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エンジンオイルが不足している?中東情勢がもたらした「令和のオイルショック」と今できる備え

中東情勢の緊迫化によりエンジンオイル不足が深刻化し、空になったオイル棚と供給不安を表現したイメージイラスト
Yuta
記事監修者
現:ガス会社に勤める兼業WEBライター。所持資格はガス開栓作業に必要な高圧ガス販売主任者二種、ガス工事に必要な液化石油ガス設備士、灯油の取り扱いに必要な危険物乙四種、その他ガス関連資格多数と電気工事士などの資格も多数所持。

「オイル交換に行ったら、在庫がないと断られた」「いつも買えていたエンジンオイルが棚から消えた」——2026年春以降、こうした声が全国の整備工場やカー用品店から相次いでいます。

その背景にあるのが、2026年2月末に急激に緊迫した中東情勢です。
ホルムズ海峡をめぐる混乱が、ガソリンや灯油の価格高騰にとどまらず、エンジンオイルという「自動車の血液」の供給にまで深刻な影響を及ぼしています。

この記事では、なぜエンジンオイルが不足しているのか、その仕組みをわかりやすく解説するとともに、現時点でドライバーとして取るべき対応と注意点を整理します。


目次

エンジンオイルはなぜ不足しているのか

エンジン内部に黄金色のエンジンオイルを注ぎ込む様子を描いたメンテナンスイメージイラスト

「ベースオイル」の9割近くを中東に依存している

エンジンオイルは大きく分けて「ベースオイル」と「添加剤」の2つから構成されています。
このうちベースオイルが製品重量の約80〜90%を占めており、潤滑・冷却・洗浄といったエンジンオイルの基本性能を担う根幹部分です。

現代の省燃費車や高性能車に広く使われている「化学合成油」のベースオイル(グループⅢ)は、サウジアラビア・UAE・カタールなど中東の大規模製油所で生産されてきました。

この構造が、今回の危機の根本的な原因です。

中東情勢悪化でホルムズ海峡が混乱

2026年2月末、中東での軍事衝突が発生し、世界の原油輸送の約20%が通過するホルムズ海峡が混乱状態となりました。
この航路が機能しなくなったことで、中東の巨大製油所から日本へのベースオイル輸送が物理的に困難になっています。

代替輸入先として韓国・米国・欧州産へのシフトが試みられていますが、世界中のメーカーが同時に「非中東産」に殺到しているため、代替調達も容易ではない状況です。

グループⅢが世界的に深刻不足

業界関係者の間では特に「グループⅢ」と呼ばれるベースオイルの不足が深刻とされています。

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グループ特徴主な用途現在の状況
グループⅠ鉱物油(精製度低め)一般車・旧車比較的安定
グループⅡ鉱物油(精製度高め)一般乗用車全般やや逼迫
グループⅢ高粘度指数ベースオイル(化学合成相当)省燃費車・高性能車世界的に深刻不足
グループⅣ(PAO)完全化学合成油プレミアム・スポーツカー需要急増で高騰

0W-20や0W-16など、現代の国産車の多くが指定している省燃費グレードのオイルはグループⅢを主原料としており、まさにその供給が世界的に止まっています。

容器・溶剤不足が追い打ち

さらに事態を複雑にしているのが、ペール缶やドラム缶などの金属容器や、缶を洗浄する溶剤(シンナー類)も同じく中東情勢の影響を受けて不足していることです。

オイルそのものが確保できても、詰める容器がなければ出荷できません。
サプライチェーン全体が連鎖的に混乱しているのが、今回の危機の特徴です。


整備現場でいま起きていること

車のボンネットを開け、オレンジ色のオイル容器からエンジンへオイルを注入している整備作業の様子

大手元売りメーカーが相次いで受注停止・制限

2026年4月上旬以降、国内の大手石油元売りやオイルメーカーが相次いで受注停止・数量制限に踏み切っています。ENEOSや出光などの主要メーカーが受注制限に移行したことで、整備工場やカー用品店は平時と同量の仕入れが困難な状況です。

国土交通省も2026年4月に全国11カ所に「燃料油・石油製品等の供給に関する相談窓口」を設置する異例の対応を取っており、事態の深刻さを示しています。

ディーゼル車・大型車用オイルの品薄が特に深刻

なかでも品薄が顕著なのが、ディーゼルエンジン用の「DH-2規格」オイルです。

トラックやバス、商用バンなど物流・業務用車両のエンジンに使われるオイルで、供給が止まることは物流インフラへの影響にも直結します。
一部の整備工場では「一般のお客様のオイル交換は当面お断りし、事業者・緊急案件を優先する」という対応を余儀なくされています。

点検パック・車検対応にも遅延

車検や法定点検の際にオイル交換が含まれるケースは多く、点検予約を入れていても「オイルが入荷次第、改めて日程調整をお願いします」といった連絡が届くケースが報告されています。

点検パックを利用している方や、車検の時期が近い方は、早めにディーラーや整備工場に状況を確認することをおすすめします。


政府・業界の対応状況

「供給量は確保できている」が現場には届いていない

政府は「日本全体として必要な供給量は確保できている」と繰り返し強調しており、国家備蓄原油の放出や石油元売りへの前年同月並みの供給要請なども行っています。

しかし業界内からは「国全体の総量としては確保されていても、特定グレード・特定容器での安定供給が追いついていない」という声も聞かれます。
政府の方針が現場レベルに浸透するには一定の時間がかかる見通しです。

グループⅡへの暫定代替が条件付きで承認

深刻なグループⅢ不足への対応として、国内の業界団体は「90日間の緊急暫定措置として、グループⅡベースオイルへの代替使用を条件付きで認める」という方針を示しています。

ただし、これはあくまで業者向けの緊急措置であり、一般ユーザーが自己判断でオイルを変更するものではありません。
粘度や規格の変更は必ず整備の専門家に相談してください。


ドライバーが今できる現実的な対応

青空の下で高速道路を走行する車内からの風景とハンドルを握るドライバーの様子

1. まずは状況を確認してから動く

「オイルが足りないなら先に買っておこう」という心理は自然ですが、過剰な買い占めは流通をさらに混乱させる要因になります。
現在の在庫状況は地域・販売店・グレードによって大きく異なりますので、まずはかかりつけの整備工場やディーラーに現状を問い合わせることから始めましょう。

2. オイル交換は「少し余裕を持って」計画する

通常、エンジンオイルの交換時期は走行距離や使用期間で管理します。

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車両種別一般的な交換目安
国産ガソリン車(一般グレード)5,000〜10,000km または 1年ごと
国産ガソリン車(高性能グレード)10,000〜15,000km または 1年ごと
ターボ車・スポーツ車3,000〜5,000km(シビアコンディション)
ディーゼル車(乗用)5,000〜10,000km または 1年ごと
ディーゼル車(商用・重量車)使用状況・メーカー指定による

交換の余地がある方は、供給が落ち着いてからの対応でも構いません。
一方、すでに交換時期をかなり超えている方は、在庫確認を急ぎましょう。

3. 純正指定グレードへのこだわりは一時的に柔軟に

「純正指定オイル以外は使いたくない」という方も多いと思います。
通常その考え方は正しいのですが、今回のような緊急事態下では整備士が代替グレードを提案する場合があります。

その際は「なぜそのグレードを勧めるのか」「粘度は合っているか」「使用期間に問題はないか」を確認したうえで、専門家の判断に従うのが現実的です。

ポイント:自己判断でグレードを変えるのは危険です。必ず整備士・ディーラーに相談してください。

4. 長距離移動前のセルフチェックは念入りに

GW明けや夏季など、長距離運転を予定している場合は、出発前に以下を自分でも確認しておくと安心です。

  • オイル量(ゲージで確認):エンジン停止後5〜10分経ってから測定
  • オイルの色・粘度:黒く焦げていたり、シャバシャバに薄い場合は要交換
  • 冷却水(クーラント)の量・色:リザーバータンクのMINラインを下回っていないか
  • ブレーキフルードの残量:リザーバータンクのMINラインを確認

エンジンオイルが不足した状態で走行を続けると、エンジン内部の金属摩耗が急速に進み、最悪の場合はエンジンの焼き付き(破損)につながります。
異音・振動・警告灯が出たら、すぐに安全な場所に停車して整備工場に連絡してください。


今後の見通しと影響が続きそうな範囲

エンジンオイル缶とオイルジョッキを並べたシンプルなイラスト

5月以降も厳しい状況が続く可能性

中東情勢の推移次第ではありますが、業界内では「5月以降も供給の逼迫は続く」との見方が支配的です。
ベースオイルの代替調達が進み、現場レベルで安定供給が再開されるまでには数カ月単位の時間がかかるとみられています。

特に懸念されているのが添加剤の供給です。
添加剤は数百種類の原料から構成されており、そのうち1つでも欠けると製造できません。
現時点では前年並みの供給量が確保されているものの、数カ月後の影響が読みにくい状況です。

影響が波及している関連製品

エンジンオイルと同様、今回の中東情勢による供給逼迫は周辺製品にも波及しています。

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製品カテゴリ影響の内容
ブレーキフルード一部メーカーで受注停止・制限
CVT・ATフルード同上、変速機油全般に品薄感
ギアオイル供給タイト、価格上昇傾向
板金塗装用シンナー価格が1.5倍超に高騰、一部作業不能
養生シート・マスキングテープ入荷難が続いている

事故修理や板金塗装の工期が延びる可能性もあるため、修理中の方や予定のある方はあらかじめ工場に状況を確認しておくことをおすすめします。


エンジンオイル不足が住宅設備・暮らしに与える影響

エンジン内部を背景に、ボトルから黄金色のエンジンオイルが注がれている様子のイメージイラスト

エンジンオイルというと自動車だけの問題に見えますが、実は住まいや日常生活にも影響が及ぶ可能性があります。

灯油・LPG配送への影響

灯油の配送はタンクローリーで行われます。
タンクローリー自体がディーゼルエンジンを搭載した大型車であり、今回深刻な不足が報告されているディーゼル用オイル(DH-2規格)を使用します。

配送車両のメンテナンスが滞れば、灯油の配送スケジュールに影響が出る可能性が否定できません。
現時点で直ちに問題が生じているわけではありませんが、灯油残量が少ない場合は早めの注文を検討しておくとよいでしょう。

設備点検・修繕工事の遅延リスク

給湯器・ボイラー・エアコンなどの設備点検や修繕工事を行う業者の車両にも同様のことが言えます。
整備コストの上昇が出張費・工事費に転嫁される可能性もあり、今後の動向を注視する必要があります。

ガソリン・軽油価格への影響

原油価格の上昇は、ガソリン・軽油の価格にも直結します。
国は補助金や備蓄放出で価格抑制を図っていますが、中東情勢が長期化した場合には家庭の移動コストや暖房費(特に灯油)への波及も避けられない可能性があります。


よくある質問

Q. 今すぐオイルを大量に買い置きすべきですか?

A. 個人での過剰買い占めは流通を混乱させる要因になります。現時点では「必要なぶんだけ確保する」という考え方が適切です。ただし、交換時期が迫っている場合は早めに整備工場に相談することをおすすめします。

Q. オイル交換の時期を過ぎても走り続けて大丈夫ですか?

A. 走行できる場合もありますが、オイルが劣化した状態では金属摩耗が進み、エンジンへのダメージが蓄積します。目安の時期を大幅に超えた走行は避けてください。整備工場に状況を伝えれば、代替グレードでの対応を検討してもらえる場合があります。

Q. 自分でオイルのグレードを変えても問題ありませんか?

A. 推奨しません。粘度や規格が合わないオイルを使用すると、エンジン保護が不十分になったり、燃費・性能が低下したりするリスクがあります。代替グレードの選定は必ず整備士に相談してください。

Q. 車検が近いのですが、オイル交換が受けられない場合はどうなりますか?

A. 車検の合否そのものはオイルの銘柄・グレードで判定されるものではありませんが、油量不足や著しい劣化は整備不良とみなされる場合があります。担当ディーラーや車検場に事前に相談し、状況を共有しておきましょう。

Q. 今後、エンジンオイルの価格は上がりますか?

A. 現在すでに値上がりが始まっており、今後も上昇傾向が続く可能性があります。中東情勢の解決や代替調達の進展がない限り、短期間での価格正常化は難しいとみられています。


まとめ

エンジンオイルを車のエンジンへ補充している整備作業の様子を写した高画質イメージイラスト

エンジンオイル不足の現状と、私たちにできる対応をまとめます。

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状況概要
不足の根本原因中東情勢悪化によるホルムズ海峡の混乱でグループⅢベースオイルの供給が停止
影響を受けているオイル化学合成油全般、特にディーゼル車用(DH-2規格)が深刻
現場の状況整備工場・ディーラーで在庫切れ・受注停止が多発
政府の対応備蓄放出・元売りへの供給要請・相談窓口設置
見通し中東情勢次第で、供給正常化には数カ月単位の時間がかかる可能性

ドライバーとして今すぐできること

  • 定期点検・オイル交換の予定がある方は、早めにディーラー・整備工場に在庫を確認する
  • 交換時期が大幅に過ぎている方は、代替グレードも含めて専門家に相談する
  • 長距離運転前にオイル量・オイル状態をセルフチェックする
  • 過剰買い占めは控え、必要な量を適切に確保する

エンジンオイルは、車を安全に動かすための根幹部分です。
「交換できない」という状況が続く中でも、現状を正確に把握し、整備のプロと連携しながら対応することが、愛車を守る最善の方法です。

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この記事を書いた人

「暮らしの設備ガイド」は、給湯器・ストーブ・換気設備など、
家庭の安心と快適を支える“住まいの設備”に関する専門メディアです。

現在もガス業界で設備施工・保守に携わるYuta(ガス関連資格保有者)が監修し、一般家庭向けのガス機器・暖房設備・給湯器交換の実務経験をもとに、現場の知識に基づいた、正確で実用的な情報を発信しています。

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