いといったメリットもあります。
使用箇所や下地の状態によって適否が変わるため、業者との事前確認は欠かせません。


今後の見通し——いつまで続くのか

ナフサ不足の影響は、中東情勢の展開次第で長期化する可能性があります。
迂回航路の採用によるコスト増、国際市場でのナフサ争奪戦、国内精製能力の制約といった要因が重なっており、短期間での完全な解消は難しい状況と見られています。

政府は2026年3月末、担当閣僚を新設してナフサの安定供給確保に向けた対応を進めています。
また、化学メーカー各社も代替原料や調達先の多様化を模索しています。
しかし住宅資材の値上げ幅が既に発表・実施されている現状では、2026年内は高水準の資材コストが続く可能性が高いといえます。

「値段が下がるまで待つ」という判断が正解になるかは見通せません。
設備の現状と緊急度を冷静に評価しながら、計画的に動くことが求められる局面です。


よくある質問

Q. ナフサ不足は給湯器の交換費用にも影響しますか?

A. 影響する可能性があります。給湯器本体には多数の樹脂(プラスチック)部品が使われており、ナフサ由来の汎用樹脂の価格上昇が製品コストに転嫁されやすい状況です。また、交換工事に使う配管材・シール材・養生材にも石油化学製品が含まれるため、工事費全体としても上昇傾向にあります。交換を検討中の方は早めに見積もりを取ることをおすすめします。

Q. シンナーが不足すると、外壁塗装の工事が受けられなくなりますか?

A. 現時点では施工自体ができなくなる状況ではありませんが、入荷量の制限により工期が延びたり、見積もり単価が上乗せされるケースが増えています。施工業者によっては受注を慎重化している場合もあるため、早めの相談・予約が安心です。シンナーを使わない水性塗料への切り替えで影響を軽減できる場合もあります。

Q. 断熱リフォームを予定しています。今すぐ着工すべきですか、待つべきですか?

A. 「待てば資材が安くなる」という見通しは現時点では立ちにくい状況です。中東情勢が落ち着けば価格が下がる可能性はありますが、時期は不透明です。一方、給湯省エネ2026事業・みらいエコ住宅2026事業などの補助金は予算上限に達し次第終了します。設備の劣化状況と補助金の申請期限を照らし合わせながら、業者と相談して判断することをおすすめします。

Q. 水性塗料と溶剤系塗料、どちらを選べばよいですか?

A. シンナー不足の影響を避けたい場合は水性塗料が有利ですが、下地の状態・施工箇所・求める仕上がりによって適否が変わります。近年の水性塗料は性能面で溶剤系に引けを取らない製品も増えていますが、金属部や旧塗膜の種類によっては溶剤系のほうが密着性に優れる場合もあります。施工業者に現状の外壁を診断してもらい、最適な塗料を選んでもらうのが確実です。

Q. グラスウールとポリスチレン系断熱材、価格以外の違いは何ですか?

A. 主な違いは施工箇所・断熱性能・防湿性・吸音性などです。グラスウールは壁・天井の充填断熱に向いており、コストパフォーマンスが高く吸音性もあります。一方、ポリスチレン系(XPS・EPS)は水に強く、基礎や床下など湿気が多い箇所に適しています。今回のナフサ不足でポリスチレン系が値上がりしているため、施工箇所によってはグラスウールへの切り替えでコストを抑えられる場合があります。施工業者に相談しながら用途に合った素材を選んでください。

まとめ

建築資材(木材・鉄骨・セメントなど)と建設現場を背景に、価格上昇を示す炎付きの赤い矢印と円マークのコインが描かれた値上がりイメージイラスト

ナフサ不足が住宅資材・設備に与える影響を整理すると、以下のようになります。

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影響を受ける資材・設備主な影響
断熱材(ポリスチレン系)最大40%値上げ
塩化ビニル配管(PVC)1kgあたり30円以上値上げ
外壁塗料・コーキング材5月〜10〜20%値上げ(予定)
シンナー類(塗装用溶剤)50〜80%値上げ・出荷制限が同時発生
給湯器・エアコン本体樹脂部品コスト上昇による製品価格の上昇傾向
工事費全体資材・消耗品コスト増加を反映して上昇傾向

「ガソリンや灯油が高い」という実感に加え、住まいの設備を維持・更新するコストも静かに上昇しています。
補助金の活用・相見積もり・計画の前倒しを組み合わせながら、賢く対応していただければと思います。

また設備のエラーコードが出ている、給湯器の調子が最近おかしいといった方は、ぜひお早めに専門業者への相談をご検討ください。


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この記事を書いた人

「暮らしの設備ガイド」は、給湯器・ストーブ・換気設備など、
家庭の安心と快適を支える“住まいの設備”に関する専門メディアです。

現在もガス業界で設備施工・保守に携わるYuta(ガス関連資格保有者)が監修し、一般家庭向けのガス機器・暖房設備・給湯器交換の実務経験をもとに、現場の知識に基づいた、正確で実用的な情報を発信しています。

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