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ナフサ不足が食品に与える影響とは?値上がりの仕組みと今後の見通しを解説

ナフサ不足によってプラスチック包装材が減少し、食品の供給や陳列に影響が出ている様子を描いたイラスト
Yuta
記事監修者
現:ガス会社に勤める兼業WEBライター。所持資格はガス開栓作業に必要な高圧ガス販売主任者二種、ガス工事に必要な液化石油ガス設備士、灯油の取り扱いに必要な危険物乙四種、その他ガス関連資格多数と電気工事士などの資格も多数所持。

「ナフサが不足すると、なぜ食品の値段が上がるの?」——2026年春、この疑問を持つ方が急増しています。

中東情勢の緊迫化を背景にホルムズ海峡の通航が事実上困難になり、日本のナフサ調達に深刻な支障が生じています。ガソリンや灯油の値上がりは連日報道されていますが、「なぜ食品にまで影響するのか」はまだ十分に知られていません。

2026年4月27日、食品・飲料メーカーや飲食店など712の企業・団体が加盟する国民生活産業・消費者団体連合会(生団連)が緊急調査を発表しました。
その結果、食品・飲料メーカーの4割がすでにナフサ不足の打撃を受けていることが明らかになっています。

この記事では、ナフサ不足がなぜ食品に影響するのか、その仕組みを整理したうえで、最新の調査データをもとに今後の見通しを解説します。


目次

ナフサと食品の関係——なぜ石油原料が食品の値段を左右するのか

ナフサからエチレン生産を経てプラスチック原料となり、食品容器や包装材に使われた後、食品メーカーのコスト増加と価格上昇につながる流れを示したイラスト

食品そのものにナフサは含まれていません。
しかし食品業界は、食べ物を作り・入れ・運ぶすべての工程でナフサ由来の素材に深く依存しています。

食品へのナフサ影響ルートは3つ

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ルート具体的な素材・用途食品への影響
容器・包装材プラスチックトレー、食品ラップ、フタ、ラベル、フィルム調達困難・コスト増
流通・物流梱包フィルム、緩衝材、輸送容器物流コスト増
農業・生産農業用マルチフィルム、肥料袋、農薬容器農作物の生産コスト増

なかでも影響が大きいのが「容器・包装材」です。
食品メーカーは製品を消費者に届けるために大量のプラスチック素材を使っており、その原料の大半がナフサ由来のエチレン・プロピレンを経由して作られます。

ナフサ → エチレン生産 → プラスチック原料 → 食品容器・包装材 → 食品メーカーのコスト増 → 価格転嫁

この連鎖に1〜3か月程度のタイムラグが生じるため、「今は値上がりしていないから大丈夫」という状況が数か月後に一変することがあります。

日本のナフサ調達構造が問題を深刻にしている

日本は輸入ナフサの約74%を中東産に依存しており(石油化学工業協会・2024年データ)、国内精製分の原料となる原油も約9割が中東からの調達です。
実質的な中東依存度は8割を超えます。

さらに深刻なのが備蓄の問題です。
原油には国家備蓄制度(約250日分)が整備されていますが、ナフサには国家備蓄制度がありません
民間在庫は約20日分という非常に薄い水準であり、ホルムズ海峡の通航制限が始まった直後から石油化学産業の稼働に影響が出ました。


最新調査が示す食品業界の実態(2026年4月)

透明な食品トレーやカップ容器、パウチ袋に加えて、プラスチック製の緩衝材やフィルムなどナフサ由来の包装資材が並ぶイメージイラスト

食品企業の4割がすでに打撃——生団連の緊急調査

生団連(国民生活産業・消費者団体連合会)が2026年4月27日に発表した緊急調査では、加盟する食品・飲料メーカーの4割がすでにナフサ不足の影響を受けていると回答しています。

容器・包装材の調達難が主な原因とされており、影響は菓子・乳製品・冷凍食品・惣菜など幅広い食品分野に及んでいます。

「包装資材」が値上げ要因の最大項目に——帝国データバンク調査

帝国データバンクが2026年4月30日に公表した「食品主要195社の価格改定動向調査」でも、食品業界の変化が数字で明確に示されています。

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値上げ要因割合特記事項
原材料高99.6%2023年集計開始以来、最高水準
包装・資材69.9%年間では2023年以降で最高ペース
物流費73.6%引き続き高水準
エネルギー59.5%ナフサ高騰の間接影響も

注目すべきは「包装・資材」を値上げ要因に挙げた企業が約7割に達し、集計開始以来で最も高い比率になった点です。
従来は「原材料費」や「人件費」が主要因とされることが多かった食品値上げが、ナフサ不足を起点とした包装資材コストの上昇という新しい要因に押されつつあることを示しています。

同調査は「早ければ今夏中、遅くとも秋ごろに広範囲な値上げラッシュ再燃の可能性が高い」と指摘しています。

家計への影響は年間2万円超の試算

野村総合研究所の試算によると、ナフサ由来製品の値上がりで4人家族の家計の年間負担額は約2万2,500円〜3万5,100円増加する見込みです。
また「消費者物価は一時的に1%弱上昇する見通し」とされています。

通常、原油価格の上昇から食品・日用品への価格転嫁は数か月から半年かけて進むのが通例ですが、今回は原油価格の上昇に「品不足」という要因が重なっているため、より大きな幅で、かつより早く影響が表面化する可能性があると指摘されています。


食品への影響が出やすいカテゴリと出にくいカテゴリ

カップ型スイーツ、惣菜トレー、弁当容器、冷凍食品パッケージ、カップ麺容器が並んだ食品包装資材のイメージイラスト

ナフサ不足の影響は、食品の種類によって異なります。
「容器・包装材への依存度」が高いほど、値上がりの影響を受けやすい傾向があります。

影響を受けやすい食品

プラスチック容器を多く使う食品(影響大)

カップ型スイーツ・惣菜トレー・弁当容器・冷凍食品の包材・カップ麺のカップなど、ポリスチレン(PS)やポリプロピレン(PP)容器を使う食品は特に影響を受けやすい状況です。
生団連の調査でも、容器の調達難が惣菜・菓子・乳製品・冷凍食品など幅広い分野に及んでいることが報告されています。

食品用ラップを多く使う食品

食品用ラップの原料はポリエチレン(PE)やポリ塩化ビニリデン(PVDC)であり、いずれもナフサ由来です。
精肉・鮮魚・野菜など、ラップがけで販売される生鮮食品は加工・包装コストが上昇します。ゴミ袋などと同様、エチレン由来製品全般に30%超の値上げ報告も出ています。

ペットボトル入り飲料

ペットボトルの原料はナフサ由来のPET(ポリエチレンテレフタレート)です。
飲料メーカーは容器コストの上昇圧力を受けており、今後の価格改定の要因となります。

業務用容器を使う食品

外食・中食産業で使われる業務用の容器・包材も同様の影響を受けます。
一部では業務用商品の販売一時休止を余儀なくされるケースも出てきています。

相対的に影響が小さい食品

カテゴリ理由
裸売りの野菜・根菜類プラスチック包装の使用が少ない
缶詰・瓶詰め食品容器が金属・ガラス製
米・豆類(紙袋入り)容器の石油依存度が低い

ただし、物流コストやエネルギーコストの上昇は事実上すべての食品に波及するため、「容器が非プラスチックだから完全に無関係」とは言い切れない点には注意が必要です。


農業・食品生産コストへの波及

「入れ物」だけでなく、「作る段階」でもナフサ不足の影響が及んでいます。

農業の現場では、マルチフィルム(圃場を覆うビニールシート)・肥料袋・農薬容器・ハウス農業用のビニールシートなど、広範囲にわたってナフサ由来の素材が使われています。
読売新聞が2026年4月に報じたように、ナフサ製品の高騰は農作物の生産から流通までコスト増をもたらし、飲食料品の値上がりにつながる可能性があると指摘されています。

農産物の生産コストが上昇すれば、その影響は数か月後の食品価格に転嫁されていきます。
これは現在報道されている「容器・包装材の値上がり」と時間差で加わってくる、第二波の影響とも言えます。


サプライチェーンの「目詰まり」という別の問題

今回のナフサ問題で難しいのは、単純な「物不足」ではなく供給の目詰まりが同時に起きている点です。

政府は「日本全体として必要な量は確保されている」と繰り返していますが、複雑なサプライチェーンの一部で詰まりが生じており、「原料はあるのに特定の企業・工場に届かない」という状況が各所で報告されています。

食品メーカーが容器メーカーに発注しても、容器メーカーが樹脂原料を調達できない——こうした「連鎖する滞り」が、食品業界全体の供給を不安定にさせています。
中東情勢が落ち着いてもすぐに正常化するわけではなく、物流・生産・在庫の調整にも時間を要します。


今後の見通し——いつ、どの程度影響が出るか

ホルムズ海峡を上空から俯瞰した構図

現状の報道と調査データをもとに、今後の動きを整理します。

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時期見通し
2026年5〜6月包装資材を起点とした食品への価格転嫁が本格化し始める時期。一部食品で容器の調達難が継続。
2026年夏(7〜8月)帝国データバンクが「値上げラッシュ再燃」を予測。大手食品メーカーの7月値上げが相次ぐ見込み。
2026年秋以降中東情勢が落ち着いても物流混乱の余波が継続。農業コスト増の転嫁が本格化する可能性。

ただし、これらはあくまで現時点の情報に基づく見通しです。
中東情勢の動向・ホルムズ海峡の通航状況・代替調達の進捗によって、状況は大きく変化する可能性があります。

米国とイランの間では停戦合意の動きも報じられていますが、仮に輸入量が回復したとしても、エチレン設備の生産回復や物流の正常化には一定の期間が必要とされています。
価格の高止まりが続く可能性もあります。


家庭でできること

値上がりを完全に回避することはできませんが、生活の無理のない範囲で負担を和らげることはできます。

繰り返し使える保存グッズへの切り替え

食品ラップや使い捨て保存袋は値上がり圧力が高い品目です。
シリコン製の蓋やガラス保存容器など、繰り返し使えるアイテムに切り替えることで長期的な支出を抑えられます。

容器・包装に依存しにくい食品を増やす

裸売りの野菜、缶詰・瓶詰め食品、紙袋入りの乾物類などは、ナフサ不足による容器コスト上昇の直撃を受けにくい傾向があります。日常の食卓に意識して取り入れることで、食費のバランスを保ちやすくなります。

価格動向を定期的に確認する

帝国データバンクが毎月公表する食品価格動向調査や、主要食品メーカーの発表を定期的に確認することで、値上げの波を先読みした家計管理ができます。


よくある質問(Q&A)

Q1. ナフサ不足はなぜ食品の値段に影響するのですか? 食品そのものにナフサは含まれませんが、食品を入れる容器・包む包装材・運ぶための資材のほぼすべてがナフサ由来のプラスチック素材で作られています。容器・包装コストが上がれば、その分が食品の価格に転嫁されます。

Q2. 食品への影響はいつごろから本格化しますか? 帝国データバンクの2026年4月調査では「早ければ今夏中、遅くとも秋ごろに広範な値上げラッシュ再燃の可能性が高い」とされています。ナフサ価格の上昇から食品への転嫁には1〜3か月程度のタイムラグがある点も考慮が必要です。

Q3. どんな食品が値上がりしやすいですか? プラスチック容器・トレー・ラップを多く使う食品が値上がりしやすい傾向があります。惣菜・カップ型スイーツ・冷凍食品・ペットボトル飲料などが代表例です。一方、裸売りの野菜や缶詰・瓶詰め食品は相対的に影響が小さいとされています。

Q4. 政府は「ナフサは確保できている」と言っていますが、なぜ影響が出るのですか? 政府が言う「確保」はナフサ全体の総量の話であり、複雑なサプライチェーンの途中で「目詰まり」が生じている点が問題です。特定の企業や工場に必要な原料・容器が届かない状況が各所で発生しています。また、価格の高騰は量が確保されていても別問題として影響します。

Q5. 家庭でできる対策はありますか? シリコン蓋やガラス容器など繰り返し使える保存グッズへの切り替え、缶詰・裸売り野菜など包装依存度の低い食品を食卓に増やすことが現実的な対策です。帝国データバンクの価格動向調査などを定期的に確認し、値上げの波を先読みしておくことも有効です。

まとめ

  • ナフサ不足が食品に影響するのは「容器・包装材・物流コスト・農業資材コスト」を通じた間接的なルート
  • 生団連の緊急調査(2026年4月)で、食品・飲料メーカーの4割がすでに打撃を受けていることが判明
  • 帝国データバンクの調査では、値上げ要因として「包装・資材」を挙げた企業が約7割と、集計開始以来の最高水準
  • 「原料はあるのに届かない」供給の目詰まりが、問題をさらに複雑にしている
  • 帝国データバンクは「今夏〜秋に広範な値上げラッシュ再燃の可能性が高い」と指摘
  • 農業コスト増の転嫁は時間差で加わる「第二波」として、秋以降に本格化する可能性がある

食品の値上がりは一度に来るのではなく、品目ごとに時間差で進みます。
何が・なぜ値上がりしているのかを理解しておくことが、冷静な家計管理への第一歩です。


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この記事を書いた人

「暮らしの設備ガイド」は、給湯器・ストーブ・換気設備など、
家庭の安心と快適を支える“住まいの設備”に関する専門メディアです。

現在もガス業界で設備施工・保守に携わるYuta(ガス関連資格保有者)が監修し、一般家庭向けのガス機器・暖房設備・給湯器交換の実務経験をもとに、現場の知識に基づいた、正確で実用的な情報を発信しています。

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