「近くのスーパーでゴミ袋が売り切れていた」
「ホームセンターの棚が空になっていた」
——そんな経験をされた方も多いのではないでしょうか。
2026年春、中東情勢の緊迫化を背景にしたナフサ不足の影響が、私たちの暮らしに直接響く形で現れ始めています。なかでも目に見えやすい変化が、ゴミ袋・指定ごみ袋の品薄です。
この記事では、なぜゴミ袋が店頭から消えているのか、そして自治体がどのような対応を取っているのか、品薄のときに何を使えばよいのかを整理します。
ゴミ袋がなぜ品薄になるのか

ゴミ袋(ポリエチレン製)の原料をたどると、ナフサに行き着きます。
原油を精製する過程で取り出されるナフサは、高温で分解されることで「エチレン」という基礎化学品になります。
エチレンを重合させたものがポリエチレンであり、これがゴミ袋・レジ袋・食品保存袋の主原料です。
| 工程 | 素材・製品 |
|---|---|
| 原油の精製 | ナフサ(粗製ガソリン) |
| ナフサの熱分解 | エチレン |
| エチレンの重合 | ポリエチレン(PE) |
| ポリエチレンの成形 | ゴミ袋・レジ袋・食品保存袋 |
日本はナフサの調達を大きく中東に依存しており、国内精製分の原料となる原油も含めれば、中東情勢の影響を受ける割合は実質的に高い水準とされています。
これにより、国内のエチレン設備の多くが減産に動いており、ポリエチレンの生産量が絞られた結果、ゴミ袋を含むポリ袋製品の流通量が減少している状況です。
品薄の実態|「在庫がゼロに近い」自治体も
店頭で目立ち始めているのが、特に自治体の指定ごみ袋の品薄です。
2026年4月下旬、FNNの取材班が訪れた千葉県市原市のスーパーでは、担当スタッフが「入荷が滞ってしまって、今出せるのはこれが最後になる」と語り、店舗では1家族2点までの購入制限を行っていました。
特に割安な45リットル50枚入りが真っ先に消え、30リットル10枚入りには比較的在庫が残っていたといいます。
一方、宮城県内の複数の自治体では、さらに深刻な状況が報告されています。
栗原市の環境課は「在庫がゼロに近い状況」と説明しており、実際の供給不足が始まっていることが確認されています。
品薄の本質|「需要の集中」と「実需の減少」が重なっている

指定ごみ袋の品薄には、2つの要因が重なっています。
要因①:買いだめによる需要の集中
市原市は公式発表で「指定ごみ袋は例年と同程度の数量が安定的に供給されている」と発表しました。
これは供給側の製造・出荷量は平時並みであることを意味します。
にもかかわらず店頭から消えているのは、ナフサ不足の報道を受けて市民が一斉に買い込んだことで、短期的に需要が急増したためです。
SNSでも「ホームセンターのゴミ袋棚が一つもなかった」「念のため多めに買った」という投稿が相次ぎ、同じサイズに需要が集中したことで特定サイズの欠品が広がりました。
要因②:製造委託先からの実際の供給遅延
一方、宮城県の事例はやや異なります。同県大崎市など複数の自治体は、「製造受託事業者からの供給遅延が見込まれる」として、実際に製造側からの納品が遅れるリスクを理由に対応策を取りました。
これは買いだめによる流通側の品薄ではなく、製造・原材料側の問題がすでに具体的な供給計画に影響を及ぼし始めていることを示しています。
現場の状況をまとめると、次のようになります。
| 品薄の種類 | 主な原因 | 事例 |
|---|---|---|
| 流通・店頭レベルの品薄 | 買いだめによる需要の一時集中 | 千葉・市原市などの市販ゴミ袋 |
| 自治体指定袋の供給遅延 | 製造側の原材料調達に支障 | 宮城・大崎市など、茨城・龍ケ崎市など |
自治体の対応|「市販の袋でOK」へのルール緩和が広がる
この状況に対し、全国の自治体が相次いで緊急措置を発表しています。
宮城県大崎市など1市4町(2026年4月20日〜)
河北新報などの報道によると、宮城県大崎市を含む1市4町は2026年4月20日から約1カ月間、ごみ出しルールを緩和し、市販の透明または半透明(30〜45リットル)の袋でのごみ出しを認めることにしました。
ナフサの供給不安を背景に、製造受託事業者からの供給遅延が見込まれることへの対応です。なお、色付きの袋は対象外としています。
茨城県龍ケ崎市(2026年4月27日〜6月30日)
龍ケ崎市は2026年4月22日付で公式サイトに告知を掲載し、4月27日から6月30日まで(供給状況により延長あり)の臨時措置として、指定ごみ袋が品切れの場合、市販の透明・半透明・乳白色のビニール袋での排出を認めるとしています。
市が保有している在庫は「間もなくなくなる見込み」とも明記されており、店頭での供給再開は6月下旬以降を目途としています。
また、レジ袋(透明・半透明)も使用可としている一方、黒いゴミ袋・紙袋・土のう袋などは収集不可としています。
千葉県市原市(2026年4月〜)
市原市は指定ごみ袋の供給が安定していることを強調しながらも、実態として店頭での品薄が進んでいることを受け、市民に冷静な購入を呼びかけています。
同時に、一部メディアの報道では市販袋での代替を認める方向での検討も進んでいると伝えられています。
沖縄県与那原町(2026年5月1日〜)
与那原町の指定ごみ袋は、「もやすごみ」「もやさないごみ」の文字をプリントする工程でシンナーを使用しています。このシンナーの調達が困難になったことから、5月1日以降はプリントをなくし、袋の色(青=燃やすごみ、赤=燃やさないごみ)による区別に切り替えることを決定しました。
ゴミ袋のプリント工程にまでナフサ不足の影響が及んでいることを示す事例です。
自分の自治体の対応を確認する方法
自治体のルール緩和措置は、自治体ごとに対応状況が異なります。
お住まいの自治体が対応済みかどうか確認するには、以下の方法が確実です。
- 自治体の公式ウェブサイトを確認する(「指定ごみ袋 臨時措置」「ごみ袋 代替」などで検索)
- 市区町村の環境・廃棄物担当窓口に問い合わせる
- 自治体公式のSNS(X・Facebookなど)を確認する
措置の有無・期間・使用できる袋の条件(サイズ・色・素材)は自治体によって異なるため、必ずご自身の自治体情報を確認してください。
指定袋が買えないときに使える袋・使えない袋

臨時措置を実施している自治体に共通している条件をまとめると、おおむね以下の通りです。
| 袋の種類 | 可否(臨時措置中) |
|---|---|
| 市販の透明ビニール袋(30〜45L程度) | ○ 多くの自治体で可 |
| 市販の半透明・乳白色ビニール袋 | ○ 多くの自治体で可 |
| 透明・半透明のレジ袋(スーパー等) | ○ 多くの自治体で可 |
| 黒色など中身の見えない袋 | × 不可(中身確認が必要なため) |
| 紙袋・布製の袋 | × 不可 |
| 土のう袋・段ボール | × 不可 |
中身が確認できる透明・半透明であることが共通の条件となっています。
分別のルール(燃やすごみ・燃やさないごみの区別)自体は通常通り守る必要があります。
買いだめはすべきか?どう判断するか
「品薄になるなら早めに確保しておこうか」と考えるのは自然な発想です。ただし、現時点での状況を整理すると、判断材料が見えてきます。
| 観点 | 状況 |
|---|---|
| 市販ゴミ袋の製造 | エチレン減産を受け供給量が絞られており、今後の推移は不透明 |
| 自治体指定袋 | 仙台市など一部は半年〜1年分の在庫確保済み。一方で宮城県内の複数自治体では在庫がゼロ近辺 |
| ナフサ供給全体 | 政府は4カ月〜6カ月分を確保していると説明。ただし化学メーカーの減産は継続中 |
| 韓国の先行事例 | 3月下旬にゴミ袋の買い占めが発生し、スーパーで購入制限 |
韓国では3月下旬、有料ゴミ袋の買い占めが発生し、スーパーやコンビニが1人あたりの購入枚数を制限する事態になりました。日本でも今後、市販ゴミ袋の供給量そのものが絞られる可能性は否定できません。
一方で、日本サニパックは大量注文に対して「通常量を超える大口注文は遠慮してほしい」というお願いを出しています。
過度な買いだめは他の需要者の購入機会を奪い、需要の集中による人為的な品薄を悪化させる側面もあります。
「保管できる量の範囲で、普段より1〜2パック多めに手元に持っておく」程度が現実的な対応といえます。
ゴミ袋の使用量を減らす工夫

品薄・値上がりのどちらの面でも、1枚あたりの有効活用を意識することがコスト削減につながります。
生ゴミの水切りを徹底する
生ゴミは水分が多いとにおいが出やすく、ゴミ袋の交換頻度が上がりがちです。
シンク用の水切りネットや水切りカゴで水分を絞ってから捨てると、においの発生が抑えられ、袋を長持ちさせられます。
ゴミを圧縮・分別する
ペットボトルは踏みつぶしてから資源ゴミへ、段ボールはたたんで出す、缶はつぶす——こうした圧縮・分別を習慣にするだけで、1枚の袋に入る量が増え、交換頻度を下げることができます。
小さな袋を束ねて1袋にまとめる
複数の小さなレジ袋にゴミが分散している場合、まとめて1枚の大きな袋に入れてから出すと、袋の総使用枚数を減らせます。
龍ケ崎市の臨時措置でも「小さな袋はできるだけ大きな袋にまとめてからお出しください」と案内されています。
Q&A よくある疑問
Q. 自治体の臨時措置がまだ発表されていないが、市販袋は使えますか?
A. 原則として、臨時措置の発表がない場合は指定袋を使う必要があります。お住まいの自治体の公式ウェブサイトや窓口で最新情報を確認してください。措置が発表され次第、対象の袋を確認して対応してください。
Q. 黒いゴミ袋は臨時措置中も使えますか?
A. ほぼすべての臨時措置において、黒など中身が見えない袋は不可とされています。収集作業上、中身の確認ができないためです。透明または半透明の袋をお使いください。
Q. 他の市区町村の指定袋を使うことはできますか?
A. 龍ケ崎市のケースでは「他の自治体の指定袋は極力買い求めないように」としています。別の自治体の指定袋を使うことは基本的に想定されておらず、他の透明・半透明の市販袋を使う方が適切です。
Q. 指定袋の品薄はいつまで続きますか?
A. 龍ケ崎市では「店舗への供給再開は6月下旬以降を見込んでいる」と発表しています。ただし、ナフサ・エチレンの生産動向や中東情勢次第で変動する可能性があります。現時点では見通しが立ちにくい状況です。
Q. 市販のゴミ袋(指定袋ではない一般のポリ袋)も品薄になりますか?
A. 市販ゴミ袋もポリエチレン製であり、エチレンの減産が続けば今後供給量が絞られる可能性はあります。ただし、現時点で全国的に市販袋そのものが枯渇している状況ではなく、自治体指定袋の方が先行して品薄が顕在化している状況です。
まとめ
ナフサ不足に伴うゴミ袋品薄の状況を整理すると、以下のようになります。
- ゴミ袋の原料であるポリエチレンは、ナフサを出発点とする石油化学製品
- 中東情勢の緊迫化を受けエチレン減産が続き、ポリエチレン製品の供給量が絞られている
- 店頭での品薄は「買いだめによる需要集中」と「製造側の供給遅延」が重なって発生
- 宮城県大崎市など1市4町・栗原市、茨城県龍ケ崎市、千葉県市原市などが指定袋に代わる市販袋でのごみ出しを認める臨時措置を発表・実施中
- 臨時措置では「透明・半透明のビニール袋」が条件。黒い袋・紙袋は不可
- 自分の自治体の対応状況は公式ウェブサイト・窓口で確認が必要
- 過度な買いだめは品薄を悪化させる可能性があるため、必要量より1〜2パック多い程度が現実的
指定ごみ袋が手に入らない場合の対処法を事前に把握しておくことで、いざというときに慌てずに対応できます。
お住まいの自治体の最新情報を定期的に確認しておくことをおすすめします。

