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灯油の成分と化学式とは?|混合物で化学式が一つに決まらない理由

灯油の成分と化学式について、赤い灯油ポリタンクと液体入りビーカーを使い、混合物のため化学式が一つに決まらない理由を紹介するサムネイル
Yuta
記事監修者
現:ガス会社に勤める兼業WEBライター。所持資格はガス開栓作業に必要な高圧ガス販売主任者二種、ガス工事に必要な液化石油ガス設備士、灯油の取り扱いに必要な危険物乙四種、その他ガス関連資格多数と電気工事士などの資格も多数所持。

「灯油の化学式は何ですか」と聞かれて、すぐに答えられる方は、そう多くないでしょう。
理科の授業で、水はH2O、二酸化炭素はCO2と習いましたが、灯油となると、記憶にないのではないでしょうか。
実は、それも無理のないことです。
灯油には、「これ」と決まった化学式がありません。
さまざまな分子が混ざり合った、混合物だからです。

この記事では、灯油の成分を、炭素の数や分子の種類から整理し、化学式が一つに決まらない理由、代表としてよく使われる式、燃えるときに起こる反応、そして規格が「成分」ではなく「性質」で決められている理由まで、順を追って説明していきます。

目次

灯油は、炭化水素の混合物

灯油の成分を一言で表すなら、炭化水素の混合物です。
炭化水素とは、炭素(C)と水素(H)だけでできた化合物のことです。
灯油は、炭素の数がおよそ9個から15個の炭化水素が、たくさん混ざったものとされています。
なかでも、炭素が11個から13個のものが中心です。

水なら、どの一滴を取っても、H2Oという同じ分子です。
これに対して、灯油の一滴には、炭素の数も、形も違う分子が、何十種類、何百種類と入っています。
そのため、灯油全体を、一つの化学式で書き表すことはできません。
「灯油の化学式」という問いに、決まった答えがないのは、このためです。

純物質と混合物の違い

ここで、純物質と混合物の違いを整理しておきましょう。

項目純物質(例:水)混合物(例:灯油)
分子の種類1種類多数の種類が混ざる
化学式1つに決まる(H2O)1つには決まらない
沸点一定(水は100℃)幅がある(灯油は約145〜270℃)
性質いつ、どこでも同じ原油や製造の条件で、わずかに変わる

灯油の沸点が、決まった一点ではなく、幅を持っているのは、混合物だからです。
軽い分子から先に蒸発し、重い分子はあとから蒸発していきます。
この性質を利用して、原油を加熱し、沸点の範囲ごとに切り分けているのが、石油の精製です。

原油から「沸点の範囲」で切り出されている

灯油は、原油を加熱して、蒸留することで作られます。
原油には、軽いものから重いものまで、さまざまな炭化水素が含まれています。
これを蒸留塔で温めると、沸点の低いものから順に、気体になって取り出されます。

灯油は、この途中の、およそ145℃から270℃のあいだで、取り出される部分です。
ガソリンより重く、軽油より軽い、中間の部分にあたります。
炭素の数と沸点を、並べてみましょう。

油の種類炭素数の目安沸点の範囲の目安
ガソリン約4〜10約30〜200℃
灯油約9〜15約145〜270℃
軽油約10〜20約180〜350℃

炭素の数が増えるほど、分子は大きく重くなり、沸点も高くなります。
灯油は、ガソリンと軽油の中間にあるため、燃えやすさも、ほどよい位置にあるわけです。
ガソリンとの違いは、灯油とガソリンの違いでも整理しています。

灯油を構成する、3種類の炭化水素

同じ炭化水素でも、炭素のつながり方には、いくつかの型があります。
灯油に含まれるのは、おもに次の3種類です。

種類分子の形特徴灯油での役割
パラフィン系炭素が鎖のようにつながるすすが出にくく、きれいに燃える灯油の主体
ナフテン系炭素が環の形になる燃えやすさは中間一部に含まれる
芳香族系ベンゼンの環をもつすすが出やすい少なめに抑えられている

パラフィン系が多いほど、すすの出にくい、きれいな燃え方になります。
逆に、芳香族系や重い成分が多いと、燃やしたときに、すすが出やすくなります。
家庭の暖房に使う灯油は、すすの少なさが大切なので、パラフィン系を主体にしたものが選ばれているのです。

代表としてよく使われる「C12H26」

とはいえ、「だいたいこんな分子」という目安がないと、反応式も書けません。
そこで、灯油の代表として、炭素が12個の分子、C12H26(ドデカン)がよく使われます。
炭素数11〜13の中心に近く、計算にも便利だからです。

ただし、これは、あくまで「代表の一例」です。
実際の灯油が、すべてC12H26でできているわけではありません。
その証拠に、水素の割合を比べてみましょう。

項目水素の質量の割合
C12H26(ドデカン)の計算値約15.4%
実際の灯油約14%

実際の灯油は、水素の割合が少し低めです。
これは、水素の少ない、環の形をした分子(ナフテン系や芳香族系)が混ざっているためと考えられます。
鎖だけの分子なら15%を超えるはずが、環状のものがあるぶん、下がっているわけです。
化学式が一つに決まらないことが、数字の面からも見て取れるでしょう。

燃えると、何が起こるのか

灯油が燃えるときの反応を、C12H26を代表にして、式にしてみます。

C12H26 + 18.5 O2 → 12 CO2 + 13 H2O

灯油が、酸素と結びついて、二酸化炭素と水ができる反応です。
完全に燃えたときは、これだけで、有害なものはほとんど出ません。
式から分かるのは、次の2点です。

ポイント内容
水ができる灯油1リットルが燃えると、約1リットルの水(水蒸気)ができる
酸素を多く使う燃やすには、たくさんの酸素が必要になる

灯油ストーブを使うと、窓に結露がつきやすいのは、この水蒸気のためです。
さらに、酸素が足りなくなると、完全に燃えずに、一酸化炭素ができてしまいます。
暖房に灯油を使うときは、定期的な換気が欠かせないのは、こうした理由があるからです。

灯油1リットルが燃えると、何がどれだけ出るのか

反応式が書けると、燃やしたときの量も、概算できます。
C12H26を代表にして、灯油1リットル(質量を約0.8kgとします)で計算した結果が、次の表です。

項目1リットルあたりの概算
燃える灯油の質量約0.8kg
使われる酸素約2.8kg
できる二酸化炭素約2.5kg
できる水約1.1kg(約1.1リットル)

使われる酸素の約2.8kgは、空気に直すと、約10立方メートルぶんにあたります。
灯油ストーブを閉め切った部屋で使い続けると、酸素が減っていくのは、この計算からも分かるでしょう。
また、二酸化炭素の約2.5kgという数字は、公的に使われる排出量の目安ともほぼ一致します。
灯油という、一つに決まらない混合物でも、代表を決めて計算すれば、現実に近い数字が得られるわけです。

規格は「成分」ではなく「性質」で決められている

灯油には、JIS(日本産業規格)で、品質の基準が定められています。
ただ、その基準は、「何がどれだけ入っているか」という成分ではなく、「どんな性質か」で決められています。
成分が一つに決まらないため、性質で品質を管理するのが、現実的だからです。
家庭用の1号灯油の主な基準を、整理します。

項目基準(1号灯油)意味
引火点40℃以上常温では、火が近づいても燃え広がりにくい
95%留出温度270℃以下重い成分が多すぎず、きれいに燃える
煙点23mm以上(寒い時期用は21mm以上)すすが出にくい
硫黄分0.0080質量%以下排気ガスの有害成分が少ない
色(セーボルト色)+25以上無色透明に近い、きれいな状態

引火点が40℃以上と決められていることで、灯油は、ガソリンよりずっと安全に扱えます。
その仕組みや、火が付くメカニズムは、灯油の引火点と発火点で詳しく解説しています。

白灯油と茶灯油は、規格の違い

灯油には、JISの規格で、1号と2号があります。
家庭の暖房で使う、無色透明に近い灯油は、1号灯油で、一般に白灯油と呼ばれます。
2号は、石油発動機などに使われる灯油で、茶灯油とも呼ばれます。
ただ、現在、家庭向けに売られているのは、ほとんどが白灯油です。

項目1号(白灯油)2号(茶灯油)
主な用途暖房、調理、給湯動力、溶剤、機械の洗浄
95%留出温度270℃以下300℃以下
硫黄分0.0080質量%以下0.50質量%以下
煙点規定あり規定なし

2号は、硫黄分も多く、重い成分も含むため、すすが出やすくなります。
家庭用のストーブやファンヒーターには、必ず1号の白灯油を使いましょう。

硫黄分が少ないのは、精製の工夫のおかげ

原油には、もともと硫黄が含まれています。
そのまま燃やすと、硫黄酸化物ができて、大気を汚し、機器の腐食の原因にもなります。
そのため、家庭用の灯油は、水素を加えながら熱する処理で、硫黄を取り除いています。
硫黄分の上限は、1996年に、150ppmから80ppmへ引き下げられました。
いまの白灯油は、硫黄分が非常に少ないことが、きれいな燃え方を支えています。

成分を知ると、扱い方の理由が分かる

成分や性質を知っておくと、灯油の扱い方の「なぜ」が、見えてきます。

注意点成分から見た理由
直射日光を避ける光や熱で酸化が進み、変質しやすい成分があるため
古い灯油を使わない酸化して、色やにおいが変わり、すすや故障の原因になる
ガソリンを混ぜない引火点が大きく下がり、危険になる
軽油や重油を混ぜない重い成分が増え、すすが出やすくなる
十分に換気する燃えると水と二酸化炭素が出て、酸素も減るため

とくに、ほかの油を混ぜることは、成分のバランスを崩して、安全性を損ないます。
灯油の密度や比重の考え方は、灯油の比重と密度にまとめています。

家庭で、灯油の成分を見分けることはできるのか

成分を分析するには、専用の装置が必要で、家庭で調べることはできません。
ただ、見た目やにおいで、「いつもの灯油と違う」と気づくことはできます。

確かめること正常な状態異常のサイン
色ほぼ無色透明黄色や茶色に変わっている
におい灯油特有のにおい酸っぱいにおい、ツンとするにおい
濁り澄んでいる白く濁る、浮遊物がある

異常を感じたときは、ストーブやファンヒーターに入れずに、販売店に相談してください。
成分が崩れた灯油を使うと、すすが出たり、機器の故障につながったりするおそれがあります。

「灯油の化学式は?」と聞かれたときの答え方

学校の課題や、お子さんの質問などで、灯油の化学式を聞かれることもあるでしょう。
そんなときは、次のように答えると、正確です。

「灯油は、炭素の数がおよそ9〜15個の炭化水素の混合物なので、化学式は一つに決まりません。
計算に使うときは、代表として、C12H26が用いられることがあります。」

「C12H26です」とだけ答えてしまうと、混合物であるという大事な点が抜けてしまいます。
一つの式で言い切れない、という事実こそが、灯油という物質の特徴を表しているのです。
ガソリンや軽油も、同じように、炭化水素の混合物であることを、あわせて覚えておくとよいでしょう。

よくある質問

Q1. 灯油の化学式は、何ですか?

一つには決まりません。
炭素の数がおよそ9〜15個の、さまざまな炭化水素が混ざった混合物だからです。
計算では、代表としてC12H26が使われることがあります。

Q2. 灯油の主な成分は、何ですか?

炭化水素です。
炭素と水素だけでできた化合物で、パラフィン系が主体、ほかにナフテン系や芳香族系が含まれます。

Q3. 灯油は、何℃で蒸発しますか?

決まった温度はなく、およそ145℃から270℃の幅があります。
軽い成分から順に、蒸発していきます。

Q4. 灯油が燃えると、何ができますか?

十分な酸素があれば、二酸化炭素と水ができます。
灯油1リットルで、約1リットルの水ができるといわれ、窓の結露の原因にもなります。

Q5. 白灯油と茶灯油は、何が違いますか?

規格の違いです。
白灯油は1号で、暖房などの家庭用です。
茶灯油は2号で、硫黄分が多く、動力などに使われます。

まとめ

灯油の成分と化学式の要点を、最後に整理します。

ポイント内容
灯油とは炭素数およそ9〜15の、炭化水素の混合物
化学式一つには決まらない。代表例はC12H26
沸点およそ145〜270℃の幅がある
成分の種類パラフィン系が主体で、ナフテン系・芳香族系を少し含む
燃焼二酸化炭素と水ができる。換気が欠かせない
品質の管理成分ではなく、引火点や煙点などの性質で決められている

まずは、普段使っている灯油が、「白灯油(1号)」であることを、販売店の表示で確かめてみませんか。

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この記事を書いた人

「暮らしの設備ガイド」は、給湯器・ストーブ・換気設備など、
家庭の安心と快適を支える“住まいの設備”に関する専門メディアです。

現在もガス業界で設備施工・保守に携わるYuta(ガス関連資格保有者)が監修し、一般家庭向けのガス機器・暖房設備・給湯器交換の実務経験をもとに、現場の知識に基づいた、正確で実用的な情報を発信しています。

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