「親の家をリフォームしたばかりなのに、相続税の計算はどうなるんだろう」——相続が発生した際、リフォーム済みの家屋の評価方法に戸惑う方は少なくありません。
この記事では、リフォーム済み住宅の相続税評価の仕組みを、国税庁の質疑応答事例をもとに整理して解説します。
家屋の相続税評価の基本
家屋の相続税評価額は、原則として市区町村が算定する「固定資産税評価額」がそのまま使われます(倍率1.0)。
つまり、通常であれば固定資産税評価額をそのまま相続税評価額として使えばよく、別途複雑な計算は必要ありません。
問題になるのは、リフォーム(増改築等)を行ったにもかかわらず、その内容が固定資産税評価額にまだ反映されていない場合です。
なぜ固定資産税評価額に反映されないことがあるのか
固定資産税評価額は、市区町村が家屋の状況を確認したうえで算定しますが、増改築等があった場合でも、評価額への反映にはタイムラグが生じることがあります。
特に、相続開始の直前にリフォームを行った場合、市区町村の評価替えが間に合わず、固定資産税評価額にリフォーム分の価値が反映されていないまま相続が発生するケースがあります。
このような場合、リフォーム前の古い固定資産税評価額をそのまま使うと、実際の資産価値を過小評価してしまうことになるため、国税庁は別途の評価方法を定めています。
固定資産税評価額に反映されていない場合の評価方法
国税庁の質疑応答事例では、増改築等に係る部分の固定資産税評価額が付されていない家屋の評価方法が示されています。
評価額は、次の計算式で求められます。
家屋の評価額 = 増改築等に係る部分以外の固定資産税評価額 + 増改築等に係る部分の価額
このうち「増改築等に係る部分の価額」は、原則として状況の類似した付近の家屋の固定資産税評価額を参考に評定しますが、実務上は、次の簡便的な計算方法(いわゆる「70%ルール」)が広く使われています。
増改築等に係る部分の価額 =(増改築等の再建築価額 - 課税時期までの償却費相当額)× 70%
「再建築価額」は、実務上、リフォームに実際にかかった費用(工事費用)を使うことが多いとされています。
つまり、リフォーム費用から、リフォーム時点から相続開始(課税時期)までの期間に応じた償却費を差し引き、その残りの70%相当額を、リフォーム前の固定資産税評価額に加算する、というのが実務上の一般的な計算方法です。
償却費相当額の考え方
償却費相当額は、財産評価基本通達に定める計算方法に準じて算定します。
具体的には、再建築価額から、その10%(残存価額相当)を控除した金額に、その家屋の法定耐用年数のうちに占める経過年数(増改築等の時から相続開始までの期間、1年未満の端数は1年に切り上げ)の割合を乗じて計算します。
リフォームから相続開始までの期間が長いほど、償却費相当額が大きくなり、加算される評価額は小さくなります。
逆に、リフォームから間もない時期に相続が発生すると、償却がほとんど進んでいないため、加算される評価額が大きくなる傾向があります。
具体例で見る評価額の計算
具体的なイメージをつかむため、簡単な例で考えてみましょう。
リフォーム前の固定資産税評価額が800万円の家屋で、300万円のリフォーム(システムキッチンの交換、床の張替え等)を行い、その2年後に相続が発生したとします。
かりに、償却費相当額を計算した結果、控除後の金額が約270万円だったとすると、次のようになります。
- 増改築等に係る部分の価額:270万円 × 70% = 約189万円
- 家屋の評価額:800万円(元の評価額) + 189万円 = 約989万円
このように、リフォーム済みの家屋では、単純にリフォーム前の固定資産税評価額だけを使うのではなく、リフォーム分を上乗せして評価する必要がある場合があります。
※あくまで一例であり、実際の再建築価額・耐用年数・経過年数によって金額は変わります。正確な計算は税理士に依頼することをおすすめします。
修繕とリフォーム(増改築等)の違い
すべてのリフォームが、この評価額の加算対象になるわけではありません。
資産価値の増大につながらない「修繕」(原状回復レベルの工事)であれば、従来の固定資産税評価額がそのまま引き継がれ、別途の評価は不要とされています。
一方、システムキッチンの導入や、家屋全体の床の張替え、床暖房の設置など、家屋全体の資産価値を明らかに向上させる工事は、「増改築等」として評価額の加算対象になり得ます。
この判断は個別の事情によって異なるため、相続が発生した際は、リフォームの内容・時期を整理したうえで、税理士に相談することをおすすめします。
生前のリフォームが相続税対策として語られる理由
現金をそのまま持っていると、相続税評価額は額面どおりに評価されます。
一方、現金をリフォームに充てて住宅の資産価値を高めた場合、前述の70%ルールにより、リフォーム費用の一部(償却費控除後の70%)だけが評価額に加算される仕組みになっています。
この差から、「現金で持つより、生前にリフォームしたほうが相続税評価額を抑えられる」という考え方が、相続税対策の一環として語られることがあります。
ただし、これはあくまで一般的な傾向であり、リフォームの内容・時期・家族構成等によって効果は大きく異なります。
相続税対策だけを目的に不要なリフォームを行うことは本末転倒であり、まずは住まいとして本当に必要な工事かどうかを優先して判断すべきです。税負担への影響は、あくまで副次的な要素として捉えましょう。
固定資産税評価額が既に更新されている場合
課税時期(相続開始時)から申告期限までの間に、市区町村がリフォーム後の状況に応じた固定資産税評価額を新たに付した場合は、その新しい固定資産税評価額をそのまま使って評価します。
この場合は、70%ルールによる加算計算は不要になります。
相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)までに、市区町村の評価替えのタイミングが到来するかどうかも、あわせて確認しておくとよいでしょう。
固定資産税評価額そのものの仕組みや、リフォームによる固定資産税への影響については、リフォームで固定資産税は上がる?減る?工事内容で結果が逆になる仕組みでも詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
よくある質問
Q. リフォーム済みの家屋は、相続税評価が高くなりますか?
A. 固定資産税評価額にリフォーム分がまだ反映されていない場合、リフォーム費用をもとにした金額(償却費控除後の70%相当額)が加算されるため、リフォーム前の評価額より高くなることがあります。
Q. 「70%ルール」とは何ですか?
A. 固定資産税評価額に反映されていないリフォーム部分の価額を、(リフォーム費用-償却費相当額)×70%という簡便な方法で計算する、国税庁の質疑応答事例に基づく実務上の計算方法です。
Q. すべてのリフォームで評価額が加算されますか?
A. いいえ。原状回復レベルの「修繕」であれば、資産価値の増大とはみなされず、加算は不要とされています。資産価値を明らかに向上させる工事のみが対象になります。
Q. リフォームから相続開始までの期間は評価額に影響しますか?
A. 影響します。期間が長いほど償却費相当額が大きくなり、加算される評価額は小さくなります。逆にリフォーム直後に相続が発生すると、加算額が大きくなる傾向があります。
Q. 固定資産税評価額が申告までに更新された場合はどうなりますか?
A. 市区町村がリフォーム後の状況を反映した固定資産税評価額を新たに付した場合は、その新しい評価額をそのまま使用し、70%ルールによる加算計算は不要になります。
Q. 相続税対策として生前リフォームは有効ですか?
A. 現金をそのまま持つより、リフォーム費用の一部(70%相当)だけが評価額に加算される点で、評価額を抑える効果が語られることはあります。ただし、これはあくまで一般的な傾向であり、税負担への影響だけを目的にリフォームを判断するのはおすすめできません。まずは住まいとして必要な工事かどうかを優先しましょう。
まとめ
リフォーム済みの住宅は、リフォーム内容が固定資産税評価額にまだ反映されていない場合、リフォーム費用をもとにした金額を加算して相続税評価額を計算する必要があります。
原状回復レベルの修繕であれば加算は不要ですが、資産価値を明らかに向上させる工事は「増改築等」として扱われる可能性があります。
正確な判断・計算には専門知識が必要なため、相続が発生した際は、リフォームの内容と時期を整理したうえで、税理士に相談することをおすすめします。
特に、被相続人が亡くなる直前の1〜2年以内にリフォームを行っていた記録がある場合は、その工事内容と費用が分かる資料(契約書、領収書等)をあらかじめ整理しておくと、相続税の申告手続きがスムーズに進みます。

